異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第44話「え、でもつぐちゃんの発案ですわよ、これ」

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そして、バイトを辞めた2人とバイトが休みになった1体は2週間後に備えてみはるたちとともに練習を行うため、練習場所へと向かっていた。

 

場所は、韋駄天百貨店の地下の倉庫―――を改造したスタジオである。

 

シャッターを開けると、そこにはきちんとした音響設備を含む簡易的なスタジオがあったのだ。

 

「えーと、みはるちゃん?ここって……」

 

「うちのお父様から使わない倉庫だからといただきましたの。ホホホ」

 

謎の扇子を顎に当ててクスクスと笑うみはるの解説を呆れ顔でしたのはぬえ子だった。

 

「言い忘れてたんだけど、みはるさんマジで金持ちんちのおじょーさんだから。なんでアングラアイドルなんかしてるのか知らないけど」

 

「お金持ちと言っても、このデパートの社長の娘でしかありませんが。この格好と話し方は……キャラ作り……と言ったら信じます?」

 

楽しそうにころころと笑うみはるに、ルルは真顔で「いえ、全く見えません」と答えると、みはるはさらに楽しそうに笑う。

 

「その通りですわ!最初はキャラ作りだったのですが!なんだかつぐちゃんと一緒にネットアイドルとかユー●ューバーとかやってたらなんだかこの口調でないと落ち着かなくなってしまったのですわ!本末転倒とはこのことですわね!!」

 

ブワワッと涙すら飛ばして熱弁する悪役令嬢もどきに、ミナは「お、おう……」としか言うことができなかった。

 

「なんでこんなキャラ濃い子を知らなかったんだ、(前世の)私……?」

 

「興味ないことにはとことんクビを突っ込まないミナさんらしいじゃないですか」

 

フッ、と肩をすくめてシニカルな笑みを浮かべたルルに、ミナは「そうかなー……?そうかも……?」と頭を抱えるばかりだ。

 

「おい……なんで私まで連れてこられたんだ?」

 

そんな頭を抱えた森の妖精をジト目で見てきたのは、あの後ほとんど強引に連れてこられた夕だ。

 

「あ、うん……それは私じゃなくて、みはるちゃんに聞こうか……?」

 

「もちろんあなたの唄が素晴らしいからですわ!今回はわたくしと一緒に歌っていただきます!」

 

ドレスを翻して悪役令嬢もどきは夕を指差して高笑いを始めた。

 

「私は承知していないぞ……店の中なら私は女中だ。客の言うことも聞いたがな……第一だな、みはるとやら。この百貨店の社長の娘というのであれば、なぜ店長の頼みを断っていた?父の進退にも関わるのではないか?」

 

不機嫌そうに腕を組んでみはるを睨めつける人造人間に、みはるはあっけらかんと「いや、お父様は出なくても責めないとおっしゃいましたし」と答えて扇子を広げた。

 

「いくらなんでも親友が到死の重傷を負って明日をも知れない時に、呑気に歌っていられるほど阿呆ではありませんわよ、わたくし」

 

彼女はその広げた扇子を壁に掛けると、アンプを確認する。

 

「まっ、過去映像を編集して、わたくし個人は活動しているようには見せかけていましたけれどもね」

 

「昨日は病室に飛び込んでくるなり号泣しまくって大変だったんだよ、この人」

 

「くっ……あっさりおしゃべりになるとは……おやりになりますわね!」

 

ぬえ子の指摘に顔を真っ赤にしてよくわからないことを言うみはるに、戦中生まれのガイノイドは「理解が難しいな……」と手のひらをこめかみに当ててそっぽを向いた。

 

その顔が不機嫌に歪められていることは言うまでもない。

 

 

 

それから1週間ほどして。

 

今日は早朝から大将の手伝いで漁に来ていた。

 

バイトを辞め、急に昼生活になったミナであるが……

 

「おいっちにーさんしーおいっちにーさんしー」

 

特にそのギャップを感じさせることもなく、準備運動などをしつつ大将が来るのを午前3時頃から待っていた。

 

繰り返すが、この森の妖精は睡眠短縮のチョーカーを持っているため、1日1時間も眠れば全く問題なく活動が可能だ。

 

