異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第175話「神様の神殿へ出発だ 昔のお話Ⅳ⑧」

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「貴様……!ミナを知っているのか!?」

 

驚きと怒りをないまぜに、ミナが置いた矢筒から取り出した木芽の矢を番えながらナターシャは叫ぶ。

 

魔風の中でも朗々と響いたその声に、魔王は面白そうに『無論知っている。魔王を殺したもの故な』と盃を傾けた。

 

―――そう。

 

ミナはかつての冒険で生まれたての魔王を一体撃破していた。

 

その戦いはすでに四半世紀以上前になれど、その感覚を忘れてしまったわけではない。

 

「倍、いえそれ以上には強いわね。あの魔王よりも」

 

それでも押し通らなければならない。

 

ナターシャの夫をどうにかするためにも、必ず。

 

『当然、オレより強い魔王はいくらでもいるし、生まれてくるぞぉ!ハッハッハ!それでも倒し続けるかぁ!?』

 

「あんたがなんで私のことを知ってるかとか、魔王と魔王に繋がりがあるかとかは別の機会に調べるわ。ただ、私はあんたの吐く息が臭いから殺すだけよ。起きなさい『吹雪』!あの酔っぱらいをぶちのめすわよ!」

 

瞬間、ルルがありったけのバフを二口水晶を用いて展開した。

 

「それではミナさん、カイム殿。ご武運を。僕はナターシャ殿らとともに援護でいいですね?」

 

ミナが少年に首肯すると、少年もまた瞑目して首肯して呪文の詠唱を始める。

 

「偉大なるロジックよ。大地を覆え、大地を覆え、大地を覆え。許されぬ罪を恨むものを呼び覚ませ。白き枯れ枝よ、大地より現われよ―――サモン・スケルトン!」

 

100に及ぶ白い骨の欠片をルルは投射する。

 

その骨は総てがスケルトン・ソルジャー―――いや、その上位種であるボーン・ソルジャーと変じて立ち上がる。

 

「肉盾ならぬ骨盾です!使ってください!」

 

「さんきゅー!」

 

そうしてミナは駆け出した。

 

後ろからは―――ナターシャとラトリがルルの身体能力賦活を受けて、全力で矢を放ってきてくれている。

 

その矢の多くは鬱陶しいとばかりに魔王の起こす酒の風で吹き散らされているが、何本かに一本、ミナの木芽の矢や真銀の矢が含まれている。

 

ミナによって魔力を弾く加工がされているそれらは、風に負けずに魔王へと一矢を報いていた。

 

「どうだ!死んでしまえ魔王!我が主の苦しみの億分の一でも味わうが良い!」

 

ラトリが叫び、ナターシャが無言で矢を放つ。

 

『ほー……只人の非力でオレに刺さるとは……これはもっと飲まねばならんなぁ!』

 

自分に刺さった矢をしげしげと見つめて、魔王は哄笑を上げて酒を更に飲み干し。飲み干し。飲み下した。

 

呆れるほど、浴びるように、否、天から酒が降ってくる。

 

それは―――

 

『ぶぅはぁぁぁぁぁぁぁ!あぁ、効くなぁ!口から火が出てきそうだぁ!!』

 

「ルル!」

 

「はい!破壊と渇望の王、呑み込み食らう我らが神よ。その赤き牙を盾と変えたまえ……デス・ウォール!」

 

魔王の野郎としたことにとっさに気がついたミナが叫ぶと、すでに詠唱を完成させていたルルが死の壁を発動させた。

 

瞬間、魔王の口から吐かれた僅かな炎が周囲のアルコールに、天から降り注ぐ酒の雨に引火して―――

 

ドゴオオオウ!と轟音を発して大爆発を起こし、周囲を完全に火の海に変えた。

 

爆炎が世界を覆い、酒の雲すら吹き飛ばして―――

 

「ミナ!カイム殿!」

 

その影響が及ばないのは、聖なるバグを寄せ付けない結界の中のみ。

 

ナターシャが思わず外に出そうになりながら、ラトリに腕を掴まれた。

 

「ラトリ!」

 

「危険です!」

 

