異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか 作:大回転スカイミサイル
-244-
『ウワーッハハハハハ!よく気づいた!ハッハハハッハハ!!あの二匹の犠牲は無駄ではなかったようだなぁ、勇者よ!だがすべては無意味だ!!』
大音声の―――記憶の魔王オンマジンの声が響き渡った。
「出てきたか、タンカスゴミ魔王……碎くものよ。異界よりの悪意ある客人を微塵と返すものよ。この戦いは世界を蝕むもの、邪悪なる世界蟲との戦いなり!その力を解放し、我に勇者としての任を果たさせ給え!」
ミナは客人碎を起こし、そして吹き飛ばされた空間を見据えてギリと奥歯を噛んでそれを見据えた。
―――片目のない軍人。
それが記憶の魔王の取る姿である。
その時代の、否、目の前にいる人間の抱く軍服と軍人の記憶のイメージを好んで纏う魔王。
それが記憶の魔王。
まるで、人の刻んできた記憶は、すべてが争いごとであったかのように嘲笑う存在。
「―――大日本帝国陸軍の、昭和18年制式っぽいですね。これはあたしの記憶なのですかね。詳細が微妙ですし」
『ファファファ……違うなあ、全く違う。これはこの時代のこの国の人間が抱く、ネガティブな軍人へのイメージだ。ふふふ、肥えた体にイメージが適当な軍服。あのお方より伺ったこの国の末期的な記憶によるものだよ、フハハハハハッ!!』
「ま、仕方ないかな。70年も明確な軍隊を持っていないと認識してる国だしね、うちの国。しかも自衛隊が品行方正すぎて、ネガな軍人のイメージなんて一般人はそれほど持ってないからね……でも、馬鹿にされている気がするから全力で叩き潰すわ」
ミナは左前に槍を構える。
『戦友の仇なのだろう。なら、お前が殺すのが道理だろう』
『私もそう思う。それに、アレは戦略兵器の魔王の3倍は強力だ。私達は援護に回るのが良いと思うが』
夕と廻が射撃体勢を維持しつつ、そう提案すると、ミナは「ふたりとも遊撃をお願い。スキを見て射撃、格闘、何でもいいから撹乱して」と指示を出す。
「ルル、空悟と恋ちゃんも同じ。接近戦は基本私と―――」
ミナはそうして、岬を見る。
「魔王には浄化の力が有効。だから、岬。フレアスタイルで私と一緒にあのハゲをぶん殴るわよ」
「―――はいなのです!」
一瞬炎が燃え上がるように、岬のドレスが燃えて弾けて紅に染まった。
『フハハハハハ!準備はできたかね?ワシはいつでもいいぞぉ!くっくくくく……』
魔王はそうして体の一部を戦車砲に変えて、岬を狙う。
だが―――「それは52口径105mmライフル砲ですね?それじゃあ今のあたしの装甲は抜けないのですよ!」と、返答を待たずに岬は大地を蹴ってハゲの頭を殴りに行く。
『ふははははっ!そちらから来てくれるのであれば好都合!勇者を超えるイレギュラーの存在は、早めに抹消しなければなぁ!!』
ハゲの軍人は、その両腕を砲から機関銃へと変化させ、岬へと放つ―――ギンギンギンギンッとなにかに弾かれるような音とともに、銃弾はすべて弾かれていく―――
『ほう!』
「アナン・マジカルアーマーなのです!その銃、本物よりも遥かに強いようですが、今のあたしには無駄無駄無駄無駄ぁなのですッ!!」
岬はそうして思い切り拳を振りかぶり、振り抜く。
ゴワンッ!と鉄の鐘を橦木で叩いたような異音が鳴り響き、魔王の首は3回転ほどして常人ならそのまま100%即死する状態となっていた。
無論、それで死ぬわけもなく―――
『フハハハハハハハハ!』
「笑ってんじゃね―ぞッ!!」
当然死んでいない魔王に、ミナの追い打ちが被さり―――その胸に客人碎の穂がドスリと刺さる。
『む、う……流石に勇者の槍は効くのう!』
「言ってろッ!無手勝流、奥義!無双三段ッッ!!」
抜いた穂先を大上段から肩口に叩きつけ―――神速で引いて再びその胸を突く―――
抜いた穂を回して、柄を鋒にその胴をば突いて、天空高く打ち上げる。
それは、ミナが槍術を学ぶ前に使っていた、どこかのフリーシナリオを売りにしたRPGにおける槍の必殺技そのものであった。
「岬!」「がってんなのです!」
岬はすぐさまスピニングスタイルへと変身し、その独楽を投擲する。
「超魔力独楽なのですッ!!」
『うむむむっ!』