ハイエルフと言えど、睡眠をしなくては疲労は蓄積し活動は低下するものだ。

 

だから冒険者として彼女は決して睡眠を欠かさないが、それを思いっきり短縮してくれるチョーカーはミナにとっては手放すことの出来ない便利アイテムだ。

 

何しろ、数分間でも眠れれば数十分は寝た程に回復するので、活動時間を増やすにはもってこいのアイテムである。

 

こればかりはなくしたり壊したりしてもいいように、十数枚ストックを持っているのだ。

 

命短し恋せよ乙女。

 

長命種であるからこそ、ミナはその生命を惜しむように使って生きているとルルは思っている。

 

(街住みのエルフにはよくある強い衝動―――今あるものを全力で楽しむ性格。しかし、上古の民に近いエルフほどその傾向は弱くなるものですが、ミナさんは純正品ではありませんからね)

 

苦笑して埠頭のボラードに腰を下ろし、なぜかみはるに覚えさせられたラ○オ体操のテーマをミナの持つものと同じ小さな笛で吹き始める。

 

「お、気が利くじゃない。やっぱり準備運動と言えばラ○オ体操なのだわ」

 

そう言って背伸びを始めたミナを微笑ましく見て演奏を続ける。

 

ラ○オ体操を第2まで終えた頃、先週と同じように軽トラに乗って大将は現れた。

 

「おはよう!今週も来てくれたな!」

 

「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

 

元気よく二人が挨拶すると、大将はミナに握手を求め、彼女もそれに応じる。

 

「来てくれなくても仕方ねえなとは思ってたが、来てくれて本当に助かるぜ」

 

大将は笑いながら自分の船に乗り込んでミナたちを促した。

 

船は錨を巻き上げると動き出す。

 

―――船が動き出すと、ミナは漁場へ向かう途中に歌を歌い始めた。

 

「赤い目玉のさそり……広げた鷲の翼……」

 

詩人、宮沢賢治が作詞作曲した夜空の歌だ。

 

時間はまだ朝の4時前。

 

空には満天の星々が輝いていた。

 

「歌うめえなあ、ミナちゃんよ。それにしても今日の朝は冷えるだろうな」

 

「うーん、寒い日は関節が動かなくなるような気がするんですよね。もちろん僕の気の所為ですが」

 

「そらそうだ。オレだってんなことねえのに、若い身空でそんなことあるわけねえわな!」

 

ミナの歌を褒めた大将に、おどけて話しかけたルルは、そう返されて苦笑した。

 

「まあ、そうですね。まだまだ人生これからですよ、僕もミナさんも」

 

網を取り出しながら、ルルは笑う。

 

船を照らす星の光は淡く、その光に向けてミナは笑いかけるように歌っていた。

 

―――そうして特に問題なく漁は始まり、なんの出来事もなく終わる。

 

白み始めた空を見上げる帰りの船の上で、大将はミナに聞いてきた。

 

「しかし、オレの仕事を手伝わせてなんだけどもよ。あの店長っつーか、商店街の切り札、目を覚ましたそうじゃねえか。タイミング悪かったな」

 

おにぎりを一つミナに投げ渡して、大将は操縦を続ける。

 

その言葉にミナは苦笑せざるを得ない。

 

「いやあ、実は……」

 

「ぬえ子さんも店長も言っていませんでしたか?僕らも、その切り札の補助をすることになったんですよ」

 

「本気か?!ふたりとも何も言ってなかったぞ!?」

 

大将はルルの言葉に、声を荒げる。

 

「あの野郎ども……!今度店にぬえ子が来たら問い詰めてやらんとならんな!」

 

怒りマークが顔中に現れそうな勢いの店長へと、あはは、となんともいえない笑みを投げかけながらミナは思う。

 

(今回はこれ以上トラブル起きませんように!お願いだから!)

