異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第43話「「―――今日はふたたび来ぬものを……」」

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再び病室にて。

 

戻ってきて、床に正座させられたみはるを囲んで話は続いていた。

 

「まあそういうわけですの。わたくしも不戦敗などという不名誉なことは嫌だったのですが、つぐちゃんが心配で心配でどうしても歌う気になれなかったのですが、彼女が完治したとあれば別ですわ」

 

ホホホ、と本当に場違いなお嬢様風口調でそんなことを言うみはるにルルはため息をつく。

 

「……まあ僕も楽器の演奏や歌は嗜む方ですがね。言っておきますが、近代的な……エレキギターだのなんだのは弾けませんよ。僕が出来るのはハープなんかの弦楽器と笛系だけです」

 

「私はもうちょっと色々弾けるけど、やっぱり電気使うのは専門外、かなあ……」

 

ルルの音楽能力はエルフとしての嗜み程度のものだ。

 

そして、ミナは吟遊詩人としての演奏能力を持っているが、それでも電気を使うようになってから登場した楽器を使ったことはない。

 

故に、それらをいきなり扱えと言われてもなかなか困ることになってしまう。

 

「そっちは私がやるから大丈夫。ただ、どうしても顔を出す方となると、私は無理で……注目されてるな、って意識しちゃうとあがっちゃって何もできなくなっちゃうんだよね……」

 

ぬえ子が苦笑し、自分のあがり症を告白する。

 

ルルはそれを見て、「まあいいでしょう」と答えた。

 

「本当~?良かった~!」

 

「ありがとうルルさん!」

 

感謝の言葉をルルに言う姉妹だったが、ルルは指を振る。

 

「とはいえステージに上って何もしないでは良くないでしょう。口をパクパクさせているだけではバレてしまうかもしれない」

 

「大丈夫。演奏パートはフルートを吹いてもらうさ。それで私がエレキギターやるから大丈夫だよ。今回は歌自慢大会だからね。ルールで既存の歌を歌うことになるからそこで正座してるみはるさんのめちゃくちゃソングじゃないし」

 

そう言って、ぬえ子はギターを引くふりをする。

 

「まあ!わたくしの楽曲のどこがめちゃくちゃだとおっしゃるんですか?!」

 

「全部~かな~?あはははは」

 

ぬえ子に罵倒され、つぐみに笑われた彼女は「ぐぬぬ」と唇を噛んで悔しがるが、つぐみの笑みは深くなるばかりだ。

 

「私もなんかやろっか?」

 

ミナがそう言って懐から小さな笛を取り出した。

 

「こう見えて、だいぶ自信あるわよ、私」

 

そう言って、音を抑えて「遠き山に日は落ちて」を演奏する。

 

魔力は込めない、ただの曲だ。

 

「うまいではないか」

 

「ええ……思わずキャンプに行きたくなるような演奏でした」

 

店長と潤美が素直な称賛をミナに向けて、ミナは頭を下げてどーもどーもと笑みをこぼす。

 

「うーん……どうしよっか、みーちゃん?」

 

「今回は負けられない……とは言いませんが、負けたくはない戦いです!故に、ミナさんとやら!あなたにも参加していただきましょう!」

 

つぐみがみはるに聞くと、彼女はビシっとミナを人差し指で指して満面の笑みを浮かべた。

 

「じゃあ決まりってことで、あと2週間しかないんでしょう?参加締め切り大丈夫なの?」

 

顎に手を当ててミナが聞けば、店長が「うむ、問題ない。商店街・韋駄天百貨店連合は既に登録している。みはる君たちが駄目な時は出場を辞退する予定だった」と答える。

 

つまり、みはる達以外では駄目だと全幅の期待が寄せられているということだ。

 

「責任重大ね……私もあのシャッター通りをなんとかしたいって思ってたクチだし、全力でやらせてもらうわ」

 

サムズアップをしたミナは内心で思う。

 

