異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第190話 「……思い知らせてやる」

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次のフロアにもグレムリンが大量に発生していた。

 

―――中には翼の生えたサメに乗っている個体もいる。

 

「気をつけて!フライングシャークよ!」

 

『……B級の三流映画に出てきそうな造形だな?』

 

夕がため息をつきながら、その腕の機関銃で獣たちを薙ぎ払っていく。

 

ミナは苦笑して「確かに……!でもアレは外骨格を持ってる、サメに似てるだけの哺乳類みたいななにかよ!因みに食べられない!」と注意した。

 

「フカヒレ取り放題、とはいかんな。いやマジでア○イラムのサメ映画に出てきそうな絵面だな、これ!」

 

『そうだな……まぁ気にすることもあるまい』

 

空悟と廻も射撃を開始し、グレムリンは次々と撃ち落とされていく。

 

魔力をあまり消費しないためにも、ここは三人に任せておこうとミナは弓を引き絞り、ルルはスリングを取り出して同じように射撃をする。

 

たまに肉薄する小悪魔は―――

 

「フレアスタイルのあたしと肉弾戦しましょうですよ!とぉおぉりゃぁぁっ!!」

 

最近は空悟や廻に空手や柔道の指導を受けている岬が見事な前蹴りで小悪魔の頭を粉砕した。

 

そう、岬が全て薙ぎ払っていたのであった。

 

『ほぼ敵ではないが……私達でも不規則性流体が検知できる、即ちバグダンジョンと殆ど変わらない状態になってきたぞ』

 

「夕ちゃん、自衛隊基地にグレムリンなんか入ったらどうなると思う?」

 

『軍人が死ぬな。それどころか、車両や通信網を乗っ取られれば死ぬどこの被害ではないだろう』

 

ミナの言葉に夕はこともなげに返して、『やはり不退転で行くほかないか』と多少諦めたように、今度は殺人光線を大挙するサメに向けて放った。

 

数分後、既にその場には黄昏の傭兵団しかおらず、グレムリンは全て溶け消え、空飛ぶサメたちが屍を晒すのみ。

 

「どんどん行くわよ!」

 

進めば進むほどバグの気配が色濃くなっていく。

 

細い通路でつながった巣穴が続いていく。

 

『事前に上空から走査しておいて正解だったな。バグによって多少の観測の歪みはあるが、今の所順調と言える』

 

脚部ロケットを発射し、廻はそう言うと突撃してきたサメの鼻っ柱を鉄拳で止め、そのまま掴んでジャイアントスイングを行い壁に叩きつけた。

 

「細かい部分は自分らで探さないといけないけどねー」

 

『ヒィッ!?』

 

軽口を叩きながら金剛石の長剣でグレムリンの放った電撃の魔法を叩き切ったミナに、グレムリンが悲鳴を上げる。

 

「このフロアは魔法使える個体が多いようね!グレムリン・メイジども!私にその程度の電撃は効かないぞ!」

 

ミナはそう威圧して、ポケットから瓶を取り出して投げた。

 

中身は―――

 

ミナがパチン、と指を鳴らすとそれは液体を解き放ち、そして爆ぜた。

 

「……あれ、もしかして燃料アルコールか?」

 

「ああ、そうだぜ。あぶねーけど、結構簡易的な爆弾としちゃぁ優秀なんだ……火の精霊をエンチャントした火打ち石を仕込んでるから、指一つであのとおりだ」

 

中に入れたものが外へ一切影響しない無限のバッグがあるからできる戦術である。

 

かつて彼女の吟遊詩人、斥候としての師匠であるカイムも似たようなものを持っていたが、あくまで誘爆を期待したものであった。

 

そのため無限のバッグなしでも問題はなかったが、これは一歩間違えば封入された火の精霊が癇癪を起こして意図しない爆発を起こしかねないものである。

 

「まぁ、そんなヘマするほどこの手の精霊術の制御は下手じゃねーから安心してくれ!」

 

またポイポイと燃料アルコール……つまりメタノールの詰まった牛乳瓶を投げる。

 

もちろんミナ本人が魔法を使ったほうが威力は有利なのだが……

 

バグに侵されてもいないグレムリンごときに魔法を使ってももったいない、というものであった。

 

コストという意味では……まぁ現金はかかっていたが、大して問題はない。

 

半分は使ってみたかった、というものでもある。

 

向こうの世界は木精は高かったのだ。

 

「うーん、間違いなく上で使えば犯罪だが……まあええか……」

 

空悟は諦めて、炎に包まれるグレムリンたちへと一〇〇式機関短銃を向けて制圧する。

 

沈黙したグレムリンたちを無視して、ミナたちは更に奥へ……

 

そこには。

 

「……階段ね」

 

「階段なのです」

 

ミナと岬が顔を突き合わせてそう言うと、夕が『上空からの走査情報にはない物体だな。おそらくは不規則性流体によるもの』と警戒を顕にする。

 

「行ってみますか」「行ってみましょう」

 

主従は顔を見合わせてそう言うと、仲間たちを振り返る。

 

皆そのつもりだ、とばかりに視線を返してきて……ミナは階段をみやって一歩踏み出しダンジョンと化している地下へと踏み入っていった。

 

 

 

一方その頃―――

 

「まだ見つからんのか」

 

