異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第38話「ガウガウ、オレサマボウケンダイスキ」

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―――嫌な予感が当たった。

 

ルルがそうつぶやいたのはそれから2時間もしないうちであった。

 

自律戦闘ロボ二人を連れて韋駄天百貨店の7階まで来たときのことである。

 

「お帰り願いましょうか……」

 

いつもの顔色の悪いウェイトレスが剣呑な目つきで、外国人の旅行者……おそらくは一人は欧米人、一人はアジア系と思しき青年を睨めつけていた。

 

言葉を聞いていると、ナチスがどうとかこうとか文句を言っているらしい。

 

「どうしたんですか、ウェイトレスさん」

 

「……どうにも、店の内装や看板が気に食わないということのようでして」

 

ミナが声をかけると、ウェイトレスは困った顔でミナを見た。

 

「……いい加減、そこら変えたらどうです?」

 

「マスターのポリシーですので……」

 

呆れ顔でミナが問うと、彼女はしれっとそう言って外国人のほうを見た。

 

「お帰りください。今ならまだ警察は呼ばずに済ませます」

 

それに対して、まあその外国人はヒートアップするわするわ……ミナが苦笑していると、夕がウェイトレスと外国人の間に入った。

 

「婦人が手を出せないことをいいことに、好き放題言っているな、露助にチャ○コロが」

 

二人に聞こえないようにそうつぶやくと、鳩尾に掌打を一撃ずつ見舞い、あっという間に昏倒させてしまった。

 

「よし、ナイス夕ちゃん!後は私に任せてください、ウェイトレスさん!」

 

ミナがそう言って二人の首根っこをひっつかみ、見えない場所に連行する。

 

そうしてウェイトレスがびっくりする間もないうちに、店の裏の通路の方からカッと光が発され、そして二人の外国人はふらふらと出てきた。

 

ミナの奏でる「遠き山に日は落ちて」を聞きながら。

 

そしてミナに後押しされるままにそのままエスカレーターに乗せられて6階にたどり着くと、そのまま何事もなかったかのように立ち去った。

 

「うーん、私の『説得』が効いてよかったわー!ほんとよかったわー!」

 

―――ああ、これは回復かけて起こして、呪歌をかけたな。

 

ルルは額に指を当てて溜息をつくと、ウェイトレスに話しかけた。

 

「もうしわけありません。なんだか荒っぽい手段になってしまったようで」

 

「……いえ。おそらくSNSでの炎上目的だったかと思われます」

 

この店はこうなので多いのですよ、と顔色の悪いウェイトレスは苦笑する。

 

「助けていただきありがとうございます。ただいまのところマスターは不在ですのでおつまみまたは酒類、ソフトドリンクの提供のみになってしまいますが、よろしければ店内へどうぞ」

 

そう言って、夕の手をそっと取った。

 

「お礼を言われるほどではない。彼らが北京語とロシア語で好き放題に貴女を罵倒していたのが気に入らなかっただけだ」

 

「なるほど……それでも、ありがとうございます」

 

顔色の悪いウェイトレスは、嬉しそうに笑うと夕の手の甲にキスをして、一歩下がる。

 

急に手にキスをされて、真顔で何をしていたのだろう?という顔を夕はした。

 

そしてニギニギと手を握っては開けていると、ミナが話しかけてくる。

 

「外国語わかるんだ……」

 

「無論だ。そうでなくば海外で便衣兵の真似事は出来ない。そして、海外の軍人と話せなければ、同盟軍や義勇兵との会話にも困るだろう」

 

少女の形をしたガイノイドはそう言って、ウェイトレスの顔を見る。

 

「我々は有期労働者を募集しているという当店の広告を確認するために訪れた。職を探しているのだ。話を聞きたいが構わないか?」

 

セーラー服の少女からそう聞かれたウェイトレスは、きょとんとした顔をした後、何か大事なことに気づいて、そして微笑んだ。

 

「まさか、当店にアルバイト希望者が現れるとは……先程も申し上げましたが、ただいまマスターが不在です……店内にてお待ちいただけますでしょうか」

 

「心得た。廻、いいだろうか?」

 

ウェイトレスから店内に入ることを促された夕は、ここまで沈黙していた廻にそう聞いた。

 

廻は微笑むと「構わん」と答えて頭を下げる。

 

