異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第278話「幕間9-1 スーパー改ってロッキード・マーティンのネーミングセンス、イエスだね!」

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―――その日、岬はミナとともに科戸研究所の車両整備室へとやってきていた。

 

メカメカしい自動機械たちが忙しく動き回っている。

 

今は数台の自動車が整備されている最中である。

 

「ほへー……これはどういう感じのものなのです?」

 

岬が薺川博士に尋ねると、骸骨は『うむ。現代の自動車を試しに複製しているところだ。私の飛躍理論は、結局のところ飛躍理論でしかなく、不完全な部分や古すぎる部分があるのでね』と肩をすくめてカラカラと音を立てた。

 

「ああ、廻さんや夕ちゃんの重量とかですか」

 

『そう。新躯体は軽量化を図っているがどうしてもね。偽装躯体も数百キログラムという重量問題からまだ解放されていない』

 

彼らの体重の偽装はミナとルルが貸し出しているマジック・アイテムに依拠しているのだ。

 

「でまあ、うちのカーチャンが遂に古めかしい軽自動車を買い替えることになったから、そのついでにってやつね」

 

ミナは後ろの方で自動機械を「どうやって制御してんだろ」などといじりながらそんなことを伝えてくる。

 

「あーやっぱりもうだめですか、あの車」

 

「こっちで修理して取っては置くけどね。表向きには廃車扱いにするのだわ」

 

そういうわけで新車として購入したハイブリッドの軽自動車を納入後すぐにこちらへ持ってきて、解析と複製を試みていたのである。

 

それもこれもミナの無限のバッグで、軽自動車どころか戦車ですらも10000分の1の重さにして可搬とすることが可能だからできることだ。

 

『協力に感謝するよ』

 

「いえいえ。こちらもお世話になってますし」

 

ミナはそうして、部屋の奥の格納スペースを見遣った。

 

「……ところで、アレは」

 

『うむ、もう完成しているよ。レストアというよりはほぼ新造となってしまったがね』

 

ミナの言葉に薺川はそう返して、シャッターで覆われた格納スペースへ視線を向ける。

 

すると、すぐにもシャッターが開けられていく……

 

そこに鎮座していたのは。

 

「お、おおおお……これがミナちゃんが持っていたという……!」

 

その姿を見て、岬はわずかに興奮する……

 

そう、それは。

 

「あのズタボロのチハたんと同じものとは思えないですねえ……あっちの世界で山人の人たちに直してもらったときもそう思いましたけども」

 

それは―――九七式中戦車改。

 

崎見老人の母親の亡霊が操っていたズタボロの九七式中戦車改のレストアされた姿であった。

 

「おお、これがあたしが魔法少女になる前の事件で町中を爆走していた戦車の片割れですか」

 

岬がその真新しい中戦車へと近づいていくと……

 

「ん……?なんかこれ変なのです」

 

岬はその装甲へ手を触れ……違和感を感じた。

 

「……まさか、近代化改修です?」

 

そう薺川へ向き直って聞いてみた。

 

『うむ、そのとおりだ。これはミナくんの要望で現代の主力戦車とも渡り合える戦車に生まれ変わっている』

 

薺川の言葉に、岬は「……中に入ってもいいです?」と聞いてみる。

 

『もちろん』と答えが帰ってくる前に、岬はハッチを開けて中に入っていった。

 

「……えっと、確かチハの操縦は立って行うやつだったはずなのですが。普通の乗用車みたくなってるのです」

 

そう、そこには普通に3人分の座席とおそらくは一人でも砲撃などを操作できるようにか外部映像を映し出すためのモニターがついていた。

 

砲弾も自動装填のようで、そのための機構やロボットハンドらしきものがそこかしこについている。

 

「うおお!べ、別物になっているのです……!完全に!」

 

『そのとおり。装甲は廻や夕の新躯体に使った軽量特殊合金。機関も同じく常温核融合機関へ換装した。砲や弾も総て最新型にしてある』

 

「形はおんなじだけどね。そこは私のオーダー」

 

ハッチから中を除いてミナは微笑む。

 

「内装は私の言う通りになってるわね。ほぼメ○ルマッ○スの戦車なのだわ」

 

竜退治はもう飽きた系遠未来戦車RPGの名前を出して、ミナは満足げに頷いた。

 

「……ほ、本物が見たかったのです……!」

 

ミリヲタでもある岬は少し肩を落としてハァとため息をついて、「でもこれはこれで!」とガッツポーズを取る。

 

「本物はそのうち公開が始まるんじゃねえかなあ。あの事件の後、神社に置いてきたし」

 

ミナはポリポリと頬を掻く。

 

謎の戦車爆走事件の最後に、神社へ置いてこられたミナのチハたんはこれから約1年後に公開されることになるのは以前語ったとおりである。

 

「ですかーそれは残念」

 

岬はそうして座席に座ってみる。

 

「博士、これってどのくらい強いのですか?」

 

純粋な疑問を骸骨に投げかけると、その亡霊は『機動力・攻撃力・電装系の能力は16式機動戦闘車に匹敵するだろう。装甲と不整地走行能力は74式戦車と同等級といったところだろうか』と返す。