最悪の場合、魅了の呪歌を使うこともやむなし、と。

 

その考えを見通したのか、ルルがこちらを睨めつけてきたことにミナは気づいた。

 

万一のバレを警戒しているのだろう。

 

―――この街にグリッチ・エッグの存在が結構な勢いで存在することを考えれば当然のことだ。

 

ミナもそう考えるから、最後の手段にしておこうとは思う。

 

しかし、負けてしまっては仕方ないので、最後の手段として取っておくべきものだ。

 

(10億だもんねぇ。それでシャッター通りを再生できるかもしれない、というのは大きいか……)

 

チンピラ、半グレたちがいなくなり、治安の良くなったこの街ならイケるかもしれない。

 

他の団体がどこなのかはわからないが、ミナにとってはあの商店街が潰れてしまっては困る。

 

「ルル、大丈夫よ。私を信じて」

 

「ミナさんの腕前は知っていますから、大丈夫です。それで、どの歌を歌うご予定で?」

 

ルルは少しすねたようにミナに言ってから、ぬえ子に何を歌うつもりか聞いた。

 

「いくつか古い歌をアレンジした曲にするつもり……だったよね、みはるさん」

 

「そのとおりですわ!ゴンドラの唄と星めぐりの歌、そしてハンプティ・ダンプティと行かせていただくつもりです」

 

ミナはそのチョイスに深く頷いた。

 

「ごっつ渋いけど、私そういうの好きよ!」

 

「気が合うようですわね……先程の遠き山に日は落ちて、見事でしたわ!」

 

何故か意気投合した二人は、ピシガシグッグッとどこかのスタンド使いのようなハンドサインを交わしてわかりあう。

 

それを見たルルとぬえ子は異口同音に「「変にアレンジしないで」ください」と二人に釘を差した。

 

「しないわよ。私、作曲とか編曲の才能、さっぱりないもの。演奏は得意だけどね!」

 

「知ってるからこそ、手を出さないでください、という警告です……」

 

少年は眉間に人差し指を当ててため息をつく。

 

ため息をつき、ぬえ子達を見て「それじゃあよろしくおねがいします」と言って苦笑した。

 

 

 

一方その頃。

 

スナック黒十字にて、食材の搬入をしていた廻は周囲に不審な熱源を感知していた。

 

店の様子を伺うかのように、男が4人ほどフロアをうろついている。

 

時間は午前9時半。

 

既に百貨店は開店しており、誰がいようと不思議ではないはずだが、その男たちは確実に不審だった。

 

エスカレーターと店の前を往復するようにうろうろと廻り、他の場所へ行くでもない。

 

このフロアは10時開店のアクセサリー屋とスナック黒十字を除けば、ほとんどが飲食店であり開店は11時。

 

つまり、今の時間帯、ここでうろつく理由などないはずである。

 

正規の客に迷惑がかかることを心配した廻は音声を出さずに、フロアを掃除しているはずの夕へと通信を飛ばす。

 

『夕。感知しているな?』

 

『無論。どうする?』

 

『目視にて確認を。私は食材搬入を続ける』

 

通信で夕に指示を出した廻は再びじゃがいもの入ったダンボールを二つ、軽々と持ち上げて店内へと運んでいった。

 

そして、指示された夕が表をうろつく不審者たちを、店の窓から目視する。

 

道野枝兄妹の目は高性能カメラアイであり、その視力は人間に換算すれば20.0は下らないだろう。

 

その人造の瞳で不審者を確認する。

 

赤外線、紫外線をも感知する彼女のセンサーは的確に男たちの持っているものを看破した。

 

『―――廻、まずい。銃器の装備を確認。旧ソヴィエト連邦のトカレフTT-33の類似品で間違いない』

 

夕の声が廻の電子頭脳に響く。

 

廻は作業を続けながら、夕との通信を続ける。

 

『情報連結確認。銃器を使わせずに制圧は可能と判断した。頼む』

 

『心得た。制圧を開始する』

 

