異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第82話「ちょっとちょっと……これはあまりにもあまりなのです!魔法少女が使役していいマスコットじゃないのですよ、これは!」

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一方、岬たちは異空間の中を流れ星の生まれる場所へと飛んでいた。

 

擬似的な無重力に慣れた二人は、最初のフヨフヨと頼り投げな飛び方から打って変わって、時速にして300km近い速度で飛んでいる。

 

「下に引っ張られなくていいからむしろ楽だよな、これ」

 

「そうですねぇ。重力に逆らう分を飛ぶ力に回せてる感じなのです」

 

これは地上に戻った時に勘を忘れてたら大変なことになるな、と岬は思いさっさと脱出しなければと速度を上げる。

 

勿論恋がついてこれる程度の速度で、だ。

 

「だんだん流れ星が多くなってきたな」

 

「なのです」

 

恋の独り言めいた言葉に岬は一言返して、周囲を見る。

 

―――なにもない。

 

本当にただ星々が見えるだけである。

 

ここは自分たちのための牢獄なのだろう、と考えてげんなりする。

 

「うつむいていても仕方がないのです。やりますですよ。阿南岬はやりますです。今の平穏な生活を守るために、阿南岬はやるのです!」

 

気合を入れて恋の手をにぎる。

 

「気合入ってんな、岬ちゃん!」

 

―――もしあの時幸せになれていれば、このくらいの娘がいたかも知れない。

 

その手のぬくもりに岬の中のかつてが微笑んだような気がした。

 

「ええ!行きますですよぉ!」

 

二人は虚空を加速していく。

 

星の巣へと向かって。

 

やがて更に星が増えていく。

 

星は増えて、一つの光となり、作り物の銀河が形成されていった。

 

「壮観……なのですが、どこかこないだの鍾乳洞めいてもいますですね」

 

しかし、あの時と決定的に違うのはミナたちがいないこと―――ではない。

 

あの時は空間に歪みがあったため、順路以外へ動くことも困難であったが、今はそんなことはない。

 

悪意が薄い。

 

「これ、多分あのうちのおふくろそっくりの変なねーちゃんじゃないと思うぜ」

 

「あたしも同感なのです。もしそうならもう少し殺す気を感じるはずなのです」

 

鍾乳洞の順路を外れたものを捻じ曲げて殺す罠や。

 

雪の間道の動くおもちゃの自走砲と兵士たちのような。

 

「……邪神と魔法少女軍団がいるなら、後は何がいるのですかね……」

 

「廻さんと夕さんってロボットなんだろ?ロボット系の悪の組織とか出てくるんじゃないか?」

 

恋の無邪気な声に、岬は「関係者系っていうならそうですよねえ……しかも大日本帝国軍の残党とかいう、今どきフィクションでもろくに出てこない連中の……」と遠い目をする。

 

「ああ、アレだろ。ゼロ式格闘術とか強化外骨格とか」

 

「だーかーらー……覚○の○スメとか、誰の勧めで読んでるのです?」

 

岬の疑問に当然のように「みはるねーちゃんに決まってんじゃん」と答えた青と白の魔法少女に、桃と黄の魔法少女は「やっぱりなのです」と呆れ返る。

 

みはるは一体何歳なのだろう?という当然の疑問が思い浮かぶが、それを問いている暇はない。

 

銀河の中心が光を増して近づいてくる。

 

そんな錯覚を覚えるほどに光が強くなってきた。

 

そして―――そこに何かがいることに気づいた。

 

銀河の中心に、まるでそれは……

 

「アリジゴク…‥?」

 

銀河の中心の球から―――それはまるで生まれるかのように、その球を割って現れた。

 

たしかにそれはパット見アリジゴクにしか見えないが、その背中からは蟻が生えていたのである。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?なにあれ?!なにあれ?!?!」

 

岬の後ろにさっと隠れて恋が怯えだす。

 

岬は杖で彼女をかばいながら、それを睨めつける。

 

『ギリギチガリガリギシャギリギリギリギ……』

 

ひどい歯ぎしりを7つも8つも重ねたような、金属や岩が擦れる音が鳴り響く。

 

どうやらそれはあの魔獣の叫び声らしい、と岬は思う。

 

