異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第225話「いやそうじゃなくて???」

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A県神森市気象台―――

 

「……地震が増えている?」

 

年配の職員が、年若い職員へとそう聞いて眉をしかめた。

 

「ええ。間違いありません。震度1未満の微弱地震ですが、神森市付近だけでこの1年でおよそ10倍になっています」

 

年若い職員はそう言って、首を傾げた。

 

「……うむ。自衛隊基地近くや市街中心部の地表近くを震源とする地震といい、何かが起きているのは間違いないんだが……」

 

年配の職員はそう言って、「しかし、この報告……握りつぶされてるんだよなあ……」と嘆息した。

 

「マジすか」

 

「そうだよ。君だけじゃなくて何人か同じ報告してくるけど、報告者は転属、んで君が来たってわけだ」

 

年配の男はそう言って、「これ以上俺も仕事を大変にしたくないんだ。その報告はなかったことにして忘れておけ。なんかがあるんだよ。多分な」

 

そうして気のない様子で去っていく職員を年若い男は見送り、嘆息した。

 

「……一体何が起きているんだろう」

 

微弱地震の震源の殆どは蒼沫湾から。

 

そこに何かがあるのは間違いないが、何があるのかは全く彼の想像の範疇の外だったのだった。

 

 

 

「まだ。まだまだ。まだまだまだ」

 

スフルタトーレは闇の中で、成長していくその魔王をじっと見つめていた。

 

「搾取する者たる私が命ずる……あなたの何もかもを私に搾取され、私の何もかもを採取しなさい―――その祈りの果てに、アナタのノゾミは降りてくる」

 

蠱惑的な笑みで、真っ赤に燃え上がるそれに頬ずりして―――傷も負わない彼女は邪神の端末。

 

「もうすぐ、もうすぐ、もうすぐよ……ふふふふふふふ…………」

 

その顔は愉悦に染まり、闇に溶ける。

 

―――二人はそのまま闇の中で眠りにつく。

 

眠りの中で。

 

地獄を思う。

 

 

 

―――それからの約一月半。

 

街に現れたのは、SMNの魔法少女たちだけであった。

 

それも小競り合いのような遭遇戦のみであり、彼女たちを捕縛するようなこともなく、日々はダンジョンでの修行のために進んでいく。

 

空悟が岬たちの夏休みを前に休職したことで、これまでよりも遥かに多くダンジョンへ赴くことが出来、それぞれにパワーアップを果たしていた。

 

そして、今日はダンジョンの低層で、お互いのパワーアップについての情報交換を行う日であった。

 

「……あの子たちから奪った幾つかの虹の欠片が、あたしが強くなったせいか力が使えるようになったのです」

 

岬はそう言って、クロキと似た緑色の衣装へと変ずる。

 

「名付けて、マジカル・アナン・スピニングスタイルなのです!」

 

武器はクロキとは異なり、独楽が二つとそれを操る紐も二つ。

 

後は膝と肘に回転する突起があり、まさにスピニングといった風情である。

 

「なるほど、超○磁ゴマってやつだな」

 

空悟は某長○ロマンロボシリーズの2作目の主役スーパーロボットの必殺技を思い浮かべ納得する。

 

「あたいはフォームチェンジは出来なかったけど、その代わりこれだ」

 

彼女は目をつむるだけで、周囲に幾つもの自分―――白い彼女の衣装よりも尚白い、自分そっくりの人形を幾つも作り出した。

 

「よし。これはあたいの半分の力で動くんだぜ。しかもあたいの力が落ちることはないんだ」

 

「ファ○ネル……」

 

「マー○ト○イド……」

 

空悟とミナはそれぞれにそんなことを言って、恋を見ると「う、うるせーなー!いいだろ!強いんだし!」と顔を赤くして舌を出す。

 

「まぁまぁ、あたしの昭和40年代な武器よりは良いものなのです。でも昭和だけど21世紀なのです。何しろフィリピンでリメイクされますですし」

 

岬がニパっと笑って、その独楽を紐で巻き取ってブゥンと投げた。

 

投げた独楽は―――襲いかかろうとしていた変異ゴブリンを一体、頭蓋を吹き飛ばして沈黙させる。

 

二人は新たな力を持って、得意げにミナに見せた。

 

「うん。おめでとう。魔法も安定して使えてるみたいね。地力を上げることも怠っていないようだし、小手先の技に堕したりはしてない。自信を持っていこう!」

 

ミナはそう言って彼女らを褒め、そして空悟を見た。

 

彼はと言えば……

 

「大木断とかは出来るようになったけど、俺は普通の人間だからあんなのはできんぞ」

 

空悟はフッと息を吐いて肩をすくめた。

 

「まぁHFOにそんな芸は求めてないからでえじょぶだ。つーか」

 

ミナはそこまで言うと、彼が持っている今津鏡や一〇〇式機関短銃がなんだかものすごくパワーアップしているような……

 

具体的には龍の意匠が施された剣と銃に変わっているのがよくわかった。

 

