異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第218話 「俺、いらなくねえかなぁあ!!」

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そして最後の入り口―――誰もいないそこにたどり着いていたのは。

 

「なぁ、おい……あれなんだと思う?」

 

「決まってんだろ。ありゃ魔人のたぐいだ」

 

コウモリの翼を生やした悪魔的なフォルムの男が、大量の魔物を従えながら佇んでいる。

 

魔人とは、人がバグに侵されその姿を保ったまま魔に堕ちたモノのことを称する存在。

 

その瞳は銀色に燃え、その口は怒りに裂け、その意志は憎しみを―――ミナへと向けてきていた。

 

「……あんた、誰よ。そこまで見知らぬ魔人に憎まれる覚えがないんだけど」

 

ミナはシャリ、と金属の擦れる音を鳴らしてカレーナの剣を抜き放ち、そう質問する。

 

『忘れたのか、忘れたのか、忘れたのか、この私を』

 

静かな憎しみが漏れ出す。

 

『忘れまい、忘れまい、忘れまいぞ、この私は!』

 

熱された怒りが口をつく。

 

その声に―――ミナは一人の男を思い出した。

 

「まさかあんた、スティンガリウス?あの時、殺してあげたはずだけど―――」

 

そう、目の前にいるものはかつてラゴンエス公国の宮廷魔術師であり、支配の護符を盗み出してミナたちに討伐されたスティンガリウスのようにミナには思えた。

 

そしてそれは―――『そのとおりだ!忘れるなど……!許すまじ!!』と大音声で怨憎の叫びを発する。

 

「また再生怪人ってやつか、三郎!」

 

「いんや、あれだ。強化再生ってやつだ。仮〇〇イダーで言うなら再生アポロ〇〇ストとか百目タ〇〇ンとかだな、これは……」

 

ミナは心底呆れたようにため息をつく。

 

「それで?どうせ邪神の走狗にでもなって生き返ってきたんでしょ?あん時私言ったわよね?―――私とルル以外の何かを巻き込むなら容赦しねえってな」

 

最後だけ男のような、底冷えのするようなドスの利いた声でミナはカレーナの剣の柄を握りしめた。

 

『あーあ、我知らんぞ。うちの孫、本気で怒ってるからの、これ』

 

「同情するわ。いやマジで」

 

祖母と親友の言葉に、ミナは一瞬苦笑して「じゃ、いくか親友」と返して一歩前に出た。

 

『黙れ黙れ!今更その程度の脅しを恐れるものか!行けい!!』

 

その言葉と同時に周囲は兎とカニに囲まれ、更にはオーガも5~6体が確認できる。

 

しかしながら―――

 

「あれ?今更この程度?あんときより私が弱くなってるとか勘違いしてる?つか、シャインマスカットどこよ?」

 

蘇ってきたスティンガリウスを煽るつもりなのか、平静な声でミナは男を睨んだ。

 

『ええい!うるさいッッ!!』

 

魔人スティンガリウスは、その腕を振るい魔物たちに攻撃の指示を出す。

 

「空悟、雑魚は任すわ」

 

「俺で入り口死守したままイケっかな……?」

 

「だいじょーぶだいじょーぶ。もうおめーならこの程度の数問題ないない。ドラゴンでも出てこなきゃでーじょぶだぁ!」

 

300はいる魔物たちに、わずかに自信なさげな空悟にミナはそう言って呪文の詠唱を始める。

 

「それにお前だけとは言ってねえさ。入り口を物理的にふさいどかねえと―――」

 

ミナは手にした杖に魔力を込め、自らの奉ずる神へと暗黒の祈りを捧げた。

 

『ぬう!あれはまずい!止めよ!!』

 

スティンガリウスが戦闘のカニを急がせるが―――

 

「おっせーよ、タコ。世界を停滞へ導く我らが厄神よ!太古より恐るべきものを蘇らせたもう!石塊と化したその巨体を!かつて支配の王錫を恣にした龍を!サモン・ストーンレックス!!」

 

ミナの言葉に―――大地が隆起し、巨大な化石竜―――ティラノサウルス・レックスのような石の怪物が起き上がる。

 

『う、ぬう!?』

 

「どーだ!あん時てめーが持ってきたド〇〇ーガもどきよりこいつはつえーからな!突破してみろってんでえ!!」

 

ミナはかつての対峙の際には使えなかった暗黒魔法により呼び出した恐竜のゴーレムを出口へと配置してニヤリと笑った。

 

「よし、なら安心だな。思う存分行かせてもらうとするか」

 

空悟は右手に重機関銃、左手に短機関銃を保持して、ニッと爽やかな笑みを魔人へと向けて―――

 

「んじゃ、始めっかぁ!」

 

そう叫んで、襲い来る怪物たちへと銃弾を叩き込み始める。

 

ダダダダダダダダダダダダダンッ!と右手の重機関銃がミシンを何十台も一時に動かしたような轟音を立てて発射された。

 

