異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第322話「一番面倒な仕事ですよ、王様って」

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状況打破。

 

その言葉の意味はといえば、それはまず一つ目として改の会を知る者への訪問をすることにあった。

 

即ち、十瑚元議員への再接触である。

 

ミナとルルは、普段通りの格好で「オケラの子の家」という老人ホームを訪っていた。

 

「お久しぶりです、十瑚さん」

 

ミナが丁寧にお辞儀をすると、そこには孫娘と思しき少女に世話されている老人がいた。

 

孫娘の顔は逆光でよく見えないが、一瞬たじろいだ様子を見せた。

 

「やあ、お久しぶり。来ると思っていたよ。めぐみ、済まないが、外してくれないか」

 

車椅子の老人がそう言うと、不承不承といった風情で少女はス、と車椅子から手を離してこちらを見た。

 

「……メグミじゃないの」

 

ミナが一瞬だけ名前を想起するための思考をしてそう言うと、「……バレるよね、そりゃ」と不機嫌に少女が肯んじた。

 

そこにいたのは―――魔法少女のメグミであった。

 

変身はしていないので、当然髪は黒髪だが……紛れもなく彼女である。

 

「ミナさんたちと知り合いなのか、めぐみ」

 

十瑚がそう聞くと、メグミは「あ、それは」と言いあぐねる。

 

「そうですそうです。友達ですよ」

 

メグミが言葉を続けるその前に、こないだクロキの祖父の前でも同じことをしたな、と想起しつつミナは明るくそう答えた。

 

「いや、ちが」「違わないでしょ?ある意味では」

 

ケンカ相手を友達と言うのならそうだろう、とでも言いたげな不敵な視線をメグミに向けると、ぐぬぬ、と歯を食いしばる。

 

「まあ、この国は強敵と書いてトモと読む文化ですからね」

 

ルルが肩を竦め、「な」と言いかけたメグミを置き去りに「そう言うことであればメグミ殿にも聞いていただきましょう」と微笑んだ。

 

「どういうことかね?」

 

「例の件で相談に来たわけですが、実は彼女も関係者なのです。ご関係は?」

 

「孫娘だよ」

 

短くそう言うと、十瑚はメグミを見た。

 

その瞳には先程までとは異なる光がある。

 

「やはり、『水道局』案件か。めぐみ、正直に言いなさい。君は何を隠している?」

 

事情はわかっているのだろう、十瑚の言葉には間違いなくその響きがあった。

 

「おじいちゃん……それは」

 

「あ、すいません。彼女のことについては15日に彼女のボスのところに話しつけに行くので、今日は待ってもらえますか?一つだけ言えるのは、彼女は私達と同じく、この世界の外の力……魔法をすなるものだということです。それ故に、彼女はここにいてもらわなければなりません」

 

ミナはメグミの言葉を遮った。

 

遮った理由は―――話が複雑になるからである。

 

そして少なくとも、彼女は悪事はしでかしてはいるが人を殺したことはないし、何より続発している魔法少女事件は彼女たちが解決しているのだ。

 

ここで責めるような話になっても面倒であるとミナは考えていた。

 

「……わかりました。おおよそ想像はつきます。めぐみ、わかってるな?」

 

後できちんと話せとばかりに眼光鋭く老人は声を掛ける。

 

その言葉に「……はい」と一瞬戸惑いながらも、メグミは肯んじた。

 

肯んずるが、しかしこちらを見る視線は未だ剣呑なものである。

 

「では、本題に入りましょう。先日の改の会の事件……止めてくれたのは貴方がたですね?」

 

十瑚がそう聞くと、ミナはすぐさま「はい、そのとおりです。あの時代錯誤の連中の目論見のいくらかは阻止できたかと」と答えた。

 

直接的な武力行使は抑えた。

 

死者も出していない。

 

「ですが、大国たちは日本に無茶を言ってくるでしょうね」とルルが唇を不機嫌に曲げた。

 

「どうにも弱い立場のようですし、この国は。最悪、信濃の存在を暴露してしまっても良いのかもしれません」

 

その言葉に十瑚は「ふむ……」と思案する。

 

決定する立場にいないのは当然だが、自分ならどうするかを考えているようだった。

 

「……口挟んで良いかな、おじいちゃん」

 

しばし沈黙が流れたあと、そう手を上げたのはメグミである。

 

「話してみなさい。私には決定権はないのだからな」

 

関係者であるというのならば、意見くらいは言ってみろと言わんばかりだったが、祖父の言葉に孫娘は多少意地悪い笑みを浮かべた。

 

