異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第49話 「なんでそんな伝説の金属でおろし金なんて作ってるんですか?」

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廊下を抜け、「関係者以外立入禁止」と表札が貼られた扉を前にした一行。

 

廻と夕がセンサーを動員して、内部に組合長らしき熱源反応があることと、それ以外に何者かが存在することを感知する。

 

そしてミナとルルには確かに中にシャドウマンらしき気配があることが感じられた。

 

「突入してすぐ制圧する」

 

「了解」

 

親友同士がそう確認し、他の仲間達も首肯した後、ミナはすぐに扉へと解錠の魔法をかけて内部へ踏み込んだ。

 

電源室の中には事前の索敵通り、シャドウマンたちがひしめいていた。

 

「ミナ殿」

 

「やっちゃってどうぞ!」

 

ミナが100均で買ってきたサングラスを岬と空悟に渡してそう言うと、廻と夕の鉢巻アーマーが閃光を発する。

 

その閃光を浴び、すぐさまシャドウマンたちはあっという間に霧散していった。

 

「これでシャドウマンは片付いたか……出てきなさい、このアホみたいなことをやらかした張本人!」

 

ミナが怒りをにじませて警告を発するが、帰ってくるのは木霊のみだ。

 

しかし、既にロボットたちだけではなく、熱を感知するエルフの暗視にも何者かがいることははっきりとわかる。

 

「出てこなきゃこっちから行くわよ!5つ数えるうちに出てきなさい!いいわね!いーち……」

 

ミナが数を数え始め、それが4まで数えられた時、何者かが荒い息を立てながら立ち上がったことをミナの目は見ていた。

 

「……う、ウゴクナ……こいつ、ドウナッてもしらない……!」

 

拙い日本語で喋りだしたのは、確かにスナック黒十字で潤美を困らせていた中国人に相違なかった。

 

彼はどうやら気を失っているらしい与野組合長を抱え、組合長に刃を向けながらこちらを睨めつけている。

 

「……お前一人ではないことは既にわかっている。とっとと出てくるがいい」

 

夕が前半を北京語で、後半をロシア語で話すと、今度は別の場所の配管の脇からやはり夕に叩きのめされたロシア人らしき男が出てくる。

 

「……よし、出てきたわね?理由とか、そういうのは警察で存分に話しなさい。でもどうせ、錯乱したバカの戯言にしか聞こえないでしょうけど……」

 

そうして、ミナはバッグから弓を出して矢を番える。

 

「ロシア人っぽい人、銃よりも私の弓のほうが早いわ。こちらを狙っても無駄。中国人らしき人も同じ。組合長を刺したらあんたを射つ。降伏しなさい。でなければ―――殺すわ」

 

感情を込めない眼でミナは日本語でそう言った。

 

廻がその言葉を丁寧に翻訳した言葉を二人に放つ。

 

その言葉に、二人は憎しみの目をこちらに向けつつも、手に持った武器を投げ捨てようとして―――固まった。

 

恐怖にその表情と行動が止まる。

 

「……何故武器を離さない?死にたく……いや、まさか……夕ちゃん、なんか怖がってるみたいだから、聞いてみて」

 

「了解した」

 

ミナは夕にそう頼んで、二人のわめき声を確認してもらうと、それは間違いなく「このままじゃ殺される」という恐怖の声だった。

 

ミナは嫌な笑みを浮かべながら、ルルを振り返る。

 

「……まさかとは思うけど?」

 

「ええ。こいつらではない……当然組合長でもありませんよ、黒幕は。そうだろう……出てくるがいい」

 

そうルルが虚空へ向けて問いかけると、そこから染み出すように現れたのは―――そう、それは……

 

「ふはははは!はーははははは!そう、この私だ!とはいえ、私本人というわけではないがねッ!!」

 

「店長ですか!?」

 

声で気がついた岬の叫びに呼応するかのように、それは実体を持って哄笑を上げる。

 

そこに現れたのは、先程昏倒させたはずのスナック黒十字の店長であった。

 

「うわーはははははっ!見たか乗ったか!はーっはははははは!」

 