「いや、兜をかぶって気合を入れるとこんな感じに」

 

空悟はあっけらかんとそう言って「ド○ゴン○ーザーみたいでかっこいいだろ?」と某スーパー○隊のファンタジー○隊の嚆矢であった作品の追加ロボのことを例に出して笑う。

 

「……まあ勇者の装備ってそういうもんだからな。オレの戦装束もそんな感じだし」とミナは若干呆れ気味で嘆息した。

 

『我々の装備も充実した。もはやあの戦略兵器の魔王にも遅れは取るまい』

 

廻はそうして、これまでよりもシャープな躯体の調子を確かめている。

 

『これまで追加装備としていた噴進弾や機関砲などを総て内蔵している。物理攻撃相手ならもうお前にも負けんぞ、金髪女』

 

夕がそうして胸を張ったが、装備がどこに収納されているのかまるでわからないため、ミナはジロジロとその躯体を。

 

「……うん、廻さんの方はまだ特撮ヒーローレベルだけど、夕ちゃんはバトルヒロインのそれね」

 

と、より人間の姿に近づいた躯体を観察した。

 

それはなぜか夕には恥ずかしかったようで。

 

『やめんか変態!!』

 

ゴン、とそのオリハルコンにも匹敵する手刀がミナの頭に突き刺さった。

 

「痛ったぁ!?」

 

『馬鹿め!いつも女男がしていることを貴様がするな!!』

 

ふん、と鼻を鳴らして夕は後ろを向く。

 

「額が割れるかと思ったぁ~~~!」

 

「うーん……岩を砕く夕の手刀を食らって生きてるお前もお前だと思うなあ」

 

「いつもの僕の気持ちをわかってもらえましたか?」

 

空悟とルルが代わる代わるにそう言うが、ミナは「~~~~!」と声にならない声を上げるばかりである。

 

ミナはそうしてしばらくおでこを抑え、回復すると立ち上がった。

 

「……えー、気を取り直して。私はスターピアスの修復が終わり、戦装束のほうも力を取り戻しつつあります」

 

そうしてミナは着込んでいる上古の森人の戦装束を翻した。

 

「見なさいよぉ……」

 

ミナが客人碎を手に力を入れると、急に布面積が狭くなっていく。

 

殆ど胸アーマーと股間アーマーのついた肩紐なしのモノキニビキニと言って良いくらいに布面積は少なくなり、体にぴっちりと張り付いて、頭に鳥の羽のようなティアラが現れた。

 

「よしッ!ちゃんと動いたな!」

 

ミナは恥ずかしげもなくその格好で槍を振るった。

 

「本当は魔力を注ぐと、こう言うふうに格闘に合った姿、それとまだ修復が終わってないけど魔法に合った形に変形するんだよ、これ」

 

ミナは得意げに胸を張る。

 

張って、すぐさま後ろを向いた廻に怪訝な顔を向け、同じく顔を赤くしている岬と恋に「え?」と疑問符を投げかけて。

 

夕が我関せずとばかりに天を仰ぎ。

 

ミナの胸を張った姿を見た空悟は、真顔で、至極真顔で。

 

「恥ずかしくないか、それ。腋も丸見え、腰も丸見え、股間も殆ど隠れてないぞ」

 

そう指摘した。

 

「あーあー!やめてください!かつての仲間もあえて指摘しなかったんですから!」とルルが騒ぎ出す。

 

「……そうかな?そんなに恥ずかしいか?」

 

「いやいやいやいや。エロゲのくっころ騎士より恥ずい格好だぞそれ。絶対ダンジョンの外でやるなよ」

 

全く良くわかっていないミナに、空悟はナイナイと顔の前で手を振って彼女に意見を否定した。

 

「……ルル?」

 

「強い装備でしたからね。何しろ勇者の鎧ですし。しかも永久に失われたとされていた物品でしたし」

 

目をそらすルルにミナはズイと近づいて、その目を覗き込む。

 

「いやそうじゃなくて???」

 

そうしてそんな事を言うものだから、ルルは―――

 

「……ぼ、僕もその、恥ずかしいと思います。む、胸も上半分が見えてて、ほとんど乳首から下が隠れているだけですし!」

 

と、普段絶対言わないようなことを叫ぶように言わざるを得なくなってしまった。

 

「そ、その、僕の昔着ていたアレにも似ていて、そんなものを着てると思うと、その!あのですね!!」

 

しどろもどろになっていくルルに、ミナは「そんなにか……鏡で見たことはなかったしな……」と無限のバッグから姿見を一つ取り出して壁に立てかけて自分の姿を見た。

 

「……なるほど、股間に申し訳程度のあそこを隠す装甲みたいなのがついてて、それ以外は胸アーマー付のモノキニビキニってヤツだな。ヨシッ!このモードは切羽詰まらない限り封印で!!」

 

と、ミナはアカンコレといった表情で装束を元の姿に戻した。

 

「スハイルもハニーファも、他の中途脱落組も教えてくれりゃあ良かったのに……」

 

