異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか 作:大回転スカイミサイル
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―――その空間には、先程倒したはずの午来と、そして。
「……クロキとかいう魔法少女ではないですか」
岬が杖を向けながらそういった先には、磔にされているクロキ。
そして半壊し、同じように磔にされている午来がいた。
「これは……」
「あーッ!見つけた!クロキおねーちゃん!!」
ミナがそういった瞬間に、後ろから黄色い声が炸裂する。
振り向けば翠髪の幼女と、ピンク髪、そして青髪の魔法少女がいた。
「……お久しぶり。だいぶ修行したみたいね。気配隠しうまくなったじゃない」
ミナが一瞬だけ言葉を濁らせて、しかしすぐにいつもどおりにメグミに声をかける。
メグミは一瞬だけ嫌そうな顔をして、「うざい!馴れ馴れしく話しかけんな!」と叫んでしまう。
『金髪女が馴れ馴れしいことは認めよう。だが、問題はそこじゃない。なぜここに貴様らがいる?』と夕は腕部機関砲を少女たちに向けて睨めつけた。
「……もちろん、そこにいる我等の仲間を回収するためだ。そもそも彼女が捕まったのは貴様らのせいだ」
静かにマコが口を開く。
「私はマコ。メグミとショウコの仲間だ。我等が首領が貴様らの働く店の広告に妙な魔法が掛けられていると見抜き、その調査を行っていたのだよ」
「なお、おめーらの店がどこにあるか言わなくて、私とショウコがてめーらの店に行く羽目になったのもこいつのせいだ」
メグミが乱暴な口調でそうマコの脇を肘で突っついた。
「やかましい。大した問題じゃないだろう……そしてこっちはオリジナルは知ってるな?」
「名前は知らないのです」
岬が警戒しつつそう答えると、「ショウコだよッ!よくもあんときは縛り上げてくれてぇ!」と岬を指差してプリプリと怒り出す。
岬はそれを見て「いや、完全にこっちをあの虫の怪物にけしかけようとしたくせに何言ってるんですか、あなたは……」と肩をすくめてフッと笑った。
その様子にショウコはムキーッ!と吠えて食ってかかろうとするとが、マコが身体で遮って止める。
「不用意に奴らと戦闘するなとイェカ様に言われているだろう」と続けると、ショウコは「う……」とうめきを漏らして後ずさった。
「……で、仲間を取り戻しに来たってわけ。まぁ、だったら邪魔する理由はないわね」
ミナがそうして後ろを振り向く。
もちろん油断はしていない。
杖から手を離してはいないし、殺気は前と後ろ両方へと向けている。
「……とはいえこれどうするかな……あの拘束、どう考えても普通なものじゃないわねえ」
ミナが少しだけ暗澹とした気持ちでそう言うと、ルルが「まぁ手はありますよ。ホーリーフィックスはやりすぎとしても、岬さんがどうにかできると思います」と答えた。
「全部浄化しちゃう、ってことね?」
「そうです。恋さんがいないので魔力量が足りないというのはあると思いますが、どうやらブースターになれる方々が来てくれましたし」
ニタリ、と表現するのが正しいであろう笑みを浮かべてルルは後ろを振り向いた。
「……ふふふ、何を言いたいかはわかりますね?」
有無を言わさず従わせる、魔力の籠もった瞳を見て三人の魔法少女は一様に唇の中で小さな悲鳴を上げる。
「……この俺の尊敬すべき親友とその相棒は、冗談は言わないから言うこと聞いたほうがいいと思うぞ……」
『人命がかかっている。協力を要請する』
空悟と廻がそう怯える三人に声をかけると、まず最初に口を開いたのはメグミだった。
「だ、だったら!あの老人ホームに掛けた魔法を解きなよ!!」
そう叫ぶように言ってミナを睨めつけると、ミナは「……解いたら、あのホームで死人が出るから駄目」とにべもなく返した。
「……!?」
「あそこにはそこに磔になってる巨人が所属している団体にとって邪魔な人が入居してるのよ。だから、あの結界を解けばその人が狙われるわ」
ミナがしれっと返すと、メグミは複雑な表情になって此方を更に睨めつけてくる。
「チッ……!」と舌打ちを一つ返してメグミは沈黙する。
ミナはあえて彼女に何があるかは聞きはしなかったが、概ねは察していた。
彼女は善良な人間というわけではないだろうが、善良ではない人間が家族を思わないということもないだろう。
関係のない人間がいくら死んでも気にする質ではない、というのも空悟や自分とメグミが接触したときの感じからわかる。
即ち、少し飛躍しているかも知れないが、彼女はおそらくは十瑚元議員と関係がある人間なのだ、とミナは考え、そこで思考を中断した。