夕は音もなく店外に出て、男たちへ無造作に近づいていった。

 

その出で立ちは、店のウェイトレス……潤美と同じ黒いエプロンドレスだ。

 

「お客様でしょうか。当店の開店時間は十時からとなります」

 

「やっちまえ」「おう」

 

平坦な声で不審者たちに声をかけると、彼らはその懐から拳銃を取り出そうとした―――が。

 

その腕に鉄拳を叩き込まれ、全員が銃を取り落とす。

 

そしてそのまま高速の突きが鳩尾に炸裂し、全員が声もなく昏倒した。

 

それを縛り上げ、彼女は瞑目する。

 

「他愛なし……だが、現在の日本国では銃器を一般人が所持することは刑事罰に当たるはず……」

 

トカレフを全て回収し、万一にも奪取されないよう銃弾を抜いて店の中へと放り入れ、夕は独り言ちる。

 

かつての大日本帝国であれば、猟銃などの銃器は民間人でも軍用銃でなければある程度自由に所持できた。

 

拳銃や仕込み銃といった所持を隠せる武装については、当然のように規制はあったが。

 

「考えても仕方ないか……そも我々の仕事ではあるまい」

 

廻への通信回線を即座に開き、この後について相談した。

 

『廻、制圧完了。警察への連絡はどうする?』

 

『通常の緊急通報に加え、私から今野殿へ連絡する。君は回収した銃器・銃弾を一箇所に集めておいてくれ』

 

『了解』

 

簡潔に答えて通信を切った夕は、縛って転がした男たちを睨めつけた。

 

「店長らも帰ってこないし、今日は開店が遅れると張り紙しておくべきか……?」

 

夕はそんな心配をしたが、廻の通報が終わった後に店にかかってきた店長の電話で、本日は臨時休業となったため、杞憂に終わる。

 

そして、これが一つの事件の始まりとなるのであった。

 

 

 

店長と連れ立ってミナたちが韋駄天百貨店にたどり着いたのは正午のことだった。

 

ファンファンとパトカーがサイレンを鳴らし、停止線を張ってスナック黒十字への道を塞いでいた。

 

「半グレがいなくなったってえのにまたかよ」

 

「まぁまぁ目加田さん。去年のあれに比べれば可愛いもんじゃないっすか」

 

ため息をつくハゲの刑事に、空悟がコーヒーを渡しながら笑うと、「笑いごっちゃねえや」と目加田は不機嫌そうに唇を歪める。

 

「しかしまあ、ウェイトレスさんに叩きのめされるくらいで済んでよかったよ。去年と同じなら、こいつら行方不明か発狂だったぞ」

 

「そうっすねえ……色々と大変な事件でした」

 

半グレ暴走事件の顛末に置いて、250名に及ぶ行方不明者と発狂者が出たことは最早有名を通り越したほどの怪事件であった。

 

まともに報道した報道機関は惟神テレビと地元の新聞だけ、という奇妙すぎる報道がされた事件でもある。

 

「全く。誰がやらかしたのか知らんが、警察の苦労も考えてほしいもんだ」

 

目加田の愚痴に空悟は内心苦笑するしかなかった。

 

彼の親友がその250名に及ぶ「処刑」を行った犯人なのだから……

 

そんな事を考えているうちに、視界に流れるような金髪と南国の海のような碧眼を持つ少女が入ってくる。

 

「よう、ごくろーさん」

 

「おう、おつかれさん」

 

ミナと空悟が軽く挨拶すると、刑事は少女に聞き込みを始めた。

 

「まさかとは思うが、これはお前関連じゃねえよな?」

 

「わっかんねー。これがモンスターだったりしたらダイレクトにYESって答えるんだけど、拳銃所持しててうろついてた不審者なんて関係ないと思うんだけどもよ。つーか、拳銃所持とかまだ物騒なんだな、オレらの街……」

 

