異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか 作:大回転スカイミサイル
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「光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――その心、支配するものから解き放ち給え悪しきを、凶つを、魔に落つ前の姿へ。天の道を思い出させるのです―――!」
岬のステッキに虹の魔力光が宿る。
恋がそんな岬の肩を掴み、己の魔力を注いでいく―――
瞬時、岬の脳裏に光景が浮かんだ。
優しそうな顔の、わずかに恋に面影を残す男性が赤子を抱いている。
『君は……本当にそんな理由で、僕と離婚するっていうのかい……』
絶望した顔の、そんな男性が。
『知ったことじゃないね。さっさとその子を置いて出ていくんだね!』
恋に似た顔の女が、そんなことを口走っている。
『……そうかい、そうなのかい。職を失ったくらいで……褪めてしまうようなものだったんだね……』
男は深い絶望の表情で、赤子をベッドに寝かせて部屋を出ていく―――
しばらくして、何かが弾けるような―――小さな音がした。
ああ、ああ、何ていうことだろう。
そうか、それは。たしかに彼女の母が殺したのだろう。
そういうことか、と岬は瞳を見開いた。
「記憶の中へ―――遠い記憶の中へ!さぁ、お眠りなさい!アナン・レインボー・フラワー!チャージアップなのです!!」
虹の花が咲き、もって殺人鬼―――否、恋の記憶から形作られた存在はゆっくりと形をなくしていく。
『あ。ぁぁぁぁ……』
言葉もなく、本当にそれだけの記憶を魔王が増幅していただけのことがわかる。
―――背中に、恋の涙が落ちたことがわかった。
「……岬ちゃん」
「みなまで言うななのです―――魔王!どうなのですか!これでもあたしたちの攻撃が無意味と言えますですか!!」
岬は吠える。
吠えて、杖を構えてモニターを指した。
『うーぬぬぬぬぬ!やはりすでに覚醒が始まっているというのか!この私!記憶の魔王の本体と同等に育ったそれを消し去るとは!!』
「覚醒って何の話なのですか!!」
『ふ、ふはははははは!それを知りたければ艦長室まで来ることだ!ウワーハハハハハハハ!』
ぷつん、と。
電源が切れる音を残して、モニターは停止した。
「……岬ちゃん」
「大丈夫ですか、恋ちゃん……」
岬が聞くと、恋は涙を拭って「こんなところで親父が失踪したって話になった理由、知りたくなかった……」とため息をついた。
岬はしばらくそんな恋を慰め、それから立ち上がって虹の花が咲き乱れる艦橋の椅子へ座る。
「夕ちゃんは……」
『戦闘続行は可能だが、5割ほど戦闘能力が落ちている……あのまま戦い続けていたら敗れていた可能性が高い』
夕は黒血に覆われた右腕を、左腕から出した洗浄液で洗い流しつつふぅとため息をついた。
『新型躯体が台無しだ。これでは薺川博士に申し訳が立たん』
わずかに落ち込みを見せて、それから夕は立ち上がる。
『この後、どうするか、だ』
廻を今起こすことはできない……交代まで後30分はこのままだ。
「そうするとやはり艦長室を目指してみるべきだと思うのですが、廻さんか夕ちゃんをどちらか置いていくというのもどうかと思うのです」
岬はそうして天井を見て―――「うーーーん……やっぱり魔法少女には、最低限あたしよりきつい過去があるのです……それに、覚醒とは……」と独り言ちた。
覚醒。
そう言われて心当たりが無いわけではない。
―――そう岬は魔法少女たちのオリジナルである。
しかし、多くの謎が残る……
果たしてSMNが有する魔法少女たちを生み出すほど、この短時間にばらまかれたのはなぜか。
魔女という異世界で消え去った種族のこと……
そして、ヒトコシノミコトの力と思われる、しかしあの謎の願い魔の力によっても生まれた根本原因……
ヒトコシノミコトが言っていたことだけが真実はないと岬は思っていた。
「とはいえ、今考えていても仕方ないのです。それに……ミナちゃんたちに連絡なしでここを離れるのは嫌な予感がするのですよ」
幸いにして時間はある―――と言える。
「そうだよな……うーーーん……」
恋が唸る。
「まあ、とりあえず決まったことがある。ここを切り抜けたら、あの毒母の戸籍から抜けられるように叔父さんに頼むわ」
ぽいっと、さじでも投げるかのように彼女はコミカルに肩をすくめて微笑んだ。
「ですねえ……流石に……」
「あの記憶が確かなら、親父が死んだのはリストラ食らったんじゃねーかって親父にいきなり離婚を突きつけた毒母の仕業だかんな……」
それが完全に真実であれば、それこそ恋は血の繋がった母親を永続的に恨む理由となる。
それが良いことなのかはわからないが、恋曰く記憶喪失でほとんど人事不省の彼女の母とは永久に縁を切ったほうが彼女のためではないか、と。
……それに彼女の叔父も従姉もきっと彼女を歓迎するだろう、と岬は思った。