しかし、その眼は正気ではない―――言動もまた。

 

「……なるほど、マジック・アイテムに操られているというわけね……だから、停止の呪いで倒れなかったというわけ。これはエニヴァの黒筆……いや、エストロヴァの雪片か!」

 

ミナは怒りを隠そうともせずに、店長―――いや、店長を操っている何者かへ声を向けた。

 

「イカにもタコにもスルメにも!エストロヴァの雪片に宿りしもの!それが私だ!」

 

「貴様……邪神の手のものか?!」

 

ミナがテンションの高い店長……否、エストロヴァの雪片に宿りしものに怒りの声をぶつける。

 

その声音があまりにも響くものだから、岬は「怖いです……」と少し怯えていた。

 

「その答えは……まだ種明かしをするには早い!まずはそこの役に立たぬ不貞外人を停止させることにしよう!」

 

「させるか!」

 

ミナは叫ぶとともに矢を放ち、ルルがプロテクションを唱えて怯えている外国人二人をガードする。

 

しかし、エストロヴァの雪片の声は止まらない。

 

「それで守ったつもりかね!?私が―――停止と影を司るものだということを忘れたかな!?」

 

瞬間、靄が部屋中に充満していく。

 

「そう!私は停止させるもの!魔法とて、同じこと!君たちのように素の力が強いものでなければこの通り!」

 

プロテクションは基本的に前面の防護壁を作り上げる魔法だ。

 

故に、床から染み出してくるそれに対応はできず―――組合長を巻き込んで、外人二人はそのまま停止してしまった。

 

「貴様……!」

 

「私を倒せばいいことはわかっているねぇ勇者様!ふ、ふふふふ……はーっはははははは!」

 

店長に取り憑いたものの哄笑を聞きながら、ミナはエストロヴァの雪片のことを思い出していた。

 

エストロヴァの雪片。

 

それはエストロヴァという名の魔術師の残した呪いのアイテムである。

 

停止の呪いと影の魔術、そして操心の術を操ることができるようになるそれは、いつしか意志を持ち呪いを能動的に放つようになったという。

 

かつてミナは2度、エストロヴァの雪片のレプリカと対峙したことがあり、そのときにはそれぞれ停止と影、片方ずつしか使うことはなかった。

 

それ故に正体の推測に遅れが生じたのだが、こうして直接操られている見た以上確信が持てる。

 

「オリジナルのエストロヴァ……貴様は、それだということかッ!」

 

「イカにもタコにもスルメにもッ!ここまでヒントをやったのだ、わからぬはずもあるまい、勇者ッ!」

 

マントをはためかせ、エストロヴァの雪片に取り憑いたものは笑う。

 

「なるほど……貴様か」

 

低い声音で怒りを表し、青筋を立てていたのは、ルルだ。

 

「……ルル?」

 

「なるほど、なるほど。まあ今回は僕らしくないことが続きましたが、なるほどお前が関わっているとなれば、僕も調子が狂うのは当然か……」

 

ルルは笑う。憎しみに満ちた眼で。

 

「……ああ、もしかして『会う前』ってこと?」

 

「会う前?」

 

髪をかいて目を細めたミナに、岬はそう聞いた。

 

「そう。私とルルが会う前の話」

 

ミナがそう言うと、ルルは嫌そうな顔をする。

 

「ええ、そうです。ミナさんと僕が会う前……いえ、正確には、ミナさんのその頃のパーティーを撃退する少し前にこいつと因縁がありましてね」

 

「でも、あなた、こいつのレプリカと対峙した時は何も言ってなかったじゃない」

 

ミナがそう言うと、ルルは「レプリカだとはっきりわかっていましたからね。2度ともきちんとそれは伝えたはずです」と目を細める。

 

「僕に覚えがないか、エストロヴァ」

 

「む……?誰だ貴様は。私の記録に貴様のようなものは存在しない……今回の件を盛り上げるために利用した女どもに似てはいるか……」

 

ルルはその言葉にふっと笑う。

 

ふっと華のような笑みを浮かべて、「忘れるとはひどいじゃないか―――変態ロリコンショタコンネクロフィリア」と罵倒した。

 