肩を落とすミナに「まあ元気出せ。とりあえずなんかわかったら教えるわ」と言って、空悟は停止線の向こうへ行ってしまった。

 

それに手を振って、ミナは後ろを向く。

 

向いた先には店長とぬえ子たち、そしてルルがいた。

 

「店長、なんか心当たりあります?」

 

「あるわけなかろう。遂に反ナチの大馬鹿が実力行使に出てきた……などという陳腐なストーリーは考えつくがね」

 

「……ハーケンクロイツだけでもやめません?」

 

潤美がジト目で店長にそう言うと、眼帯の男は「あれは鉤十字!外すのは絶対にノゥ!」と激しく拒否する。

 

「それでトラブル呼んでいては世話ないと思いますわ」

 

「あったりまえだよねぇ」

 

一緒に来たみはるとぬえ子にもツッコまれた店長だが、「いや、一切認めん!あれは私のポリシーだッ!」と一切譲る気はなかった。

 

その様子にルルは「独裁者の紋章にこだわるとは酔狂な」と呆れてしまう。

 

潤美が処置なしとばかりに肩をすくめて手のひらを振ると、店長は「私に何か言いたいのかねぇぇ君ぃぃ!」と彼女の耳を引っ張ろうとして手をぶっ叩かれていた。

 

それを半ば無視したミナが停止線の向こうを見れば、男たちが連行されていく横で、夕がハゲの刑事に説教されている。

 

(やりすぎだってことかしら、それとも危険だからやめれって話かしら)

 

とりあえず割って入ろうと思って、ミナがそっちへ行こうとすると夕は目線で「余計なことをするな」と睨めつけてきた。

 

ミナはその態度に、「説教されるままでいいならいいか」とフッと笑った。

 

割り込んでややこしいことになるのも面倒に思えたこともある。

 

ミナはスマホの時計を確認するが、その時間はもう12時を過ぎていた。

 

「やれやれもうお昼か。犯人らしき連中も連行されたし、銃も回収されたみたいだからそのうち解放されるわね……」

 

ミナはため息をつくと、岬に電話をかけてお昼ご飯は残ったおかずで適当に済ませておくように伝える。

 

ミナの感想は正しく、停止線が撤去され、店長に刑事たちのインタビューがあったのはそれから20分ほど後だった。

 

 

 

1時間後―――スナック黒十字店内。

 

「しかし、拳銃を持った不審者どもか。実際、我が店が旧第三帝国めいた意匠というだけでそこまでブッコんで来た輩は今までは存在しなかったが……」

 

「ハーケンクロイツやめればいいのに……」

 

潤美がしつこく言い続けるが、店長は半ば無視して話を続ける。

 

「本当に我が店の意匠以外に恨みを買った覚えはないし……いったい何者だったのだろうね?持っていた銃も……」

 

「見たところトカレフTT-33の類似品、おそらくは中華人民共和国などで生産されたものではないかと思われます」

 

直立不動の廻が答えると、店長は首肯した。

 

「そう、トカレフだ。まさか先日の中国人らしきクレーマーが首謀者というわけでもあるまいし」

 

顎に手を当てて瞑目しうーんと唸る店長に、ルルは肩をすくめて話しかけた。

 

「そんなこと、今々考えても仕方のないことではありませんか。警察が何らかのアクションをしますよ」

 

空悟の顔を思い浮かべながら、指を振って少年は微笑んだ。

 

「うむっ!それもそうだな!」

 

「まあ、店長がそれでいいならいいっすけど……それじゃ、私はこれで。ハゲの大将のところに、いつもの持ってかないといけないんで」

 

ぬえ子が呆れ気味に店長に話しかけてから立ち上がる。

 

「ところで、何持ってってるの?魚介類だと思うんだけど……」

 

「うちのおふくろが作った一夜干し。うち、乾物屋なんだよ」

 

ミナの質問にそう返して、彼女は「じゃあ、みはるさん、ルルさん、ミナさんまた後で。練習集中してやらないとね!」と笑って店を出ていった。

 

