異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第255話『どうやら次の冒険は決まってしまったようだな』

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『何をしに来た、というよりどうやってきたお前ら』

 

夕が機関砲を三人に向けてそう聞くと、クロキが「いうと思うか?」と返して口の端を吊り上げた。

 

「いいから!早くやって帰ろって!」

 

ショウコが絶対零度の瞳で睨んでくるルルの眼光に怯えて後ずさると、マコが「……その前にやることがあるだろう」と瞑目して嘆息する。

 

「……その歪みを消すのが先でしょう。オリジナルも疲弊している様子。手伝ってあげましょうか」

 

マコが慇懃にそう問うと、岬が「……何を企んでいるのか知らないですが、とりあえず魔力を貸してくれるなら貸してほしいのです」

 

警戒は解かずに岬がそう答えると、ミナもまた「……同じ意見よ。私がいくら疲弊していても、あなた達3人位は簡単に倒せるわ」と返す。

 

其れは全く事実である。

 

ミナがこの場で動き、三人の腹に気功術を食らわせれば例外なく絶命するだろう。

 

そんな無謀をするとも思えないため、ミナは脅すようなことを言う。

 

「ガドゥルの言っていた魔女たちがこうも数がおるとはのう」

 

カレーナが髪を手漉きながらそう言って、「ふむ。目的はその隠し持っておるものかのう」と続けてフッと嗤った。

 

「それ、岬の一部じゃろ?それをわざわざ持ってきた理由はなんじゃらほい?」

 

他人事のようにニヤリニヤリと身体を前に倒して胸を強調するような仕草をしつつ、勇者の祖母は疑問を投げかける。

 

「……お見通しか。ならばやるしかないね」

 

マコは冷や汗をにじませながら、懐から虹のかけらを取り出し―――

 

ミナに突きつけた。

 

「何を―――」「ミナさん!」「孫ぉ!!」

 

突きつけられたそれに嫌な予感を抱いた勇者の従僕と祖母は、彼女を守るために突きつけられたそれの先にある勇者の前へと立ち構える。

 

―――だが、無駄だ。

 

「駄目なのです!それは純粋な物質ではないのですよ!!」

 

岬が叫ぶがもう遅い。

 

その―――飴玉に見える物体は、守護する二人をすり抜けてミナの脳天にドカリとぶつかる―――

 

はずだった。

 

「―――ぬ、ぐっ!?」

 

それはミナの額の中に、すっと入って消えてしまったのだ。

 

「まさか!」

 

ルルが叫び、ふらついたミナを空悟が抱きとめ「大丈夫か、三郎!」とその顔を見据えて叫んだ。

 

「―――3人共、二度と地上に戻れなくなりたくなかったら、あたしに魔力を供給しなさい。でなければここから帰さない」

 

―――岬は、それがどういう意味かを瞬時に理解し、三人にいつものですです口調を忘れて脅迫する。

 

「岬ちゃん、あたいも」「ありがとうなのです。レインボーフラワーを使いますですよ!」

 

岬は恋に答えると、怒りのままに三人をにらみ―――ステッキを向ける。

 

すると、ズズズ、と湧き出すように三人の体から魔力光が現れる。

 

「これは……!」「強制的に!?」「嘘でしょう!?」

 

驚きの声など無視して、それは岬のステッキへと集まった。

 

「ルルくん!おばーちゃん!ふたりとも退避なのです!光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――その心、支配するものから解き放ち給え!!」

 

光の向日葵が虚空に咲いて、満開となる。

 

「悪しきを、凶つを、魔に落つ前の姿へ。天の道を思い出させるのです―――!さぁお眠りなさい!アナン・レインボー・フラワー!チャージアップなのです!!」

 

光の向日葵は―――ミナと空悟、そしてその背後のバグの塊を巻き込んで浄化していく―――

 

「う、ぬう!」「だから大丈夫か、三郎!」

 

やがてバグは跡形も残さずに消え去り、そして―――

 

ミナの右目から虹のかけらが出現する。

 

―――その瞳は金色に染まっていた―――

 

「おい、我が孫!ミナ!無事か!目が大変なことになってるが、意識ははっきりしとるか!!」

 

誰よりもまず心配の声を先に上げたのはカレーナである。

 

「……だ、大丈夫。意識もはっきりしてるし、魔力も回復してるわ……」

 

起き上がったミナは、そうしてフッと笑う。

 

「……もしかして、目、なんか変なことになってるか?」

 

「なってるよ!右目だけ金色に染まってるよ!勇者の武器使ったときみたいに!!」

 

空悟が叫ぶようにそう言って、「違和感とかないか?」と確認してきた。

 

「マジか。いや、特に違和感はねーけど……何かが目に集まってる感じはするな」

 

