異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか 作:大回転スカイミサイル
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―――近所の公園。
「なるほど……だいたいわかった。ここんところ相次いでる怪事件や半グレ共の行方不明事件はお前の仕業だったのか。水道局の襲撃で俺を助けてくれたのも」
刑事は「ありがとう、助かった」と笑い、腕を組んで「うんうん納得した」と頷く。
少女はそれに「それでいいのか……?」と答えた。
「それでいいのかもなにも、あんなの人類には不可能だしなあ……実際、ベホ○ミ目の前で使われたら信じるしかないって」
「もしかしてチキュウ人の順応力はミナさんの思うレベルより遥かに高いのでは?」
男二人に微妙な笑顔で見られて、ミナは半目でベンチにうずくまる。
「人によるんじゃねぇーかぁなぁー」
頭を抱えても、何も解決しない。
少なくとも、親友が順応力が高く自分のことを信じてくれたことは幸いだったのだから、後は行動あるのみだろう。
彼女は立ち上がり、拳に力を込めた。
「じゃあ、いいわけか?連中を壊滅……いや、殲滅するぞ、俺は」
「構わねえよ。日本の法律では……警察じゃあアイツラを根本的にはどうにかできない。壊滅させるには長い時間がかかり、その間にどれだけ泣く人が出るかわからない。おめーが勇者サマだってんなら、闇を切り裂き光をもたらすんだろ?」
タバコを片手に刑事は笑った。
「いいえ、違いますよ。ミナさんは闇を吹き飛ばし、光をなぎ倒す嵐なんです。善き人をむやみに吹き飛ばさない程度の分別を持った」
眼鏡をクイ、と人差し指で押し上げて黒い肌の不死者も笑った。
「そうよ、私は嵐。街に長年澱んでいるものを吹き飛ばすために、戻ってきたのかもね!」
空悟は得意げに指を顎に当てる少女に、中学の頃の幼馴染の姿を見たような気がした。
これから大変になる。
……少なくとも半グレ共の「行方不明」事件の捜査に警察はリソースを割かなければならなくなるだろう。
だが、組織犯罪がなくなり、街が安全になるための一仕事だと思えば悪くはない。
人間を遥かに超えた力を持って帰ってきた幼馴染が、異世界とやらで如何なる苦労をしたのか。
それはこの世界の常識しか持たない空悟にはわからないことだ。
わかるのは、彼女が確かに三郎であろうという「直感」であった。
刑事は勘が鋭くなければ商売にならない。
だから、今はこの直感を信じることにした。
警察だから、疑うのは仕事のようなもの。
しかし親友くらいは疑いたくはない。そういう気持ちもある。
だから、彼は見て見ぬ振りをすることに決めた。
決めた上で、一つだけ付け加えた。
「もし半グレ集団にリーダーがいるのなら、俺もそいつを始末する場に連れて行ってほしい」
普段の空悟はどちらかと言えば、眼光が強いだけで四角四面な印象を与える男である。
その四角四面な顔と鋭い目でミナを見据えた。
「そういうと思った。まーかせて!」
拳を空へと高く掲げて、三郎であったミナはニヤリと笑うのであった。
翌日のことである。
しばらくバイトを休むことを店長に告げた。
―――事故とあれば仕方ない。
そう震え声で言う丸顔の店長を見るのは非常に辛かった。
あまりにも疲れ果て哀れな様子だったので、彼女はこっそりと彼女に差し入れとして……本当は渡してはいけないものだが、ハイエルフの焼菓子の詰め合わせを渡した。
食べる霊薬とも謳われるハイエルフだけが作れる秘伝のお菓子である。
妖精女王の作ったものであれば、食べれば疲労も眠気も一発で吹っ飛ぶが、長期間食べ続けると身体が人間離れしていき最後は精霊になってしまうという曰く付きの菓子なのだ。
店長に渡したものはミナが異世界で作ったもので、そこまでの効果はないが、少なくともポーションをがぶ飲みするより万倍は効果があると自負している代物であった。
