異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第16話「実は私、こう見えて」

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その日の朝の惟神テレビはそれ以外のどの報道機関よりも賢明な報道をしていた。

 

クリスマス・イブを1週間前に控えた朝、公安が共有党本部への査察を行うということが閣議決定されたことを報じたのである。

 

これはもちろん、ミナが流した暴力革命やテロの計画の証拠などをネット上に拡散した結果だ。

 

奇妙なほどこの事件はマスコミで報道されず、わずかにネットメディアや惟神テレビのような地方で独立した活動を行っているメディアが報道するのみだった。

 

「あんたがやったのね。神隠し」

 

「あい……」

 

「全く……駅前や役所の近くであいつらがやるどーでもいい騒音がなくなったのはありがたいけどねえ……」

 

その報道の結果、朝食の準備を終えたミナは、カーチャンに正座させられた上で説教されていた。

 

「だってカーチャン」「だってもダッチワイフもない!」

 

雷のような声が落ちる。

 

「人殺しはこの際不問にします。どうせ市民の害になるだけなんでしょうし」

 

「そこはいいんだ……」

 

「こっちを殺そうとしたのはあっちだし。あんたが生きてきた世界は、反省する気がない敵対者は殺さないとやっていけなかったのでしょうし、何より実を言えばみんなそう思っているはずよ。あの手の犯罪者や犯罪まがいの迷惑行為をする政治団体なんていなくなってしまえーってね」

 

茜は腕を組んでミナを見据えた。

 

言っていることは過激そのものだ。

 

そういえば「人間は反省しない」という言葉を初めて聞いたのは母からだったろうか。

 

ミナがちらりとそう思った時、再び雷が落ちる。

 

「だからそれはいいとして、黙ってたら心配するだろうが、と言っている!ちゃんと全容を私にも教えなさいよ!知る権利って知ってるかこのハイファンタジー脳のバカエルフ!!」

 

母に頭を手でつかまれながら、わかったからやめて!と叫ぶミナはどこか嬉しそうだった。

 

「以後気を付けること!まあそれはそれとして、昨日庶務課の友達から聞いたんだけど、森北山で戦車の幽霊を見たって通報がここ数日相次いでるらしいのよ。あんた、なんか知らない?」

 

ぴしゃりと言い渡して別の用件を聞いてきた茜に、ミナはバツの悪い顔を向けて力なく言葉にした。

 

「あー……うん、知ってるわ、それ。つーか言う機会がなくて言ってなかったけど、今思いっきり関わってるってば……」

 

「よし、詳しく話せ。細大漏らさず」

 

「はぁい……」

 

そうしてミナは不本意ながら、図書館へ行った後のことを洗いざらい母に話すことになったのである。

 

 

 

「あんた戦車なんて持ってんの?絶対街中で乗ろうとか思うんじゃないわよ」

 

「乗らないし武器は封印してるから……」

 

ルルも呼んで洗いざらい内容を話し終えた時には、すでに時間は8時だった。

 

もう仕事には間に合わない時間のため、茜は体調不良を理由に午前半休することを職場に連絡していた。

 

「少なくとも無限のバッグの中にあるうちは安全ですよ、お義母様。無限のバッグは所有者の魔力で鍵をかけます。ですからミナさんが死なない限り、ミナさん以外が勝手にものを出すこともできませんよ。そしてこの世界でミナさんを殺すにはカクヘイキとやらが必要だと思います。つまり、事実上不可能ということですね」

 

ルルがフォローすると、茜はこめかみをぐりぐりと押しながら「便利なものねぇ。とりあえず話は分かったわ。夢と戦車と木か……」と言った。

 

「もし知っていればだけども、駅の南口の駐輪場あるじゃない。あそこに生えてたと思われるこの木について何か知らない?」

 

ミナはタブレットに映る満開の花の木を彼女に見せる。

 

「神森市郷土史」の出征式写真が載っているページだ。

 

「あっちの世界では見たことない木だからなんの木なのか白黒写真じゃ見当つかなくてさ。しかもこの木、今はもうなくて手掛かりがないんだよ」

 