結界の目前で術を放っていたはずのルルの姿すらも爆炎に覆われて見えないのだ。

 

心配も―――絶望もしようというものだが。

 

しかし。

 

『んん~……その女の絶望はうまかったが……勇者は無事かぁ……ああ、興ざめだなぁ!』

 

爆炎が収まった時、そこにはデス・ウォールに守られ、レギンレイヴに護られ、無傷で立つ三人がいた。

 

「ミナ!カイム殿!ルル!!」

 

ナターシャが叫び、ミナが一瞬振り返る。

 

ラトリが僅かに安堵した表情を浮かべ、ルルが少しだけ呆れた顔をして―――

 

最初に動いたのはカイムであった。

 

「料理にぃつかぁねぇのに酒ぇ燃やすっちゃぁどういう了兼だわいや!!」

 

『ああ、すまないすまない。オレとしてはこれは料理のつもりだったのだ。この程度のフランベで燃えてしまうものたちではなかったのが誤算であったがなあ』

 

激高するカイムに男は戯けてそう返し、またゲラゲラと笑い出す。

 

「まだまだ小手調べってか、魔王!」

 

「吹雪」の冷気で残り火を弾き飛ばし、ミナは切っ先を魔王へと向ける。

 

魔王まではおおよそ15キュル、25~26メートルはあるであろうか。

 

今のミナであれば一足飛びにでも詰められる距離である。

 

『ふぅ~む。酒気に酔わず、フランベも躱した。そしてこの覇気……この酒の魔王の樽に漬けるには実にふさわしい獲物のようだな、お前らは!』

 

そして男は自分の周りに置かれた料理の皿―――料理が入った皿に見えるなにか―――を踏み潰しながら立ち上がった。

 

踏み潰された皿からは―――

 

『ギャァァァァァッァァァァ!!!』

 

『あああ!あああああああ!!!』

 

その皿から、怨嗟の、苦しみの、痛みにあえぐ絶叫が鳴り響く。

 

それはきっと……

 

『ああ、これかね?気にすることはないよ。酒で身を持ち崩して死んだ阿呆の魂さ。オレの贄になっていることを酒神は知らんだろうなぁ~ハハハ。気分がいい!』

 

ミナはこれ以上こいつの言葉を聞いていたくはなくなっていた。

 

「言いたいことはそれだけだな、魔王。オレが引導を渡してやる」

 

ミナは男口調で「吹雪」を左前に構えて駆け出した。

 

カイムがそれを追い、走り出しに―――柄に陶器の小瓶が括り付けられたナイフを投擲した。

 

『ほう?』

 

感嘆の声か、それとも別の感情が込められていたのか。

 

立ち上がった魔王はそのナイフを腕に刺さるがままに受けて、ニヤリと唇を歪めた。

 

その瞬間、陶器が割れて中身が魔王へとかかり―――それは周囲の炎熱によって。

 

ボン!と大きな音を立てて引火した。

 

『木精を操るドワーフかぁ……なかなかおもしろいじゃないか。ああ、そうだな面白い。おまえたちには死をくれてやるのはもったいない。オレの樽に漬けて飲んでやろう』

 

「ちぃ!やっぱぁ大して意味はねぇかぃ!」

 

魔王の言葉など無視をして、今度は何も細工をしていないナイフを投げる。

 

魔王はそれを盃を盾に受けて―――『もったいないではないか。酒がこぼれた。山人かそれでも』とカイムを指差して笑った。

 

「泥水とぁかぁんねぇもんすげ、いくらぁ零してもワイは気にせんわぁ!」

 

大上段に構えた斧で、その只人の大人の2倍はある巨躯へと斬りかかる。

 

同時にミナもまた「イァァァァァァァアァッ!!」と猿吠をあげて飛びかかった。

 

『先ほどの酒を燃やすなという言葉と矛盾してないかなぁ!?だが、ははははは!いいぞ!酒には隠し芸を出す芸者が要じゃなぁあ!』

 

その二撃を盃を手放した腕で受ける。

 

受けた腕は両断され、特にミナが斬った左腕はビシビシと絶対零度の極低音で凍結されていったが―――!

