異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第69話「うん、全く可愛くない。で、話しなさい?話さなければ……」

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―――即ち、それはこういうことであった。

 

『ウギャァァァッァァァァァンゴゴオオオオオオオ……本体はどうやら奪われたようだねぇぇぇぇぇ!!』

 

そこにいたのは―――巨大な猫のようなナニカだ。

 

ミナが置いていった好悪反転のナイフを食らった猫が突如変異して、空悟たち3人に襲いかかったのである。

 

「やべーぞ!完全に猫じゃねえ!」

 

空悟は精神注入棒でそれをぶん殴ったが、ろくにダメージはない。

 

『ギャッギャッギャ……そのようなものでは私には傷一つつかないよぉ……!ああ、妬ましい、羨ましい―――貴様は不幸にするだけでは足らぬ!ここで死ぬが良い!』

 

裂けた口で下卑た笑い声をを上げながら猫だったものは立ち上がった。

 

「これは猫じゃない……猫ではありえない……」

 

好悪反転の魔力で、すでにそれを猫とは認識していなかった文だが、巨大化―――と言っても空悟の身長より少し高いほどでしかないが―――したそれを見て、プルプルと震えながら何とも言えない表情となる。

 

「空悟さん!無理しないで!そんな猫じゃないものでも先輩案件です!」

 

『うぎゃああぁぁぁごぉぉ……なんて仲の良さそうなカップルだぁ……許さんぞぉ……!』

 

「もう2児が居る夫婦だよボケェ!!」

 

もう一撃、空悟の精神注入棒が肩口にヒットするが、それもまたそう聞いているようには見えない。

 

『甘い甘い……死ねぇい!』

 

「させるか」

 

猫だったものはその爪を振りかぶり、空悟に殺到する―――と思われたが、それは夕によって防がれた。

 

バシュン、と音がして爪が消し飛んだのだ。

 

即ち、殺人光線の光が爪を吹き飛ばしたのである。

 

『貴様ぁ……よくも邪魔をしたぁなぁ~~!!』

 

ぐるり、と目玉を回して夕を見て、そしてにたりと不気味に笑い、夕ににじり寄る。

 

その様子は猫というよりは爬虫類や両生類の類のようであった。

 

「待てッ!」

 

その後頭部を空悟が思いっきりぶっ叩くが、効いている様子はなくノシノシと夕へ向かって歩き出す。

 

夕はたじろぎもせずに手刀で猫らしきものの首を狙ったが……

 

「残念だが、如何に装甲なしの潜入用躯体であるとはいえ、さすがにこの程度では私に傷一つつけることは叶わん」

 

そしてその腕には、ミナから預かっている金色の手甲。

 

それは魔王のバグすらも弾くほどの力を持つ、ミナ自身はあまり使わないが強力な装備である。

 

即ち、化け猫の力量如きでは彼女に好悪反転の術を掛けることはできないのだ。

 

「そこまでか?では動機でも話してもらおうか―――」

 

夕が化け猫の脳天に手刀を一発入れた。

 

ボゴン、とまるで大きな木槌のようなもので石壁を叩いたような音がする。

 

『ぎゃあ!?』

 

「ふむ、一発では死なんか。言う気がなければ死ぬまで殴るのみ」

 

夕は手刀に更に威力を込めて、振りかぶる。

 

「あ、あのな……ここは三郎の家なんだから、もそっと周囲に配慮を……」

 

空悟の制止に対して、夕はこともなげに「先ほどと同じ結界―――とでもいうのか、障壁が家を覆っている。問題はない」と言った。

 

そうしてまたもう一発ボゴンと同じ音を立てて手刀が猫らしきものの額に突き刺さる。

 

「あっ、これ知ってますよ、空悟さん。岩山両」「言わせねえからな?」

 

そんな今野夫妻の夫婦漫才を尻目に、猫らしきものの脳天には次々と手刀が見舞われていく。

 

『ぎゃあ!?グェっ!ごわぁ!?』

 

「まだか?まだ言わんのか?私は兄と違って気が長い方ではない。廻のような優しさはないぞ」

 

ボゴン。ボゴン。

 

石壁が木槌に凹まされていく音が何度も何度も聞こえる。

 