瞬間、ぼとり、と。
ぼとりと何かが磔にされているクロキ、午来からこぼれ落ちた。
ぐずぐずと不気味に変じ、やがてそれは先程の毛玉に覆われた午来、そして同じく毛玉に覆われて獣人めいた姿になったクロキとなる。
「―――!?」
「クロキ……これは一体……」
メグミが絶句し、マコが疑問を呈し、そしてショウコは怯えてマコのか下へと隠れ……
「……やっぱりな。当人と同じ記憶を持つ分身か。おそらくは存在そのもののコピーに近い……」
ミナがそうして、生まれてきた分身へと祖母の剣ではなく客人碎を取り出して向けた。
「あいつらは岬以外で相手をするから、あなたはあの二人に魔法をかけて助けてあげて」
ミナの言葉に岬がこくりと肯んずると、「OK。メグミとマコとショウコだっけ?あんたらもちゃんと協力しなさいよ」とミナが念を押してから毛玉の怪物へと踊りかかっていった。
「……さて、魔力をあたしに分けてほしいのですが……そんなに睨まれるとあたし困っちゃうのです」
敵の魔法少女三人がジト目でこちらを睨めつけてくるので、岬は久しぶりにヘラっと嫌な笑みを浮かべて一歩後ずさった。
「オリジナル……!」
マコが一歩下がった岬を追いかけるように一歩前に出た。
「業腹だが……われらが主はお前への協力を認めた……!」
絞り出すような怒りを込めながらも、少女はそうして岬へと憎しみをぶつけてくる。
岬にはどうしてそんな憎しみをぶつけられるかはわからないが、それでも彼女が自分を憎んでいることだけはひしひしと伝わってきた。
それはもちろん後ろの二人もそうで。
岬は思わず口を開いた。
「……オリジナル、というのはなんとなくわかります。虹の欠片はあたしの体から出たものなのです。でも、あなた方に憎まれるようなことをした覚えはないのですよ」
不幸から誰かが救われる一助になったのであれば、それはそれで良いと岬は思っている。
彼女らも、そうなのだ、とは思うが……しかし。
岬の中には少しだけ疑念があった。
確かにヒトコシノミコトという女神は幸運の神なのだろう。
しかし、幸運とは糾える縄のようなものだ。
―――その心にほころびがあったのであれば、それは幸運によって救われたことにはならない。
心持ち一つで不運とも思えよう。
おせっかい、余計なお世話とも思えることもあるだろう。
それが岬には不安だった。
だから、そのようなことを聞いてみた。
聞くしかなかったのである。
「……その顔はわかっているようだな」
マコはフッと一瞬表情を崩して、目をそらす。
「それが余人にとっては幸運な出来事であっても、そう思えないものもいるということだ。そして私やメグミ、ここにいるショウコはそのたぐいの人間さ」
マコが自嘲気味にそうつぶやくと、メグミとショウコも嫌な思い出を思い返してしまったのか、目を伏せた。
「もちろん我々の組織には、あそこにいるクロキや航空機を操るチカを始めそうでないものもいる……だが、我々3人は齎されたそれを幸運と思えなかったし、我等が主に出会うまではこの力を呪っていたとも」
やっぱりか、と岬は思う。
とはいえ、ヒトコシノミコトを恨むつもりもない。
ただただ彼女らには巡り合わせが悪かったのだな、と思うばかりである。
しかし、たった半年なのに彼女らの首領、つまりイェカはミナの話を聞く限りは相当な強者である。
あの時、自分の体から生まれた何十何百、否、踏んで転んでしまう人がたくさん出るほどにバラ撒かれたあの飴玉は……誰が回収したのか。
まさかとは思いつつ、しかし聞かざるを得ない。
「……もしやあなた方の首領さん、100とか200とか持ってるわけではありませんよね、虹の欠片……」
恐る恐るそう聞いてみると、マコはすっと目をそらしてしまい。
「えっ?えっ!?」
岬がメグミとショウコを見ると、ふたりとも目をそらしてしまう。
―――これはヤバイのでは?
岬は内心でこう思い、もしかしてその首領は冒険者現象のことを知っているかも知れないとげんなりとして。
「……わかったのです。とりあえず魔力は貸してもらうのですよ。あたしの背中に触れてくださいなのです」
はぁ、と嘆息して岬はクロキの方を見て、魔法少女たちに背を向けた。
三人は数瞬逡巡すると、そっと岬の背中に手を触れる。
「光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――」
岬の詠唱が始まった。
そして、毛玉の怪物と戦うミナたちは―――
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