 

一枚だけ手元に残した、変なはまぐり……グリッチ・エッグに生息してた貝を握りしめながら、ミナはそう考えるのだった。

 

 

 

それから2時間後。

 

バイト代を大将から受け取ったミナたちは、大将の新作ラーメン試作品を口にしていた。

 

きつい仕事を手伝ってくれた礼だとのことである。

 

出てきたラーメンはムワッとするほどの鰹節の香りが漂い、上にはカツオのチャーシューが乗っていて、更には火を通したカツオの骨をスープに加えているらしい。

 

「すごく……カツオです……ハイパー……カツオ……ゼロドライブです……」

 

「美味しいは美味しいですけど、ここまでカツオの味が全面に出すぎていると口飽きしませんか?後、コストがすごいことになってやしませんかね?」

 

「そうね。限定ラーメンでしょうし、お高めの値段設定にするおつもりなのでしょうけども……私はいいと思う」

 

ラーメンを食べ終わった二人が感想を言うと、大将は「なるほど、そうかい……まあ1500円なら元が取れるくれえだよ」と言って、うーん、とうなり始めてしまう。

 

「まあ、香味油と野菜炒めを工夫すればどうにかなるかね……次回の試作でも食ってくれると嬉しい」

 

5分ほど考えて、とりあえずの答えが出たようなので、大将はそうして話を切り替えた。

 

「ところで、半グレがいなくなって俺らも助かってんだけどもよ。なんだかようわからんが、今度はトカレフ持った連中が出たんだって?半グレ共も持ってたらしいけども、大半は改造エアガンだったとかなんとか聞いた覚えはあるんだけどもよ」

 

「あー……その話、大将まで来てますか。私達も具体的にはわからないんですが、実際スナック黒十字の廻りをうろついてた連中が持ってたらしくて、警察に引っ張っていかれてました」

 

―――あの後、家に修行に来た空悟に話を聞いてみたが、まだ連中は口を割っていないらしく、本当に具体的なことはわからないそうである。

 

全員外国人というわけでもなく、かつて半グレ集団に所属していた履歴もなく、当然のように集成党とも関係がないらしい。

 

明確な背後関係が見当たらないということだけが今のところ分かっていることのようだ。

 

また面倒ごとの予感がするが、とにかく今のミナにとっては例の歌自慢に参加することが最優先事項だ。

 

(グリッチ・エッグ絡みでもこっちの世界絡みでもとにかく嫌だ……冒険は自分が能動的に目標見つけて行くのが楽しいのに……)

 

内心のうんざりをなるべく表情に出さないように努力しつつ、ミナはラーメンの残り汁にライスをぶっこんで食べるのだった。

 

 

 

練習は―――万事滞りなしと言えた。

 

あちらの世界では吟遊詩人としての修行も欠かさなかったミナと、これも潜入には必要な能力とばかりに朗々と歌う夕、そしてそれに負けまいと歌うみはるはほとんど合わせることもなくうまく合唱できていた。

 

ゴンドラの唄はともかく、ハンプティダンプティと星めぐりの歌は合唱向きの歌のためもあるだろう。

 

結局、ルルは琴、ぬえ子はシンセサイザーによる演奏を行うこととなり、それも問題なくセッション出来ている。

 

問題があるとすれば、それは……

 

「……あのですね。何度も言いますが、僕に引っ付こうとしないでください、ぬえ子殿」

 

何故か、ルルに接近しようとするぬえ子の姿があったことだ。

 

「えーなんで?シンセサイザー教えてあげようとしてるだけじゃん」

 

「結構だと言ってるんです。僕は琴を弾くと決まったではありませんか」

 

不満を漏らすぬえ子にルルは薄い笑いを浮かべながらそう返す。

 

何故かぬえ子はルルに何度も何度もシンセサイザーやエレキギターの使い方を教えようと、彼のパーソナルスペースを侵略してくるのである。

 

一度はスカートをめくられそうになったりもした。

 

本当に男かどうか疑ったとのことで、ほんの少しだけ怒ったルルが逸物をボロンしようとしたので、ミナが慌てて止めたのは言うまでもない。

 

彼のアレは半グレ事件の時に外人が驚いていたように【大きくて】【刺激が強い】のだ。

 

何度も見ているミナは、ハニーファやかつてパーティメンバーであった女性にそのことを何度か聞かれたことがあるが、決まってこう返していた。

 

「仮に挿れられたら、腹筋の存在を無視されてお腹がボゴォってなりそう」と。

 

そんなヒギィ案件を女子高生に見せるのは、実に犯罪的行為だろう。

 