「ふむ……」

 

まじまじとその出征式の写真を見ると、茜は「これは杏の木ね。私の父、つまりあんたのお爺ちゃんと一緒に何度も見に行ったわ。もう40年以上前のことだけど」と言った。

 

「そこんとこ詳しく!いつ伐られたとかなくなったとか、そういうやつ!」

 

ミナが乗り出すように聞くと、茜はあっさりと答えた。

 

「確か……ええっと、記憶が確かなら私が高校入ってすぐくらいのころに市で引き取ったはずよ。どこかに移植するんだって言って」

 

茜は思い出しながらそう言う。

 

「記録に残ってなかったのはなんでだろう……図書館の展示コーナーの本は全部読んだのだけれども」

 

ミナは拳を口に当てて、考えるそぶりをした。

 

「記録に残すまでもなかったからでしょうね。後はわからない。駅前も私が子供のころから比べると全然変わっちゃったしね」

 

「うーん、わかった……ありがとうカーチャン。他になんかわかったら教えるよ」

 

ミナは腕を組んでそう言うと、立ち上がって食器の片づけを始める。

 

時間はもう9時半を過ぎていた。

 

「じゃ、オレはそろそろ一眠りするわ。おやすみカーチャン」

 

「昼夜逆転は体に悪いわよ?」

 

「そのうち考えます……あの店長見捨てられないから……」

 

「わかったわかった……」

 

母とそんな他愛もない会話をしながら、ルルを伴い部屋に戻るミナであった。

 

 

 

―――そしてまた、夢を見た。

 

目の前にはあの杏の木だ。

 

杏の木には実が生っている。

 

その実を見つめながら、女性は涙を流した。

 

「―――ツヨシさん。私はもう大丈夫です。ここで私は生きていきます。あなたのいないこの街で……」

 

まだ吹っ切れてはいないのだろう、頬を伝う涙は悲しみの涙だ。

 

彼女にとって、ツヨシという男との思い出の場所なのだろう。

 

たわわに実る杏の実を見つめ、無理やりにでも笑顔を作っていた。

 

その手に持っていた箱を開け、油紙に包まれた封筒をそっと取り出す。

 

封筒には写真が入っていた。

 

そこに写るのは―――

 

 

 

翌日、ミナは例のあいあいドリンクを飲んだ喫茶店へやってきていた。

 

あることを確認するために。

 

看板には「思い出鏡」とファンシーな書体で書かれている店のドアを潜る。

 

ファンシーでメルヘンで花と雲を象った諸々が目に入る。

 

「いらっしゃいませ。空いているお席へどうぞ」

 

初老の店主にそう促されるまま、ミナたちはテーブル席に腰を下ろした。

 

まだ昼の14時頃。

 

ちらほらと客のいる時間帯のため、まずはミナが以前も頼んだチーズケーキを頼み時間を潰すことにする。

 

注文から数分でそれは暖かいストレートティーと共にやってきた。

 

「気に入っていただけたようですね」

 

うやうやしく礼をいう店主の顔をまじまじとミナは見つめる。

 

向かいに座るルルはそれをどこかつまらなそうに見ていた。

 

「……私の顔に何か?」

 

「ああ、いえ……何でもありません。それより、お客さんがいなくなったらお話を聞かせてもらえはしませんか?その、このケーキに使ってる杏の木の話を聞きたくて」

 

表情は朗らかに視線は優しくミナは初老の店主を見つめて笑った。

 

「いいですよ。3時頃に成ればお客さんもほとんどいなくなりますから、そのあたりに呼んでいただければ」

 

含みのない笑い顔で初老の店主は「ごゆっくり」と一言言って奥に戻る。

 

チーズケーキを一口食べるとほんのりした杏とチーズの味が口に広がった。

 

 

 

「それで、聞きたいこととは一体?」

 

初老の男は手を組んで胸の前に起き、ミナたちの前に座ってそう聞いた。

 

ミナは一つ、うん、と頷くとそれに答える。

 

