異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第252話「お前の狙い、絶対に叶わないかんなあ!!」

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「マジカルフレア!五連弾なのです!」

 

誘導弾めいて不規則に飛ぶ火球を五つ放ち、岬は「ふう」と息を吐く。

 

魔王兵たちの一部が空を飛び始めたので、自在に飛べる魔法少女二人が迎撃をしているのだ。

 

「カレーナおばーちゃん!サイクロンウォールは貼れないですか!」

 

「やめとけー!巻き込まれたら怪我じゃすまんぞ」

 

「ぬう!なのです!!」

 

風の攻性防壁サイクロンウォールは、今のような空中戦を始めとする味方が動く戦闘では使いにくい。

 

巻き込まれたら味方でもミンチにするからである。

 

もちろん、敵味方識別はある程度の働くので術者の意識さえ向けば、すぐにサイクロンウォールは解除されるが、それはそれで防壁を貼る意味がない。

 

「下がるか、岬ちゃん!」

 

「いえ!ならおばーちゃんにはもっと強い魔法を使ってもらいたいですよ!」

 

シュッと風を斬って、岬の頬を魔王兵の槍がかすめる。

 

「乙女の顔に―――なにするですかぁッ!」

 

魔王兵の槍を怒りとともに掴んだ岬は、そのまま背負投の体制に入る。

 

そして投げた瞬間に、「必殺!アナン・マジカル眼光なのです!」と目から怪光線を発射した。

 

すぐにもドォンと爆発音がして、魔王兵はばらばらになって砕け散った。

 

「岬ちゃん、一気にふっとばさないと空悟さんたちがまずいぜ!」

 

「わかってるのです―――では、行きますよ!」

 

眼下で魔王兵を切り払い、殴り飛ばし、蹴飛ばしている仲間たちを援護するため、二人は空中でサンダーバードストライクの態勢に入る。

 

『ギ、ギギギギ―――』

 

そのスキを魔王兵たちが狙わないはずもない。

 

詠唱を開始した二人に殺到しようとするが―――

 

ビツッ、ブツッと穴が開く音がして魔王兵たちはあるものは墜落し、あるものは動きを止め、あるものは破損したのか武具を取り落とす。

 

「だーいじょーぶかのぉー?」

 

それはカレーナの放ったウォーター・アローの術である。

 

ほとんど音もなく細い水の矢は、岬のそれとは比べ物にならない精度で魔王兵を撃ち落としていった。

 

「ありがとうなのです!行きますよ!」「おうさ!!」

 

二人は意識を集中し、詠唱を完成させる―――

 

「「光と希望と明日の翼!羽撃け未来のエネルギーッ!!マジカル!!サンダーバード!!ストライクゥゥゥゥゥゥゥ!!」」

 

二人が放った光の鳥は、10体ほどの魔王兵を薙ぎ散らして消えていった。

 

「……数で押してくるですか。戦略兵器の魔王と紡織の魔王で遠距離援護、武具の魔王の魔王兵で蹂躙……本体は動かないのです。いや、えーと……」

 

岬は、群がる魔王兵に蹴りを食らわせつつそう考えて、集中するため魔法で作り出したメガネを掛ける。

 

瞬間、チンという音がしたように感じた。

 

「ミナちゃん!もしかしてあいつはあそこから動けないのですか!?」

 

岬が叫ぶと、ミナは「―――そんなことはなかったはずだけど」とつぶやいた後、一つの可能性に行き着いた。

 

「そうか。私がそうしているように、あれにも考えがある―――うちのトーチャンの顔なんか使っても、何も引き出せないはず……だから、それはトーチャン個人の記憶ではない……」

 

ミナは少し考えて、「あ」と思いつくことがあった。

 

「そうか、5つの顔のひとつが沈黙なのはそういうことか」

 

カレーナの顔があった場所に浮いている魔王の顔は、沈黙の魔王。

 

成長した魔王ではあったが、それは攻撃も防御も何もなく、ただ周囲を沈黙で覆い尽くすだけの魔王。

 

それもミナたちのように強い魔力を持つものには無効であり、かつて―――ある王国を沈黙させて滅ぼしたそれを討伐したときは、ほとんど抵抗もなく討ち果たしていた。

 

廻も夕も無論のこと無機物にも影響する状態異常への対策は取っているし、生身組はなおのことだ。

 

―――つまり、沈黙の魔王を出したのは―――意味がある。

 

それは―――

 

「廻さん!夕ちゃん!この船のステルス性能は完璧なのよね!?」

 

『如何にもあらゆる現代の機構では―――む、そういうことか』

 

