卒業論文の作成と、艦これにハマって手につきませんでした。
卒論が終わっても新社会人なんで書けるか分かりません。
先行き不安ですが、新年一発目の投稿です。
「というわけで、転入生の神薙龍弥君だ。仲良くしてやってくれ!」
「神薙龍弥だ。人によっては4年間の付き合いになるが、よろしく頼む」
若い男性教師———藤木浩太に軽い口調で促されて挨拶する俺。少々無愛想なものになってしまったが、感覚としては悪くはない程度といったところか。
「さて、皆のことだから、さっさと終わって噂の姫様転入生を見に行きたいだろう。正直、俺も終わって帰りたい。だが、龍弥をこのまま放置するのは流石に可哀そうだ」
あっさり本音を漏らすあたり、とんでもなくフランクな先生である。しかし、しっかり生徒のことを考えている。清濁併せ吞みつつ、教師と生徒の両方から信頼されるタイプと見た。まあ、可哀そうという点はお節介とも思うのだが。
「そこで、だ。連絡事項はプリントに纏めてきたから後で配るとして、余った時間で質問タイムだ。今の内に聞きたいことを片っ端から聞いちまえ!」
へっ!?と思ったつかの間、一斉に手が上がる。この教師にしてこの生徒ありのクラスのようだ。浩太を見ると、お前が当てろと言わんばかりに親指を向ける。しょうがないので名簿から適当に当てていくことにする。
「4年間ってなんで?もう高等部に入学決定してるとか?」「正解。編入試験に合格してるから高校入学も決定済みだ」
「なら、そのまま高等部にいけばいいんじゃないか?」「恥ずかしい話だが、訳ありで学校に行けてなくてな。経歴に義務教育がないのは流石に拙い」
「ぶっちゃけ強い?」「一応、場慣れはしてる。程度は分からんが、そこいらの不良には負けねぇ」
「趣味は?」「鍛錬と料理。料理は素人だから精進している最中だ」
その他、質問を片っ端から答えていく。結局、全員1つ以上の質問に答えた後に連絡事項のプリントを貰って自由解散となった。しかし、誰一人として帰らずに他のクラスへ向かって行く。
近くの生徒に聞いてみると、面白そうに教えてくれた。
なんでも、他国のお姫様が同年代に転入して来たらしく、一目見ておこうと一つの教室に群がっているらしい。
確かに話題性は抜群だろう。しかし、ここまで人が多いと逆に迷惑ではないかとも思う。まあ、俺としては他のクラスから質問攻めにあわずに済んでいるのでラッキーと思うことにする。
しかし、興味がなくはない。ちょうど昇降口を通るルートなので、一目見るために歩いていく。
到着すると、その教室には人でごった返していた。興味深々なのは分かるし予想はしていたが、これほどとは予想外だった。
隙間から容姿を見ると、真っ先に赤い髪が目に入る。碧眼の瞳や通った鼻筋など、かなり整った容姿をしている。
その目からはかなりの自信と、それ以上の覚悟が見て取れた。まるで、遥か彼方にある目標にのみを見据えているような。
(挑発にのる程度の輩は敵わない。壁として立ちはだかる敵でも食らいつきそうだな)
そう考えると、さっさと退散する。あの目からは、強い覚悟と同時に余裕ない感情も見えた。おそらく、これ以上しつこいと爆発するだろう。破裂が分かっている風船に近づくバカはいない。
俺が離れた直後、教室から女性の怒号が響いて来た。やっぱりな。
教室での暴発を逃れた俺は、商業エリアにいる。しかし、買い物という訳ではない。
「さて、とりあえず来てみたが、面白そうなバイトはあるかな」
小遣い稼ぎのバイトを探すためである。学費等の学校に通うための費用はすでに支払われているが、生活費は個人持ちのため、自由に使える金はそう多くない。とは言っても、前の部隊での給料が段違いに良かった(財体の組織+危険度が高すぎるため)ので、捻出できなくもないが、多いに越したことはない。そのため、バイトの種類は関係なく何かしらの技術が身に付く職ならいいと考えている。
え、中学生だって?今年16歳だから法的には問題ない。
という訳で、掲示板等を使って探して見るのだが、
「何気に用心棒系のバイトが多いな。まあ、星脈世代が集まった都市らしい。まあ、見つからない場合の最終手段だな」
全体的に短期系が大半を占めており、少ない長期系は単純作業のバイトばかりである。選り好みする気はないが、時々、地雷(ヤバい)バイトが混じっているために警戒もしている。
結局、掲示板では見つからずに店舗の張り紙の求人を探して見るも、良さそうなバイトが見つからずに昼を過ぎてしまう。
(まあ、焦る必要はないか。昼食はどこにするかな)
