異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第151話「ああっ!?なんかいつもより怖い!?」

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一方その頃。

 

「な、何アレ……!?」

 

恋によってプールブースの端に降ろされたとおるは戦慄の声を上げる。

 

恐怖を向ける相手は、クロキと交戦している謎の巨人―――改の会の兵器と思われるものだ。

 

「なーなー!恋ちゃんなー!プリ○ュア!?プリ○ュアなの!?」

 

そんなとおるの恐怖など気にもせず、ななかは歓声をあげて恋に迫った。

 

「いやー……どういえばいいか……ま、とりあえず寝ててくれ。ソング・オブ・アムネジア!」

 

恋が魔法を使うと、二人共に「あ……」とか細い声だけを残して倒れ伏す。

 

それを危険な転び方にならないように支えた恋は、近くの椅子に二人を座らせて戦場を見た。

 

「このままぶつからせておいて、あたいらは逃げるのが吉なんだろうけども……」

 

巨人とクロキの戦いを恋は眼に写して、その光景に唇を噛む。

 

「喰らえ!ハイパー・ツイスター!!」

 

ヨーヨーから繰り出される斬撃が透明な巨人へと殺到したが―――

 

ガギリ、と音を立ててそれは弾き返されてしまう。

 

「ちぃっ!」

 

そうしていくつか魔力弾を放ち、クロキは顔を怒りに歪めていた。

 

「このまま放置したら、どう考えてもプールが壊されちまう!それだけじゃなくて、上には爺さん婆さんが大量に風呂入ってるんだ!」

 

ぐっと鎌を握り、ふわりと浮かぶ。

 

このままではここが完全に破壊され、上階で温泉を楽しんでいる人々も危険にさらされる。

 

ならば、ここでやるしかない。

 

「待ちやがれ!なんてところで戦いおっぱじめてやがんだよ、あんたら!!」

 

恋は鎌を女に向け、そしてギリと奥歯を噛み締めた。

 

「ミストレル・レン……邪魔をするな!」

 

「邪魔にするに決まってんだろ!ミュージック・オブ・ヴァッサー!!」

 

恋が鎌を掲げると、巨大な雨粒が2つ現れ、それらが透明な巨人とクロキへ一つずつ向かっていく。

 

「ちぃっ!?」

 

クロキはそれをヨーヨーで払い落とそうとしたが―――しかし。

 

バンッ!と風船が弾けるような音がして、そのまま弾けた雨粒は水流となってクロキを押し流し、プール表面へと激突させる。

 

「がぁっ!?馬鹿な……この短期間に強くなっている、だとぉッ!?」

 

『お、おぉぉん……』

 

激流に飲まれたクロキは激高し、雨粒をまともにぶつけられた巨人はそれによりダメージを受けただろうかうめき声を挙げた。

 

「き、貴様……なにをどうやって……!?あ、あの時はオリジナルと二人がかりでも私とそう変わらない戦闘力だったはず……!」

 

「はっ!だんしみっかあわざればかつもくしてみよ、って岬ちゃんが言ってただろ!あたいも修行したのさ!」

 

「ま、まさか……くっ!!おのれぇ!!」

 

急激な成長を受け入れられず、クロキは水の上に立ち上がるが―――時すでに遅し。

 

「水の上だし、威力は調整してやるよ!ミストレル・フレアッ!!」

 

鎌の先から炎の嵐が飛び出る。

 

それはクロキに寸分違わず命中して―――

 

「ぐあぁぁあっ!?」

 

水と合わさり爆発を起こす。

 

それによってクロキはふっとばされ、プールサイドのヤシの木に叩きつけられた。

 

「ご、ぁ……?」

 

自分に何が起きたか、それもわからないまま変身は解除され、クロキは水面に再び叩きつけられ―――

 

仰向けになって気絶してしまったのであった。

 

「よし、仰向けだな!?口は水の上に出てんな!?OK!」

 

彼女が溺れてしまわないかを指差し確認した恋は、キッと苦しむようにうごめく透明な巨人へと目を向けた。

 

「よし!後はあたいだけでなんとかなる……かな!?」

 

恋がそうして鎌を巨人に向ける。

 

―――今の所の被害は、巨人とクロキのせめぎあいによっていくらかヤシの木が倒れていることと、恋の攻撃で同じくヤシの木が一本折れてしまったことだけ。

 

後はどう被害少なく立ち回るか、であった。

 

と、そのとき―――巨人はその透明化が無駄であると悟ったのか、それを解除して姿を表す。

 

それは……

 

「う、腕付きの装甲車!?めいたなにか!!さっきと大きさちがくねえか!?」

 

胴体部は2メートル、脚部を含めて4メートルほどはありそうな装甲車の化物とでも言うべきものであった。

 

『ウオオオオオオン……』

 

威嚇するような唸り声をあげ、擲弾筒と機銃をこちらへと向けてくる装甲両脚車とでも言うべきものを視認した瞬間、恋はすぐに高速で彼の後ろを取ろうと旋回する。

 

それを追うように、装甲両脚車もまた旋回してこちらに照準を合わせようとして―――やがて発砲を始めた。

 

ヤバイ!と恋が思ったときには、もう体が動いて―――プールに浮かぶツインテールのクロキを横からお姫様抱っこの形で持ち上げて飛んだ。

 