「ちょっとちょっと……これはあまりにもあまりなのです!魔法少女が使役していいマスコットじゃないのですよ、これは!」

 

そういいながら、魔法を唱える。

 

無論、攻撃するためのものではなく、防御のための呪文だ。

 

と言っても、岬の使える範囲の古代語魔法や精霊術には障壁を作る魔法は存在しない。

 

故に、唱えたのはマジカル・アナンとしての魔法である。

 

「御覧じろ、光って消える愛と約束のびいどろシャッフル!アナン・ブリンク・シェール!」

 

杖から黄色い光が奔り、それが岬たちの体を覆う。

 

その光はまるで陽炎のようにぼんやりとした分身を生み出す。

 

「これは!?」

 

「分身の術ってやつなのです!2回まで敵の攻撃の身代わりになってくれるのです!」

 

下手に手を出さず、これで様子を見る。

 

あの怪物が牢獄の門番であるのなら、無闇矢鱈にこちらを攻撃してこないはず、と見てのことだ。

 

実際にそれはこちらを一瞥し、近づいてこないと見ると球の中には帰らないもののその耳障りな叫びをやめて球の上で静かになった。

 

「……どうやらビンゴみたいですね」

 

「これ以上近づかなきゃ動かないのかぁ……はぁ……」

 

そのアリとアリジゴクが合体したアリアリジゴクとでも言うべき謎の生命体が生理的に駄目すぎたのか、恋は岬の背中にしがみついたままフウと息をつく。

 

「かと言って、このままでは何も状況は動かないですし……んー、困ったです……?」

 

ここから偽銀河の距離は目視で100mかそこらだろうか。

 

しかし、その目視が正しいとも限らない。

 

まずは進んでみるしかないのではないか、と岬は思う。

 

「よーし……恋ちゃん、これを持っててくださいなのです」

 

岬が何やらロープめいたものを恋に手渡した。

 

「っと、これは……ワイヤー?」

 

「はいなのです。廻さんからもらった頑丈なワイヤーですね。あたしの腰に固定したので、離さないように持っていてほしいのです」

 

ニコリと笑って岬は怪物に振り向く。

 

「あたしが近づいて魔法をぶっぱするので、怪物が動き出したら引っ張ってくださいです」

 

「空飛べるのになんの意味が……」

 

「そりゃ勿論、引っ張られてる間も魔法を続けるためなのです。旋回している間は攻撃できませんですし。いいです?」

 

恋は岬の真剣な顔に、うんと頷いた。

 

それを合図に、岬と恋の延々ヒットアンドアウェイ作戦が始まったのであった。

 

「エネルギーボルト!」

 

魔法の矢が飛び、それがアリアリジゴクに突き刺さる。

 

『ギリガギリゴリギリギリギリ……!』

 

痛みと怒りに震えるかのようにその奇妙な虫の怪物は、口からなにかよくわからない液体を飛ばしてくる。

 

「おぱぁっ!?びっくりしたのです!」

 

その液体は7つ放たれ、一つが岬に直撃したかのように見えたが、それは岬のアナン・ブリンク・シェールが生み出した身代わりが肩代わりした。

 

そして体はすぐに引っ張られ、恋のところまで引き戻される。

 

―――思ったとおりにアリアリジゴクは、岬たちが離れたことを確認すると再び停止した。

 

どうやら完全に近づかなければ何も出来ないタイプの敵であるようだった。

 

「良しなのです!」

 

「あいつはそういうことしかできないやつなんだ……ゲームとかによくいるタイプだな!」

 

「そういうことみたいですね!ではどんどん行くのです!」

 

アナン・ブリンク・シェールを掛け直し、岬は近づいてはエネルギーボルトやファイアボルトを放ち、痛痒を与えては恋に引っ張られて後退する。

 

それを7回ほど繰り返した後に……

 

「ガ、ギリギリ……ギ、ギギ……」

 

そのアリジゴクのような何かは、つぶらな瞳を閉じて、岬が近づいてきているにもかかわらず停止した。

 

―――耐久力の限界で、死んだのだ。

 

そしてその死んだアリジゴクが崩れ去ると、そこには虹色の飴玉……虹の欠片と古びた蟻やアリジゴクの死骸がバラバラと落ちていた。

 

死骸たちは球の放つ光に照らされて、すぐに砂となって消えていく。

 

