異世界で頑張ったので出戻りますね あるいは彼女は如何にして悩むのを止め、現代をエンジョイするようになったか   作:大回転スカイミサイル

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第83話「完ッ全ッな基地外なんか相手してらんねーのです!!」

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ペルフェ○シオ○○スターを喰らい、腕・肩・股関節の脱臼で死ぬほど苦しむ少女から出口を聞き出して牢獄空間の外に出た岬たちはそこに広がる見渡すばかりの低木の森に呆然としていた。

 

なおその少女については治療後にアイヴィーロックにて亀甲縛りの刑に処し、森の入口に放置してきた。

 

聞くに堪えない罵詈雑言が聞こえていたが「子供の罵倒なんか気にしていて魔法少女は出来ないのです」と取り合わずにスタスタと歩き出してしばらくが経つ。

 

「もう多分ミナねーちゃんとか廻にーちゃんとか気づいてるよな……」

 

「ほぼ間違いなく。でもまあ、これだけ広いと見つけるのも大変なのでしょうね……だってこれ……どう考えても日本より広いのです」

 

空を飛んで森の上から見渡せば、地平線すら見えるほどの広い森だ。

 

こんな広い森は地球でもほとんどないだろうというくらいに広い。

 

「異空間すぎるのです……こんなの空間の穴を閉じたとかなんとか言っても、その穴が見つけられないのですよ」

 

「……こんなん無理だよ……」

 

恋は木の上に降りてへたり込む。

 

その様子に「あきらめたらそこで試合終了なのですよ。よくよく見るとなんだか森に規則性がある気がするのです」と岬は木々を見下ろして、その高さや種類を観察していた。

 

「あの魔法少女はこっちから入ってきたに違いないのです。必ず脱出路は存在するはずなのです」

 

岬はポシェット……変身すると自分のかばんが変形して誕生するそれから双眼鏡を取り出す。

 

その双眼鏡も変身に合わせてかなんだか日曜日の朝8時半くらいのCMで宣伝されていそうな意匠に変化していた。

 

「広葉樹と針葉樹が模様のように配置されているのですね、この森は」

 

「あー、なるほど、どっちかが順路ってことか?」

 

恋の問いに双眼鏡を覗き込みながら、岬はまだ答えは出ていないということを答えた。

 

「順当に考えれば木の種類の違いが織りなす模様の法則性を解くことで脱出できると思うのですが……まだそれはわからないのです」

 

そうして恋が降りた木の上に岬も降りて、ポシェットから飴玉を取り出して彼女に渡した。

 

「まあ、もう少しゆっくり考えてみましょうですよ。焦っても何もいいことはないのです」

 

そうして森を見渡して。

 

「どうせ長い時間を無駄にする人生なのですもの。ちょっとくらいの暇潰しは許容範囲なのです」

 

そう自分に言い聞かせるように呟くのだった。

 

 

 

ミナたちがジャックと豆の木めいた天へ続く大木を数百メートルほど登り、雲を超えてその上に達したのはそれから1時間ほどあとのことであった。

 

この中で一番体力に劣る空悟に合わせた道行きであったが、それでもこの速度で登れたのはひとえに冒険者現象の賜であったと言えるだろう。

 

「―――雲海ね」

 

「そうですね」

 

「こんな雲海が現実世界に広がっていたら、雲の下の世界は大変なことになっているだろうな」

 

ミナとルルの言葉にそう反応したのは夕だった。

 

「地平線の彼方まで続く雲海……そんな物があり得るはずがない。あったとしたら凄まじい異常気象だ」

 

夕はそうして雲に触れる。

 

ふわり、と綿毛のような感触が夕の手に残った。

 

「水蒸気の塊でしかない雲が触れられるものか。明らかにバグの仕業……いや、魔法のほうか?」

 

夕がミナを睨めつけつつそう聞くと、ミナは「どっちも可能性はあるけども、バグダンジョンではないわね」と答えて―――雲の上に立った。

 

綿毛のクッションのような感触で脚を押し返す雲の大地に降り立って、「うーん、こいつは魔王級の敵がいてもおかしくはないわね」とこめかみに指を添えて唸る。

 

「あの兵器の塊みたいなやつのご同類か」

 

「ああ、そうだ。しかもここまで来ると成長した魔王に近いものを感じる……まあ、オレとルルがいればどうとでもなるはずだ。まともにやれれば、な」

 

空悟に聞かれ、ミナはスパッとそう答えた。

 

そうして雲の上をスタスタと歩いて、「ルル、マーキングの反応はある?」と聞く。

 

「岬さんのほうは。恋殿のほうはまだわかりませんね」

 

「こっちも同じ。廻さんのほうは?」

 