タタタタタタと、より軽快な音のサブマシンガンも。

 

重機関銃はオーガやカニに、短機関銃は兎やコウモリを狙って放たれる。

 

彼の目は2つしかないが、まるで目が何対もあるかのような射撃であった。

 

「どんどんかかってこいやぁ!」

 

『ギシャァァァァァァ!』『ガァァァァァア!!』

 

銃弾を物ともせずに、ムカデとオーガが一匹ずつ彼に向かってくる。

 

―――見れば兎やカニが彼を避けて入り口へ殺到していくではないか。

 

「足止めか……!だがまあ、三郎のことだ。あのティラノサウルスの足元は―――」

 

空悟がそこまで言った時、化石竜の口から石灰色のよだれがダラダラと垂れていくのが横目にチラリと見える。

 

「あ、なるほどね。こわっ」

 

彼はそうして「じゃあ安心だわな」と銃を地面にそっと置いて、今津鏡を抜き放った。

 

「しぇえええりゃぁぁぁぁっ!!」

 

裂帛の気合を上げて、大ムカデの背を登りオーガの頭に斬りつける男の目に映ったのは。

 

―――石灰色の液体から、無数のスケルトン―――竜牙兵ドラゴントゥースウォリアーが生まれていく光景であった。

 

厳密には竜魔法によるそれとは―――古代語魔法、暗黒魔法によって作られるそれは異なるものだが、能力に遜色はない。

 

それが数十は現れ、そして兎やカニに襲いかかっていく。

 

コウモリもまたティラノサウルスの目から放たれた眼光で落とされていった。

 

「俺、いらなくねえかなぁあ!!」

 

オーガの目を袈裟に斬り視界を奪ってその背を蹴り地面へ飛ぶ。

 

行き掛けの駄賃とばかりに、彼は手榴弾を3つほど投げた。

 

研究所特製の思念反応型手榴弾の試作品である。

 

「ばぁくはつッ!!」

 

空悟がそう叫ぶと、手榴弾はオーガの鼻先で2発、ムカデの体節の上でバムッ!という少し情けない音を立てて炸裂した。

 

『ガァァァァァッ!?オガッ!グオオオッッ!!』

 

オーガは露骨に苦しみだすが、ムカデには痛痒がないのかそのまま地面へ降り立った空悟へと触腕を伸ばしてくる。

 

「やっぱムカデにゃ催涙弾は利かねえかあ!じゃあ、これならよぉ!!」

 

そうしてもう一つ手榴弾をムカデの鼻先に投げつけてやる―――

 

またバムッ!と情けない音がして、そして―――

 

『ギシャァァァァァァァァァ!?!?!』

 

オオムカデがのたうち回って苦しみだした。

 

「効くだろ!超強力殺虫剤だぜ!」

 

そうして、彼はのたうち回る2つの怪物に相対し、今津鏡を納刀して「ふぅぅぅぅ―――」と長く息を吸って、吐いた。

 

―――三郎に教えてもらったもんだし、実在の剣技でもあるし、何よりどっかの少年漫画の必殺技めいてるから、まぁ強いだろ。

 

内心でそう考えて、左足を前に一挙に剣を抜き放った。

 

左足を先に踏み出す抜刀術。

 

ミナが修めている日本刀による剣術から教えてもらった術理であり、それはある少年漫画の主人公の必殺技でもある剣技であった。

 

それは今津鏡の力、彼自身の膂力と冒険者現象、そして庚申流気功術によって強化され―――

 

彼が跳び、地面についた瞬間に。

 

『がぁ……!』『………』

 

2つの怪物は、その素っ首をスルリと滑るがごとくに胴とズレさせて―――

 

「……嘘だろ、って言いたくなるな……」

 

ヒュン、と刀を振って血を飛ばした空悟の苦笑を背に、ゴロンと地面へ落ちたのであった。

 

そして自らの敵を倒し、どちらかの加勢をしようかと親友の方を見れば―――

 

「そんなもんで私に勝とうとか随分頭がおめでたくなったわね!!!」

 

大音声で叫ぶ彼女と―――

 

『やめろぉ!我で虫やキモ筋肉鬼を斬らんでくれェ!』

 

そう叫んで嫌がる彼女の祖母の声が空洞に響き渡る。

 

「あの様子なら大丈夫だな」

 

空悟は一瞬でそう判断し刀を納めると、地面に置いた機関銃を拾って、ティラノサウルスが若干苦戦しているコウモリやカラスへの対空射撃を始めた。

 

―――その瞬間、後ろでオーガの胴が裂けて落ちたのが視界の端にチラと映る。

 

「よっし!気を取り直していくぞぉぉぉ!!」

 

ダダダダダダダダダダダダダン!重機関銃が火を吹き、コウモリを十数匹まとめて挽肉にしていったのだった。

 

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