廻はそこまでで気づいたようであった。

 

『―――音声解析。うむ、予想通りだ。この空間の外へ探知が届き、そしておそらく信濃の外にこの魔王の力が及ぶまで後十分ほどと推定されることが今時分判明した』

 

―――皆はその言葉に確信する。

 

こいつの目的は、そうだ。

 

「皆まで言うななのです!信濃の存在を、外の世界に露見させるつもりなのですよ、こいつは!」

 

岬はそうして、「沈黙の領域を広げ、外の世界に『ここになにかある』と知らせること!近づいた人間や動物が沈黙して喋れなくなれば……!」とステッキを魔王へと向ける。

 

「―――嫌でも調査する必要が出てくる。ここは、たかが100kmしか陸地から離れていない……!」

 

その光景をミナたちに見せるために、あえて闘いの中でそれを起こそうとしているというのがミナと岬の見立てであった。

 

それだけではない。

 

それがミナの父の顔を使っている理由だ。

 

負の感情、記憶を引き出すために、利用しようとしているのだ。

 

沈黙の魔王は、沈黙させた相手に滅びのイメージを送り込んで絶望させ、命を吸い取る―――

 

それには具体的なイメージがあるほど効果は高い。

 

かつてある王国を滅ぼした時、沈黙の魔王が使ったのはその国の王のイメージ。

 

善政を敷いていた王のイメージだ。

 

なら今はどうか?

 

水門三郎の父の姿を取る理由は?

 

そう、こいつの狙いは八郎を良く知るものを。

 

今も愛しているものを。

 

即ち、三郎の母、ミナの母・茜を殺そうとしているのだ。

 

―――全ては勇者を苛立たせ、悲しませ、怒らせ、憎ませ、絶望させるために。

 

そのためだけにやっている。

 

―――邪神のやりそうなことであった。

 

「どう?間違ってる?」

 

ミナはその推理をクソ魔王へと静かに語り、奥歯を噛んだ。

 

『フハハハ!概ねは当たりだが―――それだけではない。わかっているだろう?我がそうしなくとも!もはや貴様らも、ダンジョンのことも、この艦も!存在は露見する!我はそれを少しだけ、少しだけ早めるに過ぎない―――それともあがいてみるかね?』

 

その言葉通り―――堂々と本当に嫌がらせでやってるだけ、と公言した魔王は哄笑をあげ続ける。

 

一瞬たりともその笑いを継続させる訳にはいかない。

 

そして、時間もない―――

 

「孫娘よ。どうやら面倒事になりそうじゃの」

 

―――その時、二マっと笑った祖母が声を掛けてきた。

 

「何よ、ばーちゃん」

 

「何、状況打破というのであれば、お主の契約した精霊に頼むのが良かろうとな」

 

クスリクスリと含み笑いをしながら、女は魔王を見据える。

 

ミナを笑う声ではない、魔王を嗤っているのだ。

 

それに気づいたミナは「……聞かせて」と小さくつぶやいた。

 

「貸しイチじゃぞ。ほれ、黒い死体の婿殿もこちらへ来よ。あれを短時間に倒すには、勇者の力を使うよりも簡易であろうよ」

 

キヒヒ、と小悪魔のように笑った祖母の悪巧み。

 

ミナは今、それに乗る気になっていた。

 

「ルル」「わかってますよ。わかってます。あーそういうことをするつもりなら、僕だけじゃなくて―――」

 

ルルは上を見上げて、「岬さん!精霊使いとして、少しでも力が必要です!」と叫ぶ。

 

「わかったのです!」

 

岬の元気な返事に、ルルは満足そうに肯いて―――じっとりとした目をカレーナに向ける。

 

「全く不本意ですよ」

 

「おや、そうかえ?あれをギャフン……ギャフンで良いのかの?目に物言わすには良き案を授けよう」

 

不本意と言う割には、ルルの顔にも笑みが浮かんでいる。

 

「―――ま、より苦戦するかもしれないけども―――いいわ!」

 

最後にミナがニタリと笑って魔王を見据えた。

 

「お前の狙い、絶対に叶わないかんなあ!!」

 

その叫びに、魔王が『何……?』と怪訝な顔をする。

 

「てめーにカーチャンは殺させねえし、この船のことを外の世界に露見させるつもりもねえよ。おめーは藁のように死んで、こいつはずっとここで眠るんだ」

 

低いドスの利いた声でミナは吠える。

 

―――ここが、記憶の魔王の潰える地となると。

 




正真正銘、書溜めゼロになり申した。
あばばばばば……

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