「全く反応がないな。電波そのものが殆ど感じられない」

 

ミナは頷くと、「じゃあ岬のマーキングを追って行きましょう。手がかりと言えばそれしかないし」と言って腰にヒヒイロカネの小剣を佩く。

 

「よし、んじゃ行くか」

 

「おうともよ」

 

そうして5人は岬の反応を目指して歩き出す。

 

その様子を、ショッキングピンク髪の魔法少女が上空から見つめていた。

 

 

 

「模様を象れば、割と簡単に何かはわかりましたのですね」

 

岬は恋と一緒に空から森を見下ろしてそう言った。

 

「あれはMiG-25、あっちは零式艦上戦闘機五二型。と思えばアレはF-14トムキャット。コンコルドに……多分、ボーイング737?と民間機も豊富なのです……木の模様で飛行機を表現するとは、また器用なものなのです」

 

うんうんと感心して頷く岬に、恋は「あたい何も違いがわからねえ……」と肩を落とす。

 

「気にする必要はないのです。なぜなら、こんなの架空戦記ヲタとか飛行機マニアとかミリタリークラスタでもない限り知るはずのないことなのです!知る意味もないと言うか!」

 

岬はニィと笑ってそう言う。

 

「恋ちゃんも覚えておくと良いのですよ。趣味ってのは本人だけが楽しんでいれば良いのです。その本人が飽きたり死んでしまったら、途端に無駄とゴミの山になってしまうのですから……」

 

遠い目でふわりと笑う岬に、恋は「岬ちゃん……それ深いわ。今度テレビ出た時言ってみる」と言って笑う。

 

「本当に、本当なのですよ?趣味は悔いがないように、たとえ飽きてしまっても好きだった頃のことは―――およ?」

 

言いかけて擬音めいた言葉が口をつく。

 

「どうしたんだ岬ちゃん?」

 

「恋ちゃん……よく見てくださいですよ……森の模様というか、飛行機が動いているような気がしませんか?」

 

よくよく見れば、確かに模様が動いているかのように見える。

 

そしてそれはまるで、コクピットのハッチが開いていくかのような……

 

「飛行機……コクピット……ハッチ……もしかして、あれって乗れるのかな?」

 

恋がなにかひらめいたかのようにそう言うと、岬もそれを肯んずる。

 

「多分それで間違いないと思うのです。行ってみましょうですよ!」

 

恋の手を掴み、岬は空を駆ける。

 

その向こうには、架空戦記ではおなじみの十七試艦上戦闘機「烈風」によく似た木々がいる。

 

―――そして、そこにたどり着く寸前に。

 

二人の前を、銀色の銃弾が行き過ぎた。

 

「ッ!誰だッ!!」

 

恋の誰何に、答えたものはなにか。

 

「―――避けたねぇ避けたねぇ。ここは絶対通さないよとおぉさないよぉぉ☆」

 

そこにはジェット戦闘機を背負ったような巨大な翼を持つ、顔や手足に星や月のタトゥーを持つ少女がいた。

 

年の頃は高校生というところだろうか。

 

服装は銀一色で、その目は白目と黒目が反転し、笑うとむき出しになる歯はサメのようだ。

 

「空間の穴はぁ既にふさいだぁ!もう逃げ場はないぃ!!ここは私の森だぁ格納庫ぉ私の飛行機に手を出すやつはみぃんな死んじゃうんだァァァ!」

 

その腕にはいつの間にやらバルカン砲――M61バルカンを思わせるガトリング砲が抱えられており。

 

それは彼女のニタリという笑みとともに全開で発射された!

 

ヴヴヴヴヴヴン!という何かが振動する嫌な音を発して、銀の弾丸が押し寄せる。

 

恋は岬の腕を引っ張り急降下して、低木の上に着地した。

 

「発射音がッ!本物のバルカン砲と変わんないのです!多分、威力は本物とそんなに変わんないのですよ!」

 

「えぇぇっ!?じゃあ当たったら!?」

 

「あたしたちなんかミンチですよぉ!あたしの魔法じゃ防げないのです!!」

 

悲鳴を上げながら、二人は上に下に右に左にジグザグ軌道を描いて遁走する。

 

すべての弾丸はまだ岬たちを捉えることはなく、空中にバラまかれていた。

 

「い、威力が高すぎて攻撃がブレているのです!本物と同じなら反時計回り―――あいつの右側にどんどんブレていくのです!」

 

「わかった!あいつの左側か後ろに位置するように逃げりゃいいんだろ!ぎゃあああああ!きたきたきたきたァァァ!?」

 

そうしている間にも、女は高速で彼女らに近づき狂い笑う。

 

狂い笑い、猫耳をかたどったフードで片目を隠したその笑顔は恐ろしいものだった。

 

