ではどうぞ。
小町「…ごめん」
大志「大丈夫だよ」
気の済むまで泣いた。
こんなに泣いたのは人生で初めてかもしれないってくらい泣いた。
泣いてる最中も、そして今も、大志くんは隣にいてくれている。
少し困った様に、穏やかな笑みを浮かべながら。
………我に帰ってだんだん恥ずかしくなってきた。
小町「…」
大志「…」
いやどうしようこの空気…
そんなことを考えているとふと自分の手の違和感に気づく。
…あ、大志くんの手握ったままだ
小町「…あっごめん!」バッ
大志「ん?あぁ、全然。俺からしたかったからそうしたんだから。むしろ嫌じゃなかった?」
小町「ううん、むしろ助かった」
大志「そりゃよかった」
自分でも少し寂しがりやなのは自覚している。
悲しい時は人肌恋しくなっちゃうからいつもこういう時にお兄ちゃんに構ってもらうのだが、現状そうもいかない。
だから大志くんの優しさは本当にありがたかった。
大志「そういえばお兄さん遅いね」
小町「あ、そうだ」
そういえばお兄ちゃんいたんだった…
あれ?やばくない?
え、めっちゃガン泣きしてましたけど!?
比企谷家の壁に防音機能とかないけど!?
八幡「おーい、大志〜」
大志「あ、お兄さん」
うぉっと!?なんてタイミング!?
急いで赤くなってるだろう目元を隠すようにするが、ここでお兄ちゃんの耳に見慣れない装飾品を目にする。
…そういえばこの前新しいイヤホン買ったってウザいほど自慢してきたなぁ
あれ?これってセーフなのでは?
お兄ちゃんはイヤホンを外し、大志くんの方に寄ってくる。
八幡「さて、こんなもんでいいか」
大志「はい!ありがとうございます!」
八幡「別に本貸すくらいたいしたことじゃねえよ。」
大志「いや、ありがたいです!」
八幡「あ、あと小町」
小町「うぇっ!?へ、へい!?」
八幡「なんだそのリアクションと返事は…」
突然話し振られたからめっちゃ動揺しちゃったじゃん…
八幡「洗剤とか切れてるから買ってきてくれ。俺は切れそうな調味料買い足しとくから」
小町「わ、わかった…」
八幡「あ、あと今駅の方面のドラッグストアの方が安いからそっち行ってくれ。俺の自転車使っていいから」
小町「え?う、うん…」
特に何も言われないあたりセーフだったっぽい。
というかいつも洗剤とか買うところと違うし、なんならほぼ行かないと思うんだけどなんでそっちのが安いってお兄ちゃんが知ってるのか…
ま、いいか。
大志「お兄さん、今日はありがとうございました!」
八幡「おう、気をつけて帰れよ」
小町「い、行ってきます…」
八幡「いってらっしゃい。小町も気をつけてな」
お兄ちゃんは軽く微笑みながら小町を気遣う。
その一瞬だけ、あの顔が、小町の大好きなあの顔が見れた気がして引き留めようとしてしまう。
小町「待っ…」
ガチャ
無慈悲に扉は小町の言葉を遮る。
あの笑顔はなんだったのか、あまり頭が良くない小町に疑問を叩きつけてくる。
…早く買い物を終わらせればもう一度見れるかもしれない。
早く行かなきゃ!
小町「大志くん、またね!」
大志「あれ?方向一緒じゃなかったっけ?」
小町「え?」
おいおいお兄ちゃん!方向一緒じゃん!
大志くんと一緒なんだよ!?あの毒虫とか言ってた大志くんと一緒だよ!?
道からして四択くらいある選択肢からなぜ大志くんと方向を一緒にしたの!?
…あ、そっか。
お兄ちゃんはもうどうでもいいんだ………小町のことなんて。
大志くんだってもう嫌いじゃないし、どうでもいい人にもすごくやさしいもんね、お兄ちゃん。
だからさっきの笑顔もどうでもいい人に優しくするときの笑顔なんだ。
小町個人に向けての笑顔じゃない。
今日、何度目だろうか。
また目頭が熱くなるのを感じる。
大志「……行こうか比企谷さん」パシッ
小町「え?…わっ」
大志くんは少し強引に小町の手を引いて歩き始めた。
大志「ごめん比企谷さん」
小町「いや、いいけど…どうしたの?」
大志「比企谷さんがさっきと同じ顔してたから」
…よく見てるなぁ。
それこそお兄ちゃんと同じくらい。
だから方向性は違えどお兄ちゃんと同じように人に優しいのかもしれない。
小町「ありがとう。でももう大丈夫だよ?」
大志「さっきも言ったけど俺がやりたいからやってるんだよ。もう少しだけこうしてちゃダメかな?」
小町「……もう少しだけこうしてようか」
そこから大志くんの家に着くまで気まずさからか、気恥ずかしいさからか一切会話はなかった。
おそらく小町の顔は道中ずっと赤く染まっていたことだろう。
恥ずかしさを隠すためか少し早めに歩く大志くんも短く切られた髪のせいで露出する耳が真っ赤に染まっていたことから小町と同じ心境なんだと認識させられた。
お互いに言葉は交わさないけれども、大志くんの手から伝わる熱は小町の心の傷を癒してくれる気がした。
最後の方はもう考えてあるんだけどそこまでの繋ぎが思いつかなすぎるという脳の低スペック具合なので買い換えたい今日この頃。
コメントとか残してくれると喜びの舞を踊るくらいには嬉しいかも。
ではまた。