世界の中心で剣は世界一可愛いと叫ぶ〜そんな俺は剣のお世話係〜   作:イチゴ侍

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修行と新たなる旅路

 

 隼斗が弦十郎の元で修行を初めてから2週間ほどが経ったある日の事、

 

 

「あれ、師匠……お客さんですか?」

 

「響君か。そうか、今日は響君もだったな」

 

「私も……ってことは、他にも誰か来てるんですか!」

 

 立花(たちばな)(ひびき)、花の女子高生で好きな物はご飯&ご飯。彼氏いない歴は年齢とイコールで、スリーサイズはもっと仲良くなったら教えてくれる。

 

 響もまた、弦十郎の元で修行を積み自身の身体を日々鍛えていた。

 

 そしてもう一人が……、

 

 

「弦十郎さーん、お昼ご飯出来ましたよー」

 

「おお! 隼斗君、悪いがもう一人分お願いできるか?」

 

「お客さんですか? 少し時間を頂きますがすぐに出来ますよ! ちょっと待っててください」

 

 弦十郎の元で修行するもう一人の弟子────高波隼斗だ。外に出ていった弦十郎を追いかけ、来客の存在に気がつくとすぐさま台所へと戻っていった。

 

 

「あの、師匠? 今の人は……」

 

「先々週から俺の元で修行する事となった高波隼斗君だ」

 

「えええ!?」

 

 何がなにやら分からないといった様子の響だが、ほんの少しだけ自分と同じように修行する人がいてくれることにワクワクしていた。

 

 流れるように響は弦十郎宅に入り、隼斗の作る料理が来るのを待っていた。

 

 

「あの、師匠……高波さんって二課────じゃなくてS.O.N.G.の事って知っているんですか?」

 

「その事だが、隼斗君は紛れもなく民間人であり、S.O.N.G.のことも"シンフォギア"のことも秘密だ」

 

 S.O.N.G.とは超常災害対策の国連直轄下の組織で、シンフォギアとは特異災害────通称、ノイズと呼ばれる敵に立ち向かうための歌って殴る武器である。

 

 その素性は秘匿情報として、決して一般人には知られてはならない。故に隼斗が来てからというもの、弦十郎は勘ぐられぬよう日々気を配っていた。

 

 その裏腹では、隼斗が自己防衛出来るレベルまで鍛えられたら教えようと考えていた。

 

 

「そ、そうなると私って結構危なくないですか?」

 

「む、そうか?」

 

「だって、私……女子高校生ですよ!? 彼氏とか遊びとかに真剣なお年頃の私が昼間から修行なんてしてるなんて、相当怪しまれますよ!」

 

 響によってようやく事の重大さに気がついた弦十郎。珍しく動揺していた。

 

 

「違和感がありすぎる……だとォ!?」

 

「師匠……気づくのが遅すぎです!」

 

「しかしどうしたものか……隼斗君に今日は帰ってもらう訳にも行かないしな」

 

「あ、なら私はしばらく来ないようにしても……」

 

 

「お二人共〜お待たせしました!」

 

 二人がああでもないこうでもない、と言い合っている間に隼斗の手作り昼飯が出来上がった。

 

 

「ん? お二人共なにかありました?」

 

「えっと、あの……」

 

「なんでもないぞ! ところで今日は何を作ってくれたんだ?」

 

「今日はですね……もう夏なので冷やし中華にしてみました」

 

 木製のトレーで運んできた3つの皿をテーブルに置いていく隼斗。麺の上に乗せられた色鮮やかなトッピング、食欲をそそる見た目に響は釘付けだった。

 

 

「えっと……アレルギーとか大丈夫だったかな?」

 

「あ、私は立花響です! 響でいいですよ! アレルギーはへいき、へっちゃらです!」

 

 お互い挨拶も出来てなかったため、呼び方に困っていた隼斗。それに気がついてか名乗る響。

 

 

「響ちゃんね。よし、覚えたよ」

 

「えへへ〜」

 

「俺は高波隼斗です……って、もう師匠から教えて貰ってるかな? よろしくね。呼び方はなんでもいいよ」

 

「じゃあ隼斗さんで!」

 

 ふと小型犬という単語が隼斗の頭に浮かんでいた。それはおそらく目の前にいる響の動きや言動が、甘えてくる犬に見えたからである。

 

 思わず頭を撫でてしまいそうになる隼斗だったが、出会って一時間もしない相手にいきなり軽薄すぎると手を押さえつけた。

 

 一方、響はというときちんと名前で呼ばれたことが嬉しく、照れていた。

『バカ』とか『立花ァ』とか『立花響』だったりと周りから色んな呼ばれ方をしている響だが『響ちゃん』と呼んでくれる人はあまり多くない。それも照れる原因のひとつだったりする。

 

 

「お互い挨拶も済んだことだ。では、頂くとするか!」

 

「頂きますっ!」

 

「召し上がれ」

 

 

 

 ◇

 

 

「え! じゃあ、隼斗さんが翼さんのお世話係になったんですか!?」

 

 食事中の話題は隼斗の素性についての話となっていた。

 響の中での一番の疑問は、普通の一般人である隼斗がなぜ弦十郎の元で修行しているのか、それだった。

 

 

「うん、でも今はまだ試用期間……というより修行期間になるかな? 本格的なお世話係はこの修行が終わったらになるね」

 

「……翼さんのお世話係ってことは、身の回りって事ですよね?」

 

「そうだね」

 

「あの……お部屋……とか」

 

「一度、長期滞在してたホテルに案内された時は凄かったね……」

 

