異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第197話「ルル!」「はい!」

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まずはとばかりに噴進魚雷が火を噴き、続いて廻と共に全速力で吶喊する。

 

その速度は瞬間的に時速500㎞を超えるものだ。

 

しかし。

 

『うがぁッ♪』

 

肥大化した獣は楽しそうにその鉄拳を爪で受け止めてニタリと笑った。

 

『推定『戦略兵器の魔王』の三倍以上の戦力値と判定』

 

『殺人光線照射開始!』

 

二人はそのまま受け止めている爪へと向けて殺人光線を照射する。

 

しかし……それもまた当然のように彼女の目の前に現れた黒い偏光板の様な物であらぬ方向へ曲がって虚空に消えていった。

 

『―――重力による偏光だと!?』

 

腕部機関砲を食らわせながら後退する廻はそう叫ぶ。

 

そして夕も交代したことを確認すると、その巨大な獣は腕を天に掲げて―――

 

「……星と重力の精霊……やっぱりメテオ使うんじゃねえか!」

 

空悟が叫んで、竜の兜に力を入れる。

 

「ルル!」「はい!」

 

「世界を調律する我らが祭神よ!大いなる流転に生まれし渦を我らが鎧として与え給え!調和とは即ち世界なり!ホーリー・ウォール!」

 

「破壊と渇望の王、呑み込み食らう我らが神よ。その赤き牙を盾と変えたまえ……デス・ウォール!」

 

二人がそれぞれが唱えられる魔法・物理防御魔法を唱えると岬もまたマジカル・プロテクトを唱えた。

 

「光よ!肉に還り壁となれ!マジカル・プロテクト!!」

 

廻、夕も同じく電磁防壁を展開し……すぐに虚空から―――

 

『ウガァァァァァァァン!』

 

獣の咆哮とともに、バハムート……否、魔精霊ベヒモスの目が光る。

 

やはりここは彼女が作り出した異空間なのであろう。

 

虚空から数メートルはある隕石が7つも地上に落ちてきた。

 

「やっぱりメテオストームか!気張れよルル!」「はい!」

 

ミナとルルはそれぞれの得物に力を込め、岬もまた「うわぁぁぁぁぁ!!」と叫びながら杖に全力を込める。

 

『最大出力』『了解』

 

「くそっったれ!!」

 

―――その隕石は、寸分違わず防壁へと衝突し、それを削っていく。

 

一つ、二つと着弾していくごとに壁は削られ、一撃ごとに防御が削られていく。

 

その威力は、もはや核兵器と変わらないほどになっていく。

 

「くそおおおおおお!!」「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

絶叫、轟音、爆炎が空間に轟く。

 

『ウガア!』

 

その間にもベヒモスは土の杭を飛ばしてくるが、これを防ぐのは。

 

「チェストオオオオオオオ!!」

 

今津鏡を手に取る空悟である。

 

杭を七つ耐えしのいだ時、隕石もまた最後の一つが着弾する。

 

―――七つ目をしのぎきった時、ホーリー・ウォールもデス・ウォールも砕かれ、かろうじてマジカル・プロテクトで最後の衝突は食い止められた。

 

「よしっ!耐えきった!!」

 

ミナがそのまま客人碎を掲げ、ベヒモスを睨めつけて魔法を唱え始める。

 

「今度はこっちの番!世界を支配する偉大なるロジックよ。大気の法則を書き換えよ―――水の素、呼吸の素、そのいくつかを融合せしめ、致命の破壊を風と成せ!フュージョン・エクスプロード!!」

 

「世界を支配する偉大なるロジックよ。星の光を星海の彼方より降らせ爪牙と成せ。光とは波なり、波とは熱なり、熱こそが世界を動かす論理故に。ブライトネス・ファング!!」

 

放射線を伴わない核爆発と、そして光そのもので作られた無数の牙が魔精霊を襲った。

 

それらは確かに彼女を巻き込み、爆裂し、突き刺さる。

 

だが、見るが良い。

 

成長した魔王と同等である地に棲むものベヒモスは―――

 

『ウガハハハッ!!』

 

野太い獣の声と年若い女性の声が入り混じった声で獣は笑う。

 

それでは通してやることはできぬ、とばかりに。

 

「空悟!やれ!」「おう!」

 

そうして見れば、空悟は両脇にマシンガンらしきものを抱えてそれの射撃を始めた。

 

―――それは鉛に精霊封じのエンチャントを掛けた専用弾を発射する薺川博士謹製の重機関銃である。

 

M2重機関銃を元にチューンアップしたと思われるそれは、おそらく地球人類が両脇に一挺ずつ抱えて使うようには出来ていない。

 

実際に、冒険者現象で強化された空悟でも地面に足が徐々にめり込んで、後ろに下がっていくのがわかるほどの威力。

 