セクハラをしてきたのはぬえ子の方であるが。

 

もちろん、ルルが接触を躱しているのは彼女がしつこく電気楽器の演奏を教えようとするためでも、セクハラをされるからでもない。

 

―――そもそも引っ付かれたらコトだしね。

 

ミナが心の中だけでそうつぶやく。

 

彼はノーライフキング、リッチーであり、その体は死体の冷たさを持つアンデッドなのだ。

 

その冷たさは、一度でも葬式で遺体に触れたことがある人間ならわかるであろう、生き物が生命活動を止めた時の冷たさと同質のものだ。

 

センサーは魔法のアイテムでいくらでもごまかせるが、実際に触れられてはどうしようもない。

 

そんなことで大騒ぎになっては困るのだ。

 

かといって説明をするわけにもいかず、ルルは少しだけ困っていたのだった。

 

「うーん、向こうではこういう時、ミナさんの使い魔のアンデッドですって申告すれば良かったんですけどね……どうすればいいんでしょう」

 

ミナたちが住んでいた王都は割と自由な空気があり、アンデッドや知能ある魔物でも誰かの使い魔であり、公序良俗に反しない―――死臭や腐敗臭がしない、人を食べないなど―――ことが証明されていれば、特に問題なく社会生活が営めた。

 

しかし、こちらの世界は異なる。

 

人種の差異はあれど居住している知的生命体はホモサピエンスしか居ない現代社会。

 

その人種間程度でも差別や逆差別が横行する世界。

 

もちろんグリッチ・エッグにもそういった差別は存在するが、明確な異種の知的生命体が存在し、魔物やバグの脅威に怯える世界では同じ種族同士の差別は主に身分間や力の強弱間で行われるものだった。

 

しかしながら”単一種族の知的生命体”しか居ない現代にはエルフもアンデッドも当然のように存在しないことが常識である。

 

政府機関や研究機関にばれてしまえば、彼女らはそれらと対決を余儀なくされるだろう。

 

故に、バレるわけにはいかないのだ。

 

「避けるのは難しくないから、あと1週間我慢……いや、あの様子だと多分、刺しちゃったことに罪悪感覚えてる気がするし、付きまとわれるかもしれないわね……これは困る。カーチャンや空悟みたいなどてらいのがそんなにこの世界にいるとも思えないし……」

 

茜や空悟、そして崎見老人のような、異界の存在を知っても動じないものはこの世界では稀だろうことが二人を更に悩ませる。

 

ミナもまた、スタジオにあったオカリナをもてあそびながらうーんと唸ってしまった。

 

「いっそ死んだふり……」

 

「バレた時クソ厄介だからおよしなさい」

 

「じゃあ、突き放してみるとか……」

 

「タイミングを考えてやりなさいね?」

 

「はい……とりあえず1週間我慢します……」

 

ルルは諦めて、天を仰ぐ。

 

―――歌自慢大会は来週の土曜日に迫っていた。

 

 

 

「それはともかくとして、あなた方一体何者なのです?わたくし、その説明では納得できないのですが?」

 

「いやーそれはねぇ……」

 

今度はミナがみはるに問い詰められて困っていた。

 

「だから言ったろうが。こいつはとある国から来た外人だ。あまり詮索するなと言ってるだろう」

 

夕に窘められるが、みはるは聞かない。

 

「いいえッ!その容姿、その歌声……無名であろうはずがありませんッ!絶対にどこかで有名なはずですわ!」

 

「そんなこと言われてもさあ……」

 

みはるはそう迫ったが、ミナとしては答えられることはなにもない。

 

何より、有名だったのはグリッチ・エッグでのことである。

 

「ほら、外国語だって喋れるでしょう?」

 

そうエルフ語やドワーフ語を使って誤魔化そうとするが、「その言葉を話されているのはどこの国なのですか!」と聞いてくれない。

 

「遠い街、ウク○ールさ」

 

ミナは目をそらして、どこかの光の巨人の1エピソードの真似事をしつつ苦笑した。

 

ちなみに、ミナの故郷の森はイファンタ森林地帯の奥にある天護の森、住んでいた王都のある国はラゴンエス王国という。

 

当然、ウク○ールとはなんの関係もない。

 

