異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第203話「おおっ!?これは一体……?」

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「四階梯を支配する方法……ふふふふ、あははははっ!なるほどねぇ、うふふふっ♪」

 

黒い女はなんとも愉快に笑い始めた。

 

何故笑うのか、ミナにはよくわかった。

 

「そう何故支配の邪神が、形なき幸運の女神を封じられていたか、その秘密に私はたどり着いている―――でなければあの糞野郎を滅ぼせるはずがないでしょうが」

 

作り造り創り成す四階梯。

 

世界を創造するその理すらも、支配と凍結の邪神ドミネーターはある程度操ることが出来ていた。

 

故に、その戦いではあらゆる存在を抹消する破邪滅神の力、勇者の武具がなければ太刀打ちは不可能であったのだ。

 

ミナはその術を編むことには成功していたが、使うには能わなかった。

 

なぜならグリッチ・エッグでも四階梯を成す可能性があったのは四つの精霊王……精霊を超えたものとも言って良い理論上存在が予想されていた波動・時間・空間・重力の精霊の力を借りる必要があったからだ。

 

陰陽術にしろ古代語魔法にしろ、世界そのものを創るほどの魔法はその歴史が始まってよりおそらくは数万年の間、そこにたどり着くことはなく。

 

世界を創造したものたちである善神がそんなことに力を貸してくれるはずもなく。

 

故に、黄昏の剣の最大出力こそが最大にして最良の方法だったのである。

 

「―――諸刃の刃とわかっていらして?」

 

「―――わからいでか。世界を作り造り創り成すってことは、そこを新たな世界とすること。下手に使えばどうなるかなんかわかってらぁ」

 

ミナはフンと息を吐いて、しかし―――

 

「でもお生憎様。だからこそ自然の法則である精霊の力を借りてやってんのよ」

 

ミナはそうして中空へ浮かぶ女へと剣を向けた。

 

「さぁ、こっからが真面目な戦いだ。ルル、行くわよ。岬は―――」

 

ミナは岬を見る。

 

彼女は―――瞳が金色に染まり、黒い女を瞬き一つせずに見据えていた。

 

一筋汗を垂らし、しかし決意に満ちた目で歯を食いしばり。

 

「―――あなた、ですね。気配が前よりもはっきりしてようやくわかったのです」

 

岬の様子にミナは「……そういうこと」と得心したように頷いた。

 

「この毛玉を作ったように、あの―――岬をこの姿にした願い魔も邪神が作ったもので確定ってことかしら」

 

ミナが黒い女を睨めつけると、女は「そうそう。そういえばそんなこともあったわねん★傑作だったわぁ」と楽しげにコロコロと笑う。

 

その様子に、岬はギリと奥歯を食いしばって、「―――うるさいのです。それに、結果的に助かった人達もいるのだからオーライなのですよ。それでも」と返して。

 

「そのとおりです。岬さん。わかっているじゃないですか。あの邪神は破壊神様などと違って、総てを支配し凍結してしまうだけ。存在を許しておいたらどんなことになるわかったものではない」

 

ルルがそう口を挟んでニッコリと笑った。

 

「どうです、廻さん、夕さん。物理的に調べてみた結果は」

 

『信じられんな。アレは九九%以上が不規則性空間流体で構成されている』

 

『文字通り真っ黒、というところか……いや、間違いなくベヒモスよりも脅威度が高い』

 

道野枝姉妹が表情を変えずにそう答えると、ルルはこっくりと頷いて空悟へと向き直った。

 

「空悟さん、ある意味あなたが要です。この空間は時間と波動の恩恵がない―――中身は減っていくばかりなのです」

 

ルルの真剣な目で見られ、刑事は「正確にはこの兜が、だろ?」と返してニッと笑った。

 

「ああ、そうだ。あの黒い女は、オレの武器でしか殺せない。岬はあの毛玉男にレインボーフラワーを当てることに専念して。ルルと廻さん、夕ちゃんは任意に私と岬を援護して」

 

ミナは短く一息に仲間たちに指示をし、そして―――

 

「竜の兜が生み出す波動、竜の波動は勇者の武器を強くする―――」

 

それから「これから言う言葉を一言一句違えずに読め。できるだけ気合を入れてな―――死んでも必ず蘇生させる」と物騒なことを言い出した。

 

「おい、今下手したら死ぬっつわなかったか?」「言ったよ、親友」

 

ミナにそう言われて、空悟はヘッと鼻下をこすって兜を被り直す。

 

そして躊躇いの一つも見せずに「じゃあその言葉とやらを教えろ」と笑った。

 

「よし。吐いたツバは飲めねーからな?」

 

ミナはそうして、黄昏の剣を持ち呪文を唱え始める。

 

―――それは神聖語での呪文。

 

しかし、その意味が完全に空悟には理解できていた。

 

「漆黒の中に侍う白き光よ。竜の顎によりて闇を喰らい、御前に姿を見せん」

 