あとに残った虹の欠片を手にとって、岬は「これはひどい……お疲れさまでしたのです」と、利用されただけと思われる無数の虫たちに頭を下げ、合掌した。

 

―――ふと、目を上げる。

 

何かが降りてくるのが見える。

 

それは―――少女だ。

 

「あーあ。やっぱり虫に虹の欠片を使っただけじゃだめかぁ。結局虫さんじゃそこまでりんきおーへんにはやってくれないよね」

 

合掌する岬の上から、彼女は現れた。

 

お団子頭の緑の髪に白と萌黄の衣装をまとった、岬や恋よりも2歳か3歳ほど幼い少女だ。

 

髪と同じ色の眉は生意気そうに吊り上げられ、見ただけで挑発されているのかと疑うものもいるだろう。

 

彼女は球の上に降り立つと、岬を見て「がっしょーしてるー♪なんだかばばくさーい★」ときゃぴきゃぴした声でバカにしてきた。

 

「ババ臭いとかそういう問題ではないのです。命を奪ったならそれを悼む。それは礼儀というものなのですよ……とはいえ、あたしもモンスター相手にはやりませんですけど」

 

―――バグモンスターにまともな命はない。

 

それ故に、祈祷の類は専門技能を持つ僧侶が行わなければならない。

 

このパーティではそれはミナの仕事である。

 

それ故に、特に言われたことも思ったことも気にも止めずに岬は杖を構えた。

 

バカにされたことは―――偽小学生であることは間違いがなく、ババ臭いと言われても仕方ないと思っていたし、何より本当の子供に言われてもあーはいはいで済むというものであった。

 

しかし……

 

「ナニ岬ちゃんバカにしてんだよ。やんのかクソガキ」

 

後ろにいる少女は違っていたようであった。

 

「おや?弱っちそうなおねーちゃんじゃなーい♪クロキちゃんにも全然歯が立ってなかったのにわたしに勝てるわけないでしょー?じょーしきだよ、じょーしぃきぃ」

 

―――その話し方は、恋がいつもドルヲタたちに披露しているぶりっ子の演技によく似ていて。

 

彼女の癇に盛大に障った。

 

「……あたい、普段の自分みたいな媚び媚びで人のことバカにするやつ、大嫌いなんだよな」

 

鎌を緑の少女に向けて恋は顔を怒りに染める。

 

その様子に「恋ちゃん、恋ちゃん。棚上げ激しいのです。あの演技は何なのですか?」と岬は突っ込んだ。

 

「あたいのは演技だもの。仕事だもん……ドルヲタどもは媚び媚びから豹変して罵倒されるの大好きなんだもん……」

 

少し拗ねたように恋はそっぽを向く。

 

岬はそれは驚愕と困惑の綯い交ぜになった顔で「すごい偏見を聞いたような気がするのです!多分その豹変して罵倒するのも芸だと思われてるだけなのですよ!?」と叫んだ。

 

「うっせうっせ!プロデューサーの方針なんだっつーの!あたいは知らないんだってば!」

 

言われただけで普通にメスガキ演技ができてるのってすごいな、と岬は思いつつも「熱くなったら負けるのです。冷静になるのですよ」と窘める。

 

「……むしろ勝って叩きのめして、メスガキ演技でバカにしてやればいいのですよ」

 

「……それだ!いいこと言うね岬ちゃん!」

 

根が単純なのか、岬にそう言われた恋はその気になったようで、幾分か頭を冷やしてその鎌を掲げた。

 

「かかってきなよ。もしあたいを倒せても岬ちゃんもいるし、ミナねーちゃんたちも絶対こっち向かってっかんな。それ以前に、あたいを倒せるとは思えねぇけどさ!」

 

ひひっ、となんだか面白そうに恋は笑う。

 

「だいたい何人もいるなら全員でかかってくりゃいいじゃんか。喧嘩は数が多いほうが勝つんだぜ。ああ、もしかしてバカなのかな~?いや、バカなのね!?だったらちょっとお静かにしてもらえるかなぁ!」

 

後半、段々と仕事をしている時の口調へと恋は変化させていく。

 

「あっはっはっは!バーカ!メスガキぃ!ざーこ!ざこ!メスガキのくせに雑魚☆恥ずかしくないの?あっはっはっは♪」

 