恥ずかしがってるわけではないのか、少し顔を青くしてミナは表情を情けなく崩す。

 

そうして後で100%イジられるネタを知らぬ間にかつての仲間に提供していた過去の自分に悶えることとなったのであった。

 

「……き、気を取り直して……」

 

ミナは痴女アーマーと化した上古の森人の戦装束を、いつもの碧色のワンピースドレスめいた姿に戻してフーっと息を吐いて話を続ける。

 

「とりあえずスターピアスとマスターリングは直したから、さっきのあれを除いても戦力はアップしたから……」

 

そう言って、右手の薬指に装備している指輪を見せてくる。

 

「なんなんだ、これは?」

 

「古代語魔法の発動体かつ増幅体で、操れる精霊力もほとんど総てをブーストしてくれて、更に調和神様を始めとする正しき神々の加護も入ってるお手軽最強これ一個で大丈夫アイテム」

 

ミナは一気にそういうと、聞いた空悟は「ああ、フォー○のコズミッ○ステイ○みたいなやつな」と納得して首肯した。

 

「まあそうだけどもよ……便利だからな。これがあれば他の杖や発動体は必要ないんだが……」

 

「だが、なんなんのです?」

 

岬にそう聞かれて、ミナはうーんと首をかしげる。

 

「―――ぶっちゃけ、これ多分、祖先……てか虹の帝のやつなのよ。推定、あっちの世界の『ひとつの指輪』」

 

「捨てちまえそんなもん」

 

空悟はそう言って頭を振った。

 

それはそうであろう。

 

目の前の指輪が危険物と言われればそう言いたくもなる。

 

「ああ、安心してください。呪いやトラップのたぐいがないというのはシリウス殿……ミナさんのあちらの世界での御父君が保証しています。僕も念入りに調べてますしね」

 

ルルがどこで覚えたのかサムズアップを返してきたので、「大丈夫かよ」と空悟が嘆息すると、「まあ50年使ってなんもないからダイジョブやろ」とミナはあっけらかんと返してルルを見た。

 

「後はルルね。成果は……私は知ってるけど」

 

「はい、僕からそれは言いますよ」とミナに返して、ルルはローブを纏う。

 

そのローブはいつもの黒いローブではなく、白いローブで―――そう、邪神との闘いの時に身に着けていた装束であった。

 

「白夜のローブと呼ばれているもので、光を弾き闇を助け、にも関わらず光を遮らないという属性を持つ僕のためだけの装束です」と彼は微笑んだ。

 

要するに、ルルのアンデッドとしての力を、封印を解かないままに使えるようにするローブであり、これはミナとミナの姉ポーティが自分たちとルル自身の髪の毛を織り込んで編んだものだ。

 

「ま、完全に駄目になってたから私が編み直したのよ。材料の一つのペーパー鉱も手に入ったから」

 

ミナはそう言って腕を組んだ。

 

「大事に扱いなさいね」

 

「もちろん」

 

ルルは頷いて、ミナを見ると……何故か顔を赤くした。

 

「……おう、こっち向けや」

 

「だめです駄目です。今はミナさんの顔見るとさっきのを思い出しちゃいますから駄目です!」

 

普段は絶対に見せない慌てた様子でルルは逃げ出し……

 

「待ちなさいこらぁ!」

 

ミナはそれを追いかけ……

 

空悟と岬と恋は顔を見合わせてプッと吹き出して。

 

廻と夕はやれやれと肩をすくめる。

 

これでこの一月半の間で大きな進展のあった装備や能力についての情報交換は終わった。

 

そして十数分後……

 

「んじゃぁ―――ちょうどみんなパワーアップも終わったしさ。薺川博士の依頼をこなそうか……」と、従者に腕ひしぎ十字固めをかましながらミナは提案した。

 

『そうだな……放置しているわけにはいくまい』

 

そう首肯したのは夕だ。

 

『あんなものが浮上すれば……コトだ。どう模擬思考にかけても現代社会に大変な問題が出る。否、国際社会にもだ』と廻も肯定した。

 

「あたしも同感なのです。というか、お聞きしたスペックがマジなら真面目にヤバイのですよ」と岬が腕を抱いてブルリと震える。

 

「うん、まああたいもそう思う。秋遂よりヤバイんでしょ?」

 

「そうだな……そうなるな」と空悟が恋に答えて腕を組み、ルルを未だに抑え込んでいるミナに声をかける。

 

「急がないと嫌なことになるな、って予感がする」と彼が言い、ミナは「そうだろうな」と答えた。

 

「そういうわけでルルには意見はある?」

 

ミナはそうしてバンバンとタップしているルルに声を掛けた。

 

「いえ、否やはないんですが……あの、そろそろ離してくれると嬉しいんですけど」

 

「離してほしかったら忘れろって言ってんのよ」

 

「こうされてたら余計に忘れられなくなりますから!」

 

ミナの下でジタバタと無駄なあがきをするルル。

 

その様子に、一同は呆れた笑みを二人に向けるのであった。

 

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