「私も有期労働……アルバイトの希望者です。夕ともどもよろしくお願いしたい」

 

「一度に二人も……これは明日は砲弾が降るかも知れませんね。こちらへどうぞ」

 

もう一度頭を下げた廻と夕を促して、ウェイトレスは店内に4人を招き入れる。

 

そして、素早くお冷を出して「現在、おつまみと酒類、お飲み物の提供のみは可能です。お待ちの間、もしよろしければどうぞご注文ください」と微笑む。

 

「じゃあ、お言葉に甘えまして、オレンジジュースとカレーヴルストください。4人前で」

 

「承りました。ご確認させていただきます。オレンジジュース、カレーヴルスト。共に4人前でよろしいでしょうか」

 

腰のポケットからペンとメモを取り出し注文を書き出していくウェイトレスに、ミナは「私はそれで。みんなは?」と聞いた。

 

「……ソーダ水を二つ頼む。私と夕の分だ」

 

「僕はこのたんぽぽコーヒーを」

 

廻とルルの注文もまとめ、確認を終えると顔色の悪い女性は奥へ引っ込んでいく。

 

それを確認してミナは笑った。

 

「いやーたまにいるのよねーこの店。第二次大戦の軍隊、それもドイツのを扱ってるでしょ?日本人の大半はそういうの気にしないんだけどね。外人は気にするからさあ」

 

「敗戦国というのは悲しいものだ。我が国もそうだがね……」

 

廻が首を振る。

 

「まあ日本では旧日本軍そのものの人気があんまりないというか、今の自衛隊のほうが人気あるからね……」

 

「形は違えど軍は再建されたわけだ。このまま負ければ絶滅政策を強いられると博士や研究員は言っていたが、運が良かったんだな……」

 

「いや、ホントにソ連がヤバイことにならなかったら国ごと民族浄化に近いことになってたと思うから、運が良かったとしか言いようがないわ……モーゲンソープランとか見るとドイツを更地にする予定だったとしか思えないし……同じことされてたわよ、間違いなく」

 

ミナと廻のそんな会話の中、夕は黙々とお冷を飲んでいる。

 

ルルは時折ため息を吐きながら、同じくお冷に口をつけて頬杖をついていた。

 

「どしたの、ルル?なんで不機嫌……っていうかすぐにも帰りたそうな感じ出してるの?」

 

ミナが覗き込むように彼を見ると、ルルは「いえ、別に……さっきのトラブルといい、なんだか嫌な予感がするって話ですよ」と目を伏せる。

 

「お待たせいたしました。オレンジジュース4、カレーヴルスト4、ソーダ水2、たんぽぽコーヒーでございます。ごゆっくりお召し上がりください」

 

その時、ウェイトレスが注文の品を持ってきてペコリと頭を下げてレジの近く、厨房の入り口に立つ。

 

そこは店内を広く見渡せる位置で、彼女がいつも一人で接客していることが伺えた。

 

「お、うまー。で、なんでそんなに嫌な予感がするの?」

 

「こちらの観測機器には不穏な電波や音波、熱源は確認されていないな……夕も同じか?」

 

「うん。全く問題はない。我々では感知し得ないものだろうか」

 

ミナが聞き、補足するように二人の人形が観測結果を元に質問すると、ルルは力なく微笑んだ。

 

「いや、多分、僕にとってめんどくさいことになるということですね……あまりしたくないことをしなければならない、と言うか……」

 

その時、バックヤードからバン!と扉を乱暴に閉める音が鳴り響いた。

 

「ええい、なんということだ!確かに、あの件で彼女らは心身ともにダメージを負った!だが、それでも立ち直ってくれるものと信じていたのに!まさかあそこまで深いとはな!」

 

ルルがミナを見る。

 

すがるような目で。

 

めったに彼がミナにすがるようなことはない。

 

その声がルルの嫌な予感なのだ、ということだけが伝わってくる。

 

「このままでは商店街が進める再建計画は台無しだ……!このままでは如何ともし難い!許せぬ愚行!だが犯人共は病院送りと来た!ええい!!」

 

バックヤードから大声で不満をぶちまけながら、左目に眼帯をつけた店長が店内に入ってくる。

 