虚空を掌で叩きながら、恋はケタケタと笑い出す。

 

なにかスイッチが入ってしまったかのように恋は笑う。

 

「だいたいさーなにそれ?20年くらいまえの魔法少女っぽくてウケるよね~☆ねぇ岬ちゃん♪」

 

「あー……なんかそう言われれば、むか~し秋葉原にでっかい看板がデデンとあったですよね。デ・ジ・○ャ○ットですっけ?あれに似てるかも……」

 

岬はこめかみに指を当ててうーんと唸って思い出す。

 

「あれ、今でもあるって誰かに聞いたような……?」

 

岬がそう言って悩み始めると、東京に住んでいた恋が「でっかい看板はもーないよ。でも、まだちっちゃい看板はあるってみはるおねーちゃんが言ってた。見て見て☆あれそっくり♪」と続ける。

 

「……駄目なのです。あたし、アニメはよくわからないので、辛うじて顔とデ・ジ・○ャ○ットって題名しか知らないのです」

 

確かに見れば、そのお団子頭はそのキャラクターの頭の脇の鈴のようにも見え、なんとも微妙な似方だなあ、と岬は思う。

 

本人に似させる意図などなかったのだろうが、似てしまっているものはしようがなく、それをとっかかりに恋は少女をいじり続ける。

 

「ねーねー語尾に『にょ』ってつけてみて♪写真撮ってSNSに上げて、アレのコスプレってことで私が紹介してあげる☆人気者になれるかも☆私、これでもアイドルなのよ!世界中に拡散してあげられるよ~♪」

 

恋にそう言われて「よ、余計なことしないでよッ!そんな変な語尾つけないわよッ!有名にもなりたくなんかないッ!」とムキになる。

 

その様子に恋はニタっと笑って「ぷっ」と吹き出す。

 

「む、むぎぃ……!な、何よ!そんな変なの知らないもん!それにれんけーだったら取ってますぅー!わたしがここであんたら足止めしてる間に、別の子がくーかんの穴?ふさぎに行ったんだから!」

 

その言葉に、すんっ、真顔になった恋が「その言葉が聞きたかった―――岬ちゃん、やっぱ早く行かないとヤバそうだから二人でボコろうぜ」と口調をもとに戻す。

 

「あっ!あーっ!」

 

恋を指差してそので○こ似の少女は慌てだすが、後の祭りである。

 

「目には目を、歯に歯を、メスガキにはメスガキを……ってことなのですか?」

 

「使える武器は全部使おうぜ、って話だぜ」

 

恋はそうして鎌を振って魔法を放つ。

 

「愛を生み出すもの、光の粒よ!縫い止める矢になれ!アムール・レイ!」

 

赤色の光が杖から5本の矢になって飛ぶ。

 

それは彼女に当たる寸前でグリッパーのような形になって緑と白の少女の右腕に絡みつく。

 

「ぐっ!グリーンセイバー!!」

 

一つうめいて、しかしめげずに少女は杖から緑の光刃を放つ。

 

「させないのです!偉大なるロジックよ!力の矢となれ!砕け!エネルギーボルト!」

 

岬の放った光の矢は光刃をかき消し、そして消え去る。

 

「むぅぎぃー!こうなったらこのくーかんごと消してやるんだからッ!」

 

そうして少女はそのグローブのような手を掲げて、そこに力を集中させはじめた。

 

しかし―――

 

「させると思うのですか!いきますのですよ!」

 

「おうッ!」

 

その力を溜める時間は大きな隙だった。

 

その瞬間、恋は岬の足を掴んでジャイアントスイングの要領で岬を前方へと飛ばす。

 

「ていぃぃぃぃぃぃぃ!なのです!!」

 

「キャァァァァァァァ?!」

 

少女の悲鳴が上がる。

 

岬は自身の推進力でその速度を更に上げて、少女の腹へとタックルしたのだ。

 

そして、そのまま岬は彼女の体を放り投げて―――空中で両足をガシリと掴み、頭を肩口に乗せて―――

 

高速逆進して、光の球をドスンと尻で叩くように着地する。

 

―――それは見事なまでのキン○○スターで―――

 

びきり、と嫌な音がした。

 

