異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第253話「竜の兜ぉ……持ってくれ!たのむぜッ!!」

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―――ぼそぼそと祖母が自分に耳打ちをしてくる。

 

「―――ってわけじゃ。どうじゃ。極まりし精霊使いの我と汝、そして死体殿と岬がおれば容易くできよう」

 

ニターッと嫌な笑いを浮かべる祖母であったが、ミナはきっと自分もわずかに眉を顰めつつ同じような顔をしている自覚はあった。

 

「あなたにしてはまっとうだ。時空の果てにでも追放するような意地の悪い方法を使うと思いました」

 

ルルが杖に力を込めながら、フウッとわずかに安心したような顔になってミナを見た。

 

「うん、私は賛成。岬もいい?」

 

その相棒の顔に、自分はOKと肯じて魔法少女を見ると、彼女はニパと明るい笑みを浮かべて「ダルマにして海に蹴っ飛ばすようなやり方であたしは賛成なのですよ~♪」

 

そう、恐ろしいほどに心底明るい笑みを浮かべていた。

 

『作戦会議かね?だが無駄無駄無駄無駄というものだ!ウワーッハハハハハ!!』

 

魔王兵の数を増やし、三魔王の力を用い、記憶の魔王は着実に前衛メンバーに迫っていく。

 

『うむ、夕よ』

 

『ああ、キリがない。空悟、七式星雲砲改を起動するから、恋と一緒に我々を守っていてほしい』

 

廻が頷くと、すぐに夕がそう言って空悟を見た。

 

「っし。んじゃ、弾も全部使っちまうぜ」

 

空悟は斬鉄剣を片手で構えつつも、小脇に重機関銃を抱えてニッと笑う。

 

「1分持たせればいいかい?」

 

『十分だ。脚部、床部固定。腕部展開』

 

『空間検索、実行―――再実行。再試行』

 

空悟の言葉に二人は身体を床へ固定して、腕の展開を始める。

 

二人には同じ改修が施されていたのだろう、寸分違わず展開は完了し、暗黒物質ダークマターの存在検索が始まる。

 

ダークマター、ダークエネルギーはどこにでもあるのではないかと言われる存在である。

 

地球の周りにもわずかに存在するそれを、空間流体に寄る飛躍理論によって検索、収集、変換して打ち出す超越科学の産物だ。

 

『再検索、完了―――空間接続、完了。状況、緑。暗黒物質流入開始』

 

『―――障壁展開。大気流出防止措置、完了。暗黒物質変換開始―――』

 

ポッカリと開いた空間の穴に、二人は腕を突き出して―――

 

二人の体に急速に熱量が充填される。

 

それは殺人光線の充填とは桁の違う熱量だ。

 

『空間接続、解除。暗黒物質―――充填百二十%―――』

 

二人の瞳が輝く。

 

雷が弾けて、バリバリバリバリと一人で撃ったときよりも大きく空間を輝かす。

 

魔王兵たちは―――空悟の銃撃と。

 

「ミストレル―――イマージュ!!」

 

恋の魔法が防いでいた。

 

恋の分身たちが、回転するバレルのように彼女の周りを回り、エネルギーを充填して―――

 

「バンッ!」

 

中心の恋が、そうして銃撃音の口真似をすると、回転するエネルギーが発射される。

 

それは物理的な衝撃を与えるものなのだろう。

 

バギバギバギバギ!と砕け散る音が響き渡り、魔王兵たちやミサイル、それに暴食の魔王顔の放つ吐瀉物を吹き飛ばしていった。

 

「っし!」

 

恋がガッツポーズを取って、吹き飛んでいく魔王兵へと追い打ちをかける。

 

その様子に―――暴食の魔王顔が怒りの形相で口を開いた。

 

「やべっ!ビーム来るぞ、ビーム!恋ちゃん、俺の後ろに回れ!防壁もだ!!」

 

「わかった!光よ!肉に還り壁となれ!マジカル・プロテクト!!」

 

―――まだ夕たちの準備は終わらない。

 

『くっ……!やはり試作品、二度は難しいか!』

 

『落ち着け夕。私が補助する―――それに、空悟たちは問題はない』

 