そう目をパチクリさせながら答えると、カレーナが「……よもや。地の上に戻ったら我が診ちゃる。これは死体殿の専門外じゃわ」と珍しく真剣な面持ちでミナの金色の瞳を見つめる。

 

「うぬら……何を目的としておった?」

 

カレーナが孫を傷つけられた怒りを放ちながら、マコたちを振り向き睨めつけた。

 

カレーナ・トワイライトという女は激情家であり、当然それは怒りも激しいことを示している。

 

―――ベクトルさえ異なれば、似ているというのが気に食わない。

 

空悟とともにミナの介抱をしているルルはそう思って、目をそらす。

 

―――その瞬間、マコたちは表情を歪めてミナを見た。

 

「……イェカ様の言いつけだ。そこの化け物が揺らぐ、と。そのために恐ろしいことが起きるから、それをその女に投げつけろ、と言われてきた」

 

クロキが苦々しくそう答えると、岬は回収した虹のかけらを見つめる。

 

「……なるほど。そういうことなのですね」

 

岬はそう言って、「なにか邪悪なものがミナちゃんの中にあって、それをこの虹のかけらで『目に集めた』というわけですか」と推測を述べた。

 

「そういうことになる……」

 

マコがそうして踵を返そうとすると、「まぁ待つが良い。なればうぬらの首領も孫の目に集まるなにかについて聞きたかろ」と怒りを解いたカレーナが「逃さねえよ」と言わんばかりの眼光で少女たちを射抜く。

 

「……わかった」

 

「わかっちゃだめだよぉ!帰ろぉよぉ!」

 

無言で首肯したクロキと声に出したマコ、そして震えて帰ろうを連呼するショウコとその反応は多様だったが、逃がすつもりはカレーナだけではなく全員がなかった。

 

「……聞かせてもらう。イェカ様のために」とマコが言って、ショウコの口がクロキの手で塞がれると、カレーナは話しだした。

 

「―――これはと~~~っても厄介じゃ。我、今すぐ帰りたいくらい厄介な出来事じゃぞ」

 

そう前置きして女は話し始める。

 

「これは我が一族にしかわからぬ。これはとても厄介なものの復活の徴候なんじゃよ」

 

―――静かな面持ちでそういうと、艦長室の椅子に彼女はどっかりと座った。

 

「……まさか。嘘でしょ?」

 

「嘘なものか。お主が感じているということは、より近い我には当然のごとくにわかるというものだ」

 

カレーナが指を振って、それから戸棚の中からどうやらウィスキーらしき瓶を取り出して、「……まだ飲めるの、これは」と真顔で言う。

 

真剣な面持ちなので、ルルも空悟も、他の誰もがその言葉を咎める気にはならない。

 

「―――熟成、というのかのう……我らトワイライトの氏族にはある呪いがかけられておる」

 

カレーナは何でもないようにそういって、瓶を机に置いた。

 

「―――何、話せば短く、詳しくしようと思えば永く長い話になるが―――端的に言おうかの」

 

カレーナはミナの目を見た。

 

「うぬの心より、虹の帝ティトウスが復活する可能性があった、っちゅうこっちゃ」

 

パッと手を天に広げて肩をすくめ、勇者の祖母はため息をついた。

 

「やっぱりそうか……通りで心がぐらつくと思った」

 

ミナはため息をついて、少し咳き込んだ。

 

「どういうことだ?」

 

空悟が訝しげに聞くと、カレーナはミナに話していいか、とばかりに視線を向けてきた。

 

なので、ミナはコクリと首肯して賛意を示す。

 

「簡単な話じゃ。我らが祖先。世界を支配しようとした愚かもの、上古の森人の恥さらし。我のような放蕩者なぞまるで及ばぬ聳え立つ糞の山―――虹の帝ティトウスはの、我ら子孫の身体を一定の条件を満たしたとき―――即ち己を超える強者の身体を得た時にその心を乗っ取ると言われておる」

 

勇者の祖母はそうして歌うように伝承を話した。

 

―――虹の帝ティトウス。遂に裏切られ、刃の下に倒るなり。

 

しかしてティトウス、二人の息子に呪いを残す―――

 

『うぬらの身が我にふさわしく育ちし時、心を千々に乱すことなかれ。我は千に散る心を万と乱し億と歪め―――その心を奪い蘇らん』

 

呪いをかけられた二人の息子は、自らを罰することを決めて北の森へ隠れ住む。

 

黄昏の森と呼ばれた暗い森。

 

いつしかそこは天護の森と呼ばれるようになり、生き残った上のエルフ達が集うようになった。

 

長はトワイライト。

 

黄昏の氏族の始まりである……

 

『……なるほど。そうしていつか蘇る王、と』

 

廻がそうして嘆息する。

 

『どうやら次の冒険は決まってしまったようだな』

 