「気づいたぁ!?気づいたよねぇッ!でもこっちから近づいたらそんなブレブレ気にならなくなるよねぇ!大人しくミンチになりなぁ!『オリジナル』ぅ!ひぃぃひひひひひひひひっ!!」

 

ゲタゲタと笑う。嗤う。哂う。咲う。

 

ひどく耳障りな発射音と、ひどく耳障りな哄笑が響き続ける。

 

クロキや緑のメスガキと違って、確実にこちらを殺しに来ているとわかり岬は戦慄した。

 

「完ッ全ッな基地外なんか相手してらんねーのです!!灯の子リンカちゃん!!」

 

岬は、赤外線探知をごまかすためのフレアのごとくにフォックス・ファイアを合計8発後ろにバラ撒いた。

 

「目くらましのつもりかいィ!?ヒーヒャハハハハァ!!機関砲こそ空戦において最強!!誘導弾など関係なぃぃぃぃぃ!!」

 

「―――それはそうでしょうですッ!ですけどもぉ!」

 

岬がパチリと指を鳴らす。

 

その瞬間、保持されていた灯はパンと弾けて光の粒になり、バルカン砲女の顔面に思いっきりぶち当たった。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!なにしやがるぅぅぅぅ!ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 

それまでバルカン砲を保持していた手を目に当てて、女は獣の如き悲鳴を上げる。

 

その様子に、恋は「今だぜ岬ちゃん!」と叫んで、岬の手を取った。

 

「よろしいのです!では行きましょう!!」

 

「光と希望と明日の翼!」「羽撃け未来のエネルギーッ!!」

 

二人が握った岬のステッキから、光の鳥が生まれ出づる。

 

それが大きく翼を広げて―――

 

「「マジカル!!サンダーバード!!ストライクゥゥゥゥゥゥゥ!!」」

 

宿木にしていたステッキを離れて、雷のごとく駆け抜けた。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」

 

光は爆光となって、女を包み込み爆発を起こす。

 

ガドゥンとすごい音がして、女はあらぬ方向へと吹き飛んでいった。

 

悲鳴を上げて、そして彼女の翼からバルカン砲が脱落して墜ちていくのが見える。

 

「その明らかすぎる殺意……あなたには虹の欠片は任せておけないのですよ!光よ―――夢と希望は悪しき心に歪められた―――その心、支配するものから解き放ち給え!!」

 

岬はそのまま、杖を掲げる。

 

ステッキに虹の花が咲き、くるくると回りだす。

 

「悪しきを、凶つを、魔に落つ前の姿へ。天の道を思い出させるのです―――!」

 

瞳は墜ちゆく女をしっかと捉えた。

 

「さぁお眠りなさい!アナン・レインボー・フラワー!チャージアップなのです!!」

 

虹の花が墜落する女を捉え、爆発する。

 

爆光が薄れ、女が頭から大地へ墜ちゆく―――その姿は、タンクトップにデニムのショートパンツの少女に変わっていた。

 

大きな魔法を2回連続で使用して息も絶え絶えな岬に変わり、恋がその女をキャッチして地面に降ろし、廻のワイヤーで木に縛り付ける。

 

「ぎぃぃぃ!離せ!離せ!ぶっ殺してやる!!」

 

数分後、縛り付けられたまま起きた女はそうしてワイヤーを解こうと暴れ続けていた。

 

「うーん、性根からして腐っているのです。まあ大体謎は解けたので、あなたはここでせいぜい喚いていてくださいなのですよ」

 

岬は呆れ顔で、女から奪った虹の欠片を額のティアラに当てて吸収した。

 

「あーっ!あーっ!返せッ!返せよッ!ふざけんなぁッ!!必ず殺してやる!絶対殺してやるァァァァァ!!」

 

「殺す殺すとやかましいのです。第一、ふざけてなどいるものですか。これはヒトコシノミコト様が不幸な人を救うためにもたらしたもの。それは国家建設妄想するアホだのイカれたバルカンジャンキーを生み出すためのものではありませんのです。女神様の言う通り、邪悪な人間からは回収させていただきますですよ」

 

岬は冷たくそう言って踵を返す。

 

緑の少女からは邪悪さは感じられなかったから奪わなかった。

 

そして、鉄条クロキと名乗った少女は自分から力を捨て去った。

 

岬の中ではそれだけのことであった。

 

「それじゃあ飛行機はありがたく使わせてもらうのですよ」

 

そう、空間を脱出するためにとかねばならない謎は解けていることを示唆して。

 

恋の手を握り、歩き出す。

 

後ろから聞くに堪えない罵声が聞こえてくるが、気にも止めずに歩き出す。

 

声が聞こえなくなるまで30分ほどかかった。

 

 

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