「―――漆黒に侍う白き光よ。竜の顎によりて闇を喰らい、御前に姿を見せん」

 

妙なる調べの如くに紡がれた神への祝詞を、野太い男の声が日本語で追いかける。

 

すると、すぐさまに竜の兜は藍青色の光を放ちだした。

 

「おおっ!?これは一体……?」

 

「最初の勇者は黒い鎧に白い剣を持って戦ったと言われてる。だからなんだろうか、この言葉は完全神造の武器の力を引き出してくれるのさ」

 

もっとも黄昏の剣はハイエルフの王の剣、客人碎もまた人の手になるものであるためこの呪文は効かないのだが―――

 

見ればミナの装束もうっすらと翠の光を放っている。

 

ともあれ竜の兜は竜の波動を生み出す。

 

「後は、あの毛玉男の動きに警戒してくれ、空悟。毛玉はあの……なんつったか、改の会の改造人間野郎と同じく壊せないだろうから、操られてる男を狙え」

 

ミナはそこまでして、こちらを待ってくれているのかニヤニヤと笑っている女に「お待たせ!待った?」と軽口を叩いてカレーナの剣を鞘に納める。

 

次いで客人碎を左手で持ち肩に背負って、そして黄昏の剣を右手で保持して女を睨めつける。

 

「来るわよ!」

 

黒い女がその手に宿した氷色の闇を光線のように結界へと放ったのは、ミナが叫ぶ寸前だった。

 

その闇は結界の壁にへばりつくと、すぐにそれを侵食して結界の内部へと飛んでくる。

 

威力は減衰しているようだが、侮れるものではない。

 

瞬間「アナン・マジカルフレア!」と岬の声が響いて、七つの光弾がその闇を迎撃した。

 

「その程度ならミナちゃんや廻さんたちが出る必要もないのです!」

 

岬が敵愾心も顕にそう叫ぶと、「あら、やるじゃない。それじゃあこんなのはどうかしら」と女は毛玉男をけしかけてきた。

 

足元を崩されたため動きは先程より鈍いし、グレムリンを生み出すための血液も落とせない―――のではなかった。

 

その男の足元に、女は黒い地面を作り出す。

 

ウゴウゴと不気味に蠢動するその地面に毛玉から血が漏れ、滴り落ち、それはやがてグレムリンとなる。

 

「させるかぁ!」

 

空悟が一〇〇式機関短銃を脇に抱えて男へ乱射するが、やはり毛玉の防御は突破できないのか効果がない。

 

『空悟、やるぞ』「よしきた!」

 

効かないことを見て取った廻はしゃがみ、膝の中からミサイルをせり出させる。

 

「ニーキックミサイルか!よぉし!」

 

空悟もロケットランチャーを構えてほとんど同時にぶっ放す―――

 

ドドォンと轟音が響き、対戦車成型炸薬榴弾が毛玉男に直撃する……が。

 

「恨むぞ恨むぞ恨むぞ恨むぞ恨むぞ恨むぞ!!」

 

煙の中から出てきた男は無傷。

 

その周りには無数の、首や翼、胴体すらねじれたグレムリンが飛んでいた。

 

「「エネルギーボルト!!」」

 

すかさず邪魔になるそれを撃ち落とすため、ルルと岬の魔法が飛んだ。

 

すぐさまに何体かのグレムリンであるらしい物体は不気味な悲鳴を上げて撃ち落とされていく。

 

「バグで変質したですか!」

 

「そうみたいね!あの手が使えるなら一刻の猶予もないわ!この世界の法則で奴らを握りつぶさないと!岬は私のところで!みんな!攻撃を防ぐことに専念して!」

 

ミナの言葉に、廻と夕は殺人光線を無言で照射し始める。

 

結界は邪悪ではないものには減衰効果を及ぼさないのか、その光線は光の速さで一つは黒い女に、もう一つは毛玉男へと吸い込まれた。

 

『効果は微弱―――』『脅威度をベヒモスの一.八倍と推定』

 

2人の機械的な言葉に、空悟が「だからって怯めるか!」と叫び、結界に取り憑いて火花を散らしているグレムリンを三匹、翠の刃の日本刀で斬り散らす。

 

「ま、そういうことになりますねぇ―――偉大なるロジックよ。星海の彼方より、地に墜つる粒を我が敵に。大いなる空の彼方の粒たるや、地をも砕かん礫と見紛うべし!メテオストライク!!」

 

ルルが古代語を紡ぐと、真っ黒な空間の向こうから―――隕石が3つ飛んできた。

 

「ベヒモスが使ったやつか!?」

 

「そのとおりです。僕では3つが限度ですけどねえ!」

 

直径3メートルかそこらの隕石がゴォゴォと空気を割く摩擦音を立てながら凄まじい勢いで毛玉男と黒い女へと衝突して―――

 

ボォォォォォォォォン!と耳をつんざく轟音が響き渡った。

 

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