疲れた顔で受け取った店長の顔は忘れられないものだったが、それはそこまで問題とするべきものではなかった。おそらく。
その足で、二人はとあるビルに赴く。
商店街の奥、常にシャッターが降りている古いビルだ。
もともとは書店があった場所で、10年以上前に廃業し、ビルの持ち主も亡くなって所有者不明のまま放置されているビルである。
築50年は経っているであろうその場所は、格好の「溜まり場」というやつであった。
センス・オーラ、精霊の気配を感じる魔法で見れば、10人ほどは不法居住者がいることが生命の精霊の気配で見て取れた。
まず間違いなく、不逞の輩の住居であろう。
「やります?」
「中に無関係な人がいるかも知れないし、中に入ってやるわ。ルルは裏に回って。逃げられないように全部の扉と窓に施錠の魔法をかけて回ってちょうだい」
「りょーかいです」
肯んじてルルは駆けていく。
―――恐れ慄け。
内部に侵入したミナをチンピラが囲む。
「鍵は閉めたはずだぞ!どうやって入った!」
「どうでもいいじゃねえか。ヘヘッ顔はきれいだァ……おっぱいは貧相だけどもぉよ、ヤッちまえば一緒だ!」
「こいつ、例のガキを守ってるやつじゃね?ボコって上に送れば俺ら金とかもらえんじゃね?」
口々に勝手なことを言うチンピラが襲いかかってくるが、ロン毛の男がナイフを瞬時に払われ、その顔を掴まれた。
「私は受けられる依頼なら、ゴブリン退治だろうがコボルト退治だろうが大鼠でもゴキブリでもなんでもやる派なの」
彼女の白く華奢な掌に頭を掴まれ、そのまま砕かれる。
びしゃり、と血と骨と肉と脳漿が散らばった。
―――月刑はエルフの刑罰。只人……いえ、地球人には死刑以上の罰はない。すべてそれで通す。
ミナは何が起きたかよくわかっていないチンピラに優しい笑みを向けた。
「さて、貧相な体だけどヤレば一緒、だったっけ?そうね、あなた達貧相な体だけど、殺れば一緒よね」
両の拳に真銀の拳鰐を嵌めた少女の三日月のような笑みが闇に浮かぶ。
その笑みにハゲのチンピラは背を向けて逃げ出そうとしたが、いつの間にか近づいたミナに首根っこを掴まれてしまっていた。
「ゆ、許してくれぇ!俺らァ下っ端なんだぁ!ああぁぁぁぁ!?」
「駄目。犯罪とわかってて加担してるのは明らかなのよ、あんたたち。連帯責任って知ってる?日本の法律ではあんたたちは守られるのかも知れないけど、私も私が奉じている神も守らない」
拳が男の顔面を粉々に砕いた。
「私の大好きな漫画のセリフを借りるわね―――小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」
本物の執事ほどの迫力は出なかったな、と思うミナを見たチンピラはすべて背を向けて逃げ出す。
―――無駄なあがきを……
ミナがそう思ってから、きっかり5分後にはそのビルから生命の気配はミナを除いて一つもなくなっていた。
幸いにして巻き込まれた一般人のたぐいは中にいなかったことに安堵し、遺体をすべてルルに回収させる。
自らは浄化の魔法で血痕や汚れを消し、連中の犯罪の証拠も同時に回収していく。
この本屋は彼女、いや彼の思い出の場所の一つだった。
代替わりした店主が先代の部下の言うことを聞かずに経営に失敗して、その部下に辞められて、そのまま潰れたと神奈川の大学に通っているときに母の電話で知ったときは泣いたものだ。
(そこを汚してくれてからに)
ミナは内心で毒づくと浄化の魔法を唱え始めた。
―――こうやって怪しい場所を一つ一つ丁寧に潰していくだけだ。
時には姿消しの魔法を使い、時にはこうして堂々と姿を表して。
そうして翌朝、不審な音を聞いたという市民の通報を受けてそのビルを訪れた警察は、何一つ―――生活の痕跡の一つも―――なくなった内部を検分することとなるのだ。
こうしてミナたちがチンピラを始末している間にも警察や市民にとっての状況は少しずつ悪くなっていった。
