異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第178話「私のこと、忘れてないかしら!!」

 

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「森人の勇者が死の王へと、我らが偉大なる調律者ディーヴァーガの名と契約において命を下す!アレをなんとかしなさい、我が同胞よ!!」

 

「心得ました、我が主よ!」

 

ミナはスターピアスをとっとと修復していなかったことを後悔しながら、ルルの封印を。

 

死の王、ノーライフキング、リッチー。

 

あらゆる死を従える闇の王、バグの申し子たるものを呼び覚ます。

 

「いい?3分よ。それ以上はあなたが―――言わなくてもわかるわね?」

 

ミナの言葉に、瞳を怪しく輝かせて眼鏡をしまった少年はニヤリと笑った。

 

「もちろん。それ以上は僕が保てなくなるかも知れません」

 

それもまた愉しからずや、と言わんばかりにルルはその暗黒の波動を燃やし始めた。

 

「おい、大丈夫なのか、アレ」

 

「三分だけ、なら……!空悟、その竜の兜、絶対に脱ぐんじゃないぞ!何があってもだ!!」

 

「……わかった」

 

必至の形相のミナに、空悟はそうとだけ言って竜の兜の庇を下ろして恋と岬の前に立つ。

 

そしてミナは恋と岬、夕にも「あなた達も、絶対空悟の傍を離れないでね!最悪、死ぬわよ!」と叫んだ。

 

夕は一瞬、死のない機械の自分もか、と言いかけたがミナの目が―――「冗談ではない」と言っているようで、彼女は深く押し黙った。

 

岬と恋もまたそれを感じたか、空悟の後ろにささっと潜り込むようにひっつく。

 

「ど、どうなるのです……」「お、おどろおどろしい魔力が集まって……これは……!」

 

二人が怯えて漏らした言葉に、ミナは「見ていればわかるわ」と短く返して、客人碎を構える。

 

「―――死よ、死の死たる死よ。遍くに終わりを告げるものよ。時のうちに朽ちしモノ、大いなる竜を蘇らせよ」

 

平坦な声音で暗黒の呪文が紡がれる。

 

『……貴様さえいれば……貴様と貴様の伴侶さえおれば……!』

 

重圧さえこもったアウステルの、意味が分からない言葉が紡がれる。

 

ルルはそれを聞かなかったことにして、呪を紡ぐ。

 

『朽ちよ、朽ちよ、朽ちよ。甦れ、甦れ、黄泉帰れ。我は死より深く、汝の王なるものぞ。目を覚まし、醒まし、冷ませ―――リボーン・ドラゴン』

 

瞬間、大地より巨大な腐食した龍が―――コラプスドラゴンにも見えるが、その異様は、偉容は全く異なる。

 

朽ちたエンシェントドラゴン―――その形は、まさに。

 

『ガドゥルではないか、あれは……』

 

鞘の中の祖母がほう、と感心したように笑う。

 

「……彼はここまでは来れませんでしたけど、意趣返しくらいはしたかったでしょうし―――」

 

ルルは疲れ切った声でそう言って、杖の柄を水晶の地面に突き刺した。

 

『―――私を捕えて何億の昼と夜を無為に過ごした、魔精霊』

 

冷たい冬の山を思わせる声音で、その所々が腐り落ちた龍はアウステルという魔精霊へと声を掛けた。

 

『その裏切り者が我が領域に入り、ここまでたどり着いた以上はもはや過ごした時間など無意味だぞ、ガドゥル!』

 

怒りの籠もったガドゥルの声を、さらなる怒声でかき消したアウステルに、ミナがいい加減にしろとばかりに叫んだ。

 

「だからその裏切り者ってなんなのよ!」

 

客人碎を片手で持ってアウステルに向け、ミナは更に叫ぶ。

 

「どこをどうしたら、一度会ったきりのあなたを私が裏切れるっていうのよ!」

 

『白々しい……帰ってこなかったのは貴様だ!故に、滅びたのだ!』

 

ミナはそれを聞いて―――

 

ふと、思いつくものがあった。

 