口径こそ12.7mmだが、実態は30mm機関砲にも匹敵するものであろう。

 

『ぬ、ぐがぁぁ!!』

 

精霊力を封じる鉛と同じくそれを封じる錬金術による属性付与。

 

二重の精霊封じはよく効いたようで、廻と夕の超合金の鉄拳を防いだベヒモスの爪ですらもバキバキと折れていく。

 

折れた先から再生していくことなど気にせず、空悟は数千発に及ぶ銃弾を撃ち尽くさんばかりに銃撃を続ける。

 

「おおおおおおおおおおっ!」『がぁぁぁぁぁあぁっ!!』

 

この重機関銃の発射速度は毎分800発ほど。

 

持ってきた銃弾はおよそ5000発に及ぶ。

 

5~6分はこの攻防は続く。

 

ならばやるべきことは一つである。

 

「今のうちに態勢を立て直す!岬、レインボーフラワーの準備!廻さん、夕ちゃんは私と一緒に格闘戦!ルル!空悟の回復と援護!!」

 

メテオストーム、隕石召喚が使えたということ、そして彼女が長年地震を起こさないように力を制御しようとしていたことを考えれば、次にやらかしてくるのは間違いなく―――

 

ミナはそこまで考えて、ベヒモスの後ろ足の筋肉―――とよんで良いものかは不明だが、とにかく後ろ足が不自然な変形を起こしていることに気付いた。

 

それは夕も同じだったようで、ミナに『側面から射撃で足を崩そう』と提案してきた。

 

「了解!んじゃやるわよ!!」

 

ミナは対大型魔獣用の魔弓を取り出し、ベヒモスの右側面へ、夕は左側面へと向かう。

 

万一にも空悟の弾を食らってしまわないように十分に距離を取ってである。

 

ミナが無言でミスリルの矢を放ち、同じく夕も腕部機関砲と噴進魚雷を放った。

 

それは正しくベヒモスの太ももに両者着弾するが……

 

『がぁぁぁぁぁあぁっ!!』

 

その隆起した足にはなんの損傷もなかった。

 

「くそー!なんて硬いのかしら!」

 

ミナがそう言って、フィジカルエンチャントとシャープウェポンを自分に掛け、ルルは夕に同じくシャープウェポンとファイアウェポンをかける。

 

それで同じことをすれば、なんとか損傷を与えられたものの、焼け石に水といった程度のダメージであった。

 

「よーし……こうなったらフェンリルを呼んでぶちかましちゃるぜ!!」

 

ニタリ、と笑って今度はおそらくは氷の力を込められたと思われる青い矢を取り出してミナはそれを弓に番えた。

 

『がぁ!?』

 

ミナの言葉に危機感を覚えたのか、それを防ぐことを考えたのか、ベヒモスは此方を向いて……

 

爆炎が夕のいる側に発生した。

 

『ぬぎゃあ!!』

 

『悪いが、もうひとり居るんだ』『やるぞ!』

 

廻が加勢し、夕とともに射撃を開始する。

 

「ミナちゃん!撃てますです!」

 

「そのままやっちゃって!」

 

岬の声に、ミナがレインボーフラワーを射つように指示した。

 

その声に反応して空悟が叫ぶ。

 

「うおおおおおお!残弾後1000くらいだぞぉ!!」

 

即ち、足止めは後1分程度。

 

ならば。

 

「氷原を駆けるもの。雪の乙女を従えし氷の魔狼。厳しき凍てつく蒼き孤狼フェンリルよ―――」

 

ミナは無限のバッグから、フェンリルロッドを取り出し、最大の力でロード・フォウ・フェンリルを撃たんと精霊語を語る。

 

「汝が牙を我が牙に、汝が視線を我が鏑矢へ、血も凍る畏れと不条理なる死を与えたまえ―――」

 

番えた青い弓が氷を纏い、氷の孤狼の力へと染まっていく。

 

「光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――その心、支配するものから解き放ち給え悪しきを、凶つを、魔に落つ前の姿へ。天の道を思い出させるのです―――!」

 

岬の呪文も完成する。

 

後はそれを放つだけだ。

 

「全てよ凍てつけ!!」

 

「さぁ、お眠りなさい!アナン・レインボー・フラワー!チャージアップなのです!!」

 

その二つと同時に廻と夕の武装もまた全力で放たれ―――

 

ルルが最後に。

 

「世界を支配する偉大なるロジックよ。地獄の業火を呼び覚ませ。我が前のものすべてを焼き尽くし原初の姿へ葬送せよ。フレアー・クリメイション!!」

 

葬送の魔法を唱える。

 

六重の強力な攻撃が―――彼女に突き刺さっていく。

 

だが。

 

 

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