異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第257話「情報量の多い冒険だったぜ……」

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甲板でミナは、晴れた天を見上げながら「情報量の多い冒険だったぜ……」と低い声で、ルルに膝枕してもらいながら寝転んでいた。

 

「……オレの昔の姿に、ヴァダーの女郎に、記憶の魔王……んで、この目と腐れご先祖様、か……」

 

ミナは自分を覗き込む少女のような少年と、その紫の瞳に少し顔を赤くして嘆息する。

 

「……それに、おめーが偽らざる気持ちで言えば異性として好みだなって自覚できたことも、か……」

 

ミナははー、と今まで何を無駄なことを考えてきたのか、と虚しくため息をついた。

 

そんなミナを見下ろして、カレーナはニッと笑った。

 

「うむ、やはりうぬが恋愛を拒むのは我だけのせいではなかったのう。ははは、それはそうじゃ。我の孫娘じゃもの」

 

祖母はそうして尊大に胸を張ると、「お主の真面目腐った親父が最初の妻……確か只人の女であったか。それを連れてきたのも1000にならぬころよ」とくすくす笑う。

 

「あれがのうなってから、しばらくしてシリウスは今の嫁とくっついたんじゃ。我が一族は早めに番いを見つけるのが常故の」

 

ミナはそんな祖母をじっと睨めつけて、「……知ってたけど。もう少し年取ってからでもいいはずなのに」と言って嘆息する。

 

「それもおそらくティトゥスがミナさんの心を乱すための準備だったのでしょうね。でも、まあほぼほぼ無駄になったわけですが」

 

虹の帝の因子が潜む瞳を覗き込んで、ルルは笑った。

 

「それもどうせ邪神の仕組んだことでしょう。とすれば、あの魔法少女の軍団もまたドミネーターにとってはイレギュラーということになる」

 

ルルはミナの髪を梳く。

 

今までならぶん殴られていそうな行為だったが、ミナはその冷たい死体の温度の手に撫でられることを厭ってはいないようであった。

 

「……なぁ、ばーちゃん。オレがルルに気持ちを向けられなかったのは、腐ったご先祖様のせいだけじゃないと思うんだけど、どー思う?」

 

ミナは髪を梳かれながら、視線だけを祖母に向ける。

 

「……そうじゃの。お主の心を乱すのが邪神の狙いというのであれば、かの愚かな王の呪いはうってつけのものであろうな」

 

怒らせ、苛立たせ、辛い気持ちにさせて心を揺らして来る……

 

半グレどもを操った事件は街を泣かせて、ミナを怒らせるもの。

 

戦車の事件も街を乱して、ミナを苛立たせるためのものではなかったか。

 

岬が魔法少女へと成ったことも、歌自慢大会を外国人を使って失敗させようとしたことも、何もかも。

 

こんな美少女めいた美少年、すぐに―――そう思っても仕方なかったのに。

 

カイムやハルティアのことがあったとしても、彼の乱行が時に見るに耐えなかったとしても、だ。

 

彼はそれほどの美貌を持っていて、心からミナに尽くそうとしてくれているのだから。

 

……と、するならこの瞳をほうっておくわけにもいかない。

 

いつその思いをクズなご先祖様と邪神共に利用されるかわからないのだから。

 

そして瞳を移すための最適な身体は、今―――ミナのバッグの中に眠っているのだ。

 

「儀式にいくらくらい時間かかるっけ」

 

「どんなに急いで準備しても、この世界の月が一度満ち欠けして戻るほどにはかかるであろうなあ」

 

カレーナが腰に佩いた刀をシャリンと鳴らしてそう答える。

 

ならば、やることはひとつである。

 

「―――心を休ませるのも大事か」

 

ミナは小さくそうつぶやくと、暫くの間―――せめて夏休みが終わるまでは、ダンジョンアタックをする以外には動くまいと決意するのであった。

 

 

 

―――同じく甲板にて。

 

照りつける強い日差しを魔法で取り出した日傘で防ぎつつ、岬と恋は再び潜伏用の躯体へ換装した廻・夕と向き合っていた。

 

「アレどう思う?」

 

恋がまず口火を切る。

 

「んー……割と不気味なのです。でも150年も一緒にいたのですし、きっかけがあればそう言うことなのだと思いますですが」

 

岬が訝しげにそう返すと、廻が「とはいえ彼女は先祖の邪悪な意思に、意志を曲げられていたのだろう。我らが兎や角言うべきこともであるまい」と達観した言葉を放つ。

 

「それに女男も金髪女も、150年も一緒にいるのだからそう言う感情は一方的にあるものでもあるまいさ。馬に蹴られたくないぞ、私は」

 

そんな風に4人がいつもと違う様子のミナのことを品評していると、空悟が後ろからゆっくりと近づいてきた。

 

