異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第315話「今日もらえるのかもしれんぞ」

 

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―――9月9日となった。

 

それはミナの―――水門三郎の誕生日である。

 

とはいえ誕生日など高校入ったあたりから祝ってもらった記憶はなく、またハイエルフとして記憶を取り戻してよりは年の始めに同じ年に生まれた者たちと合同で祝ってもらう森人式の祝い方しかしてもらっていないので、ぶっちゃけミナにとってはどうでも良かった。

 

「忌中に誕生会とかやるバカはおらんわな」

 

「そうでもないと思うがな」

 

ミナはコーンスープを作りながら言って、居間に座っている夕にそんなことを言われていた。

 

「喪中、忌中に派手な祝い事はするものではないが、贈り物をもらうくらいなら問題はなかろう」

 

茶を啜ってそう言うと、彼女は森人の勇者に「女男に贈り物を強請ってみたらどうだ?二つ返事でなんぞくれるだろう」と皮肉げにフッと笑った。

 

「うーん、そういう気分じゃないし、ルルってあんまりプレゼントくれないのよ」と肩をすくめるミナに、夕は「だが、トルマリンの護符をもらうんだろ」とにべもなく言い放った。

 

「うっ……でもまだエンチャント終わってないからもらってないし!」

 

「今日もらえるのかもしれんぞ」

 

茶菓子―――長饅頭を口に放り込み、「うむ。新設した消化機構の分解力は問題なし」とそれ以上は言うこともないとばかりにそっぽを向いた人造人間に、ミナは「や、やだなあ。そんなことないってば」と少し顔をニヤけさせて返す。

 

「―――色ボケ」

 

彼女が呟いた言葉に、ミナは「うぐ」と一言うめき声を上げる。

 

「まあいい。まだ朝の5時だ。今日は日曜―――期待でもして待っているといいんじゃないか?」

 

小馬鹿にしたような声に、ミナは思わずおたまの柄をギュッと握りしめて―――

 

バギン、とプラスチックが爆ぜた音がした。

 

「あ」

 

「やってしまったなあ」

 

パラパラと落ちていくプラスチックの欠片。

 

ぐにゃりと変な方向に曲がったおたま。

 

顔を赤らめるミナに、夕は「焦げるぞ」と言って居間を出ていく。

 

「だから、そんなことぉ……」

 

ミナが何かを弁解しようとしたが、それをまたずに。

 

なお、先程壊したおたまでかき回していたコーンスープは、手が止まったせいで少し焦げてしまっていたことを付記しておく。

 

 

 

―――結局のところ。

 

「……では、誕生日プレゼントということでこれを」とその日の昼にルルがリボン付きのプレゼントボックスへ入れた何かを渡してきた。

 

「お夕飯は岬さんが作るそうです。それでプレゼントに変える、と」

 

にこやかな表情を崩さずに、ルルはそう言ってミナの掌にそれを置いた。

 

「えっ……あ、ありがと……いや、ほんとにくれるの?」

 

「せっかく用意したので、ぜひ受け取っていただきたいですね」

 

純粋に好意である、という顔にミナは顔を赤らめて「あ、開けていい?」と普段とは全く違う声音で返した。

 

「もちろん。さぁ、どうぞ」

 

「う、うん……」

 

ミナがそれを開けると―――中には電気石の指輪とミナを模した小さな人形が入っていた。

 

「……これって、スケープゴートの人形……!あんた、もしかして」

 

「はい。貴重でしたがオリハルコンとアダマンタイトを少しばかり」

 

それは魔法少女たちに渡したスケープドールの上位版……一度だけ死んでも数分以内に、どんなに致命的な損傷を受けていたとしても蘇生してくれるマジックアイテムだ。

 

「そういえばこれも切れてたもんね。ありがとう!なるべく死なないように使わせてもらうわ!」

 

冒険に有用すぎるアイテムを貰ったことで、先程のまでの恥じらいや困惑は一気に何処かへ行ってしまったのだろう。

 

ミナは欣喜雀躍して喜ぶ。

 

夕に対してめちゃくちゃ焦りと羞恥を見せたことなどどこへやら、である。

 

「それにこっちの電気石の指輪も……これ、雷を吸うの?」

 

「ええ。電気を吸って魔力に変換する……名付けてライデン・リングです。名前はこちらの世界の力士からいただきました」

 

ミナはそれに対して「手間かかってる……こっちも大事に使うわ」と伝説の力士の名前を戴いた指輪を左手の中指につけた。

 

瞬間、それに付与された魔法の強さを感じて「ルル!太っ腹すぎるじゃないの!」と喜びを深める。

 

これまでなら何かを疑うような仕草をしていただろうが、そんなこともなくプレゼントにミナは瞳を輝かせていた。

 

「そ、そこまで喜んでいただけると、僕としても……嬉しいです」

 

頬を赤らめた少年に、ミナは「素直になるって言ったじゃない!ほんとありがとう!これで―――」と抱きついて、そして表情を変える。

 

「いつ連中が動き出してもいい―――準備は万端ね」と獰猛な肉食獣の顔つき。

 

抱きつかれているルルにその表情は見えない。

 

だが、想いは同じである。

 

「ええ。改の会とやらは絶対に壊滅させます。僕らの手で」

 

真剣な表情でルルはミナではなく、手の中の捻れた杖をギュウと握りしめた。

 

「夜は岬がご飯作ってくれるのよね。カーチャンも仕事から帰ってくるし、今日はあえて最高の誕生日だと言うわ」

 

「……そうですね」

 

ルルから体を離して、表情を喜色に戻したミナの顔を見て、ルルは彼女の手に自らの手を重ねた。

 

その温度は、熱すぎるほどに温かいと彼は思い、永くそのことを記憶したのだった。

 




お邪魔するよメフィ……山本耕史。
よく来たウル……斎藤工。
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