異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第321話「状況打破である!」

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「……私が蘇生した人なのだわ、あれ」

 

テレビの中では、まだ作業着のおじさんがインタビューを受けている。

 

『だから信じてくれよ!それを呼び出した人影も見たんだよ!まるで女神みたいでさ!』

 

『現場は混乱しているようです。それでは一旦中継を終わります』

 

レポーターの一言で場面はスタジオに変わり、アナウンサーの女性がキャスターへつなぐ言葉を読み、キャスターがまた無責任な論評を加えていく。

 

学者らしきおっさんが何ぞ解説を加えているが、ミナはもうその画面を見ることを脳が拒否していた。

 

どうせ大したことは言っていない。自分たちが知る以上の内容はない、と。

 

ミナはほうれん草のお浸しを口に入れながら、そう言ってルルを見た。

 

少年は首を横に振ると、紅茶を飲んで「顔は見られていないようで何より」と諦めた声を発した。

 

「電波妨害は秋遂さんがしていましたですし、ほぼほぼ証拠は残っていないですよ。それでもこれは拡散しますねえ」と岬が苦笑する。

 

ミナは「……顔はともかく、私達の姿も救助活動したから見られてるだろうし、仕方ないか」と皮肉げに微笑んだ。

 

魔法少女たちは認識が阻害されることがわかっているし、空悟も竜の兜をしていたから顔は見られていまい。

 

竜の兜は目元を覆うバイザーがついているのだ。

 

その時、トン、トン、と階段を降りてくる足音が聞こえた。

 

どうやら恋が起きてきたようである。

 

「おはよー……あたい、何時間寝てた……?」

 

まだ寝ぼけているのか、かろうじて着替えてはいるもののまだ頭は寝癖が継いている。

 

「もう8時半なのですよ。ほらほら、顔を洗って髪の毛を整えてくるのです」

 

「ん……シャワー貸して、ねーちゃん」

 

寝ぼけ眼でそう言って、少女はミナの返事を聞かずに風呂場へと歩いていく。

 

よほど疲れているのだろうか、とミナは昨日はそこまではしゃいでいなかったことを思い出して怪訝に思うが、そういうこともあるだろうとスルーする。

 

特にこれで大事になるわけでもないだろう。

 

「恋ちゃん、なんか疲れてるみたいだけど、何かあった?」

 

ミナは素直に岬に確認を取る。

 

すると、岬は「まあアイドルですから……昨日もちょっと言ってたですけど、復帰しろって圧が強くなってきたみたいなのです」と微笑んだ。

 

「まだ諦めてないのか、芸能事務所。まあ、そろそろそんなこと言ってる場合じゃなくなるだろうけどな」

 

ミナは男口調でそう言うと、「あのディレクターだかプロデューサーだかはそんなこと言ってなかったけどねえ」と味噌汁をすする。

 

「それはあの人も圧をかけられている方だからみたいなのですよ。困ったものなのです」

 

岬が肩を竦める。

 

どうもそれなりにあのプロデューサーとは交流があるようであった。

 

「うん、なるほどね。―――じゃあ、恋ちゃんがご飯食べ終わったら研究所行こう」

 

「空悟さんはどうします?」

 

「今日は奥さんのそば……図書館で一日過ごすそうだ。調べ物するってよ」

 

ルルにそう返したミナは、ご飯の残りを乱暴に掻き込むと「ごちそうさま」と言ってすっくと立ち上がった。

 

「世界がどう動こうと、私達のやることに変わりはないわ」

 

そうして玄関のドアを開けて外へ出る。

 

―――時は9月。

 

暦の上では始まったばかりの秋に残る暑さは未だ厳しく、焼き尽くすような灼熱の太陽が空に燃えていた。

 

 

 

同日午後、科戸研究所。

 

骸骨の科学者が、その表情など全く読めないにも関わらず困っていることがよくわかる態度で嘆息していた。

 

「どうしました?なにか良くないことでも?」

 

『うむ……あまり良くはない……ああ、良くはないな』と勇者に返した骸骨博士は、未だ情報収集中の廻と夕から送信されてくる情報を整理してモニターに映し出していた。

 

そこには川崎での破壊の様子、両脚戦車の残骸などがどれだけどの地域で投稿されたか、ということの詳細なリストと統計が記されている。

 

当然投稿数が多いのは日本、関東圏である。

 

しかし―――それ以外の地域を見れば、それはたしかに異様であった。

 

『日本国内は良い。しかし、それ以外の地域からの発信は、インターネットを物理的に遮断している地域以外では―――』

 

薺川博士がマニピュレーターロボを操ると、いくつかのグラフがモニターに映される。

 

そこには……日本以外の地域での投稿数が人口密度を加味すればほとんど同じである、という異様な結果がでていた。

 

『中国のような国家検閲のある地域でも同じだ。投稿しているアカウントも一定性は見られず、まるで何かに追われ、踊らされているかのように投稿している……通常このようなことはありえないだろう』

 

わずか半日程度でこれは異様だ。

 

何かに追われているかのよう、踊らされているかのよう。

 

薺川はそう言ったが、ミナも全く同じことを考えていた。

 

「……駄目ね。私もこういうのは経験ないのだわ。前に邪神が降臨しそうって時に、世界中の神官や僧がお告げを聞いた、って事件は中の世界でも起きているけども」

 

「今回は僕らには何もありません。あのときは僕もミナさんも各々の奉ずる神々より啓示をいただきました」

 

ルルはそう言って、何かの前兆のような気はしなくはない、と顎を手で抑えて少し目をそらす。

 

「……この世界にも神様や精霊さんはいる……ということは、これは類似のことなのかもしれないのです」

 

岬がそう言うと、恋も「あたいもそう思う。オカルト系の番組に出演したときに聞いたけどさ、そういうのシンクロニシティって言うんだっけか」と肯んずる。

 

共時性や同時発生、非因果的連関などとも呼ばれる心理学上、また神智学……オカルト上の言葉で「意味のある偶然の一致」を意味する。

 

それは、つまり運命や宿命にすら神や精霊を宿すグリッチ・エッグの理で言うのなら……

 

「何らかの必然、ということなのだわ」

 

ミナは自分が地球人であった頃の、眉唾ものとしか言いようのないテレビやネットのオカルト知識のことを思い出す。

 

その中で、集合的無意識の存在も知っている。

 

そんなものが本当にあるか、などとかつての自分に聞けば鼻で笑ったろうが、何しろ今では自分自身が地球では非常識、オカルトの塊である。

 

「もしかすると、こちらの世界の神々が地球人に警告しているのかもしれないわね。薺川博士……人間以外の生き物の動きなども調べられますか?」

 

その言葉に薺川は『時間を貰えればどうとでもなるよ』とあっさり答えた。

 

『信濃を手に入れたことで、艦内工廠を用いた人工衛星の制作も出来るだろう。軌道上への投入は秋遂を使えばいい』

 

「……ちょっと能力高すぎじゃないですか?」

 

岬が大和型の工作室の能力について小さい疑問を呈するが、そこはもちろん超越科学の産物である信濃である。

 

『もちろん全て私の設計によるものだよ。古い部分の交換もしている。問題はないとも』

 

呵呵と笑う骸骨に、ミナは「頼みます」と頭を下げる。

 

そうして拳を高々と掲げると、どこかの光画部の部長が如くに「状況打破である!」と叫ぶのであった。




短くてごめんなさい……
体調が……
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