「詳しくは話できないけどさ。あの連中って、ウザいけど魔法の力を狙ってるとこあったよね?ほらさぁ……ばけ、もとい水門さんたちはふざけてんのかってくらい強いじゃん?」

 

メグミはそうして「だったら私らいっぱいいるし、そこら辺で目立つ動きして連中を誘い出すってのはどうよ?」と言ってキヒヒと笑った。

 

「そうしている間に本拠を突き止めて、私達が斬首戦術……か。悪くはないけど、危険に過ぎるわね」

 

魔法少女たちもシリアスではあるのだろうが、改の会は軍隊だ。

 

捨て駒であるバイオロイドらしき戦闘員も多数使う。

 

ショウコのような戦闘力に劣る魔法少女もいるわけで、死んでしまえば……

 

「僕達に蘇生手段はありますが、救えるのは半刻以内ですよ。日本から独立しても死んでしまったら意味ないですよ?」

 

「独立……お前なんてこと考えてるんだ」

 

ルルのツッコミに祖父のツッコミが重なり、メグミは頬を膨らませた。

 

「あんな鉄くずにそお簡単に遅れ取らないし!みんなで行けば平気だもん!」

 

なんだかカワイイ口調でそう言って、ミナに「おじいちゃんの前ではそういう口調なのかぁ……」と遠い目で見られてしまう。

 

「はー?ウザっ!口調なんかどうでもいいじゃん!そんなことより、使える戦力使わないのはもったいなくない?敵の敵は味方理論でさぁ」

 

実を言えばそれはそうなのである。

 

ミナにしても、黄昏の傭兵団にしても数は限られている。

 

わずかに七人、わずかに一隻、わずかに一体、わずかに二十数機。

 

仮に改の会が全国に出現するとすれば、どう考えても不足にすぎるのだ。

 

とはいえ、命は使役されずとも動くから命とグリッチ・エッグのことわざにはある。

 

死んだものは自ら動くことは出来ない。

 

命あっての物種なのだ。

 

「改の会はおそらく東京を中心に破壊活動を行うだろう。今回のように」

 

十瑚はミナの思考を打ち切るかのようにそう言った。

 

「政府はあてには出来ないだろう。自衛隊も市街地にはそうそう出動できん」

 

それこそ特別法を制定でもしない限り、国内に潜伏するテロリストと言うのも憚られる超科学で武装した軍隊と自衛隊が対峙するなど不可能である。

 

特別な理由に当たらなければ総理大臣は自衛隊の国内対テロ出動を命じることは出来ない上に、勝てるかどうかもわからないのである。

 

「うーん、困ったなあ。なにか秘策とかないですかね、十瑚さん」

 

ミナは力技で解決できない状況を踏まえて案がないか聞いてみた。

 

「そのために来たのだろう。わかっているとも。政府が動かないのであれば外圧でどうにかするしかないと私は思うが……これは悪手も悪手だ」

 

外圧でしか変わらないと言われる日本だが、それは取りも直さず内政干渉そのものである。

 

「うーん、封建国家ばっかのうちらの世界じゃないんですし、そんなことは……ん?」

 

ミナはここで気づいたことがあった。

 

「てか、どうせもうグリッチ・エッグのこともバグの存在も隠せそうにないんだし、無理やり神森市だけ独立するとかやらかしてみるとかどうよ」

 

実際に信濃を使って最悪独立しなければいけないと考えていたミナである。

 

すっとその考えは出てきた。

 

「あぁ、でもその場合国家元首ミナさんがやるんですか?一番面倒な仕事ですよ、王様って」

 

ルルが興味深そうにミナの顔を覗き込むと、滅茶苦茶やりたくない、と書いているような仏頂面である。

 

「そうよね……誰か代わりにやってくれるんならって、いるじゃん。代わりにやってくれる人」

 

ミナはそうしてメグミの顔を覗き込んだ。

 

「……そうよね?」

 

「……まあ、そうだね……?」

 

ミナの同意を求める眼力に圧倒されたのか後退りしつつ、メグミは肯定した。

 

そう、なんのことはない。

 

魔法少女たちは日本からの独立を目指しているのだから―――

 

「なるほど。詳しい話を聞かせてもらえるかね、めぐみ」

 

祖父の眼光が追加でメグミを貫き、「はぁ~~い」と彼女は不承不承を絵に描いたような顔でゆっくりと話し始める。

 

そう、彼女の主君たるSMNの首領イェカのことを……

 

 




あけましておめでとうございます。
旧年は全く投稿できませんでしたが、本年は毎週投稿できるようがんばります。
今年もよろしくお願いいたします。
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