「あなた……一体いつの時間から来たの?」

 

『―――うぬらの使う暦で良ければ云おう―――カイネ暦3345年だ……!』

 

ミナはその言葉に――― 一瞬、愕然とした。

 

カイネ暦とはグリッチ・エッグで祈りあるもの……即ち、只人や森人、山人が一般的に使う暦である。

 

虹の帝が滅びた後に勃興した古代王国が滅びた年を紀元とするものだ。

 

そして―――ミナたちが来たのは。

 

「私、カイネ暦2999年から来たのだけど……まさか、本当に未来から来たと?」

 

恐る恐るに聞くと、アウステルは首肯する。

 

それが本当かどうかなどわからない―――魔精霊とは狂った精霊のことなのだから。

 

「ミナさん。詳しいことは倒してからでも良いでしょう。ガドゥル殿」

 

ルルが杖を掲げ、その杖が怪しく輝くとガドゥルは動き出す。

 

『さぁ、来るが良いアウステル!我に肉が戻った以上、うぬに敗れる我ではないと知れ!』

 

かつて世界を滅ぼしかねない魔王であったという炎の魔王ラギオンを撃退した力が、今やガドゥルに再び宿っていた。

 

『どう見ても我と奴が今生の別れ1回目したときよりも強く見えるのじゃが』

 

「当然ですよ。リボーン・ドラゴンは竜種の魔物の躯を生前よりも強く蘇らせる死霊術。しかも闇、バグへの耐性は特に強化されているのですから」

 

ルルが青い顔でカレーナの声に答え、ふらりとよろけてミナに体を預けた。

 

「ありがとう、ルル。無理をさせたわね」

 

ミナの言葉に封印が再び掛けられたルルはニッコリと笑った。

 

「後はガドゥル殿の意志でやつと戦ってくれます……よろしくおねがいしますね、皆さん」

 

ルルは仲間たちを見回してそういうと、目をつむる。

 

眠らない彼でも、精神を闇に、バグに染めぬようにこの大死霊術を使うには相当の消耗があったようだった。

 

『小賢しいわ!行けい!!』

 

アウステルが魔風龍を放つと、ガドゥルは―――

 

『GAAAAAAAAAHOOOOOOOOOOOOU!!!』

 

その顎から凄まじい勢いの黒い闇の冷気を放った。

 

ダークブリザードブレス。

 

その圧倒的な闇の冷気は魔風龍と拮抗し、消滅していく。

 

『完全に力を取り戻したか……!』

 

『私を捕えて門番のように扱ったこと、後悔しているかね!?』

 

『なめるなぁっ!』

 

嘲るような腐龍の叫びに、アウステルは一言吐き捨てて再び魔風を集めだす。

 

それは―――先だっての核爆発めいた精霊力の暴走を起こそうというのだ。

 

―――まずい、と思いつつもミナは呟く。

 

「ガドゥルさん、アイスドラゴンだったのね……」

 

「そんなことはどうでもいいのです!最後の魔力を注ぎ込むのですよ!」

 

「おうとも!あたいの魔力は全部岬ちゃんに預けるぜ!」

 

いつ攻撃するかをあぐねていたミナに、岬と恋が叫んだ。

 

そして紡がれるは浄化の魔法。

 

「光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――その心、支配するものから解き放ち給え!!」

 

光の向日葵が虚空に咲いて、満開となる。

 

「悪しきを、凶つを、魔に落つ前の姿へ。天の道を思い出させるのです―――!さぁお眠りなさい!アナン・レインボー・フラワー!チャージアップなのです!!」

 

その花は飛んで、ガドゥルを追い越してアウステルへと着弾した。

 

『ぬうううう!小賢しい、小賢しい、小賢しい!!』

 

花にまとわりつかれ、その魔風を霧散させられつつ―――

 

「三郎!行くぞ!」

 

「ああ!核爆発もどきなんかさせてたまるかぁぁぁぁぁ!」

 

今津鏡を納刀して走り出す空悟とそれを追うミナ。

 

