異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第65話「まさか!あたしと同じ魔法少女!?」

 

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「こ、これは……どういうことですの?」

 

みはるがいつにもなくうろたえつつそう聞くと、ミナは「ま、色々ね」と言って笑った。

 

「そんなことより、既に観客はあらかた逃げた。金髪女が人払いもしたぞ。遠慮なく姿を現せ、廻」

 

完全武装状態の夕がそう言うと、すぐに廻は光学迷彩を解除してスーツ姿のいつもの格好を晒す。

 

夕の言葉通りに、会場の周りは何やら光学的、電子的に遮断された状態になっていることを確認し、彼は安堵した。

 

―――見れば薄っすらと霧のようなもので包まれており、包まれた場所を視界から遮るもののようだ。

 

ミナの精霊術の一つ、霧の迷宮を作り出すメイズ・ミストである。

 

「しかし、これほど大規模に隠蔽を図れば、逆に隠しきれないのではないかね?」

 

そう聞かれたミナは「いや、もう無理だからね……私達だとバレなきゃそれでいいの精神で!」と疲れた笑顔を廻に向けた。

 

「……致し方無し」

 

廻はそうして頭を掴んでいる覆面レスラーへと視線を戻した。

 

「き、貴様ら……!我が同胞たちをどうした!?」

 

「―――言うまでもあるまいよ。会場中に転がっている生体反応を拾えば、当然君のお仲間は私の仲間たちによって鎮圧されたとも」

 

会場を見回せば、人々が逃げ去った時に起こされた土煙が起きており、それが徐々に晴れ始めると―――

 

ふんどしマスクマンたちがズタボロ状態で転がっていたのである。

 

「う、うそだろ○太郎!?」

 

「嘘もなにもないものだが……まあいい。どのような目的で騒ぎを起こしたか言うがいい。でなければこのまま頭蓋を破砕する」

 

廻は無慈悲にそう告げて―――答えるものは別の人物だった。

 

「あっははははは!そんなの、決まってやがるだろうが!アレを悪用して、バレンタインデーをぶっ壊そうとしたんだろうが、非モテ野郎!」

 

答えたのは―――伊良湖恋と呼ばれた少女であった。

 

その手には女児のおもちゃのような意匠の杖がしっかりと握られている。

 

「あの杖―――まさか、岬のと同じもの!?」

 

ミナが叫ぶと、「ああ、そうだぜ」と少女は答える。

 

「くっ……なぜそれを知っている!アレは選ばれたものにしか―――!」

 

覆面レスラーがもがきながら聞くと、恋はニタリと笑って杖を男へと向けた。

 

「―――表情分析完了。九九.九%で一致。お前か、今朝の飛行物体は」

 

廻に言われて、「あーあたい見られてたのか。そうだぜ。今朝はこいつと別口のゴミ掃除してたのさ」と恋はおどけた。

 

「……恋、ちゃん?」

 

つぐみが呆けたような声を出して彼女を見ると―――「すまねーな」と獰猛な笑みを浮かべた少女は杖を振るう。

 

当然、それは攻撃を行うわけではなく―――

 

「まさか!あたしと同じ魔法少女!?」

 

「あたぼうよ!虹の欠片よ、愛と奇跡を起こせ。闇の願いを討ち滅ぼすために!」

 

その姿は変わっていく。

 

ツーサイドアップの黒髪は青いストレートの長髪へ。

 

その服装はアイドル然としたものから、シックな―――血を思わせる赤い十字架をあしらった純白のドレスへと。

 

杖は禍々しく、まるで命を刈り取る死神の鎌のような形状へと変化していった。

 

そしてその耳に岬と―――マジカル・アナンと同じ形状のピアスが輝き、変身は完了した。

 

「南風が我を呼ぶ―――魔法少女―――ミストレル・レン、参上ッ!!」

 

キラキラとするようなポーズを取った恋に、岬は「本物だァァアァァ!本物の魔法少女だァァァァァ!!」と大声で叫んでしまう。

 

まるで憧れのものに出会ったかのような目で。

 

その様子に恋は呆れたように「あんたも魔法少女じゃねーか……」と言って鎌を覆面レスラーへ向ける。

 