 

『おお、なかなかやるではないか。オレの腕を飛ばす山人に、おおなんと我が臓腑までも凍りつかせようと騒ぐかぁ!勇者の刃!ハッハハハハハ!』

 

その癇に障る笑いをミナは耳朶より記憶の外へと聞き流し、「吹雪」を再び振り上げて―――

 

ザン、と。

 

男を袈裟に斬り倒した。

 

「―――そのまま死ね」

 

『おお、すごいすごい。なんともオレの酔いを覚ますほどの斬撃とはなぁ。ふっふふふ』

 

―――まるで効いてはいない―――とはミナには思えなかった。

 

しかし手応えはなく、魔王はその傷をあっという間に癒やし尽くして元の姿に戻ってしまった。

 

『ふはははは!まずはこれを食らってみるが良い!』

 

魔王は―――盃の中身を大地に落とす。

 

落とされたそれはすぐにも大地に帰って―――そして大地の全てを溶かし始めた。

 

「まさか……地面を発酵させてんのか、これ!」

 

ミナが四精霊の加護によって大地に切れ込みを入れる―――入れた場所に集まった土の精霊がそこから先が醸されていくことを警告してくる。

 

即ち、それは総てを酒へと変換する魔王の術に相違ない。

 

『御名答だ、このオレの力について。ふははは、樽に浸かると良い。オレの酒になれば永遠にオレとともに酒を楽しめようとも』

 

ミナはその戯言を耳に入れて、後ろで死の壁を維持しナターシャたちを守るルルに笑いかけた。

 

「どう思う、こう言うの」

 

「僕はミナさんを―――好きになった異性は僕自身の手で絡め取りたいですが、食べてしまいたいとは思いませんのでわかりかねます」

 

大真面目に言った従者に「同感ね。しかも好きでもない男に飲まれる食われるなんて絶対にごめんだわ!」と叫んで、「吹雪」を振るう。

 

地面は一瞬凍りつくが、それだけだ。

 

発酵の力に抗えないのか、地面はより強く醸されていく。

 

「―――よし。ルル、フレアークリメイションお願い。私はフェニックスを呼び出すわ」

 

ミナはもはや周囲のアルコールの爆発など何も気にしていないと宣言し、精霊への呼びかけを始めた。

 

「いいんですか?ホーリーフィックスの中に入れば僕以外は無事にすむでしょうけども」

 

ルルはまるで自分を計算に入れていないような言葉を放ったので、ミナは「あとでオデコチョップね」と宣言して唇をへの字に曲げた。

 

「そんなひどいじゃないですか」

 

「ひどくないわ!仲間を犠牲にするのは誰かが死にっぱぐったときだけよ!」

 

ミナは怒りの声を従者にぶつけると、不死鳥の精霊への呼びかけを再開する。

 

『―――ほうほうほうほう!オレを燃やし尽くす気だな!よかろう!かかってくるがいい!いい酒肴だ!!』

 

「やかましいわ!もう少しまともなつまみと酒ぇ用意しやがれ!!不死なるもの、生死を導くもの、輪廻を司るもの、神々と精霊の橋渡しを成すもの、魂の救済者にして冒涜者、炎天を支配する翼―――」

 

魔の嘲笑を弾き飛ばすかのように、周囲の残り火が清廉な気配を立てて燃え上がり、そして火の鳥の姿を表していく。

 

その火の鳥が成長仕切り、そして従者の葬送の呪文もまた完成した。

 

「―――なんというか、まぁ―――あなたは悪趣味なのでここで燃え尽きていただけるとありがたい。世界を支配する偉大なるロジックよ。地獄の業火を呼び覚ませ。我が前のものすべてを焼き尽くし原初の姿へ葬送せよ」

 

「鋼の秘密を封ずるもの!火の鳥よ!不死鳥なりしフェニックスよ!我が前にある霊を運命の円環へ迎え給え!光は肉に、肉は光に、闇の円環を断ち切らん!!」

 

同時に、火の鳥もまた魔王を輪廻の輪へと戻さんがために羽ばたき―――甲高い鳥の詩をその嘴から響かせた。

 

「フレアー・クリメイション!」

 

「赤く赤く燃えて、天に昇れ迷えるものよ!」

 