「貴様―――何故それを―――!まさか!」

 

「ああ、あのとき、魂まで磨り潰しておかなかったのは僕のミスだ。ああ、それは認めよう」

 

ルルの笑みはどんどん深くなっていく。

 

「……どゆこと、ルル?」

 

「簡単なことです。僕、こいつを作ったやつ……こいつに宿っているクソに強姦されそうになったことがありまして。あの頃はまだ弱くて、ねえ」

 

「……男をか?」

 

感情のこもらぬ瞳でニタニタ嗤うルルに、廻が聞く。

 

「まぁ、パッと見は女に見えるからな、ルルくん」

 

答えたのは腕を組んだ空悟であった。

 

「なるほど、稚児趣味というやつか……すまないが私の趣味ではない。端的に言って、気持ちが悪いな」

 

「いくらキレイでもちょっとおTINTINついてるのはなぁ……で、どういう経緯でルルくんこいつとお知り合いなんだい?」

 

廻と空悟がシラけた目で店長に取り憑いたものを見る。

 

そうしてルルは空悟の質問に笑みを楽しげに歪ませて答えるのだった。

 

「いえね。経緯は簡単です。僕の住んでいた歪んだ森に生前のこいつが入り込もうとした……そして、僕を見るなり襲いかかってきて、服を剥ぎ取り強姦しようとした。ただそれだけです」

 

「だ、だまれッ!その顔と格好で男を名乗っている方が悪い!アンデッドのくせに!」

 

狼狽した声が場に響く。

 

ルルはその言葉にため息を一つつくと、真顔でエストロヴァへと言葉を返した。

 

「ハァ?そんなの僕の勝手ですけど?しかし、まさか僕の逸物を思い切り目の前で見てまでヤろうとするとは恐れ入ったわけですが。あの時はありったけの魔法の罠で撃退するのが精一杯でしたよ」

 

こつこつと白い羽根の生えた杖で地面を叩き、ルルは続ける。

 

「まあそれから力をつけ、ミナさんのパーティーを撃退した後、十分に自信をつけてから捜索して叩き殺したんですが……まさか、エストロヴァの雪片に宿っているとは。それもミナさんの世界に来ているとは。余程跡形もなく消滅したかったと見えるな油虫」

 

「あー……まあ、なんとも言えないけども……そういえば治田はうちの下僕をレイプしようとしてたわね。もしかしてエニヴァの黒筆をあいつにやったのもあんたなの?」

 

ミナは内心、そんな目にあってまでまだ女装をやめないこいつの神経すげーな、と思いつつエストロヴァへとそう確認した。

 

「何の話だ!私はこの世界についこの間来たばかりだ!誰に頼まれたわけでもない!ええい!そこのオカマを殺してくれる!!」

 

エストロヴァが叫ぶと、シャドウマンと……影の獣が大量に出現した。

 

「僕、既に死んでるんですが……これだから調子こいたやつは嫌いなんです」

 

「言ってる場合?!空悟、組合長と外人を確保してて!夕ちゃん、廻さん、閃光!岬は私の後ろ!」

 

ミナの指示と同時に夕と廻が殺人光線閃光麻痺形態を発動させ、影たちを消しにかかる。

 

―――しかし。

 

「消えぬ……だと?」

 

「ふははははは!私がいる限り光による消去は無効!無限の影に食いつぶされるがいい!」

 

そう、シャドウマンも影の獣もエストロヴァの言ったとおりに消えることはなく、徐々にミナたちへとにじり寄ってくる。

 

「厄介ね……」

 

―――と、その時。

 

ルルがツカツカと歩き出して、店長の体を杖でゴスっと殴り倒した。

 

影にまとわりつかれながら。

 

「な、な……な!?」

 

ドスリ、と尻餅をついたエストロヴァはそうして狼狽えることしか出来ない。

 

「……生前のことをだいぶ忘れているようだな、三下……ミナさん?」

 

「あ、うん。そういえばあなたアンデッドだから、影の攻撃効かないわよね」

 

そう、シャドウマンやその上位モンスターである影の獣の攻撃は精神攻撃。

 