「きゃああああああ!いい!いいですわッ!素晴らしいッ!!」

 

向けた瞬間、後ろでみはるが突然騒ぎ出すが、恋は一顧だにせずに覆面レスラーへとドスの利いた声をぶつけた。

 

「で、お前持ってんだろ。出せよ、虹の欠片をよ。ありゃあこの世にあっちゃならねえもんだ。全部ぶっ潰す」

 

怒りと憎しみを湛えた目で少女はマスクドジェラシーを睨めつける。

 

「ふ、ふんッ!持っていたとしても渡すわけがなかろう!そして同胞たちを倒しきったと油断しているようだな!いでよ我が追加の同胞たちよ!!」

 

廻に頭を掴まれたまま覆面レスラーは叫ぶ。

 

すると先だってと同じく紫色の煙が会場に現れ、そこからふんどしマスクマンが大量に発生したのである。

 

「空中からふんどしマスクマンがいっぱい現れる……なんという気持ち悪さ」

 

「醜いですねえ。とても醜いですねえ……」

 

周囲を囲んだふんどしマスクマンの群れに、主従はそうして呆れ顔となる。

 

「いいから蹴散らすぞ。この程度何でもなかろう」

 

夕が殺人光線を発射しつつそう言うと、ミナは「ま、そうね……空悟、おめーはこっちだ。あの変態マスクマンは岬たちに任せてこいつらぶっ飛ばすぜ」と空悟に声をかける。

 

「おう!無理はするなよ、岬さん」

 

岬の肩をぽんと叩いて、空悟は精神注入棒を背広から出してふんどしマスクマンをぶん殴る。

 

「ったくよぉ!バレンタインなんかよぉ!」

 

「大嫌いだっつうの!!」

 

ミナは真銀のメリケンサックをふんどしマスクマンの顔にめり込ませながら叫んだ。

 

「お、おごお……美少女のパンチで散る命……それもまたよし……!」

 

「るせー!さっさと死ね!!」

 

めごしゃ、とメリケンサックをもう一度男の顔面にめり込ませてミナは心底嫌そうな顔をした。

 

親友たちはそうして物理で変態どもを駆逐していったのである。

 

「ほー、あんたの仲間やるじゃねえか」

 

「そりゃもう……それより、あなたはその力、どこで……」

 

岬に聞かれた恋は、「今話すこっちゃねえだろ」と言って鎌をヒュンヒュンと振る。

 

「そこの人、そいつを離さないでくれよ。虹の欠片の力を手放さないなら、そのままそいつの首をはねてやる」

 

獰猛に、まるで生粋の殺人鬼のように少女は嗤う。

 

「―――だ、そうだが?」

 

「おのれ!おのれぇ!だが嫉妬の力は尽きぬ!いでよ、ジェラシーロボ!俺をこの場から助けるためにやってくるのだ!!」

 

覆面レスラーは、いつの間にか右手首に装着していた腕時計のようなブレスレットにそう叫んだ。

 

すると、ゴゴゴゴ、と地面が震えだす。

 

「―――これは……地下に異常熱源発生!?くっ!」

 

廻は腕部のパワーを最大化し、覆面レスラーの頭蓋を破壊しようとしたが既に遅かった。

 

地面が割れ、あっという間に何者かの手が彼を奪回していったのである。

 

その大きさは手だけで覆面レスラーの身長と同じ程にはあったろうか。

 

巨大な腕がステージに生え、その手の上にマスクドジェラシーは屹立し「ふはははは!怖かろう!」と哄笑を上げた。

 

「ええい!ここでそんなものを暴れさせる気か!?」

 

「ちょっと、ちょっと~~……本当に、これってどうなっているんですかぁ~~……?」

 

つぐみがおろおろと廻にすがると、恋がニヤリと笑った。

 

「だからさぁ、すまねえって言ったろ、つぐみ姉ちゃん。寝ててくれ―――起きたときには全て忘れているから」

 

鎌をヒュンヒュンと振るって、その風切る音がなにか得も言われぬ音楽のように周囲に響く。

 

「眠れ―――忘れろ―――ソング・オブ・アムネジア―――!」

 

ふわんふわんと浮き立つような音楽が鎌から響き、世界が青く白く染まっていく。

 