ミナの俊足はすぐにも空悟を追い越して、アウステルの隙だらけの土手っ腹に客人碎が吸い込まれるように突き刺さった。

 

『ぐううううう!おのれ、おのれぇ!』

 

「空悟!こいつは全然本来の上位精霊としての力を出しきれてない!子供も同然だ!」

 

ミナはここまでの戦いで見切った。

 

タイフーンドラゴンと眷属の召喚しかこいつはやってきていない。

 

もっと小技を連発してくれば、こちらはやれることが少なくなると言うのに、だ。

 

ルルのガドゥル召喚とリボーン・ドラゴンも全く防ごうという意思を感じなかった。

 

即ち。

 

『抵抗しておるのだ!さっさと首を切れ、筋肉男!このような姿になったかつての友を我は見ていとうない!』

 

カレーナの歌うような叫びが虚空に響く。

 

『お、おのれ……!』

 

アウステルは右腕を空悟に向けて、風を放とうとして―――

 

その腕が、光の束を受けて吹き飛んだ。

 

『!?』

 

『私が居ることを忘れてもらっては困る。物理攻撃は効果が薄いようだが、殺人光線は光を束ねたもの。効くようだな』

 

夕が魔力切れて地面にへたり込んでいる恋と岬を護りながら、殺人光線を発射したのだ。

 

驚愕にアウステルの目が見開かれたところに、空悟が走りながらにして鞘から刀を閃かせる。

 

「チェストぉ!!」

 

神速の抜刀術は、そのまま魔精霊の首に半ばほど埋まり―――そこで止まる。

 

「うぬぬぬぬぬぬぬ!!」

 

『小賢しい……雑兵めが……!』

 

鞘から手を離し、両手で今津鏡を握った空悟は全力でその首を切ろうと力を込め―――

 

「私のこと、忘れてないかしら!!」

 

ミナが槍を離して、空悟の握る刀を共に握る。

 

「うおおおおおおおおおお!」「せりゃああああああああ!!」

 

親友二人が、あらん限りの膂力でその首へ埋まった刃を押し込んでいく。

 

『あぁぁぁぁぁぁっ!』

 

振り上げたもう一つの腕は―――

 

『殺人光線、照射』

 

夕が放った大出力レーザーによって焼き切られてしまった。

 

ならばと持ち上げた脚から何かが出てくる前に―――

 

ポトリ、と。

 

花が落ちるかのようにアウステルの首が落ちた。

 

血は出ない。

 

当然だ。

 

彼は精霊なのだから。

 

「や、やったか……?」

 

「……これで死なないなら、後は魔法で全部焼き尽くすだけだ……」

 

空悟はすべての力を使い果たし地面に座り込み、ミナはまだ余力があるのか立ち上がってアウステルを見た。

 

見れば、その体も頭も霧散して―――風と同じ色になっていく。

 

『……』

 

無言で、しかし恨みがましい目だけは変わらない。

 

その瞳は間違いなくミナに向けられていた。

 

「……あんた、一体何者なの?なんでかけるちゃんに……かけるちゃんの家に呪いをかけたの?」

 

ミナはガランと霧散していく身体から抜け落ちて音を立てた客人碎を拾い上げ、男の形をした精霊を見た。

 

『……よく聞きなさい、ミナ・トワイライト。漫然と時を過ごせば、君はあの世界には帰れない』

 

風そのものとなり、やがて人の形を取り戻したアウステルは―――今までとはまるで異なる青年の声でそう言った。

 

「……は?」

 

ミナが素っ頓狂な声を出して、アウステルの顔を見た。

 

『……ノトス。ようやく正気を取り戻したようじゃのう。どういうことか話してたもれ』

 

カレーナの声が響く。

 

『ああ、そうしよう。わが古き友よ―――私はノトス。風の上位精霊として存在していたものだ』

 

岬や恋、夕も近くに寄ってくるのが横目に見えた。

 

『君たちの暦で言うカイネ暦3000年頃から世界のバランスが狂い始めたのだ。それは―――』

 