その独楽は打ち上がったハゲをさらに高空へ打ち上げて、その回転は男の体をぐるぐると回し体勢を崩す。
そこに―――
『悪いがこのまま更に上まで打ち上げさせてもらう』
廻が背部の噴射装置で空を駆け、更に追い打ちをかけた。
グワンッとまた内部が空洞になっている金属の玉でも殴ったかのような鈍い音が響き、魔王は『おぐっ』と短く悲鳴をあげる。
『対戦艦噴進魚雷、発射』
「あたいの分身たちよ、あのハゲに撃ちまくれッ!!」
まず最初に、夕の対艦噴進魚雷が突き刺さる。
バゴンッ!とくぐもった爆裂音が響き渡った。
一瞬遅れ、力の矢と炎の矢、そして氷の矢と火炎球が降り注ぎ、爆炎を巨大化させていく。
「よしっ!」
空悟はガッツポーズでも取ったかのような肯定の言葉を紡ぎ、そしてロケットランチャーを放った。
「……」
ルルは身構え、精神を集中し、二つの呪文を口にする。
「星の光を星海の彼方より降らせ牢獄と成せ。光とは波なり、波とは粒なり、粒は肉となるなり。光と肉は同じもの故に!」
『極光の彼方より永久の氷壁をこれへ。凍結とは停止なり、停止とは静止なり。永劫に汝の生を留め置かん』
確実に相手の動きを停止させるため、ルルは攻撃魔法ではなく拘束魔法である光と凍気の牢獄を作り上げんと術を練る。
『ウワーッハハハハハハハッ!なかなかやるようになった!』
瞬間、空悟の放った6発のロケット弾が爆炎を上げ、ドドドドドゥンと連続した轟音を響かせた。
「この声―――!」
ミナが舌打ちをして、爆炎の中で奴があまり損傷していないであろうことを悟る。
魔王は―――そう一筋縄にはいかないのだ。
邪神の空洞……そこに挑んだ七つのパーティ、選ばれた四十人の冒険者たち。
ミナはあえて話には出していなかったが、そのうち半分は帰還に成功したが残りの半分は帰還が叶わなかった。
そのほぼ全員が四体の魔王との戦いで命を散らしたのだ。
邪神ドミネーターの前に立てたのは、ミナとルル、そして剣士スハイルと魔導師ハニーファの四人のみ。
「でも、あのときにはなかった力が私にはある。ルル、あれを拘束なさい!」
「承知」
ミナは―――そうして意識を客人碎へと集中する。
乗せるものは二つ。
時間、空間、その二つの精霊の力だ。
「覚悟しろよ、てめえ……岬、恋ちゃん!」
「はいなのです!」「合点承知だぜ!!」
二人はその肌を合わせると、不死鳥への祈りを唱え始める。
―――不死鳥フェニックスとの契約をしている自分がいるのであれば、それは確実に成功するだろう、とミナは考えニヤリと笑う。
「ブライトネス・プリズン!!」『フローゼン・ウォール』
ルルの拘束魔法が飛ぶ―――だが。
『ハーッハッハッハハッハッハッハッハ!!!その程度の拘束術で我を止めることが出来るとでも思っていたか、裏切り者の魔王もどきよ!』
哄笑と晴れた爆炎の中から出てきた、五つの顔を持つ怪物が、光と凍気の牢獄を力尽くで打ち砕いたことを示していた。
「チッ……やはり、封印を解いてもらわないとあの程度の魔王でも拘束しきれないか―――」
「駄目よ、ルル!奴は記憶の魔王なんだから!」
ミナはそうしてリッチーとしての力を解いてほしいという要望を却下する。
『わかっているなぁ!そうだ!その男は―――元々闇のもの、光の神々共の加護が降り注ぐ空間でなければ真の力を振るえようとも、その心は滅びよう!フハハハハハッ!』
哄笑を上げる不気味に流動する五つの顔は、そうしてルルへと眼光を注いだ。
「―――ドミネーターと戦ったときは、切り札を使ったことを知っているわね?調和神様から授かった切り札を」
ミナはそれだけを口にすると、一瞬下を向き、キッと化け物を睨めつける。
『ふふふふふふ―――今度は此方からゆくぞ―――』
ミナの質問に応えることはなく、魔王はそう返すと、五つの顔が変貌していく―――
それは見覚えのある顔だ。
―――二つは死したボフとストーファのもの。
もう三つは―――
一つはカレーナ、一つは戦略兵器の魔王、そして―――
「―――なるほど。絶対殺すわ」
ミナはその顔を睨めつけて、奥歯を噛み締めて殺害を宣言する。
その顔は―――三郎の父、八郎のものである。
どんな日常回が読みたいですか?
-
メインキャラのエピソード
-
サブキャラのエピソード
-
敵キャラについての深掘り
-
その他(活動報告にコメントお願いします)