気がつけば、つぐみやみはる、そしてまだ周辺に残っていたスタッフや少数の観客はバタバタと倒れ、安らかな寝息を上げていた。

 

「……これは……」

 

ミナはその雰囲気に、忘却の精霊が強く働いていることを感じた。

 

(抵抗に失敗すると直近の記憶を失うタイプの術か……幸い、空悟にも効いていないみたいだから大した術ではないわね)

 

ミナはそう判断して、また一匹ふんどしマスクマンの顔面を破砕した。

 

「全く……」

 

「へっへっへ……お嬢さ~~~ん!」

 

「しつこいわボケェ!!」

 

メリケンサックが男の顔面に炸裂し、男はあらぬ方向へ吹き飛んでいく。

 

しかし如何せん増えていく数のほうが多いらしい……つまり、ジリ貧だということである。

 

現在、会場の内外は霧の結界で遮断されているがここは街中も街中。

 

現状の会場外を考えれば、おそらく外には脱出した人々や集まってきた人々が野次馬として、ミナが作った霧を見ていることだろう。

 

即ち、あまり派手な攻撃魔法は使えない。

 

どういうことかといえば、それは音や衝撃、誤爆の問題である。

 

夕の殺人光線発射の閃光を除けば不可視かつほとんど音がせず、その効果範囲と命中率は優れた性能を持つ二人の感覚器官と射撃管制によって正確無比と言えるほどに高く、ほとんど誤射の危険はない。

 

更には仮に外部へ誤射をしても霧によって防がれるため、外に影響を及ぼすことはない。

 

対して、ミナの魔法はどれもこれもが光や爆音、或いは氷雪熱波といった派手な音や現象を起こすものであるため、外に気づかれ警官隊などの強引な突破による無用な負傷者の発生が危惧された。

 

遮音の術を使えばそれは緩和されるだろうが、光や熱波などの現象までは防げない。

 

そして会場にはまばらではあるものの、そこそこの人々が先程の忘却魔法と思われる音波で昏倒しているため、巻き込むような広範囲攻撃は難しい。

 

つまりこの場で頼りになる広範囲をカバーする攻撃は廻と夕のそれしかないのである。

 

「ええい!きりがない―――」

 

「ま、そのうち敵がボロを出すことを期待するしかありませんね」

 

エネルギーボルトを発射し、また一匹ふんどしマスクマンをぶっ飛ばすとルルは笑ってミナの背を守るように立った。

 

向こうでは夕が砲台となっているのを守るように空悟が精神注入棒を振るっている。

 

その頃、巨大な腕の生えたステージでは……

 

「……お前、それを本当に暴れさせるつもりか?」

 

みはるとつぐみを安全な場所へと運んだ廻は、そうして腕の上で嗤う男を睨めつけた。

 

「ふっ!それは貴様らの動き次第よ!このまま我が同胞たちと遊び続けていれば良し。だが、抜本的な解決を行うことができるそこの小娘二人が戦闘態勢を解除しない限りは、チャージが完了次第暴れさせる!」

 

偉そうに腕を組んでそのように宣うマスクドジェラシーに、恋は「あ?ふざけてんのか?」と鎌を向ける。

 

「そんなもん、どうせハリボテだろうが。てめーの虹色の欠片、あの壁を作ってた分はこいつが持ってるだろ?」

 

「ああ、これ」

 

岬は半分に欠けた虹色の飴玉を取り出して掲げる。

 

「……でもでもですねー絶対そのままでもろくなことになりませんですよ。てか、あたしの知っているしっ〇〇スクとしっ○団ならギャグ漫画らしくもう少しふざけた、リアルでやったら大変なことになることをしますですよ」

 

「んだぁ?そのなんとかってのは」

 

怪訝な目で見つめられた岬は「魔法少女に見つめられるとか、照れますですね」と言ってから、杖をマスクドジェラシーに向ける。

 

「どうせどっかから変なもんを調達しているに決まっているのです!チャージとかなんとか言ってましたですし、なんらかの補助エネルギーシステムを備えていると見ましたです!」

 

岬が指摘すると、覆面レスラーは余裕たっぷりに「それがわかったとしてなんだというのかね!貴様ら二名が我が軍門に降らぬ限り、この街は我がジェラシーロボによって壊滅するのみ!はーっはっはっはっは!」と高笑いを上げた。