それは残念なことに停止の呪いが効かないアンデッドには、当然のように効かないのである。

 

そして、魅了の魔眼を持つルルに操心の魔法も全く通用しない。

 

つまり……

 

「間抜けめ」

 

「ぐ、ぐおおおお!!」

 

ルルには、エストロヴァの繰り出す全ての攻撃が無意味なのだ。

 

エストロヴァが操る店長が肉体的に強ければ確かにルルも苦戦しただろう。

 

だが、店長は単なるカレー屋店長の中年オヤジでしかなかった……

 

すなわち―――後は怒り心頭のルルにボコられる運命しか存在はしなかったのであった。

 

 

 

『く、くそッ!卑怯だぞ!オカマに魂半分男め!』

 

それから10分後。

 

店長の体を用いていたエストロヴァの雪片は、その体を通じて存分に苦痛を味わった後に店長から引き剥がされ、黒い雪の結晶のような宝石の姿を現していた。

 

ひと目見れば美しいとも言えるそれだが、ミナとルルの力で正体を表したそれは罵詈雑言を繰り返している。

 

周囲は既に何もなく静かだ。

 

仲間の息遣いの他には気絶した外国人、組合長のうめきがときおり聞こえるだけだ。

 

そうルルがエストロヴァを叩きのめしている間に、シャドウマンや影の獣は残りのメンバーによって駆逐され、既に姿を消していたのであった。

 

―――店長については既にミナが回復呪文を使い、ルルによってつけられた傷の全てを完治させているため、店長が意識を失ったままであったこともあって、特に生命活動及び精神活動に支障はない状態だ―――気絶しているが。

 

「では、ごきげんよう。二度と僕の目の前に現れないよう粉々に……」

 

『ま、待て!待ってくれ!私にはまだ!』

 

「まだ―――なんですか?遺言を聞く気は―――ない」

 

そうして雪片へ向けてルルは呪文を唱える。

 

呪文が完成し、いつでも放てる状態となった時、ルルはいくつかの質問をなげかけた。

 

「ぬえ子さんが僕に突然襲いかかったのはお前の差し金か?」

 

『な、何の話だ……?』

 

「とぼけるなら今すぐ破壊する」

 

冷たい声でルルが言う。

 

言って、杖を最早無力な雪片へと向けて、唇を半月のように笑みの形にした。

 

「で?」

 

『そ、そそそ、そうだッ!わ、私がやらせた……!わ、私の洗脳力はバグによらないものだからな!お前でも気づくことはできなかったろう!』

 

震え声でそう叫ぶエストロヴァをルルは冷たく見下ろした。

 

「……次の質問だ。外国人たちを操ったのは、お前か?」

 

『そ、そうだ……』

 

「なるほど……では、それを命じたのは誰だ?お前は如何にかつての魔術師エストロヴァの魂を宿すと言っても、ただのマジックアイテムだ」

 

「最初に使ったものがいるはずよ。さっさと吐いてもらいましょうか」

 

そう言ってミナは黄金色に輝くおろし金を取り出した。

 

「なんですか、そのおろし金?なんか金色で軟そうですけども」

 

岬が脇からそのおろし金を突付くと、ミナはニコリと笑った。

 

「これね。廻さんたちに渡したガントレットと同じくオリハルコンで出来てるのよ。知ってるでしょ、オリハルコン」

 

オリハルコン。それは色々なファンタジーでも使用されている伝説の金属。

 

アダマンタイトやヒヒイロカネと同様に、現代世界には存在しないものである。

 

「なんでそんな伝説の金属でおろし金なんて作ってるんですか?」

 

「いやあ、熱を通すと不味くなっちゃうくっそ硬い野菜をどうにか食べるために友達の山人と一緒に作ったやつなんだけど、これいわゆるダイアモンドカッターに近いニュアンスのブツなのよねぇ」

 

ミナがそう言って笑うと、夕が「なるほど。そのオリハルコンとやらをもそのおろし金を使えばすりおろせると」と得心する。

 

「あーそれでやるってわけですね。さすがミナさん、えぐいですねえ」

 