それを見たウェイトレスは、「落ち着いてくださいマスター」と言ってからベン、と御盆で彼の顔面を張った。

 

「……痛いじゃないか、女中くん」

 

「……誰が女中ですか。落ち着いてくださいマスター」

 

今度はガン、と縦にした御盆でマスターの顔面を殴ったウェイトレスの目は実に冷たいものだったのだ。

 

「痛いじゃないか……畑中くん」

 

「私の名前は葉山潤美です。そんなことよりアルバイト希望者が2名いらっしゃいました。舐めた態度をとっていらっしゃいますと、もう一度殴りますよ……」

 

葉山潤美と名乗ったウェイトレスは、そう言ってうずくまった店長にもう一度御盆の角チョップを食らわせた。

 

「殴ってから言うものではないな、葉山くん!それはともかく!!」

 

すっくと立ち上がった眼帯の男……ナチスの軍服をモチーフにしたと思われる黒いコック服に身を包んだ店長はニヤリと笑って4人を見た。

 

「君たちが我が店舗で働きたいという者たちか……よろしい。まずは履歴書の確認と面接を行うが、ほとんど形式的なものだ。それと、カレーは好きかね?」

 

「……父が好きでした」

 

廻は目を伏せてそう言った。

 

つまり、薺川博士の好物だったのだが、今の博士は霊体であるため食べることは不可能だ。

 

そのため廻は少し悲しく思い目を伏せたのだが、それを見た店長は口をへの字に引き結ぶ。

 

「苦労したんだな……よろしい、面接を始めよう。希望者は君たち二人でいいのか?そちらの……確か、並1.5杯食べたお嬢さんは?」

 

何を勘違いしたのか少し涙ぐんだ店長がこっちを見てきたので、ミナはひらひらと手を振って「ああ、私とこいつは付添でして」と答えた。

 

そしてカレーヴルストを一本口に放り込み「とりあえず話もサラリとつきそうですし、おすすめのビールを追加でください」と注文をする。

 

「かしこまりました。本日のおすすめビールを1本ですね。他にご注文はございませんか?」

 

「面接終わったらカレーください。並で1枚」

 

「承知しました。カレー並ですね」

 

潤美と呼ばれたウェイトレスがミナの注文を聞くと、店長に「さあ、行きますよ」と促してバックヤードへと入っていく。

 

それに廻と夕が続き、最後に置いてけぼりにされた店長が不承不承という風で続いた。

 

そうして誰もいなくなった店内に、二人は取り残される。

 

オレンジジュースを一口飲んでカレーヴルストを口から洗い流すと、ミナはルルの眼を見た

 

「……まだ不安?」

 

「ええ。厄介事が降り注ぐ予感はなくなっていないですね……」

 

「神殿でもないのに、あんたがそんなに不安になるって珍しいわね……」

 

たんぽぽコーヒーを啜るルルは、店外を見てまだ心の靄が晴れない、といったふうに砂糖をもう一つコーヒーに入れてかき回す。

 

「うーん……一体何が……」

 

ミナがそう言ってカレーヴルストを1本口に入れたのとほぼ同時に、カラン、と扉をくぐって客が一人中に入ってきた。

 

そうして席を見回し、席が空いていることを確認して、ミナたちの左後ろの席に座る。

 

その顔は……

 

「あー……もしかして、あんたの不安に感じてた予感ってこれかな?」

 

「……そこから来たる厄介事だと思いますよ……」

 

ミナの視線の先には。

 

ルルのため息の行方には。

 

ルルと似た印象を持った少女が一人、座ってウェイトレスが現れるのを待っていた……

 

 

 

結局、あっさり二人のアルバイト先は決まり、道野枝兄妹はスナック黒十字で働くことになった。

 

―――ルルが感じていた不安は、ルルと似た印象の少女が店を去ると消えていった。

 

「あの子って、半グレ事件で私達が助けた女の子よね?」

 

「ええ、そうですね。あれほど僕が不安を感じる、ということは彼女は事件の起点になるはず。今のうちになんとかしたいところですが……」

 

2杯目のカレーを待ちながら、ミナとルルはそんな話をしていた。

 

そこにスタスタと近づいてきたのはウェイトレス姿の夕だ。

 

「カレー並、一枚。おまたせしました」

 

ことり、と普通にカレーを置いて、何も言わずにお冷を継ぎ足していく。

 