「あ、空悟さん。空悟さんはどう思うです?」

 

「どうもこうも。三郎はチョロいやつだって言っただろ?自分を好きになってくれるやつに、結構無条件に甘いのさ。ルルくんのこともそうだったんだろうよ」

 

空悟は口の端を嬉しげに歪めて笑い、そうして「おーい!三郎!そろそろ俺の兜の話でもしようぜ!」と大声で声を掛ける。

 

「わーかったー!」と叫ぶ親友を見て、空悟は「うんうん。これで文の心配も薄れるってもんよ」とにこやかな顔で親友の方へと歩いていく。

 

その後姿に「浮気でも疑われてたか?」と夕が声をかけると、「ビンゴ、とだけ言っておくぜ」と遠い目になった。

 

「うちのワイフは嫉妬深いんだ。後、三郎がマジで三郎そのものだとまだちょっとだけ疑ってるんだよなあ……」

 

てくてくとそうしてミナの方へ歩いていくと、ミナが膝枕から立ち上がって「良し!じゃあばーちゃん、頼むわ!」と言って甲板へあぐらをかく。

 

それを見た仲間たちは苦笑して、空悟に遅れてすぐにそこへ近づいていくのであった。

 

 

 

「ぶっちゃけ、その竜の兜は原初の勇者の使ってたものじゃろなあ。でなくばあんなんできんわい」

 

カレーナはポイ、とペットボトルを投げ捨てて、「おっと。これは腐らぬのであったな」と器用に腕を伸ばして投げたペットボトルをキャッチして嘆息する。

 

「生身で飲む水はうまいのう。それはともかく……あの魔法というか意志力の発露と言うか。あれはお主の体を蝕むぞ、警邏殿よ」

 

そうしてカレーナはミナに「シリウスから聞いておるであろ。原初の竜の勇者のことは」と言って、岬が渡してきたワッフルを食む。

 

「ほう、これはこれは。牛の乳が入っとるんじゃな。うん、うまい」

 

「食ってる場合じゃないでしょ……知ってるわよ。竜の勇者の白い武具は、竜の勇者が竜だったからこそ扱えたもの。後世で勇者の武具と呼ばれるものは、神と精霊が竜の勇者の武具に宿る力をもとにして与えているものだって」

 

ミナはそうして黄昏の剣をバッグから取り出して握る。

 

「これもそう。元々は虹の帝が当時のハイエルフたちに作らせた王の剣を、王国が崩壊した後にディーヴァーガ様たちを始めとする善き神々が拾い上げて勇者の剣にしたものだし」

 

「なるほどな……これが前に言ってた竜の勇者の武具ってことなのか……それをなぜ俺が使える?」

 

ミナの嘆息に、空悟は真剣な目で親友とその祖母を見つめる。

 

その答えは―――

 

「ぶっちゃけ言えばまだわからぬの」

 

カレーナが孫とそっくりな顔で、あっけらかんとそう言うと空悟は「マジか!?」とずっこけてしまった。

 

その様子におかしみを感じたのか、カレーナは手の甲を顎に当ててクツクツと笑う。

 

「―――じゃが、無関係ではあるまい。この短期間に伝説と言われた……上位精霊たちの上に君臨する精霊たちが三体も姿を表しておるということとのう」

 

そう続けてミナを見れば「そうだな……この世界がループしている可能性も出てきてるわけだし、そこらへんを解明しないといけねえな」と真剣な顔で顎に手のひらを当てていた。

 

「ま、いいじゃないですか。僕としては―――しばらく休んで、それから一個一個片付けていきましょう」

 

ルルが微笑むと、ミナは「そうね。この目を取り出す準備もしないといけないし」と微笑み返した。

 

「ところでなんだけどさ……目を取り出す取り出す言ってるけど、それって大丈夫なの?」

 

そこで今まで黙っていた恋が、ミナの金色の右目を見つめてそう質問した。

 

「うーん……まあそのための儀式、そのためのルルの目なわけなのだしね。問題はないわ」

 

ミナはそういうと、大海原に右腕を伸ばして「今回の冒険はこれでおしまいね!」と笑った。

 

「―――全く脳天気な金髪女だ」

 

夕はそう言うと、花束をひとつ海に飛ばして―――そして微笑んで敬礼した。

 

「この艦のことはお任せください」と呟いて。

 

これがこの冒険の一端の終わりであった……

 

 

 

「ところで、これ沈められるの?」

 

「信濃の潜水機能は無事だが、キングストン弁などの自沈に必要な機構はすべて念入りに削除されていた」

 

「削除かよ……!?」

 

ミナは夕の言葉に天を仰ぎ、「薺川博士に相談しよう」と廻に肩を叩かれたのであった。

 

どっとはらい。

 

 

 




TAROMANすげえな……

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