『い、言う!言うから!やめてくれにゃ!?』

 

手を振り、これ以上の暴虐をしないでくれと嘆願する猫のようなものに、その機械人形の女は静かに語った。

 

「―――ああ、言えば『考慮』してやる」

 

それは地味に目の前のものを許さないという言葉。

 

その言葉に化け猫は震え上がり、文はもっとやれと煽っている。

 

空悟は天を仰いで嘆息し―――そして、化け猫の冥福を祈る。

 

―――普段なら止めにも入っただろうが。

 

空悟の脳裏にそんな思いが浮かぶ。

 

なぜそんなことを思ったのか?

 

それは―――

 

仰いだ天からは、化け猫を確実に葬れるであろう少女の形をした彼の親友が―――

 

「よぉいしょぉ!」

 

そんなオヤジ臭い掛け声で、結界を破壊する姿がバッチリ見えたからであった。

 

 

 

「「どっせい!」」『ぎにゃぁ!』

 

ミナと岬はガーゴイルから降りて地面に降り立ち、周囲にバレぬよう猫だったものを縁側から家の中に叩き込む。

 

幸いにして縁側のガラス戸は開けられており、それが何かを破壊することはなかった。

 

「空悟も清水さんも夕ちゃんも無事みたいだな。焦って来たけど杞憂だったな」

 

ミナは3人が今に入ったことを確認し縁側のガラス戸とカーテンを閉じて、ふう、と額の汗を拭った。

 

「遅かったじゃないか」

 

そんな彼女に最初に話しかけたのは夕であった。

 

「もう少しでこいつの頭を破壊するところだった。苛立ちに任せてな」

 

夕はパンパンと手を叩いて埃を払い、そう言った。

 

「いやあ、それはちょっとまずいことになってたかもですし……とりあえず、おとなしくするですよ、化け猫!」

 

岬がステッキを居間の机の上でピクピクと痙攣している化け猫に向ける―――が、化け猫は無反応だ。

 

「あれ?これ死にかけてないです?」

 

「うへっ!?まずいまずい!世界を調律する我等が祭神よ!その大いなる流転より一滴の生命を分け与え給え!リトルヒール!」

 

ミナは慌てて小回復の魔法を猫だったものにかけて、息をついた。

 

「なんで回復するんです?」

 

文がそう聞いてきたので、「いやあこいつオレらの小学生のクラスメートの片割れの片割れ、つまりさっきの仮面つけた女性から滲み出たやつでさ……」と冷や汗をかく。

 

「とりあえずこうなっては仕方ない。岬、そいつを持ってきた廻さんのワイヤーでぐるぐる巻きにして。聞きたいことがあるから、そいつを連れてみんなで研究所に向かうわよ」

 

ミナがため息を付きながらそう言うと、岬が「わかりましたです」と答えて、手際よく気絶している猫らしきものに縄をかけていく。

 

「もしかして結構めんどくさい話だったりするか、三郎?」

 

「ぶっちゃけ最初からめんどくさいよ、この事件は……」

 

親友同士が口から霞でも吐かんばかりにどでかいため息をつく。

 

溜息をつくと幸せが逃げるという言い伝えが本当なら、もう100年くらい逃げてしまったのではないかとミナは思った。

 

「とりあえずみんなの前で全部明らかにしておくべきだと思うのですよ」

 

「賛成だ。朝からわけがわからんからな」

 

「あーうん、そうね、説明するからみんな黙ってついてきてくれ」

 

そうしてまた記憶陣の詠唱を始めるミナの内心は「もう疲れた」以外の何物でもなかったことは言うまでもない。

 

 

 

「えー、というわけで、今回の総括をします」

 

ミナが疲れ切った顔で、正座させられている富永と寝かせられている寺内を睨めつけてそう宣言した。

 

周辺にはワイヤーでぐるぐる巻きにされている化け猫と、紫色の針のようなもので地面に釘付けられているシミのような影がいた。

 

「あの……もうしわけないのですが、どちらさまなんですか……本当に……」

 

気がついた富永は、廻に介抱されてなんとかここまで回復したが、まだボーッとしているようで、焦点が微妙に定まらない目でこちらを見ている。

 