珍しくイェカが超然的な態度を崩して、脚を組みこめかみを人差し指で押さえて苛立ちを隠せぬかのようにひざまずく少女へ声を投げかけた。

 

声の調子は穏やかそのものだが、その表情や態度が彼女が苛立っていることを示していた。

 

「は……おそらくは化物共が突入した場所。この近くの自衛隊基地地下にいるものと」

 

青髪の魔法少女マコは、声の調子で怯えを悟られぬよう慎重にそう答えて、面を上げた。

 

「いかが致しますか?」

 

「……化物共との接触は不安だが……仕方があるまい。我がスーパー・マジカル・ガール・ネットワークの人員を拉致し、あまつさえインターネット上の破壊工作に利用するなど言語道断の所業だ」

 

不本意ながら動かざるを得ないだろう、とイェカは唇をへの字に歪めて頬杖をついた。

 

―――年相応の女性のように。

 

「承知いたしました。突入するのは、私とメグミ……でよろしいですか?」

 

「ああ、ショウコも連れて行け。あの子の得意な風の魔法は、地下で探索を行うには必要でしょう」

 

マコの質問に即答し、イェカは玉座から立ち上がる。

 

「……『改の会』、か。最後にクロキが送ってきた思考パターンにあった名だ。我々以外にも超常の力……或いは超科学か。扱う輩がいるということは許せぬ」

 

イェカは怒りも顕にそう言って、喫茶店側の入り口へと消えていった。

 

「まさかあの子が拉致されるなんて」

 

マコもまた怒りのままに立ち上がる。

 

……2週間近く前のことだ。

 

イェカの喫茶店の広告がおかしなことになっていることを知った魔法少女たちはそれを調査していたのだが、その最中にクロキが行方をくらませてしまったのだ。

 

彼女が通う高校の帰り道で……

 

『何者かと交戦中』『なんだと?!改の会!?』などいくつかの思念をイェカへと送った後に、ぷっつりと連絡は途切れた。

 

以降、連絡どころか目撃情報すらない。

 

クロキは陰気で短気で、ある意味ではメグミよりも考えなしのため、マコは実に心配であった。

 

―――幸いだったのは、曲がりなりにも最後に連絡を送ってきてくれたおかげで、イェカがクロキの通っている高校や彼女の家族へとカバーストーリーを届けることができた、ということだけだ。

 

「……思い知らせてやる」

 

マコは怒りも顕にアジトから出ていったのであった。

 

 

 

―――そして。

 

遡ること2週間ほど前―――神森市郊外地下。

 

「なんですって?午来が……?実験中の空間流体情報欺瞞実験の途中に?」

 

そう、改の会の技術将校である牛込が目の前の影に聞き返していた。

 

「ああ……突如として連絡が取れなくなった。改造体である彼奴がこちらからの強制呼び出しにも応じぬ」

 

日本刀を佩いた白づくめの軍服……旧海軍の第二種軍装によく似た軍服を着た―――誰が見ても少女と見紛うであろう女が、その見た目にそぐわぬ低い声で牛込に報告をしていた。

 

「……私の技術は完璧とは言い難いですが、そこまで信頼性が低いものというわけでもない……なのに、それということは……?」

 

顎に手を当てて思案する彼に、少女は「反乱かとも思ったのだが、そうとは言わぬ。何しろ」と言い掛けて、牛込に「彼だけではなく我々はすべて、改の会への反逆を企てれば精神を破壊する致命回路が埋め込まれている。たとえ破壊しようと、機能停止しようとそれは同じ。瞬時に致命回路内の電流が脳神経に致命的な損傷をもたらす……のですが」と一気に言って嘆息した。

 

「これは十中八九、何者かに拘束されましたね。電波も届かない場所にいるのでしょう」

 

牛込は再び深く嘆息し、肩をすくめて「……鷹妃さん。申し訳ないが、これはたいへんいけないことです。御老公と閣下への報告はお願いしても良いかねぇ?」と女の顔を見る。

 

「……良かろう。だが、失敗するなよ。こんなことで露見するのなら、否、露見が確定的になれば……」

 

「もちろん。最初の作戦を前倒しにしますよ」

 

鷹妃と呼ばれた少女なのかそれとももっと違うものなのかわからない女は、牛込の言葉に満足して後ろを向く。

 

「全ては我が国のため」「ええ、美しき大八州のために」

 

女は踵を返して歩き去っていき、牛込は「やれやれ……午来にも困ったもんだ」と机のキーボードやコンソールを忙しくいじり始めた。

 

「ささっと捜索してしまわねばねぇ」

 

しかし―――その言葉も虚しく午来がそれから2週間見つかることはなかった……

 

 

 

―――闇の中で。

 

「踊れ、踊れ、踊れ……この世界に混沌をもたらさんがために」

 

黒い女はその闇の中で楽しげにステップを踏む。

 

「全ては復讐のため」

 

「全ては歓喜のため」

 

「全ては終末のため」

 

「全ては開闢のため」

 

ステップを一つ一つ丁寧に踏みながら、女の脚は魔法陣を描いていく。

 

「―――それじゃあ、勇者さん。あ~そび~ましょ~~♪」

 

女はどこまで楽しげにそう言って、闇に消えていった。

 

闇に残された魔法陣は、怪しく、そして美しく煌めいていた……

 

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