 それは採用のキーとなった実践テストでのことだ。

 一方、響の頭の中に浮かぶのは、ある件で入院することとなった翼のお見舞いに行った時、その時に見た荒れた病室だった。

 

 

「あれは大変ですよね……」

 

「でもお世話しがいがあるとも思うかな。ところで響ちゃんは翼さんとは仲がいいの? よく知ってるようだけど」

 

「あ、えっと……その……それは」

 

 墓穴を掘る、とはまさにこの事だった。響と翼の繋がりは秘匿情報のS.O.N.G.とシンフォギアだ。無論それ以外にも同じ学校に通っていたなどもあるが、響はテンパってそれどころでは無くなっていた。

 

 

「響君は翼と同じ高校に通っていて、それで仲が良いんだ。な、響君」

 

 頼むから合わせてくれ、とでも言いたげに目線で伝える弦十郎。この場で最強の潜り抜け方法を使っていた。

 

 

「は、はい! そうなんですよーあはは」

 

「そうだったんだ。でもそうだね、良く考えれば翼さんの叔父さんである師匠と面識があれば会ってて当然か」

 

 なんとか自己解決してくれた隼斗に安堵するOTONAと響。

 

「ところで、響ちゃんは師匠の元で修行してるけど格闘家とか目指してるの?」

 

「────っ!」

 

 キュウリが飛んだ。

 

 

「えええっと……だ、ダイエット……なんて」

 

「ダイエット? 師匠、ダイエットが主題の映画なんてあるんですか?」

 

「ん!? もちろんあるぞ!」

 

「でも前にアクション映画以外はあまり見ないって……」

 

「お、俺も人間だからな! 他の映画だって見るぞ?」

 

 苦し紛れの抵抗を見せる弦十郎。響はというと器官に何かが入ってしまい、むせていた。

 

 

「なるほど……師匠の修行もなかなか幅広いんですね」

 

 納得してくれた隼斗に再び安堵する二人。早く喋ってしまいたい気持ちが大きくなる弦十郎だった。

 

 

「さ、さて! 各自食べ終わったら早速ランニングだ! 夏は日が落ちるのが遅いからな、とことんやるぞ?」

 

「はい!」

「はい」

 

 

 

 そして数十分後、OTONAと大人と子どもの三人はがむしゃらに走っていた。

 弦十郎が行う修行方針はただ一つ、()()()()()()()()()()。それだけで大人はOTONAとなり、超常とも渡り合えるという。

 

 実際に戦場で戦う響は、未熟な戦士時代に弦十郎の見せるアクション映画を鑑賞し、少しの体力作りをしただけでみるみるうちに強くなっていった。

 

 本来なら本日もアクション映画鑑賞の予定だったが、響の秘密などがあるためランニングという形に抑えることになった。

 

 

「響ちゃんは師匠の所に来てどのくらい経つの?」

 

「まだ一年経つか立たないかくらいですよね、師匠」

 

「そうだな」

 

「ってことは響ちゃんの方が先輩だ」

 

「え、ええっ!? でも隼斗さんの方が年上ですよ!」

 

「響先輩って呼んだ方がいい?」

 

「────っ」

 

 からかい混じりに響を呼ぶ隼斗、響は今でこそ年下二人組がいるため呼ばれ慣れているが、それでも男性から呼ばれる事はまるで無いため、笑みを隠せないでいた。

 

 

「もし嫌だったら響ちゃんのままで……」

 

「あ、あの!師匠の所にいる間だけ……でお願いしても良いですか……?」

 

 先輩という言葉の響きに揺らされ、響はなんとかして妥協点を見出し、それに隼斗は静かに頷き返事した。

 

 

「よし!あと10キロ行くぞ!」

 

「おっす!」

「おー!」

 

 こうして、隼斗の修行期間はそれから二週間続いた。

 

 そして────、

 

 

 

 ◇

 

 

 

「……緒川さん、忍びながら自宅侵入しないでください」

 

「見つかってましたか」

 

「もう緒川さんの気配は覚えましたから。ところで今日はなんのお話ですか?」

 

「次の翼さんのライブについてです」

 

 

 翼の下着類を洗濯機に放りながら、緒川から次の翼の行き先を聞かされる隼斗。

 

 隼斗は修行期間を無事に耐え抜き、強靭な肉体……とまでは行かないが、大人から立派なOTONAへと進化していた。

 その力の片鱗は、忍んでいた緒川を察知した時点で見せている。

 

 そして隼斗は現在、翼の自宅で家政夫業をこなしていた。

 

 

「ロンドンですか?」

 

「はい、翼さんの夢の第一歩として海外での初ライブです。それがロンドンで行われることとなりました」

 

「という事はパスポート入りますよね? 俺まだ作ってないですよ」

 

 ああ、その事なら。と懐に手を入れる緒川。中から取り出したのは案の定だった。

 

 

「いつもながら用意が早いですね。尊敬しますよ」

 

「恐縮です」

 

 緒川からパスポートを受け取る隼斗。写真については、お世話係に応募した際に出した履歴書から使われていた。

 

 

「でも、なんだか申し訳ないです。翼さんはともかくとして自分までホテル部屋を用意してくれるなんて……」

 

 

 

「ん? 隼斗さんは翼さんと同じ部屋ですよ」

 

 

 

 緒川によって爆弾が投下された瞬間だった。




翼さんのお世話係募集について二課組はみんな知ってる状態です。ダメな女とザババは応募してた時期的に務所生活だったので知らぬ状態ですね。
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