 

「……はっはっはっはっはっは」

 

「貴様、何を笑っている!?」

 

「うっふっふっふっふっふ。おかしいから嗤うのです。ペラペラとクチの軽い……本当にあの漫画の世界から抜け出てきたかのようなのです」

 

突然笑い出した廻に激高するマスクドジェラシーに、岬は笑いながら答えて杖を掲げる。

 

「おめー、何する気だ?」

 

「あなたも手伝ってほしいのです。廻さん!あの手をあたしたちが叩き壊しますです!その間にミナさんから武装を受け取って装備してくださいですよ!」

 

「心得た!」

 

岬の声を待たず、廻は既に駆け出している。

 

「偉大なるロジックよ!炎の刃となり刃金に宿れ!ファイアウェポン!」

 

そして、岬は恋の鎌へ杖を向けると武器強化の魔法を唱えた。

 

一瞬、彼女の鎌が赤く輝き、少女はびっくりして鎌を取り落しそうになる。

 

「うおっ?!何しやがる!」

 

「武器強化なのです!気休め程度ですけど、あの腕を削るためには使えると思うのです!」

 

「削るだと!?馬鹿め!この鋼鉄がそう簡単に削れると―――」

 

覆面レスラーがそう言った瞬間、岬は杖を振りかぶる。

 

「愛に慄け!光に戦け!愛は力に、光は力に、力は鋼になれ!新魔法ッ!アナン・ブーステッド・コメットぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

杖の先に集まった光が、徐々に鈍色の鉄球と化し炎と燃える。

 

炎と燃えた鉄の塊は―――

 

「質量こそ大正義!大艦巨砲主義ばんざぁぁぁぁぁぁいぃぃ!!」

 

マジカルアナン全力のスイングで放たれ、そして地上より放たれた燃える隕鉄は―――バゴォォォォム、と凄まじい音を立てて腕の小指をふっとばしていた。

 

吹っ飛んだ小指は砕け、地面に落ちて轟音を立てる。

 

土煙が起き、そして晴れ、ドヤ顔の岬がそこから顔を出す。

 

「……お、おも」「思っているから殺るのです。いいですか?Do you Understand?」

 

覆面レスラーはその様子に震え上がり、へたり込んで失禁までしているが岬にその様子を視界に入れる慈悲はなかった。

 

「おめー、意外と容赦ねえのな」

 

恋は呆れたように岬に声をかけると、岬はふわりとスカートの端を持って彼女に頭を下げる。

 

「恐悦至極なのです」

 

「きょうえ……?」

 

「褒めていただいてありがとう、って意味ですよ。さぁ、今のうちにあの腕を切り倒してしまいましょうです!」

 

言葉の意味がわからなかった恋に、きっと見た目だけなら同い年くらいだから、まだ習ってないんだろうな、と岬は思い、その考えを置き去りにして駆け出した。

 

「とにかく殴って切るのです!あの覆面レスラーがこのロボットみたいな何かを完全に起動する前にちょっとでも削るのですよ!チャージなどさせるものかなのです!」

 

「了解だぜ!」

 

岬の言葉に恋は思ったよりも素直に従い、その巨大なロボの腕に全力で鎌を叩きつけていく。

 

どうやらファイアウェポンが効いているせいか、その攻撃できちんとそのロボの装甲を斬れているようであった。

 

「とっころでぇ!どこでぇ!魔法少女になんかぁッ!なったんですかぁ!!」

 

杖でしこたま、何度も何度も装甲をぶん殴り凹ませ破壊しながら岬は恋に聞いてみた。

 

「そりゃあ!仕事してたら!落ちてきたかんなぁ!虹の欠片がッ!おふくろがよぉ!あたいをクソみてえな芸能界に『売って』から、ろくに休みもなかったしよぉ!それに惹かれてきたんだろうなァ!」

 

ジャキン、ジャキンと鋼を刻んで、少女は嗤う。

 

「あたしに勝るとも劣らないクソみたいな環境ッ!?まさか枕営業とかぁ!?」

 

「やられそうなったがよぉ!その時にこの力に助けてもらったんだぜぇ!クソおふくろは記憶消して今頃病院だぜぇ!!」

 