ノトスが言う前に、ミナが「世界から勇者が消えたから……?」と返す。

 

『否。勇者とは伝承のとおりに人の間で生まれくるものだ。問題は―――その時の勇者では勝てぬ存在が現れたのだよ。邪神―――ドミネーターではない、肉を持った邪神が』

 

「カイネ暦3000年って……私もルルもその頃には帰っているはず……つまり、そういうこと……」

 

ミナは顔をしかめて客人碎をバッグの中にしまった。

 

「……ミナさんも僕も、邪神に敗北して戻らなかった、ということですかね」

 

ルルが聞くと、透明な男はこっくりと首を縦に振った。

 

「そうか。三郎とルルくんは向こうの世界でも最強に近い冒険者だものな。それがいなくなってしまっていたら……」

 

空悟が顎に手を当てて地面に目を落とす。

 

『戦略兵器を欠いたそちらの世界がどうなったかは想像に難くないな』

 

夕が続けると、男はため息をついて『勇者は敗れ、世界のバランスは狂い、魔王が現れ、そして世界蟲の迷宮からバグが溢れ出した。世界のすべてが覆われるまで345年。たったそれだけしかかからなかった』と首を横に振った。

 

後は泥沼の神々の大戦が始まり、総ては無に帰ったのだと言う。

 

「嘘でしょ……とは言い難いわね。たしかに、私が漫然と時を過ごし、邪神に敗れればそうもなるか……」

 

自慢ではないが、とミナは前置きをして「私とルルが万全の準備すれば、多分あっちの世界では最強だし?」と何故か疑問形で、しかもほとんどショックを受けていない様子で微笑んだ。

 

「それで、あなたは……」

 

『そう、私は……いや、いくらかの上位精霊は時間神の力を借りて過去を目指すことにした。君の手助けが可能な時間まで―――しかし』

 

透明な風の青年は俯いて『すまない』と一言漏らした。

 

『なるほど……この世界にたどり着く途中にバグに蝕まれ、魔精霊と化し、そして自らを封印したか』

 

ガドゥルが同情するような声音でそういうと、『そうなんだ……誤算も良いところだし、君を巻き込んでしまったこと―――そして』と呟くように言って押し黙る。

 

『そして、なんじゃノトス。煮え切らん物言いではないか』

 

そこまで聞いて、岬ははたと気づいたように―――

 

「あの、もしかしてかけるちゃんの家の人に、あなたなにかしたのです?」と眉をひそめて聞くのであった。

 

『……このとおり、私は完全に空間の精霊へと間違った進化をしてしまった。更には水の精霊を巻き込み、時空の精霊へとなりつつあり、現世との境界がなくなりつつあったんだ。』

 

ぐるりと周囲の水晶―――空間を見渡してノトスはため息をついた。

 

『故に現世との楔になる巫女を必要とした―――影山の家の子にはとても悪いことをしてしまった……』

 

「何したんだよ……かけるちゃんの家に」

 

恋がジト目でそう聞くと、意を決して彼は言う。

 

『上層でむくろと名乗る少女と出会ったと思う……彼女は影山家の長女の姿を取る幻影なのだ。彼女がいなければこの空間は、というより私は時空に永遠に停止してしまう―――それではもし時が再び勇者ミナ・トワイライトと私を結びつけることを期待できなくなってしまう―――そのための巫女だった。ガドゥルもまた、彼女を守るために取り込んだ存在なのだ』

 

ノトスはやってはならないことをした、とガドゥルに頭を下げて謝った。

 

『解放してくれるというのなら私は何も構わぬ。むくろはどうなる?』

 

ガドゥルはなるべく感情を交えぬようにそう聞く。

 

するとノトスは『―――あの娘は歴代の影山家の長女の魔力の一部だ。それは今の影山家の長女へと還元されるだろう。何、この世界の存在はほとんどが魔法も精霊術も持たないが故、ホトンド影響は……』と答え。

 

「やべえ!?やべえぞそれ!!」とミナが大声で叫んだ。

 