そんなことを考えながらフラフラと歩いていると、
「ひゃっ!?」
という声が響く。その方を見ると、大量のチラシが紙吹雪のように舞い上がり、こちらに向かって飛んで来ていた。
瞬間、目の前から流れてくるチラシの波がスロー再生に映る。紙の飛ぶ向きや位置を即座に把握すると、必要最小限の動きでチラシを回収していく。ステップやジャンプを組み合わせ、両手の指を総動員して、腕に引っ掛け顎に挟んで束ねていく。
光景が元に戻ると大半のチラシが手元にあり、動きを見ていた周囲の人から拍手が起こった。
「ほら、大丈夫か?」
「は、はい!大丈夫です、ありがとうございます!」
チラシの束を受け取りながら頭を下げてくるのは、メイド服を着た少女だった。小柄で幼い顔立ちをしており、グレーの髪も相まって可愛らしい女の子である。
チラシを渡しつつ、そのまま貰った目を通す。女の子の服装から察していたが、喫茶店のようである。『Setaria』と書かれており、営業時間や簡易メニューなどが書かれている。地図の場所は、すぐ近くである。
「ビラ配りってことは、そこの従業員ってことだよな?オススメのメニューってあるか?」
「はい!店長の作るオムライスが一番オススメです!ぜひ食べてみて下さい!」
緊張しつつも笑顔で教える少女に、ありがとうと礼を言うと、さっそく地図にある店に向かってみる。これも何かの縁と思い、昼食もそこにすることにした。
「っとここか」
店の場所は交差点の角地で、カジュアルな雰囲気である。少し大通りから離れているが、十分に目立つ建物である。
店に入ると、昼を過ぎたために客足も疎らで、ちょうどいい時間に来たようだ。
「いらっしゃい。空いているお席にどうぞ」
カウンターにいる男性店員の声が響く。空いている席に座って備え付けのメニューを見る。とは言っても、メインに何を頼むかは決めているので、何があるのかの物色に近い。
「すみませーん」
「は~い」
とゆったりとした声が聞こえ、白髪のウェイトレスが来る。外でチラシ配りをしてくれていた子のメイド服と色合いや形が違うが、各個人で違うのだろうか。
「オムライス大盛りにコーヒーを頼む。時間がかかるならコーヒーを先に」
「分かりました~。マスタ~、オムライスとコーヒーです~」
そう言ってカウンターから調理場に走っていく。何となく和みながら、店内を改めて見回す。
かなり落ち着いた雰囲気で、外から来た人が過ごしやすい装飾になっている。従業員同士の仲も、見た所良好なようだった。ただ、男性がマスターだけという点が気にはなったが。
そんなことを考えていると、裏から元気な声が響き渡った。
「ただいまー!買い出し行ってきたよー!」
新人なのか、性格か。明るい声からは、職場での居心地がいいようなイメージがこれでもかと伝わってくる。正直、これくらい良い雰囲気で働きたいと思った。
店内の観察を終えて、貰った連絡事項に目を通していると、出来立てのオムライスが運ばれてきた。持ってきたのは先程の人ではなく、亜麻髪のウェイトレスである。見た目からして快活そうであり、先程の買い出しの声も彼女だなと察せられた。
「お待たせしました!オムライスとコーヒーでーす!ごゆっくりどうぞ!」
元気溌剌を体現したかのような接客に、まるでなんらかのオーラが振り撒かれているようにも見える。オムライスはケチャップではなく、デミグラスソースのようだ。
受け取ったオムライスを食べると、進められるのが分かるように美味い。卵は半熟、チキンライスも均等に混ぜられ、ソースも良く絡み合う。
一緒に頼んだコーヒーも香りが良く、試しにブラックで飲んでみると、苦みも少ないように感じる。ミルクと砂糖を少量入れると、苦みを抑えつつより美味くなった気がする。
オムライスを早々に食べ終え、携帯端末でニュースを見ながらコーヒーを飲み終えると、1時間もいた。それほどまでに居心地良く入れたことに自分でも驚いた。しかも、気分が落ち込んでいる訳でもなかったのだが、かなりリフレッシュできたような不思議な感じがした。
そろそろ店を出ようと会計に向かうと、先程チラシ配りをしていた少女が入って来た。
「ああ、さっきの……。」
「あ、先程はありがとうございました!」
「おっ?なんだ
軽く頭を下げると、少女の方は深々と頭を下げる。今は自分しか客がいないため、少女の行動に他の従業員が食いつく。揉みくちゃにされているのを横目に、男性店員に会計を頼む。
「騒がしくて申し訳ありません。客が少ないと気が緩むようで……」