チンピラたちの流入速度がミナたちが処理したり、警察が逮捕したりする数よりも多くなりつつあったのだ。
既に最初の事件が発生してから3週間。
どこからこのような数が、と思われる数で、すでに市内に数百人以上は「兵隊」が送り込まれていることが連日の捜査からわかっていた。
その目的がはっきりしないことも警察の焦燥感を高めている。
昨日は遂に県警からの機動隊の派遣が正式に決まり、一連の事件自体が県警の管轄に入ることとなった。
テレビ新聞などの報道では、どちらかというと半グレ寄りの報道……というよりは、半グレという事実を隠して、警察や自治体の横暴を非難するような報道が目立っていた。
もちろん、SNSに上げられている神森市民の載せた情報を見れば、それらは半分以上が虚偽であることは疑いなく、明らかに政権攻撃のためのポジショントークである。
神森署もA県警も苛立ちを募らせているが、いかんともしがたい状況であった。
――― 一方で空悟の車はミナとルルによってリペアーの魔法をかけられて修繕されていたため、空悟が狙撃されたことは表沙汰になっていなかった。
ガーゴイルにボコボコにされた狙撃手は……ルルが処理した。
暗黒魔道士であるルルにとっての処理は、当然のように死という意味である。
ミナがサーチ・ギルトで確認すれば、処理された男は間違いなく殺人を犯していた。
そのまま司法に委ねても証拠不十分で釈放になる可能性が高かったこともあって、空悟はそれを見て見ぬ振りをした。
(……警察官としては失格なんだろうな、これは)
書類に判を押して提出し、現場へ出るために廊下を歩きながら彼は自問した。
(だが、人間は反省しない。性根までねじまがった人間にそんなことは「できない」んだ)
三つ子の魂百までという。
殺人を犯している組織に属して、それで何とも思っていない、思っているのかもしれないが訴えることもしない。
そんな者たちに何の遠慮が必要だろうか。
自分はやっていないで済まされるとでも思っているのだろうか。
族滅という悪しき累刑を廃したことが、悪を行う組織を滅ぼす邪魔になっているのは歴史の皮肉だろう。
いずれにせよ、異世界の勇者とやらにそのようなことは関係がないのだろうが……
車に乗り込んで、タバコに火をつける。
妻にはやめろと言われているが、いつしか手放せないものとなっていた。
(ルル君の身柄確保だけが目的のはずがない。それだけが目的なら水道局を襲撃する必要はない。三郎の母を仕事帰りにでも拉致して彼女を人質にすればいいことだ)
いくら厄除のハンカチがあるとはいえ、10人もいればミナのような人外でもなければ女性の誘拐など簡単なものだ。
拉致されミナに救助されたルル似の少女のように。
公民館の占拠にしろ、わざわざルルに無関係な人間を人質に取ったとして、彼女らが確実にルルを差し出すなり反撃するなりの理由にはならない。
そして狙撃された自分。
(……よもや?)
一瞬脳裏に何かが閃きかける。
(そういえば先日三郎が始末した半グレの居場所は、俺たちがガキの頃よく行ってた西南書店の跡地だ。これは……)
不安を覚えつつ、彼は車を飛ばす。
行くはずだった半グレが暴れているという現場は、すでに一部投入された機動隊によって鎮圧されたとの無線が入っていた。
(よし、確かめてみるか)
向かう先は三郎の家であった。
30分後。水門家。
「あらまあ、ホントに大きくなったわねえ、空悟くん。おばさん気づかなかったわ」
茜は朗らかにお茶菓子を出す。
定番の神森長饅頭だ。
「災難だったわね。水道局の襲撃の次は銃で撃たれたんでしょう?」
「不甲斐ないばかりです。どちらも三郎のおかげで助かりました」
正座してお茶を受け取る。
すすると、心地よい渋さが疲れた脳に染み渡った。
「危険なことはするなって言ってんだけどねえ……」
頬に手を当て、ハァ、とため息をつく茜に「三郎なら心配はありませんよ」と彼は返した。