「あー、おそらくあの大魔法を使えた理由はそれですね。かけるさんが魔法少女になったことで魔力が漏れたんですかね」

 

ルルがふむ、と顎に手を当てて考察し「とっとと戻りましょう。何が起きるかわからない」と微笑んだ。

 

「え、え、どういうこと?」

 

「むくろちゃんが―――」

 

『そう。ボクがあの子と一つになって、ようやくあの子に会うことができるよね』

 

戸惑う恋に説明しようとするミナの目の前に、ふわりと羽のようにその少女は降り立った。

 

『むくろ!』

 

『今までありがとうね、ガドゥル。ボク、そろそろいなくなっちゃうみたいだ。でもね、安心して。ボクの記憶、ちょっとだけかけるに残せると思うから……』

 

むくろがニコニコ笑いながらガドゥルへと声をかける。

 

しかし、それは―――

 

「それが不味いって言ってるのよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

叫んだのはミナである。

 

当然だ。

 

一部とは言え、この空間で無限に近い時を過ごしたむくろの記憶がかけるに残されるというのは、如何にも不味すぎる。

 

精神が崩壊するとは言わないが、根本から変わってしまうことすら考えられた。

 

『だいじょーぶだいじょーぶ。一回止めればどうにかなるから。ボクだってなんも考えてないわけじゃないんだよ?』

 

「考えてるうちに入らねえええ!!ちょっとまって、ガドゥルさんなんか言ってあげて!?」

 

『私からは特に……ルル殿、私はあなたの傘下に入ろう。いつでも呼び出してくれて構わぬよ』

 

叫ぶミナに冷静なガドゥルは苦笑しつつそう言って、その体は徐々に崩れ始めていた。

 

『さよなら、ガドゥル……ボクがかけるになっちゃっても、忘れないよ……』

 

『ああ、さらばだ……』

 

そうして何やらいい雰囲気で二人は徐々に消滅していく。

 

「待て!待って!?それでいいの、むくろちゃん!?かけるちゃんに会うつってたじゃない!?」

 

「そうなのです!一つになるのと会うのは違うことじゃないですか!」

 

慌てるミナと切ない顔で叫ぶ岬の声をよそに、『なんとなくわかってたけど、まぁいいかなって。外で遊べるのは同じことだし』とむくろは意に介さない。

 

「あー!消えるな!ヤバイ!まずい!!」

 

ミナの叫びも虚しく、二人はいい笑顔で消えていく。

 

消えて―――ミナは「ノトス様!まだ空間の精霊の権能は持ってますか!?持ってますよね!?私達をかけるちゃんのところに飛ばしてください!!」と大音声を上げた。

 

『わ、わかった……では、最後に。なんだかなし崩しになってしまったが、私以外にも君にとっての未来から上位精霊が3人やってきているはずだ。魔精霊と化している確率は高いが倒せば協力してもらえるだろう。私も君と契約しよう―――空間の精霊として』

 

そしてノトスもまた消えていく。

 

『……珍しいものを持っているな、そこの青年』

 

彼が最後に声を掛けたのは空悟だった。

 

「この兜かい?研究所の地下のバグダンジョンで見つけたのさ」

 

空悟はそう言って兜を脱いだ。

 

『……それは確かに遠い昔に失われた勇者の兜。大事にすると良い。君に力を与えてくれることは疑いない……』

 

そうしてほとんど薄れたノトス、そして消えゆくガドゥルへとカレーナが声を掛けた。

 

『ま、これで我ら揃って孫とその従者の眷属みたいなもんになったわけだ。またいずれ会おうぞ』

 

そのあっけらかんとした言葉に精霊と龍は苦笑して消滅していく。

 

同時に、むくろもまた消えていき―――

 

『あ、やべ。なんかボクロボットの中にいる』

 

と、不穏な言葉を残して完全に消滅したのであった。

 

ミナと夕はその言葉に青くなり―――その瞬間黄昏の傭兵団は全員、ノトスの残した魔力によって地上へ、かけるのもとへと転移したのであった。

 

 

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