火の玉と火の鳥が、紅蓮と化して世界を包み、魔王へと殺到する。

 

『ファ、ファファファファ―――!』

 

哄笑を撒き散らし、そして魔王は燃え尽きていく―――

 

燃え尽きて―――

 

「はぁぁぁぁぁぁ!滅びよ、魔王!!」

 

瞬間、ミナが「吹雪」を全力で振りかぶり、その体を袈裟に切り落とす。

 

切られた片方は燃え尽き、もう片方は凍りついてバラバラに砕けていく―――

 

だが。

 

『なるほど。これはまだ遊び足りないな。では、オレから最大限の援助をしてやろう―――数ヶ月ほどでいい。我が酒宴に協力してくれたまえ、お前たち』

 

これまでのことなど何もかも忘れたかのような、冷酷で残忍な声が残骸より響いた。

 

「!?」

 

『褒美として―――あの城館はオレが貰い受ける。我がリドルを解け、冒険者。酒神だけが知る酒精の秘密を我が前に持ってこよ―――さすればそこの金髪の女の伴侶も、城館も総て元に戻してやろう』

 

「てめえ、まさか―――!」

 

『さぁさぁ、オレをもっと楽しませてくれ勇者よ!ハハハハハハハハ!ファファファファファファ!』

 

くぐもった笑みが遠くなっていく。

 

ミナはカイムとルルに視線を送ると―――ルルが火傷していくのを我慢させながら全員でホーリーフィックスの範囲内へと飛び込んだ。

 

「ミナ!」

 

「話は後!全員一箇所に!捕まって!飛ばされる!!」

 

ナターシャの声にそう反応し、ミナはラトリとナターシャを掴んだ。

 

一瞬遅れて、ルルとカイムがミナの肩を掴み―――瞬時、世界は反転し―――白く染まった。

 

「これは―――転移魔法!?」

 

「そうよ!クソッタレ!!」

 

ラトリが叫ぶ。ミナも叫ぶ。

 

気がついたときには、そこは―――

 

「……ここは」

 

「―――山んうえじゃけぇのぁ。だけんども……」

 

目を開いたミナが、そして仲間たちが見たものは―――

 

それはえぐられたようになくなっている城館の跡地であった。

 

「―――ああ!?うそ、嘘でしょう……カーツ!みんな……!ああ!」

 

瞬間、ナターシャが泣き崩れ、膝を落とす。

 

ミナは―――ひとしきり泣いた彼女の前に立って、彼女の目を見た。

 

「―――まだ無事なはずよ。ほら、精霊たちが言っているわ」

 

ミナが手をかざす。

 

火の鳥の残滓が―――城館の跡地へと飛んでいって、そこで光を放った。

 

「まだあそこには生きている人がいる。この世界から見えなくなっているだけなのだわ。諦めないで、ヤツを見つけましょう」

 

ミナはそうして彼女を立ち上がらせる。

 

「ヤツがあなたの旦那をああした理由が、楽しむためだけとは思えないわ。あの踏み潰していた魂たちのように、贄にしてしまえば良いのだもの」

 

「―――そうか。カーツが何か、ヤツにとって都合の悪いことを知ってしまった、と」

 

ミナは首肯して、隣でメモを書いている少年に発言を促す。

 

「ええっと……ええ、そうですね。魔王というのは存在すればバグダンジョンの方向性を決めるのです。故に、そうそう『意味のない』行動は取らないはずです」

 

かつての自分、歪んだ森で一人過ごしていた自分がそうであったように。

 

「たぁいぇのぇ、今回もワイらぁ人質とらっちぅげ。何の宿世か因縁かぁや」

 

ハルティアに続いて、再びの大冒険の幕開けはやはり人質から始まるのだ。

 

それも、今度は―――

 

「やれやれ。国そのものよりもよほどきついわ」

 

前に魔王を倒した時は、身も知らない人々を守るための戦いで。

 

次の魔王になりかねない隣の少女のような少年との戦いは一人を助け出すための戦いで。

 

そして今度は―――

 

「やれやれ。人の家族を助けに行くだなんて、責任重大すぎなのだわ」

 

ミナはそうして少しため息をついた。

 