「はい……お母様が大事にされていた杏の木から採った実で作っているのですよね、この杏のチーズケーキ」

 

「そのとおりです」

 

「……その木はもしや、昔科戸駅前にあったものなのではありませんか?」

 

ミナが彼の目を見つめてそういうと、かけている老眼鏡を外して吹いた店主は、きろり、と軽く彼女を睨む。

 

「………どこでそれを?」

 

「どこで、というと非常に分けのわからない話になるのですが……」

 

ミナは瞑目して思う。

 

(こっちには魔法なんて一般にはないとされているのだから、変に聞いても怪しまれるだけだが……なんだか話したくなさそうだし、ストレートに行ってみるか!)

 

出たとこ勝負しか自分はできないのかと心のなかで苦笑して、ミナは口を開いた。

 

「―――実は」

 

そうして、今までの夢の話を。

 

今朝見た夢の話をし始める。

 

 

 

―――夢の世界だ。

 

ミナが扮している女性は、封筒から大事に大事にその写真を取り出して表面を撫ぜる。

 

白黒の涙で少し歪んだ写真に写っていたのは、黒髪で切れ長の瞳を持つ男。

 

背は中ぐらいといったところだが、痩せ気味で決して背が低い印象は与えない。

 

それは柔和な笑みを浮かべた「思い出鏡」の店主の面影を持つ若い兵士の姿だった。

 

写真の角には「昭和二十年六月」と墨で書かれている。

 

背景はどこだろうか。少なくとも地平線の遠さは日本ではないことを示していた。

 

(……運がない、というべきなのね。まさかこの時期で戦死か……航空兵だったのかしら……)

 

日本軍のことは、見知ったチハのことと他にはいくらかくらいしか知らないミナはその写真を見てそう思う。

 

杏の木と「思い出鏡」のチーズケーキ、そして店長がつながったことも、同じく。

 

「戦車の壊れた操縦桿なんて、形見にされても困るのにね……でもいいわ。戦友のあの方がいなかったら、最期の頃のあなたの姿はわからなかったんだもの」

 

封筒が入っていた箱には、折れたレバーの一部が入っていた。

 

おそらくはそれは戦車のギア切り替えのレバーだ。

 

ミナには当然のように見覚えのある、チハのそれだ。

 

(……チハたんに乗ってた戦車兵!まさか……)

 

女性の視線は杏の木に向かう。

 

―――何かが木の上に登っていたのを、確かに見た。

 

 

 

そうして現実に戻ってきた。

 

ふう、とミナは一息をつく。

 

「そんな夢を見るのです、ここ数日。そして、写真に写っていた兵士の方は貴方に風貌がよく似ていた。そして森北山で今起きている幽霊戦車の噂……何か関係があるのではないか、と調べているところなのです」

 

「それはまた……オカルトですな。それでも確かに、ここで使っている杏は駅前から移植された木から採ったものです。全量ではありませんがね」

 

真剣な顔で今までの夢の話をしたミナに、初老の男は少し苦笑してそう言った。

 

「ところで、私、何歳に見えます?」

 

肩をすくめて店主は突然そう聞いてきた。

 

面食らった二人だが、男の顔は笑っていても目は笑っていないことはわかったので真面目に答えることにする。

 

ミナは少し考えて、ルルは平然としながら答えを紡ぎだした。

 

「うーん……40~50くらいでしょうか。初老、それも字句通りの意味で40からみと初対面では思いました」

 

「彼女に同意です。見た目だけで言うなら……ですが」

 

二人がそういうと、彼はニンマリと笑う。

 

「実は私、こう見えて80近いんですよ」

 

いたずら小僧の笑みを浮かべて、男は額に指を置いて席を立つ。

 

「私の母の家系はみんなこのような若作りの人間ばかりでね。だからなのだろうか……不思議なものが見えることがあるのです」

 

額を掻き、ミナとルルを交互に見比べて、話を続ける。

 

「例えば……コスプレにしか見えないあなた方の優美で長い耳、とかね」

 

「! 看破の魔眼……?!」

 