「それより三郎は今どこに?」
「すぐに戻ってくるわ。ほら」
茜の言葉とほぼ同時に「ただいまぁー」と間延びしたミナの声が玄関からした。
「表の車、空悟のだろー?来てるんかカーチャン?」
ドカドカと靴を脱いで上がってきた彼女に、空悟は「邪魔してんぞ」と左手を挙げて答えた。
「よう空悟、早速俺の部屋に来てくれ。カーチャン、なんか持ってくる必要はないからね。適当に色々買ってきたし」
手に持ったスーパーの袋には、確かにコーヒーやコーラ、スナック菓子の類といくらかの酒類が入っているのが見て取れた。
「ハイハイ……頼むからあんまり派手なことはなしにね……」
痛むこめかみに指を立ててぐりぐりと押しながら、茜は口を曲げる。
「それじゃあお邪魔します」
そうして二人は階段を上り、ミナの部屋へ入っていった。
「これはコンノ殿。どうも、こんにちは」
中に入ると小さなちゃぶ台で日誌を書いていたルルが、手を止めて挨拶する。
それに軽く「こんにちは」と会釈した空悟は、それにしても、と驚いた。
「……随分すっきりしたな。中学んときは常に散らかってたろお前の部屋」
「随分前だけど、邪魔になってみんな電子化しちゃったんだよ。いいじゃねーか」
「悪いとは言ってないけど、殺風景だなおい」
「殺風景はないだろ。あれを見ろ。まだ始めたばかりだが、森人らしく部屋はいずれ緑で埋め尽くすつもりなんだぜ」
彼女が指さした先には小さなプランターが置いてあり、芽吹いたサクラソウとサボテンの芽が見えていた。
「おいおい。家を森にでもするつもりか?」
「いずれ増築されるという意味では、その通りですね。メイズ・ウッドをかけたマツの木が成長し、家を守るように覆いつくすはずです。そして幹や枝葉には部屋に使える洞ができるのですよ」
ルルが日誌とペンを収納しながら、そう言ってにっこり笑った。
メイズ・ウッドは敵意あるものを迷わせる効果のほかに、迷路のような木を作るという効果もある。
精霊が嫌う銅や鉄、鉛などの卑金属でできたもの……電線やなにかは避けて成長していくエルフの住居になっていくのだ、と。
「とはいえ、それはもう20年ほど後のことになるでしょうが」
「カーチャンには内緒だからな?」
ミナはシーっと口についたてを立てるように指を添える。
「おめーの家だし、好きにしろ。建築基準法に触れないようにな。それはともかく確認したいことがある」
顔つきをまじめなものに変えて空悟はミナをねめつけた。
「……お前が襲撃した場所を教えてくれ。全部じゃなくていい」
「……気づいてたか……わかった」
ミナが肯ずるのを確認した空悟は自分のカバンから、地図帳を取り出した。
「アナログだねえ。悪いとは言わないけど」
「雷精がいなくなってしまったら同時に使えなくなるスマートフォンの地図よりは緊急時に役に立つ。合理的だと思います」
二人の言葉を無視するように、空悟は神森市の地図を地図帳から探し出す。細かい番地単位でもわかる分厚い地図帳だった。
「……ここと、ここ。それからここだな。あとは、ここ」
ミナはそれから、次々と鉛筆で地図にマークを付けていく。
それはある一つの事実を示していた。
「これは……」
「ああ、空悟の思ってるのと俺が思ってるのは同じだろうな。これは……」
冷汗が一筋、二人の頬を流れた。
「―――俺たち、いや、お前の」
「そうさ、多分な。俺の思い出の場所ばっかだ」
西之森公民館は三郎と空悟が小学生のころ、ほかの友達と一緒にかくれんぼや鬼ごっこをはじめとする屋外遊びをよく行っていた場所。
廃工場はかつて、一時的に三郎の父が務めていた場所だ。
西南書店は言うに及ばず、それ以外の場所も……
「惟神小学校周辺の廃ビル、森近高校の旧職員寮、俺らが部活の帰りによく行ってたお好み焼き屋の廃屋に、ばあ様が死んでから壊されて跡地が倉庫になった元駄菓子屋……」
「そして狙われたのはまずルル、そしてカーチャン、それにお前。数少ない俺の親しい人間たちだ……」