「と、その前に……岬」

 

ミナに促されて岬は首肯すると、富永の顔に触れる。

 

髪でほとんどが隠れているとはいえ、痛々しい顔の半分に嘆息すると、岬は仮面だった虹の欠片を押し当てる。

 

「あ、何を……?」

 

「虹の欠片よ、可能性の扉を開き給え。歪みの極地たるもの、遠い世界の悪意に壊されたものを本来の願いどおりに癒やすのです」

 

岬の心から勝手に出てきた呪が紡がれる。

 

すると、虹色の飴玉は光とともに消えて、ぐちゃぐちゃになったままの彼女の顔の半分は綺麗にもう半分と同じ整った形に治されていった。

 

「あの、これは……」

 

そこまで言った時、女の表情が歪む

 

「わ、私……あ、あんなことするつもりじゃ……?」

 

顔が完全に美女と言える状態に回復すると、女は急に動揺し始めた。

 

「はいはい、落ち着くのです。あなたはあたしたちの敵に操られていただけなのです」

 

岬はニコッと天使のような、いつものヘラっとした笑顔ではなく、きちんと相手を安心させるための笑みを浮かべて女に話しかけた。

 

「プリ○ュアとかセー○ー○ーンとかはご存知でしょう?そんなのに出てくるような奴がいて、あなたは操られていただけなのですよ」

 

魔法少女の姿のままそう言って、岬は続ける。

 

「あなたは多分悪くありませんですが……どういう事情であんな事になってしまったかだけ、教えていただきたいのです―――まずはお名前から。仮称:富永さんでは仕方ないのです」

 

岬はそうして意識がはっきりした富永に言葉をかける。

 

その言葉をゆっくりと飲み込んだ女は、ポツポツと話し始めた。

 

―――縫い付けられた影のようなナニカが抗議するようにうごめくが、それは遮音の術やそれ以外の魔法で覆われているのか、声も思念もこちらには届くことはなかった。

 

「……わ、私は、その、富永ふのりといいます……し、市内で会社員……して、してま、した」

 

うつむいてたどたどしく、後悔の籠る言葉が響く。

 

(おい、やっぱり名前間違ってんじゃねーか)

 

(すまんすまん。やっぱうろ覚えになってたわ)

 

かつての同級生たちのひそひそ話も聞こえていない様子で、彼女は続ける。

 

「―――これが、私の写真です……」

 

ごそごそと持っていたバッグらしきもの―――それも変異しているのだが、それから自分の自動車免許証を出して自嘲気味に笑う。

 

「……このとおり、デブでブスで、結婚とかそういうのを諦めて……生きてきたんです……でも、でも……」

 

涙を流しながら、彼女は続ける。

 

例のバレンタインの惨劇とそこから逃げ出すような転校をして以来、もともと引っ込み思案であった性格は更に臆病なものとなり、彼女は隅っこで植物のように生きてきたらしい。

 

県内の短大を卒業後、今の職場に入り、上司やお局様のイビリに耐えながら彼女は必死に働いてきた。

 

だが、それを変える転機が訪れてしまった。

 

―――彼女の会社に、彼女をバレンタインの惨劇に陥れた女子の子供がコネを伝って入社してきたらしい。

 

そして、そこから―――過去をほじくり返すことが起きた。

 

その新入社員は、ミナは覚えていることであるが、高校に入った後にクラスメートの女子を巻き込んで援助交際事件を起こした女の子供であった。

 

「ああ、そいつならオレ覚えてるわ。あのやかましいクソ女、高一ん時にそんなことやって妊娠した挙げ句に退学になったって事件があったんだわ」

 

ミナは額に手を当てて当時のことを思い出す。

 

その女は気の弱い教師と見ればその授業を妨害して取り巻きと騒ぎまくるようなたちの悪い女であった。

 

その女は三郎、空悟と別の中学に進学したこともあって、流石にそこまでやってなかった小学生の頃のことしか知らない空悟は「マジかよ……やっぱぶん殴っときゃよかったんだ」と目を覆った。

 

その女は要領だけは良かったらしく取り巻きだけはいつもいて、三郎は苦々しく思っていたのであるが……

 