「あいつは僕らを徹底的に苦しめるつもりなのでしょうから、人質を殺す気はないでしょう。ただ……」

 

そこでルルは少し言いよどんだ。

 

あの領主のようにされてしまうかも知れない、と思ったからだ。

 

しかし、ミナはこう考えていた。

 

ホーリーフィックスの影響下になったあのバグダンジョンでは、そこまで大きな権能は放てない。

 

ホーリーフィックスの効果が切れるまで、城館に手出しすることは出来ないのではないか、と。

 

―――ふっと空を見上げる。

 

瞬間、まるで満天の星が降り注いでくるかのような感覚をミナは覚えた。

 

そう。神託が、降りてきたのだ。

 

「……ミナさん?」

 

「ううん。大丈夫。ナターシャ、安心して。やっぱりみんな無事よ。調和神様からのオラクルが降ってきたわ」

 

ミナはそうして調和神司祭の杖を出して、神よりの詔を口にした。

 

「聖なる結界は紡がれた。魔王なりしもの、それを潰すまでに百の昼と夜を費やさん。汝ら、酒神の神殿へ赴き酒精の秘密を受け取らん―――調和神様からのお言葉です」

 

ミナはそういって息をついた。

 

「ホーリーフィックス使っててよかった……!でなきゃなんもかもしまいだったわよ」

 

ミナはそうして額の汗を拭う。

 

調和神は彼女が生命の危険を冒すことのみを心配していたのだとわかって安心もした。

 

「―――何よりあそこであの結界を使用していただかねば、私もナターシャ様も死んでいました。ありがとうございます」

 

フラフラとしながらも立ち上がったラトリはそうして孔の方向を見やる。

 

「こうなれば調和神の託宣に従い、あの腐れ酔っぱらい魔王に一泡吹かせるしかありますまい」

 

ギリと奥歯を食いしばり、参謀は目を見開いた。

 

その様子にミナは「……まあキレるわよね。私もあのクソ魔王にキレそう。いや、キレてたわ」と益体もない言葉を紡いでいる。

 

ナターシャはそれを見て、少し笑い……「もはや神々を信じるほかあるまいな」と短刀を握りしめた。

 

「ここらで一番大きな酒神の神殿って、どこかわかる、ナターシャ?」

 

そう聞かれたナターシャはフッと笑って。

 

「それは私の実家、ボラートの街だろうな」と返答した。

 

「よっし!てがかりはそれしかないし、とりあえず行ってみよう!」

 

ミナが大声で宣言すると、それが合図となったのか、冒険者たちは―――既に危険を冒すものとなった領主夫人と参謀も―――歩き出したのであった。

 

目指すはボラートの街。

 

葡萄の産地であるという街である……

 

 

 

―――現代。

 

「というわけで、この話の続きは後でな。オレもクソ眠くなってきた」

 

傍らの火酒―――ではなくウィスキーの入ったスキットルの中身を飲み干したミナはケラケラ笑ってそう返した。

 

「ちょっと待てや。あの思わせぶりな始まりは!?気になるだろ!」

 

「ネタバレになるけど、いいんか……?」

 

ミナがそう返すと、空悟はうーんと少し唸ってから「いや、やっぱいいわ。また後で聞かせてくれ」と頭を振った。

 

彼ももうビール500ml缶を5つは開けている。

 

『私は一向にかまわんぞ。明日に備えてとっとと寝てしまうが良い』

 

夕がコップの中の日本酒を飲み干して、そう返すとミナはハープをことりと床において肩をすくめた。

 

夕もまたすぐに待機モードに入ったのか、完全に無言となる。

 

「まぁ、このダンジョンクリアしてかけるちゃんの呪いを解いた後に聞かせてやるよ」

 

「ああ、楽しみにしておくさ」

 

空悟が笑顔を返すと、少しまたうら寂しい笑顔を向けてミナはゴロンと転がった。

 

「ルル~見張りは任せた~私このまま寝るわぁ~」

 

ミナはそうしてバッグから枕を取り出して横になる。

 

―――空悟もルルも、気づいてはいた。

 

ミナが少し涙ぐんでいたことに。

 

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