「間違いありませんね。彼らの狙いは、ミナさんへの……ミナト・サブロウへの嫌がらせだ」
三人は地図に視線を落とし、背筋がひやりとするのを感じた。
―――なぜミナに嫌がらせなどを、この世界の人間がするのかは不明だ。
だが、確実なのは彼女のこちらの世界での縁者や思い出の場所が狙われているということである。
「おい空悟、お前、奥さんつーか清水さんは今どこだ?」
「……今は図書館で働いている。まずいな」
「コンノ殿の奥方、ですか。確か、大学時代、ミナさんの前世の友人だったと聞き及んでいますが」
今野文、旧姓清水。今野空悟の妻にして、大学時代同じ大学に通っていた空悟、三郎の後輩である。
「半グレどもはまずルル、次にカーチャン、そしてお前と、俺に近い順に狙っている。つまり、順番的に考えると……」
「次は文が狙われる…!こうしてはいられない!」
三人は立ち上がり、ミナは窓を開けた。
「車じゃまだるっこしいわ。世界を停滞へ導く我らが厄神よ!翼なる像、異形なる土塊を我に与えたまえ!サモン・ガーゴイル!!」
ビョウと生暖かい風が吹き、暗黒魔法のガーゴイル召喚が発動する。
窓の外に現れた翼の異形は背をこちらに向け、乗れと言わんばかりだ。
ミナはそれに飛び乗り、空悟も――― 一瞬逡巡したが―――守護像へと飛び乗った。
「世界を支配する偉大なるロジックよ。光から我らを遠ざけよ、光よ今は我らを見守るな。インビジブル」
ルルもガーゴイルの背に乗ると透明化の魔法を発動する。
「ガッちゃん、まっすぐ南東へ!最速で!」
「うおっ!これ大丈夫なのか!?」
「命綱は結んだので、落ちても死にはしませんよ」
急に透明になった足元にびっくりした空悟が叫ぶが、すでにその腰と守護像はルルの手によって命綱でつながれている。
ミナの命令でガーゴイルは時速にして200㎞を超える速度で飛び始めた。
「完全に航空法違反だな、これ……」
「お前が黙ってりゃいいんだよ。人命救助と犯罪防止のための緊急措置ってことにしてくれ!」
不可視の像は図書館を目指して飛んでいく。
360度、自分の体すら視界を邪魔しない空の旅はものの5分ほどだったろうか。
眼下には神森市の図書館が見える。
高度は300mほど。絶景と言える高さだ。もちろん普通人が落ちれば即死である。
エルフの遠見の目で眼下を見れば、すでに数人、怪しい男たちが図書館の裏に広がる林の中にいることが分かった。
まばらな木は地上からの目を誤魔化すには有用だったが、空からの目には無力であった。
「ルル!ガッちゃんのコントロールは任す!私はあいつらを制圧するから、空悟と一緒に清水さんを確保して!空悟もいいか!」
「わ、わかった」「心得ました」
二人の返事を聞くや否や、彼女は呪文を唱える。
「世界を支配する偉大なるロジックよ、我が身にのしかかる大地の軛を緩めたまえ!フォーリングコントロール!シルフよ、風の乙女よ。我に風を受け取る翼を与えよ!」
重力制御の古代語魔法と滑空の精霊術グライドが唱えられ、半分透明のままミナは効果を確認せずそのままガーゴイルの背から飛び降りた。
「!?」
空悟の驚愕も一瞬、風に乗って飛ぶように彼女の体は地面へと落ちていく。
グライドの魔法の効果が出て、不可視の翼によって彼女が滑空し始めたことに空悟は胸をなでおろした。
「いつもやってるのかい、こういうこと……」
「普段はもっと危険です。この高さから落ちるよりも、ドラゴンブレスのほうが僕らにとってはよほど危険ですから」
ルルはしれっとそう言って、ガーゴイルを操って図書館の駐車場へ向かった。
今日は土曜日。そこそこに人が多い図書館を狙われては大変なことになってしまう。
連中がもう図書館内に入り込んでいることも十分に考えられる状況だ。
空悟は懐の拳銃の重みを確かめ、妻と親友の無事を祈った。
ごふっ……
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