ルルがそれはいいと手を叩くと、空悟が「そうそう、今日はハンバーグなんだよな。文は和風のおろしポン酢乗せたのが得意なんだ」と悪そうな顔で宣った。

 

「そーだな。このおろし金、何個か持ってるから今度清水さんにやるよ。今日は間に合わんでも次使う時に使えるだろ?」

 

そんななんでもないような話をしながら、おろし金をエストロヴァに突きつける。

 

『う、うそだろう?そんな残酷な……ひ、一思いに割られたほうが……』

 

「だーめ。話して私かルルのバッグに永久封印されるのと、話さないでここですりおろし宝石になるの、どっちがいい?」

 

「一度目は楽に殺しすぎた。今度は少々長く苦しんでもらおうか、エストロヴァ」

 

ニタニタ笑いながら近づく主従に、エストロヴァはヒィと声にならない悲鳴を上げるばかり。

 

ひょいと持ち上げられ、その雪の結晶を模した体の端がおろし金に接触しようとしたその時、ついにこの黒い喋る宝石は音を上げる。

 

『や、やめてくれッ!話す、話すから!無限のバッグに封印されたほうがマシだ!』

 

その言葉を聞くと、ミナはルルに宝石を手渡して続けた。

 

「じゃー、早く答えなさい。このくだらない事件を企んだゴミクズのことを」

 

『じ、実は……じゃ』

 

そこまで言った時、エストロヴァは……

 

『え、な、ぜ』

 

突然うるさいほどに喋っていた声を途切れさせ、ガシャン、と音を立てて割れて地面に降り注いだのであった。

 

「チ……そう簡単には尻尾を掴ませはしませんか」

 

ルルは怒りを浮かべて地面に落ちた宝石の欠片を拾い集める。

 

以前にも述べたが、魔法の物品には一切リペアーの魔法は効かない。

 

故に、これを元の雪の結晶めいた宝石に戻すには相応に高い錬金術の技術が必要であった。

 

技術そのものは問題はない。

 

ミナもルルも古代語魔法の一部でもある錬金術についてはかなり上位の術士だからである。

 

「魂は抜けてない?」

 

「僕がいながらにして魂をかすめ取るなど、邪神とて不可能ですよ」

 

ミナの質問にルルは笑って答える。

 

「男を強姦しようとしたクズを修復してやるなんて業腹ですが、今の所一連の街での騒動……手がかりがこいつしかないですからね。工房の建設もそろそろ考えないといけないのかもしれませんね」

 

そう、問題となるのは、錬金術を行使するための設備がこちらの世界にはおそらくどこにも存在せず、一から作らなければならないであろうという点が一つ。

 

もう一つはそのための素材が現在枯渇しているという根本的な問題であった。

 

ミナはその言葉に天を仰いで、「作れるかな……?」と独り言ちる。

 

「工房?錬金術の……ですか?」

 

「いわゆるなんとかのアトリエ的なヤツか?」

 

岬と空悟が聞くと、ミナはコクリと頷く。

 

「そのためにはたくさんの魔法関係の素材が必要なんだけどなー!あーやってらんねえ!」

 

ミナは電源室に下手な傷がついてないことを確認しつつぼやく。

 

「全く……研究所ダンジョンアタックで素材をどれだけ持ち帰れるか、そもそも素材があるかどうか……それが果てしなく問題だわ……」

 

げんなりした顔でそう言って、周りを見れば、仲間のほかは気を失っている外国人と組合長、そして店長だけ。

 

とりあえずは脅威は脱したと見て良かった。

 

「……ところで、呪いはどうなんだ?」

 

「前のレプリカんときもそーだったけどよ、エストロヴァの雪片は壊れるか外界に影響を及ぼすことができなくなれば、その呪いは勝手に解ける。後10分かそこらだな……」

 

ミナはそう言って、ルルと夕を見る。

 

「もどりましょ、会場に。大騒ぎになるとは思うけど、閉会まで見届けなくちゃあね」

 

ミナは努めて晴れやかにそう言って、ルルは微笑みで、夕は疲れた顔を返すのであった。

 

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