「看破の魔眼、というのかね、これは。知りませんでした。昔から人のウソを見抜くときに便利でしてね。ただ、これのせいで信用を失ったこともあるので、最近は控えていたのですが」

 

ジリと焼けるような視線を感じて、店主の目を見れば怪しげな輝きをそれは魔力を持つものであれば淡く赤く光って見えたことだろう。

 

ミナもルルもそれにはよく見おぼえがあった。

 

赤く光る見通しの魔法、インコグニートをはじめとする偽装の術を見破る魔法の目だ。

 

「……この世界にはオカルトなど我々以外には存在しないものと思っていましたが、やはりそうではないようです。店主さん」

 

「崎見新造です。崎見とお呼びください。自己紹介が遅れましたね」

 

深刻な顔をするミナに店主は変わらず柔和な笑みを浮かべて自己紹介を行う。

 

ミナも頭を下げて、自己紹介を始めた。

 

「こちらこそ、申し訳ありません。私は水門ミナ、こちらは水門ルルです」

 

ミナの紹介に合わせて、ルルも軽く会釈をする。

 

それを見た崎見は「よろしく」と手を差し出して握手を求めた。

 

ミナは注意深く魔力を感じないかを確認すると、その手を取った。

 

「よろしくお願いします……不躾ですが、もしかすると私たちとも関係するかもしれない事件です。どうか、協力してはいただけないでしょうか」

 

握手をしながらそう言うと、崎見は「もちろん」と言って再び席に着いた。

 

「まずは私と父母についてお話いたします」

 

崎見老人は若々しいその顔に懐かしさをにじませて身の上話を始める。

 

「私の父、崎見剛は旧日本軍の戦車兵でした。しかし、1945年8月のソ連軍侵攻により戦死しました……抑留の可能性はあるのでしょうが、少なくとも父は帰ってきませんでした。命からがら逃げだした父と同じ戦車に乗っていた兵士が形見を持ってきたのは……ミナさんが夢で見た通りです。私はすでにその時母の腹にいましたが、いわゆる超過分娩というものでして、なんと2年もの間母の胎内にいたのです」

 

しゅっと慣れた手つきでマッチを擦り、タバコに火をつける。

 

匂いを嗅げば、それはタバコではなくハーブをタバコ状にしたものだとすぐに分かった。

 

「……まさか……」

 

「普通の人間ではありえないでしょう?夢の中の―――おそらくは私の母、崎見千代はどんな状態でしたか?」

 

「それが、私自身があなたのお母さまに扮しているような夢だったもので、そこらはわかんなかったです」

 

バツが悪そうなミナに紫煙を燻らせ男は笑いかける。

 

少し冷たい目になったルルは、そんな男に質問を投げかけた。

 

「御母堂は今どうしていらっしゃいますか?」

 

「―――3年前に亡くなりましたよ。100歳ちょうどで、事故にあってね。私と同じく、いやそれよりも若々しく、50かそこらにしか見えない姿で」

 

ルルの言葉に、ふっと悲しみを目元にだけ浮かべて崎見は煙を吸い込んだ。

 

「長い妊娠、やたらと童顔、長生き……ねぇ、これどう考えても……」

 

「エルフと交わった家系の特徴ですね。それも看破の魔眼を持っているということは、僕と同じダークエルフが祖先にいるとしか考えられません」

 

顔を見合わせて、そんなことを言う二人に身を乗り出すように崎見老人は顔を近づけた。

 

「ほう、そこらへん詳しく。この歳でこんなファンシーな店を経営しているものでね、ファンタジーな話は大好物なんですよ」

 

そういうと老人は立ち上がり、入口のドアを開けると手早く「臨時休業」と書かれた札を表に張り出し、素早く席へと戻ってきた。

 

「店も閉めたことですし、ゆっくりとその話を聞かせてもらいましょうかな」

 

そうしてケーキと紅茶のおかわりの用意を始める。

 

話は少し長くなりそうだった。

 

 

 

「異世界グリッチ・エッグ……本当にそんなものがあるのですねえ……」

 

ず、と老人は紅茶をすする。

 