「あれのガキとなれば、そらやらかすかぁ……」

 

げっそりした気分でミナは天を仰ぎ、ふのりと名乗った女は俯く

 

その後は、新入社員が親譲りの要領の良さで仲間を増やしつつ、彼女のことを親から聞いてイジメていいやつだと判断したのか孤立させにかかってきたという。

 

もともと無口で要領の悪いふのりはあっという間に追い詰められて、そのまま自主退職した。

 

その後は彼女の影、歪んだ像がミナたちに言ったように、親には結婚もしないで無職のままであることをなじられ、自暴自棄でいたところに―――

 

「なるほど。虹色の飴玉を持った影にそそのかされたのですね?」

 

「そ、そうよ……やり返せるって、言われて、それで誰か協力してくれそうな人を……」

 

顔を両手で覆い、後悔の嘆きが漏れる。

 

「よりにもよって、私が、ずっと昔に好きだった人を、同じように、ひっそり暮らしてた人を……巻き込んで……」

 

声はどんどん沈んでいく。

 

消え入りそうなほどに小さくなり、そして押し黙ってしまった。

 

ミナはこう思っていた。

 

(―――聞くべきことは聞いたわね)

 

少なくとも、彼女が一方的に悪いわけではないことが確認できた。

 

事前に唱えていた、看破の古代語魔法センス・ライはなんの反応も示さなかった。

 

少なくとも、彼女が今話したことは彼女の主観では真実であることだけは確かであった。

 

(反省しているというか、あの影っぽいのに操られてただけっぽいのは確定ですね。で、あれば後は……)

 

岬はまたニコッと笑った。

 

「大丈夫です。彼は無事なのです。小学生の頃好きだった人なのですよね?やり直しくらいはさせてあげられるのです」

 

岬はなんとなくこう思う。

 

ここで伸びている寺内という男がどういう人間かはわからない。

 

だけども、なんで彼が嫌われていたかわからない岬としてはなんとも言いようがないのだ、と。

 

「ねえ、ミナちゃん。この寺内なんとかさんはどういう子供だったのです?」

 

ミナにそう聞くと、ハッとふのりは顔を上げる。

 

森人の勇者となってしまったかつての男は、バツの悪い顔で笑った。

 

「そうね、口下手でタイミングが悪くて一言多い少ないってだけで、人は人を嫌うものよ」

 

それが答えだった。

 

三郎であったミナ自身、前世ではそういう人間だったのだ。

 

彼は頼りになるやつと親友だったからイジメと無縁だっただけである。

 

「まあ、それならとりあえずはいいか―――じゃあ、影と化け猫。てめーらの話を聞かせてもらおうか」

 

ミナはそうして指を弾く。

 

パン、という何かが弾ける音がして影を覆っていた結界が解かれ、影がうぞうぞと蠢いた。

 

『貴様……よもやそこまで一党の者を成長させているとはな……』

 

「あのクソみたいなバグダンジョンのおかげよ。さあ、後はあんたらから黒幕の話でも聞かせてもらおうかしら。どうせドミネーターのクソ野郎なんだろうけども」

 

ジト目で影を睨めつけ、ミナは暗い笑いを浮かべる。

 

「ねえ、化け猫。てめーからも聞きたいかなあ。寝てるふりしててもわかんのよ」

 

その言葉にビクリと化け猫が跳ねる。

 

『にゃ、にゃあ……?』

 

「うん、全く可愛くない。で、話しなさい?話さなければ……」

 

ミナの言葉を受けて、岬がステッキを向ける。

 

「今すぐ浄化してあげましょうですか?―――ま、どっちにしろ浄化するのですけども」

 

岬の冷たい声に、化け猫は震え上がる―――が、それ以上言葉を紡ぐことは出来ない。

 

「急に動かなくましたね、この化け猫……みたいなもの」

 

文がツンツンと突いてみるが、全くの無反応。

 

それは即ち―――

 

「制限が掛けられてる、か。バグで生まれたものにそんなン掛けられるのは魔王か邪神だけ―――」

 

『そのとおりだ―――せいぜい苦しめ。それが我が主の望み―――』

 

影がそこまで言った時、ミナはこれ以上は無駄だと判断した。

 