「……接客が……普通だッ!」

 

「私をなんだと思っているんだ。規則と手引に沿って任務を行っているだけじゃないか」

 

ミナが驚いたので、夕は憮然としてそう言う。

 

「私は軍人だ。軍人であるように作られている。一時的にでも指揮下に入ったのなら、余程不合理なものでなければ指示には従うし、たとえ気に食わない物事が相手でも任務の遂行を目指す」

 

「ああ、そうね。ごめん、失礼なこと言っちゃった」

 

「わかればいい。それでは、ごゆっくりお召し上がりください。なにかご用命があればお気軽にお声がけくださいませ、お客様」

 

きれいに頭を下げ、夕は来たときと同じくスタスタと去っていく。

 

「そうよね。好き嫌いでふつーは仕事しないもんね……やだ、私もなんか変な常識に毒されてる……?」

 

「そういうところですよ。まあ、あの女性のことは一旦置いておくこととしましょう。ご飯を食べ終わったら、さっさと家に戻りませんか?」

 

ルルにそう言われ、ミナはカレーを一口食べて「それもそうね」と笑ってスプーンを動かし始めた。

 

道野枝兄妹が仕事を終えるのは19時過ぎ。

 

帰りの道については教えてあるし、何かあれば電話してもらえるようにはしてあるから安心だ。

 

そう思って、ミナはカレーの最後の一口を食べ終わる。

 

―――外は相変わらず、しらしらと雪が降り続いていた。

 

 

 

廻と夕のアルバイト生活は三日目に入っていた。

 

不気味なほど何も起きていないのは僥倖と言うべきか。

 

それどころか、スナック黒十字の給与はミナたちの深夜コンビニバイトよりも上だった。

 

「よし、コンビニ辞めて早急に崎見さんのところに行こう」

 

「そうですね。クレーマー相手にするのももう馬鹿らしいですし」

 

二人が速攻でコンビニバイトを辞めることを決めたのは言うまでもない。

 

「まあそれよりもルルが感じていた不安ね。店長の声に最初強い不安を感じて、次はあの私達が助けた女の子。で、女の子がいなくなったら不安は消えた……」

 

「後、あの店長が帰ってきた時怒鳴っていたことも気になりますね。商店街がどうこうとか……」

 

庭の雪かきをしながら、二人はそんな話をしていた。

 

本日は日曜日で、ついでに言えばコンビニのバイトは休みの日である。

 

「まあ今考えても仕方ないでしょう。それより今日はフルタイムでお休みだし、何するか考えるべきね。大雪積もってるし、ゲームでも漁ってみようか、それとも未視聴のアニメとか特撮とか見ようかしら?」

 

ミナがスコップを集めた雪の上に突き刺して、晴れた空へ向けてそんなことを言う。

 

「インドアですねー……まあこんな雪まみれでは、どこに出かけるにもあんまり楽しくはない……」

 

家の前の道路を見れば、まだまだ雪は撤去されていない。

 

路地から出て大きな道路まで出れば、雪国必須の温水雪除去装置で車道はきれいに雪が消えているはずではあるが。

 

「どっか行くにしても岬だけ置いていったらかわいそうだし、ねえ……行くつもりなら商店街に行ってみる?例の店長の叫びのこともあるし」

 

「お断りします。そういうことでしたら、僕は調べ物があるので電子書籍を漁ることにしますよ」

 

ナチュラルに岬を完全に子供と認識しているミナに、ルルはニコリと笑ってそう返した。

 

「アウトドア派のミナさんと違って、僕は本来インドア派の極みだということはお忘れなく」

 

「ガウガウ、オレサマボウケンダイスキ」

 

「なんです、それ?」

 

獣の真似をして片言を話すミナにルルが聞くと、少女は笑って「今日これからやろうとしているゲームのマネよ」とサムズアップをした。

 

ルルはそれを見て、微笑み小さくため息をつく。

 

(次の冒険のためのエネルギーを溜めているのだ、彼女は)

 

研究所の黒い穴……地下階への入り口を見れば、万全の状態で臨みたくなるというものだ。

 

空悟や岬の成長を加味したとしても、油断できるはずもない。

 

あの邪神との戦いの続きだとするなら、なおのことだ。

 