歯噛みする夕をなだめつつ、廻は魔王顔と対峙する二人を見る。

 

そこには何の不安も―――あるはずがない。

 

『ヴォォォォェェァァァァァァ!!!』

 

空間を食いちぎりなら歪めて、暴食の魔王顔はいつか貪った何かを放とうと悶えた―――

 

「竜の兜ぉ……持ってくれ!たのむぜッ!!」

 

空悟の兜がギラリと光り、凄まじい光量を放つ―――

 

『ァァァァァァァァ!』

 

魔王顔が大きく口を開け、そして禍々しい赤い閃光が。

 

魔王顔から放たれた閃光は―――しかし。

 

ギィィィィィィィィィィィィンッ!!!と巨大な金属がぶつかり軋む音を立てて消えていく……

 

マジカル・プロテクトを竜の兜が補強していたのが、恋にはよくわかった。

 

そしてその先にあるものも―――

 

「竜の力!邪に落とさせまい!宝を集める竜でなく、天を征く龍に我はなろう!」

 

空悟が力強く、轟音の如き―――詠唱をし始めたのだ。

 

「我は白き鎧を纏い、我は人の姿を借りて、我の力を雄々しく振るおう!これぞ我が流離譚故に!英雄と名乗るは後世に任せる!光の騎士と暁の姫に誓う龍とならん!!」

 

瞬間、竜の兜から糸のようなものが弾けて―――空悟の体の前面を覆った。

 

それは繭のように、空悟の身体を守る盾となる。

 

「しっかり隠れててくれよ、恋ちゃん!しゃおらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

空悟はそのまま手を前にかざす。

 

既にデス・ウォールを突破したその赤き光を、白き耀が飲み込んでいく―――

 

ジュウウウ、と焼け焦げる音が聞こえて……

 

赤き光は、全て消え去っていたのであった。

 

「よぉーーーっし!なんかやれると思ってやってみたが、おもったよりうまく出来たぜッ!」

 

空悟がガッツポーズをして、魔王を見遣ると『まさか、まさか、それはぁぁぁ!』と途端に驚き始めた。

 

「―――失われた勇者の兜―――ではないな、あれは。ま、今はよかろ」

 

カレーナの歌うような声が聴こえる。

 

「さすがオレの親友だぜ」

 

ミナの誇るような声も。

 

その二つの音を聞いて、夕と廻は。

 

『―――よし、十分だ』と妹はつぶやいた。

 

『こちらも大過なく』

 

兄が応える。

 

ならばどうなる。

 

黒き煌きが二人の合わせた砲身に集っている―――可視光を放たぬ不思議なエネルギーが。

 

『ふたりとも、下がり給え!』

 

「おうっ!」

 

先程の夕単独での発射を見ていることから、既に空悟は恋を横抱きにして射線から逃げるように離れる。

 

『『耐衝撃、耐閃光防御―――索敵、正常。『七式星雲砲改』―――斉射!』』

 

瞬時、放たれた黒い光は―――

 

魔王兵たちを呑み込み、魔王へと殺到する―――

 

レーザーブレスに邪魔をされた先ほどとは異なり、それはストレートに魔王へと着弾した。

 

『ぬぅぅぅぅわぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

魔王が叫ぶ。

 

叫んで、熱量へと抵抗をしようとして、そして。

 

―――ドォォォォォォォッ!!と轟音。

 

轟音の後には、そこには―――沈黙と八郎以外の魔王顔を完全に喪失した魔王の姿があった。

 

『ぐ、ぬぬぬぬぬぬぬっ!さ、再生、再生だ……!おのれぇ!!』

 

魔王は悔しげに叫んで―――『我をも一蹴せんとするか、勇者ども!』と続けて。

 

「ハンッ!」

 

ミナが笑い飛ばした。

 

「所詮てめーは再生怪人。オレと仲間たちを斃したきゃ、目新しいもん持ってきな―――」

 

客人碎を地に突き立て、祖先の指輪を輝かせ、そしてミナは傲然と微笑んだ。

 

「―――何度も言うぜ。ここがお前の潰える場所だ」

 

その言葉を終えると、勇者とその従者、勇者の婆と魔法少女は声を合わせて精霊へと呼びかける―――

 

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