「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

哀れ、虫の命を弄んだ少女は完璧な股裂きを喰らい、股関節に重大なダメージを受けて悶絶したのであった。

 

「おっ、おっごぁぇおかぇ……おぐっ」

 

光る地面に解放され、言葉にならない悲鳴を上げて転げ回る少女に、「躾のなってない子供はお仕置きなのです」と口をへの字に曲げてヒーリングを唱えるために生命の精霊に語りかける。

 

「雫なるもの、生まれいづる命ウィータよ……生命の樹より垂れし珠をあたしの助けたい人の体と心に宿し、その傷を癒やしてくださいです」

 

光が転げ回ることもできなくなってうずくまる少女の腰に吸い込まれていく。

 

その光が消えると「うっ、うううう……うわぁぁぁぁぁぁん!」と堰を切ったように少女は泣き叫び始めたのだった。

 

「……容赦ねえな、岬ちゃん……」

 

「ミナちゃんが言っていました。手加減一発岩をも砕く、です。もともとはとあるファンタジーライトノベルの主人公の故郷を形容する文句だったのですが、ミナちゃんがいた世界はそういう世界だったそうで」

 

「それに影響されてる、と……」

 

岬がガシッとガッツポーズをしてそう言うと、恋は呆れ顔で髪を掻き上げる。

 

そして、泣き叫ぶ緑の少女を覗き込んでニヤリと笑った。

 

「岬ちゃんは容赦しないよ~?あたいよりずっとな」

 

「ひぃっ!?」

 

その笑顔に悲鳴を上げて、涙さえ引っ込めて少女は後ずさった。

 

「更にペルフェ○シオ○○スターを喰らいたくなければ出口を言えなのです……!」

 

無表情で岬は彼女の前に立つ。

 

その顔を見た幼女の表情は恐怖の色そのものと化して更に後ずさった。

 

「あ、あ、あ、あっちです……!お願いだからもうやめて……!」

 

彼女は光の球の後ろ側、流星が流れ出す空洞を指差してそう答える。

 

「……ありがとうなのです。それでは脱出しますのですよ、恋ちゃん」

 

「ああ、そうだな!」

 

そうして二人は背を向けて歩き出した。

 

その背を見ながら、少女は内心で―――ほくそ笑んだ。

 

(乙女の股を裂く奴になんてホントのことなんか教えるもんか!へへーんだ!あそこに入ったら、イェカ様の用意した魔獣に食われちゃうのよ!死んじゃえバーカ!)

 

そんなことを考えながら、少女は―――岬に首根っこを掴まれた。

 

「……えっ」

 

「あーこんなところに一人で置いていくのもなんですし……一緒に行きますですよ、名前も知らないおガキ様」

 

棒読みで彼女を引きずり出す岬に、少女は慌てだす。

 

「い、いやっ!お構いなく!一人で帰れるからっ!」

 

「遠慮することはないのですよ。それとも、あちらに行きたくない理由でもあるのですか?」

 

岬は冷たくそう言って笑った。

 

最初から見抜いている、とばかりに三日月に口を歪めて。

 

「……もしなにかあるなら……」

 

「ひ、ひっひぃぃぃ!?」

 

悲鳴を上げて逃げようとするが、岬の冒険者現象によるその体格に似合わない膂力は彼女を逃がすことはない。

 

「さ、さっきのをやるの!?やだ、やだやめてぇ!」

 

「いいですよぉ~やめてあげてもいいのですよぉ~ただし、出口だけじゃ駄目なのですよぉぉ~~洗いざらい魔法少女組織の情報を吐いてもらうのですよぉぉ~~~」

 

少女をずりずりと引きずり、魔獣の潜む穴へと歩きながら岬は微笑む。

 

「―――やだぁ!それだけは絶対にできないのぉ!やだぁぁ!」

 

「―――では、仕方ありませんのです。『黄昏の傭兵団』の威光はあたしが守るのですよ」

 

致命的な問いに答えられぬと喚く少女に岬は天使の笑顔で微笑みかける。

 

―――その名前も知らないで○こ似の少女が、ペルフェ○シオ○○スターで地獄の苦痛を味わうのはそれから30秒ほど後のことであった。

 

後に恋は語る。

 

『ちょっとどころじゃなく引いた』と。

 

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