もしあの記憶が本当なら、恋に失踪としておいた理由もわかる。
母親が突き放したせいで自殺した、などと―――小学生の少女に言えるはずもないだろう。
岬は大きなため息をついて、自分のポーチから小さなお弁当を二つ取り出した。
「夕ちゃんの分はないのですけど……ご飯にしましょうなのです」
『構わん。先程の水で腹は膨れた―――いや、燃料は補給できた。問題ない』
夕のそんな返しに苦笑しつつ、岬は恋にお弁当を渡す。
「恋ちゃん……大丈夫なのです。あたしがついているのですよ」
「わかってるって。大丈夫。大丈夫さ」
恋は普段より少し弱い笑みを浮かべて、父親の幻影が消え去ったあたりを見つめるのであった。
―――そして。
「あぁぁぁぁぁ!クリアできねぇぇぇぇぇ!!」
『ひぇぇぇぇ……』
ミナが目の前のク○ボーらしき物体を蹴り飛ばしながら、そう叫んで三郎を怯えさせていた。
そう、謎のアクションゲームの夢のフィールドで、ミナたちはわずかに苦戦していた。
敵に攻撃されてしまったら、即途中からやり直しというルールのせいで。
「あ、ごめんごめん」
『だ、大丈夫……カーチャンみたいで……ちょっとビビっただけ』
頭を掻いて彼に謝ると、そんな言葉が帰ってきてミナはずっこけそうになった。
「あっはっは。知ってた」
親友がそう言って軽く笑う。
茜なら、たしかにゲームがクリアできないときはこんな事を言うはずだな、とミナは思い、親友の軽口に目を瞑ってフゥッと短いため息をついた。
そして、目の前で生成されていく首の長いコカトリスを見つめてげんなりとする。
「一面に石化ガスを撒いて、一度でも触れたらやり直し……ミナさんのブラックリボンでも『ゲームとしての判定』はNGですか……」
「なんだこの超○界村1面スーパーハードモードは」
ルルと空悟が分析しながら、こりゃ参ったとばかりに目の前を見る。
周囲に広がるのは、湖の畔―――ゾンビやスケルトンが湧く墓地だ。
その最後に出てきた首を長く伸ばせるコカトリス―――らしきものは『ケケケケケ』と怪鳥音を発しつつこちらを嘲笑っている。
すでに失敗は3度。
このまままごついている訳にはいかないが、突破するにはこいつを倒さねばならない。
―――ここまで三郎を驚かせないために攻撃魔法を使ってこなかったミナであったが……
ぶっちゃけ空悟は重機関銃を使いまくっているし、何よりこれだけモンスターが出ているわけだし今更か、とミナは考えを切り替えた。
『……ごめんなさい。オレもクリアできたことがなくて』
三郎が律儀に謝るが、ミナは「いいのよ、いいのよ。クリアできない私が悪いの」と返して―――
「当たり判定が広すぎるから、接近戦は挑むだけ不利。矢も石化ガスで落とされるからさあ……遠距離から魔法でぶっ殺す。おめーら、三郎連れて後ろに下がっててくれ」
そう言って、ミナは精霊術を唱え始めた。
「暁の子、西に吹く希望王ゼビュロスよ!汝の吐息は竜の巣となり、竜の巣は全てを吹き飛ばし、もって清野をもたらさん!起きよ!風の竜!!」
『ぐぇぇぇぇぇーーーっ!?』
発動されたストームドラゴンは、すぐさまにコカトリスを天空へと放り上げ、そのままバラバラにしてしまう。
『うわぁ、すごい……これ。絶対夢だよね』
「はっはっは。まあ心配するな」
三郎の感嘆と僅かな諦めの声に、空悟は反応して笑った。
「よぅし!次は―――」
ヒュンッとミナの鼻先を赤い影が飛び去っていく。
ミナが半歩下がらなければ、ミナに攻撃が当たるところであった。
「うーん、やっぱり出てきやがったか!」
彼女はニッと笑って、バッグの中から霊木の弓を取り出して、木芽の矢を番える。
そこにいたのは、赤い赤い悪魔の姿。
「まあ、魔○村つったら付きもんだからなあ!」
ミナは即座に矢を三連射して、転げる。
瞬間、悪魔は自分のいた場所を通過していった。
「ミナさん!」
「大丈夫よ!近づかないで!」
ミナはルルにそう返して、また地面を転がり矢を二発悪魔の眉間へめがけて射つ。
常人では捉えられないであろう機動で、悪魔は矢を避けたのがよくわかった。
―――パターンは見えた。
ミナは内心でそう思い、弓を放り投げて祖母の剣を抜く。
弧を描く軌道での攻撃、フェイントをつく超機動。
その動きは、あの頃にプレイしたゲームの敵とそっくりそのままである。
なら……
「大丈夫なんですか?」
「ああ、大丈夫さ。中学ん時になんとか頑張ってクリアしてたのは知ってるからな。なら……」
空悟は内心で付け加える。
―――あの頃の三郎の、何十倍も何百倍も素早い今の彼女が負けるはずもない。
空悟のそんな声を反映するかのように、ミナは襲いかかる赤い悪魔の軌道に合わせて背後へ飛ぶ―――
すれ違いざまに光が閃いた。
後は簡単に、ポトリ、と。
悪魔の首が落ちて、おしまいであった。
「オワタ式ならコカトリスよりこっちのほうが遥かに楽ね」
書き溜め尽きてきたので短め。
さっきまで執筆してたので投稿時間もこの時間。
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