ルルは無限のバッグの中身から、研究所で手に入れたポーションの入った水筒を取り出した。

 

「これもこちらの世界では貴重品ですね」

 

「そうね……ポーション自作はまあできるけど、材料がね……あのダンジョンで手に入ればいいのだけど」

 

ミナはスコップを抜いて、雪に加熱の魔法をかけて溶かしつつそう言って目を伏せた。

 

水筒の中身はキュアポーションである。

 

ルルはふむ、と鼻を鳴らすと水筒をバッグの中にしまい、自分のスコップもそのようにした。

 

「そろそろお昼ですよ、ミナさん。昼食を作らないといけないのではありませんか?」

 

「そうね。今日は何作ろうかしら」

 

ルルと同じくスコップをバッグの中にしまって、ミナは家の中に入る。

 

冷蔵庫の中身を見たミナは、即座にメニューを麻婆豆腐に決めて作り始めた。

 

オイスターソースを使った日本式の麻婆豆腐だ。

 

ショウガとニンニクを刻み、炒める。

 

今は日常の時間だった。

 

 

 

その日の夜。

 

神森市内で水道管が破裂した箇所が7箇所あったらしく、茜はまだ残業で遅くなるとミナのスマホに連絡が来た。

 

それが19時頃のことだ。

 

それから1時間ほどが経過し、廻と夕はバイトを終えて既に水門家にたどり着いていた。

 

二人からお土産を受け取ったミナは、それを冷蔵庫にしまう。

 

「新しいタンドリーチキンの試作品だそうだ。有害物質や有毒細菌は検知されなかったし、あの店長の料理の腕は確かだろうから問題はあるまい」

 

廻がミナから受け取った白湯を飲み、そう言って微笑んだ。

 

「今日も問題はなかったかしら?」

 

「相変わらずだ。店そのものに問題はない。店長は、客がいなくなると商店街がどうのこうのとやかましい。だが、内容は我々には教えてはくれなかった。葉山殿も同じだ」

 

同じく白湯を飲みながら夕は憮然とした顔をしている。

 

「我々は有期労働者に過ぎんから、教えてもらえないのはわかる。それはいい。だが、叫びまわるのはやめてほしい……外からあの叫びを聞いた客が不気味がっていた」

 

「なるほど……やっぱり商店街になにかあるのかしら。調べてみても良さそうね」

 

ミナがお茶を入れながらそう返すと、岬が続ける。

 

「というか、自分たちから動かないと絶対厄介事が増えて襲いかかってくると思うんです。能動的にいくですよ」

 

ビシッとサムズアップを決めながら岬がそう言うと、ミナは苦笑する。

 

「……まあそうよね。大雪だの何だの言ってられないわ。うちの従僕の不安を解消するためにも、ここは動きましょうか。廻さん、次の休みはいつ?」

 

「2日後だ。火曜日はスナック黒十字の定休日となる」

 

「じゃあ、明日店に行って見るから、私から店長にそれとなく聞いてみる。その結果次第で火曜日は商店街で調査しましょう」

 

ミナは廻の答えを聞いて、そのように素早く決める。

 

異論はないか、と見回すと、夕を含めて全員が首肯した。

 

「異論はない。迷宮に挑む前にごたつくのはゴメンだからな」

 

代表するように夕が言うと、ミナはニコリと笑って「では明日から行動開始ということで」と宣言した。

 

―――その後すぐに空悟にも電話をかけてみたが、明日はどうも張り込みがあるらしく不可能とのこと。

 

事情のみを話し電話を切ると、ミナは台所へ向かう。

 

「そういえば、味覚ってあるんだっけ?」

 

そう道野枝兄妹に確認するミナであった。

 

 




「虹の指環」
数千年前、ハイエルフの王の中でも最も愚かであったと言われるティトゥスが作った願いを叶える指輪。
1度使うと100年使えなくなるハイエルフ用のアイテム。
ティトゥスの末裔が使うと、ティトゥスの亡霊に乗っ取られてしまうと言われている。
ミナは純粋なハイエルフではないので平気。
ハイエルフ以外の願いは歪んだ形で叶えてくる嫌なアイテム。
魔物と化したミナの友人の王を斬って手に入れたが、後に故郷で上記のことが判明し、ミナが責任持って処分することになった。

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