―――店外に出た彼女に、一羽の鳥―――ルルの使い魔がついていったことに彼女は気づいていなかった。

 

「ほんと珍しいわね」

 

「依頼主は気を掛けるものでしょう」

 

「それもそうか」

 

彼女を気に掛けたルルに珍しさを感じながら、ミナは笑う。

 

(敵は外から来る、ね)

 

ルルが受けた破壊神の神託を思い出しながら、みはる達の方を見た。

 

別の席でみはるは夕と談笑している。

 

内容は―――

 

「ほう、ゴンドラの唄を歌うのですか。私も好きな曲です」

 

「気が合いますわね!こんな古い曲を好きだと言ってくれる人がほかにもいて、わたくし嬉しいですわ!」

 

どうやら今回みはるが歌う曲について話をしているようだった。

 

「他に……?大正五年の歌ですよ?」

 

「それがいたのですわ……そこに!」

 

みはるがビシッ!と指を向けたのは当然ミナであり、ミナは「え?私???」と自分を指で指して苦笑いした。

 

「お前か……年の功だな……」

 

「いやあ、それほどでも……」

 

「試しに歌ってごらんなさい!お二人とも!」

 

みはるがどこから取り出したのか、古めのラジカセをドンと机の上に置いてニヤリと笑う。

 

「ラジカセとはまたレトロな……」

 

「レトロと言っても、まだ使っている方は年配の方を中心にまだまだいますわよ。さあ、聞かせてごらんなさい!」

 

みはるはラジカセをズイと彼女らの前に突き出した。

 

どうやら、もう完全に歌わなければ済まないらしい。

 

ミナと夕は顔を見合わせて、妖精は仕方ないなあと笑い、ロボットは仕方ないと顔をしかめた。

 

「それでは、ミュージックスタート!」

 

古い歌謡曲の旋律が、真新しいラジカセから流れてくる。

 

ゴンドラの唄。

 

大正4年に芸術座の第5回公演「その前夜」の劇中歌として発表され、その後長く愛された歌謡曲である。

 

現代でもミステリ小説原作アニメのエンディングテーマに採用されるなど、時代を超えて歌い継がれる歌だ。

 

ちなみに、著作権は既に切れている。

 

「「命短し恋せよ乙女……」」

 

二人の歌が店の中に響き渡る。

 

透き通った声で切々と……時間を惜しんで日々を生きる乙女の背中を押す歌が流れていく。

 

(あれ?これわたくしよりうまくありませんか???)

 

地下アイドルで歌っているはずのみはるよりも、それは確かに綺麗で心に染みる歌であった。

 

「「―――今日はふたたび来ぬものを……」」

 

朗々と響く歌声に誰もが聞き惚れている。

 

―――ただ一人を除いて。

 

「お粗末様です……どうだった?」

 

「いやあ、これはわたくしと言えど呆然とするほどですわ。本当にあなた方、あれですか?素人さん?」

 

ぺたぺたとミナや夕の頭や頬に触れつつ、場違いな悪役令嬢みたいな少女は言った。

 

「まあ、それなりに経験はあるって言ったとおりよ。それより、すんげーうまいわね、夕ちゃん!」

 

「知っている曲だからな。既知のものであれば―――に劣る我々ではない」

 

夕が胸を張る。

 

「人間に劣る」とは言わなかったが、そう言おうとしたのは間違いないだろう、とミナは苦笑した。

 

「これは負けてはいられませんわね」

 

ぐぬぬ、と立ち上がったみはるの顔には、闘志が燃え上がっていた。

 

「練習期間はわずかに2週間。されど、この歌を聞かされては必勝の想いをブチ撒くしかありませんわ!」

 

ラジカセの巻き戻しボタンをおもむろに押して、お嬢様らしいナニカは腕を組んで高笑いを上げる。

 

「……よくわからない人ですね?」

 

その様子に、ルルが若干困惑していたことは言うまでもなかった。

 

 

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