流石に人間のミンチなど彼女とて見たくはない。

 

そのままななかたちを寝かせてきたテーブルへと飛び、すぐさま岬から教えてもらったプロテクションもどきを唱え始めた。

 

「ルルにーちゃんの分身はどこでなにやってんのさ!」

 

悪態をつく間もなく、装甲両脚車はすぐにこちらへ射線を向け―――

 

「光よ!肉に還り壁となれ!マジカル・プロテクト!!」

 

一瞬早く魔法が間に合う。

 

放たれたグレネードと機銃弾は総てマジカル・プロテクトによって弾かれていった。

 

「弾切れまであたいの魔力が持つか……?どうする……?」

 

恋が焦りだす。

 

魔法少女の魔法は、思いによって様々に変化させられる汎用性と別格の威力があるが、そのぶん燃費が非常に悪い。

 

あくまで今展開しているのはプロテクションもどきでしかないため、展開するだけで魔力を大量に食うのだ。

 

「もう……マジで……ルルにーちゃんどこ行ってんだよ……!」

 

恋がギリギリと歯を食いしばり、連射される銃砲弾に耐えている―――そのとき。

 

『おまたせしました。監視機器を誤魔化す措置に手間取ってしまいましてねぇ。廻さんか夕さんどちらかに付き合ってもらうべきだったよ』

 

少しだけ、わずかにだけくぐもった声が恋の後ろで響いた。

 

「ルルにーちゃん!」

 

『破壊と渇望の王、呑み込み食らう我らが神よ。その赤き牙を盾と変えたまえ……デス・ウォール!』

 

恋のマジカル・プロテクトが解けた瞬間、ルルの死の壁が展開されたのだ。

 

『全く……ミナさんや僕の仲間を傷つけて拉致しようだなんて、オイタがすぎるじゃないか、ゴミが……』

 

「ああっ!?なんかいつもより怖い!?」

 

ビキビキと青筋を立てるルル分身に、怖くなった恋は思わずそう言ってしまう。

 

『ほらほら、僕が止めているうちにやっちゃいなさいよ』

 

怖がる恋にルル分身はそう促すと、面倒くさそうにため息をついた。

 

「わ、わかった。じゃあ―――ミストレル・フレア!!」

 

恋は鎌から火炎の風を再び放ち、それは未だに擲弾を連射している装甲両脚車を炙っていく。

 

「うおおおおお!!」

 

恋が魔力と気合を鎌に込めて叫ぶと、火炎は一層激しさを増した。

 

『お、おおおおお……』

 

やがて耐熱限界を超えたのか、装甲両脚車は擱座し、そして―――

 

バゴオオン、と爆光爆音を放って破壊されたのであった。

 

『ふん。ゴミが』

 

ルルの分身はそうして面倒くさそうに破壊された場所へと歩いていく。

 

もうもうと煙を上げる戦車の前にまず立って、それを無限のバッグへと押し込めていった。

 

「あのー……何してんの?」

 

『ゴーレムもどきをしまって、後は壊れたところを治すだけ。恋さん、あなたはそこの二人を外に連れ出してください』

 

「あ、うん……」

 

恋に指示したルル分身はすぐにリペアーの魔法を使って、直せるところを直していく。

 

流石に恋やクロキの魔法で破壊された箇所を直すことは出来なかった。

 

『……後はミナさんが来るのを待ちますか。監視機器のごまかしが利いている間に来ていただければ良いのですが』

 

ルルの分身はそう言うと、恋に声を掛けた。

 

『本体との交信が切れてしまうといけない。故にあまり僕は地下まで行けないので、岬さんのことを助けに行ってあげてください。あのダクトは地上には通じていませんから』

 

振り向いてケロッとした爽やかな笑みを少年は恋に向けてくる。

 

「えっ!?」

 

『あのダクトはどこか地の底に通じているのさ。さぁ、早く行きなさいね。ほら、これを貸してあげるから』

 

ひゅん、と風を切ってルルの分身が投げたものは、ブルーリボンであった。

 

『それを身につければ、魔法を使えない地球人の罠などはたやすく踏みにじれますよ』

 

ニタリと笑った分身に、若干引きつった笑みを向けて恋はダクトを見る。

 

見た瞬間に、その向こうで岬が苦しんでいるのだとすれば急がなければならないと目つきは鋭く、身体は勝手に動き出していく。

 

「にーちゃん!ななかちゃんととおるちゃん、任せたぜ!」

 

啖呵を切るように、そう叫んで彼女は地面を蹴ってダクトの中へと飛び込んでいった。

 

「待ってろよ、岬ちゃん!かけるちゃん!!」

 

フルスピードで飛んでいく彼女を見上げて、ルルの分身は『眩しいことだ』と言って再び監視員の女性へと変身する。

 

「壊れているのはプールの底の一部だけ。これならミナさんが来るまでは幻覚の魔法でごまかせそうですね」

 

フッと笑って、監視塔へと歩いていく。

 

「今の彼女たちなら、独力でも平気でしょうけどね―――想定外がなければ」

 

独り言はプールブースに流れるハワイアンな音楽にかき消されて消えていったのであった。

 

 

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