 

「そしてそこに魔法によるバフをかけてやることで、完全となるってわけよ」

 

ミナがそうして、そうしたバフを無機物にかけることができること、そのためのコツを説明していく。

 

「やっぱりそういうの便利なのです―――で、どういうことを目的にこれって作ったのですか?」

 

「改の会との戦いは起きる。確実に。その時に顔を隠して戦闘するためよ」とミナは返答して、フッと遠くを見た。

 

そこには天井しかないが、その向こう側を覗いているのだろうか、と薺川は思った。

 

『この車両に名前をつけてやってほしい。九七式中戦車改のようでいてそうではないこの車にな』

 

薺川は苦笑の波動を滲ませた声で二人に話しかける。

 

「……そうですね。じゃあ―――あたしがつけてもいいですか?」

 

岬がそう言うと、ミナは「よほど変な名前じゃなきゃ大丈夫よ」と返答する。

 

この戦車は私がもらったものだから、と妖精は笑う。

 

「ありがとうなのです。では―――我が国の防衛を担う支援戦闘機F-2の幻のペーパープランから取って……」

 

岬はそこで一旦区切る。

 

数瞬勿体付ける……否、変な名前じゃないと信じるための時間だろう。

 

そうしてゆっくりと口を開いた。

 

「九七式中戦車スーパー改、というのはどうでしょう」と。

 

それはロッキード・マーティンが2004年の国際航空宇宙展で発表したF-2支援戦闘機の改修プラン「F-2 Super-Kai」から取ったものである。

 

「自衛隊みが強くて私は良いと思うけど。ダサカッコイイ感出てるし」

 

『うむ。現代にふさわしいのではないかな。夕は難色を示すかもしれないが』

 

薺川はそう言ってカラカラと笑った。

 

「名前も決まったことだし、試運転と行きましょうか!」

 

ミナはそうしていつの間にか青いレザーアーマーを身に着けていた。

 

「おお、ちょっと冒険するのですね?」

 

「そういうこと!それじゃあ持っていきますね、博士」

 

手を叩いた岬に、ミナはサムズアップで肯定の意を表し、そうしてから薺川に頭を下げた。

 

『うむ。武運を祈るよ。無事に持って帰ってきてくれ』

 

骸骨の言葉にまた一つ頭を下げたミナは、岬が外に出たことを確認すると無限のバッグにスーパー改を収納する。

 

するすると形を歪めながら戦車はバッグに収められ、同時にずしりとバッグは重くなる。

 

25tの重量は殆ど変わっておらず、しかし格納されれば万分の一の重さ―――2.5kgとなる。

 

オークやトロルの上位種よりも膂力があるミナにとっては羽とそう変わらない重さである。

 

「じゃあちょっとした冒険に……」

 

「出発なのです!」

 

戦車の存在に明らかにウキウキしている岬がそう大声を出して。

 

九七式中戦車スーパー改の初陣が始まるのであった。

 

 

 

―――しかしながら、その初陣はあっという間に終わったのである。

 

ダンジョンに侵入した途端、そこに現れたのは全長10メートルほどはある金属光沢を持つゴーレムである。

 

『ウォォォォン……』

 

ゴーレムはミシミシときしみ音を上げながらも、巨体に似合わない速度でチハを殴り飛ばそうと迫ってくるが―――

 

ギュイイイィン!と、ミナがバックギアを入れると時速30kmほどに急加速し、その拳が届かない位置まで下がる。

 

「っし。自動装填OK。発射!」

 

ミナが操縦桿の脇についている「砲撃」と書かれたスイッチを押すと、すぐさまドォン!と47mm砲が火を吹き、目の前のゴーレムが一撃で粉砕されるのを岬は見た。

 

「……割とお手軽に強すぎませんです?あれ、ミスリルゴーレムですよね?」

 

岬はモニターではなく銃眼から外を覗いて、破壊されたミスリルゴーレムを見つめた。

 

「うん。まあ博士の計算だと大体74式戦車と同じくらい硬い……はずかな」

 

ミナはわずかに自信投げに、それをモニター越しに見つめた。

 

「うん、きれいに倒せてるから剥ぎ取るべ。ミスリルゴーレムは珍しい上に、貴重な真銀が取れるから無駄には出来ないのだわ」

 

ミナはハッチを開けて外に顔を出し、危険がないことを確認するとミスリルゴーレムの残骸の物色をするため飛び出していく。

 

岬はその光景を見て、「うーん……やっぱりなんかチハたんっぽくないのです」とぼやくのだが。

 

「よっしゃ。ほぼ無傷で手に入ったか……作れるものが増えてよし!」

 

ミナはそんなことには構わずに無限のバッグに残骸を収納していった。

 

「でも相手はスーパーロボットの敵みたいなのが出てくるかもしれないですものねえ……バフかけてもっと強くなるなら、ミスリルの増加装甲とか着けても良いのかもです」

 

岬はチハ・スーパー改の助手席でそう思うのであった。

 

 




メタルマックスは名作。

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