しかし、最早黒幕が誰かはミナとルルの中ではっきりとした像を持った。

 

はっきりとしてしまったのだ。

 

即ち―――それは旧敵の復活を意味していた。

 

「岬、もう良いわ。浄化して」

 

自分でも驚くほど冷たい声が勇者の口から漏れる。

 

その言葉に、夕や廻ですら口を挟むことは出来なかった。

 

「光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――その心、支配するものから解き放ち給え」

 

虹のひまわりが咲く。

 

影も獣もそのひまわりに飲み込まれて消えていく。

 

夏を象徴するその花を見ても、ミナの心には冷たいものが流れていた。

 

 

 

―――そして、化け猫たちが浄化され、猫は元の姿へと戻り、影は跡形もなく消滅した。

 

それと同時に、寺内が目を覚まし頭を振る。

 

「こ、ここはどこだ……俺は、何を……」

 

男は周りを見回すが、何も理解できていそうになかった。

 

「ああ、あなたはちょっと倒れていたのよ。そこの女性と一緒にね―――」

 

ミナが優しい笑顔で彼に微笑む。

 

「え、へ?どういうこと?なんでこんな美人と俺が?わけわかんなくない?おかしいだろ?」

 

困惑した表情で黙りこくるふのりと周囲の人々を見回す。

 

「ま、事情は―――ね」

 

ミナはふのりに目を向ける。

 

どうしたい、という気持ちを載せて。

 

答えられるなら良い。

 

答えられないのなら、ふたりとも記憶を消してしまうだけだ。

 

「あ、あの、実は……あなたのことが―――」

 

どうやら、それは杞憂に終わりそうだ。

 

しかし、少なくともこの場のこと、彼女がバグに操られ狂行を行う寸前だったことは夢と思わせなければならないだろう。

 

それを思えば、ミナは頭痛がしてくるのであった。

 

 

 

結論から言えば―――富永ふのりという女性は、元に戻ることが出来ないまま事件は終わる。

 

バグによって歪みきった体を元に戻すことは、ミナにもルルにも不可能だった。

 

殺すわけにも行かないため、どうやって外に出すかにパーティーは数日間悩むこととなる。

 

その間、空悟が警察の記録を確認すると、実は彼女が行方をくらませたのは数ヶ月前であったことがわかった。

 

行方不明者届が出された日付は10月31日。

 

失踪後、2日ほどでそれが届け出られていた。

 

おそらくはミナがこちらの世界に戻ってきてすぐに―――即ち、最初からミナへちょっかいを出すための材料として拉致されたのだろう。

 

後は研究所の営倉にいてもらった二人を、夢の精霊バクの力を使って身に起きた出来事をすべて夢だと思わせてから、ふのりから聞き出した実家付近へ送っておしまいである。

 

発見後、しばらくゴタゴタしたようだが、最終的にはその間に整形とダイエットが行われたと思われる、ということで決着がついたらしい。

 

彼女自身がその間の記憶をほとんど夢のようにしか覚えていなかったことだけが、問題として残った。

 

誘拐だったのではないか。

 

何かの事件に巻き込まれたのではないか。

 

一緒にいた寺内が犯人とも疑われたようだが、物証がまったくなく―――

 

最後には、DNA鑑定までが行われ、ふのりが本人であること、寺内が無関係であることがわかるまで数ヶ月を要するのだが、それはまた未来の話である。

 

憶測は尽きないが、事件はいずれ解決する。

 

少なくとも決着はついたことにミナと空悟は安堵するのであった。

 

そして、現在は3月の初旬。

 

ミナたちはいつもどおりに水門家へ集合してダンジョンへと出かけていく。

 

―――ふとミナが庭を見ると、何かがいたような気がした―――

 

しかし、それがミナや一党の仲間たちに知覚されることはなく―――

 

ぶじゅり、と覆面のような何かが、まるでスライムかなにかのように蠢いて去っていく。

 

―――確かに寺内が素体となるマスクドジェラシーは滅んだのかも知れない。

 

だが、第2第3のそれは―――生まれるのかも知れなかった。

 

それがバグによるものか、虹の欠片によるものか。

 

それは……誰も知らないことであった。

 

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