そう続けると、夕が『そうとは限らんが……ミナ』とミナの目を見据えた。

 

『どうなんだ。その虹の帝は復活するのか、しないのか?』

 

その質問に、ミナは「今すぐにはどうこうってことはないわ。最悪、目を取り替える必要は出てくるだろうけど……」と肩をすくめる。

 

「……そういうことなら、僕の目をあげますよ。なに、僕のはいくらでも再生しますから」

 

ルルがにこやかにそう笑いかけてくるから、ミナは思わず「はいはい、ありがと」と返して彼の頭を撫でる。

 

「えっ?」「イイコイイコ、でいいかしら。ありがとう」

 

本当に自然に、なんでもないことのように。

 

「あの、ミナねーちゃん。ここに来る前の恥ずかしがりは?」

 

「……よく考えたら、こいつはずっと私のものなんだし、深いこと考える必要はなかったと気づいただけよ。揺らぐ必要はなく、いつか来るべきときが来たらそうなるの。多分これが……」

 

恋に質問されて、ミナは一瞬逡巡してそう答え、最後の言葉を言いよどむと誤魔化すように、「お前のペットボトルは入らねえ。それだけは言っておく」と男口調でルルに釘を差した。

 

「わ、わかってますって……でも、小さく出来たら」「公衆の面前で何言ってんだ?死ぬか?」

 

抱きついてきそうだったルルの顔面を手でつかんで抑えると、ミナはドスの利いた声でそう返して嘆息する。

 

そして、カレーナに向き直って。

 

「やっぱりそういうこと……どうにかする方法、ばーちゃんは知ってる?」

 

「知っとることには知っとる。その目を摘出して別の身体に移せばよい。なんでもいいぞ。只人であろうが、山人、小人、なんならそこらの森人でも。一番良いのは縁を持つもの、もしくはそれらを模した肉人形じゃ」

 

カレーナはそこで言葉を区切り、ミナを指さす。

 

「ま、お主はフレッシュゴーレムなど幾らでも造れようし、問題にはならぬ。本来であれば目を始め重要臓器の一部にヤツの欠片を集めるのに苦労するのじゃが、それはそこの魔女共がどうにかしてくれたからの」

 

ニッと笑って正座している魔法少女たちに笑いかけると、三人共が憎々しげな顔を向けてくる。

 

「まあお主の目―――否、お主の身体と命は我らにとっても世界にとっても貴重なもの故、よくよく考えてからやるといい」

 

カレーナはそう言うと、空悟とルルに「椅子変わるから、孫を休ませたれ」と言って椅子から立ち上がった。

 

『さて、お前たちの処遇だが』

 

廻が正座させられている三人の前に立つ。

 

そうしてミナとルル、そして岬に目を向けると三人共が首肯したので、静かに言葉を紡いだ。

 

『どうやってここに来たかも聞かん。ミナをすんでのところで助けてくれたのは君たちだ。感謝する』

 

「見逃す、と?」

 

『そのとおりだ。帰り給え。礼を施したいが、残念ながら渡せるものが私にはない』

 

マコにそういうと、瞳をミナにまた向けた。

 

「……これを持っていって。あなた達のような魔法使いには必要なものでしょう」

 

ミナはバッグの中からワンド―――小さな杖らしきものを三本、否……四本取り出して空悟に渡した。

 

「こりゃあ、ずいぶんいいもの、だと思うんだが」

 

「わかるようになったか、親友。これはスケープドールと呼ばれる杖だ。念じて握れば自分を模した人形を作っておくことで『入れ替わる』ことが出来る」

 

ただし、発動させると持ち物から服から何もかもその場に残ってしまう……放り捨てて行くことになるので、本当に緊急脱出用のアイテムである。

 

「あー、ロク◎フェ◎ト」

 

「そういうこと。魔法少女みたいに服が体の一部になってるタイプなら、役に立つだろう。持ってってくれ」

 

空悟に渡しながらそういって笑うと、マコが「施しのつもりか?」と剣呑な目を向けてくるので、「いやね。廻さんが言ったじゃない。お礼よ」とだけ答えて椅子から立ち上がった。

 

「それじゃあ三人とも帰った帰った。こっちはこの船の後始末が残ってるからさー」

 

ミナがそう言って三人を部屋の外へ押し出していく。

 

「ちょっと、やめろおい」「良いから帰ろうよぉ!」「チッ」

 

三様の反応を示す魔法少女を押し出すと、そこには魔法陣がひとつ。

 

「ははーん、それ多分白き空に繋がってる魔法陣ね。んじゃまたねーイェカさん?だっけ?首領さんによろしくねー」

 

「ちょっとやめ」「「キャー!?」」

 

トン、とミナが背中を押してやると、三人は何かを言わんとして魔法陣に消えていく。

 

 

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