バギン、バギンと装甲がどんどん削られていく。

 

覆面レスラーは狼狽え、降りようとするが、そのたびに遠くから夕の殺人光線に狙撃され動くこともできない。

 

廻もまたミナから装備を受け取り、装着完了まで殆どないはずだ。

 

岬はそこまで考えて、目の前の可憐かつ獰猛な少女に目を向けた。

 

「……やっぱり家族は邪魔ですか?」

 

「さーてね。少なくとも、記憶を消してあたいが生まれる前の心に戻してやったら、割とまともな人間になってたよォ!」

 

それでも自分が娘だとは認めてはくれなかったが、と機械の腕をボキボキに壊しながら少女は答える。

 

「MOTHER、M―――Memoryを取ったらOTHER、他人ですってことですか!全く、記憶というやつは!!」

 

岬が怒りのままに恋が刻んで壊した箇所を杖でしこたま殴って完全にグシャグシャに潰していく。

 

それが太い腕の半分まで来たところで―――

 

「記憶は失われ、記録は焼かれ、残るものなどないかもしれない。だが我らには未来があるのだ!!」

 

完全武装の廻が飛び込んでくる。

 

「下らぬ嫉妬など、所詮は過去のもの!何をどうしようが、どんな力を手に入れようが!我らは我ら以外の何物にもなれないのだッ!」

 

廻の魔王すらもひるませる強烈な拳が半ば破壊された腕に突き刺さり、爆ぜる。

 

「な、なにおう!ええい!チャージは未完了だが、こうなればこのまま起動を―――」

 

マスクドジェラシーがブレスレットに何やら指令を発しようとした瞬間、岬が杖を掲げる。

 

「させるか!こんなこともあろうかと―――!ルルくんに教えてもらった精霊術の出番なのです!!」

 

岬は杖に集中し、それを通じて世界を見る。

 

精霊はあまねくに存在し、あまねくを見渡す。

 

少女はその視覚とも嗅覚とも言えない感覚をして、土に潜むものに声をかけた。

 

「地に棲むもの、優しいお爺ちゃんノームさん!あたしの力は全部持っていっていいのです!今日のお仕事はお山をくり抜いてトンネル作り、街道づくり!土除け、穴掘り、どんどん進むのですよ!」

 

ミナのそれとは違う、彼女の言葉で精霊語が紡がれて、そして―――

 

地面に、ポッカリと穴が空いた。

 

「―――ええっと―――落ちて墜ちるはナイアガラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁl!?」

 

覆面レスラーが間抜けな声を出し、腕とマスクドジェラシーは会場の地面に空いた穴に飲み込まれていって―――

 

ひゅうう、と風切る音を立てて落下し……ぐわらがしゃどんばぎばぎ、と巨大な音を立てて地面に衝突したのである。

 

「ひゃ、100メートルは穴を掘ったのです!腕もあたしたちの攻撃で動かなかったに決まっているのです!縁に捕まることもできずに落ちた―――1メートルは一命取る!無防備に落ちた巨大ロボなぞ、自分の自重でぶっ潰れろなのですよ!!」

 

「……やっぱ容赦ねえな、あんた」

 

鎌をひゅんと回して肩で担ぎ、恋はニヤッと笑ってそういう。

 

「当然……なのです!さあ、あとは潰れトマトになったあの覆面レスラーから虹色の飴玉を引っ剥がすだけなのです!!」

 

杖を支えに岬はすっくと立ち上がり……ふらついて廻に支えられる。

 

「よくやった、岬殿。あとは任せ給え」

 

「廻さん……」

 

岬をそのまま地面に寝かすと、廻は恋を見遣る。

 

「ついてきたまえ。まだ増えている連中を見ろ。まだあの変態は死んではいないようだ」

 

アーマーに包まれた廻が恋を促すと、その少女は「指図すんなよ」と一言だけつぶやいて、そのまま穴の中へと入っていってしまった。

 

そして廻は躊躇することなく同じように飛び込んでいく。

 

飛び込んだ先には、闇。

 

闇の中には破壊されたロボットのような何かと、そして―――

 

炎のように燃え上がる、何かがいた。

 

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