「そんな20年以上前のネタを知っている女子高生はいませんわッ!さっさと吐きなさい!」

 

「絶対にノゥ!第一これを20年以上前のネタと知ってる女子高生が目の前にいるじゃない!」

 

「ああ言えばこう言うのですわね!宗教団体ですか!」

 

みはるが引かないので、こうなればオブリビエイトでも使ってやろうかとにらみ合いを続けるミナは思ったが、先に引いたのはみはるであった。

 

「……まあいいですわ。いずれその正体を暴いてみせましょうッ!この一ノ瀬みはるの名に賭けて!」

 

そんなもん賭けなくていいよ、と内心げんなりしつつミナは疲れた笑みを浮かべる。

 

ルルだけではなく、ミナも付きまとわれそうな雰囲気がしてきたことに笑うしかなかった。

 

「ところで、参加チームってどんなもんなの?今までその話全く出なかったけど……」

 

「東京のアイドルとか歌手とか来るらしいですわね。とはいえ、今回の主催者が順位を決めるので、元政治家さんに突き刺さればそれでいいのですわ」

 

ドリルヘアーを櫛で整えながら悪役令嬢もどきが答えると、ミナは天井を見つめる。

 

「アイドルねえ……みはるちゃん、どんな活動してたの?」

 

「通り一遍は。だいたいは小さい会場でコンサートやったり、ユー○ューブとかニ○ニ○で歌ったり、何かにチャレンジしてみたりといった感じですわね」

 

ひぃふぅみぃ、と白い薄手の手袋をした手で数えながら答えたみはるは「まあやってることはバラドルですわね!スキューバダイビングが一番楽しかったですわ!」と笑った。

 

「なるほど、色物芸人か……」

 

「テレビ番組とかに呼ばれたらヨゴレやらされるタイプね……」

 

夕とミナが口々に失礼……とも言えない言葉を投げると、令嬢のようなものは高笑いを始めた。

 

「ホーッホッホッホ!そんなこと気にしてたらこの格好で人前に出ることなど出来ませんわッ!それはそうとちゃんと動画はまだありますから見てみますか?」

 

そう言ってみはるはディスプレイの切り替えスイッチを押す。

 

スタジオの片隅においてあったパソコンと同期したディスプレイにはデスクトップ画面が広がり、彼女が操作するとおもむろに動画が始まった。

 

タイトルに「一ノ瀬みはる探検隊 幻の大地に天空の花嫁を見た!?」と出て、やけに意味深な洞穴が映る。

 

『人類か!それとも異種族なのか!謎の洞窟の中に広がる幻のシャンバラに浮かぶ花嫁とは!この衝撃的なニュースが……』

 

動画ではなんだかテンションの高い男性のナレーションに合わせて古臭い英語の新聞の切り抜きが乱舞している。

 

完全に探検隊であった。

 

「……やっぱりあなた、高校生じゃないでしょう。好きなアーティストは?」

 

「荒○由実!」

 

「普通はそこは松○谷由実って答えるのよ!っていうか松○谷由実自体が古いわ!!つーかタイトルが雑!川○浩探検隊とド○クエじゃねーか!!」

 

―――川○浩探検隊。

 

それは最早40年以上前の番組であり、若者がリアルタイムで見ているはずのないものであり、享年33歳であった三郎も生前は見たことのないものであった。

 

初めて見たのはつい先日のことである(ちょうど惟神テレビでやっていた)。

 

「え、でもつぐちゃんの発案ですわよ、これ」

 

「二人して古いわ!完全に色物すぎる!しかもドレスで洞窟はいるな!」

 

動画では、ドレス姿のまま洞窟に入ろうとしてつぐみに止められているみはるが写っていた。

 

そして、二人が着替えた格好は川○浩探検隊の探検服(市販品)である。

 

「もう隠す気ゼロか!ツッコミ切れんわ!!」

 

「ホホホ!そう言ってもらえて光栄ですわ!元々これはそういうバカ企画ですもの。撮影場所はわたくしのおじさんが持ってる隣町の山です」

 

手の甲を頬に当ててお嬢様笑いするみはると肩を落として息を荒げるミナ。

 

その光景眺めながら、夕は「付き合っていられん……」と溜息をつくのであった。

 

 

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