「いえいえ。明るい女性のはしゃぐ姿は、それだけで絵になりますから。……バイト募集してないのが残念だな」
お釣りを受け取りながら出た呟きは、殆ど無意識に出た上にかなり小さかったため、そのまま流されると思っていた。
しかし、目の前の男性店員には聞こえていたようで、一瞬眼光が鋭くなった気がした。
「ふむ。君、料理の経験はあるかい?」
「?自炊程度ならできますが・・・」
「接客やコミュニケーションは?」
「分かりません。応対できなくはない程度ですね」
「腕っぷしのほどは?」
「そこらの暴徒なら、その場で伸せます」
そう答えると男性店員は自分の体を眺める。痩せて見えるであろう俺の肉体は、圧縮された柔軟な筋肉の塊である。ここに来る前に学んだ技術と相まって、制限付きでも体重と身長が倍くらいの相手なら一撃で吹っ飛ばせる。
男性店員は顎に手を当てて考えると、不意にこんなことを言い出した。
「……君、ここでバイトしない?」
「……へっ?」「えっ!?」「何っ!?」「んっ!?」「ふえっ!?」
最初は俺。次に千絵莉ちゃんと食いついた店員。最後にオムライスとコーヒーを持ってきた店員。それぞれがバラバラの反応をする。しかし、全員に共通して驚愕の感情が混ざっている。
「おいおい店長!?いきなり何言ってんだ!?」
「何って、言った通りだが?何か問題でも?」
「問題しかないだろ!行きずりの客を勧誘する奴があるか!?」
真っ先に復活した店員が男性店員———店長に詰め寄る。見ず知らずの客を勧誘すれば、普通の反応である。しかし、今度は俺が驚く番だった。
「いや、千絵梨ちゃんを助けてくれたから悪い人じゃないだろうし。今の返答から最低限の技量はある。それに君、バイト探してたんでしょ?声に出てたよ」
たったそれだけで自分を勧誘したのか。度胸があるのか行き当たりばったりなのか。はたまた唯の御人好しか。
「まぁ、突然だったのは認めるよ。できれば1週間以内に返事が欲しいね」
「で、本音は?」
「男一人がそろそろ寂しくなったから、意欲ある男性店員が欲しい」
「ここまで正直ですと~、清々しいですね~」
「やってることは滅茶苦茶ですけどね」
店長の本音に、笑う2人とジト目の2人。そんな状況を見ながら俺は考える。
喫茶店のメリットは、料理とコミュニケーション能力である。前者は日常生活でも有効活用でき、後者は今後人と話す機会が増えた際に役立つ。
デメリットは祭り事への参加が少なくなることだが、そちらは代休などでカバーできるはず。
「……星武祭やらで時々抜けることになりますが、いいですか?」
「「「「えっ?」」」」
「事前に連絡してくれるなら大丈夫だけどって、え、マジ?」
真面目に考えて返答したら何故か驚かれた。誘ったのはそっちだろうに。
「いや、ごめん。本当に受けてくれるとは思わなくて」
「自分で誘っといて言いますか。こちらとしても、デメリットが日時のやり取りだけですからね。それさえ通じれば受けますよ」
そう言うと店長は納得するが、残りの従業員はついていけずに唖然となる。
「んじゃ、とりあえず採寸だけ済ませようか。自己紹介もついでにやろう」
「俺は構わないが、店の方は大丈夫か?」
「心配いらないよ。平日のこの時間帯は、客足が一気に遠のくからね」
「「「「待て待て待て待て!!」」」」
何とか再起動したのか、全員から静止される。突然の勧誘をまさか受ける人がいるとは思わなかったのだろう。
「いや、おま、マジで受ける気か!?」
「さ、流石に擁護できません」
「冗談と思ってノリノリだったけど……、本気?」
「あ、あはは〜。同じくです〜」
そんな反応になるのも頷ける。というか、これが普通の対応である。
「ま、一種の社会勉強だ。いずれするなら早い方がいいし、自分で決めたいからな」
「これは行き当たりばったり過ぎだろ!」
「……なんか面白くなってきたな」
「言うなよ!やってる方が悲しくなってくるだろ!?」
ツッコミが的確すぎて逆に楽しくなってくると、その子が涙目になっていったので流石に自粛する。
「さて、ちょうど全員復活したから、ついでに自己紹介。俺は
「ったく。あー、あたしは
「
「
「
「星導館学院の神薙龍弥だ。今日入学したばっかだが、よろしく頼む」
そんなわけで、あれよあれよという間にバイトが決まり、俺のアスタリスクでの学生生活が本格的に始まろうとしていた。
という訳で、主人公のバイト先の決定でした。中学生がバイト?とは思いますが、ご都合主義で通してください(泣
この手しか思いつきませんでした。