説明は空悟にしたものとほぼ同じものだった。

 

違ったのは、目の前で魔法を使ってみせたこととエルフと只人の混血についての説明だった。

 

「森人の血が只人、つまり地球人によく似た種族の血筋に交じると、1世代目はほぼ間違いなくハーフエルフが生まれます。その後、代を重ねていくと少し長寿で若作りなだけの家系になるだけなんですが……」

 

「時々先祖帰りを起こして、エルフそのものが生まれたり、ハーフやクォーターが生まれたりするんですよ。貴方や御母堂は普通に年を取っているようですから、クォーターのようですね」

 

ルルはケーキをフォークでつつきながら続ける。

 

「その看破の魔眼はダークエルフの中でも一部の部族の力あるものが使う眼です。なぜこちらの世界に我々の世界の存在が来ているのかはわかりませんが、少なくとも貴方は我々の世界につながるもののようですね」

 

そして、エルフの妊娠は通常2年と6ヶ月、只人のおよそ3倍である。

 

ハーフやクォーターでもそれは同じなのだ、とミナは語った。

 

「なるほど……先祖がダークエルフ、ですか。それは興味深い。この出生で子供の頃は苦労しましたが、ハハ、妻に先立たれ知合も多くの方が物故した今では丈夫に生んでくれた母に感謝していますよ。これからはそれに先祖への感謝も加えませんとね」

 

老人は得心がいったように何度も頷く。

 

聞けば、その長い妊娠期間のため彼の母は家族や周囲にかなり気味悪がられたのだという。

 

また、剛の子ではないのではないか、と疑われたことすらある。

 

とは言えそれも崎見老人が成長し、兄弟のいなかった剛の面影を残す普通の人間と殆ど変わらない様を見せるようになってからは消えていった。

 

それを老人が語ると、ミナは一つ頷いて咳払いをする。

 

そしてこう言った。

 

「お母さまがダークエルフのクォーターだとすると、色々と得心が行く出来事です。順を追って説明いたしますね」

 

ミナが説明したのはこういうことだ。

 

ダークエルフとは、バグに侵された森……歪んだ森で生まれるエルフのことである。

 

小人や只人はバグに侵されると魔物になってしまう。

 

しかし精霊に近いエルフは、その存在をほとんどそのまま歪められ、黒い肌と邪神との親和性を持つダークエルフと化してしまう場合がある。

 

森そのものがバグダンジョンになり、部族そのものがダークエルフを生み出す集団になってしまった歪んだ森は多くの魔物の棲家でもある。

 

魔物たちはダークエルフにも牙をむく種が多いため、それから身を守るためもあるのだろう……魔眼……魔法の目を持つものも時折出る。

 

そして、魔眼を持つ血筋のダークエルフはその多くが―――

 

「死に至ると強い未練が呪詛となって世界に残留してしまうことがあるのです。怒らないでください。これは全くどうしようもないことなのです」

 

「僕のようになにかのきっかけで人間社会や普通のエルフたちと暮らすダークエルフもいますが、そういう穏やかな生活を送る者でも生前……心の澱になっていることが呪詛として吹き出してしまうのです……」

 

どこか申し訳無いという顔をしたミナ、そして平然としているルルを交互に見て、老人は「なるほど」とだけ口にした。

 

そうして紫煙をしばらく燻らせ、ふぅ、と煙を吐くと席を立って言葉を発した。

 

「……たしかに、幽霊戦車を呼び出すような存在があるとすれば、それは僕の母以外にはいないようですね……いいでしょう、今日は本格的に店を閉めますので、私についてきてください」

 

タバコを灰皿に押し付け老人は背を向ける。

 

「お見せしますよ。ミナさんは夢の中で見たものでしょう……母が大事にしていた木を」

 

そうしてミナたちを裏口から退店するよう促し、店のカーテンを閉め電灯を消し、最後にガスの元栓を閉めて崎見老人は裏口から出てくる。

 

いくらか疲れたような表情を見せたのは気のせいだったろうか。

 

チリン、と何かが揺れたような気がした。

 




スカイパーフェクッ!

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