ゼロの使い魔~竜の国からの遭難(?)録   作:ショウマ

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幕間 黒の葛藤は嘆息と共に

 

 

「力は貸せない」

 

 開口一番、黒衣の少女は面倒臭そうにそれだけを告げた。

 

 

―――時は、ルイズ達がメガロキングと闘い始めた頃にまで遡る。

 

 

     ※ ※ ※

 

 

 王女の部屋で待機していた三人――シエスタ、クピクピ、そしてベッドに寝かされたローラ――は、そこへ駆け込んできたモンモランシーとクシューラから、現在このグランガラム城が襲撃を受けている旨を知らされていた。

 

 迎撃に赴くルミエラ達と共に、ルイズやキュルケ、セレスといったトリステイン学院のメイジ達も向かったことを聞いたシエスタの顔は一気に青醒める。

 

 それと襲撃を受けたと聞いて震え上がっていたクピクピだが、既に彼はこの場にはいない。

 

 危険を察して真っ先に逃げた――――というわけではなく。

 

 二人がバブからの応援要請を預かっていることを知り、臆病で小さな桃色の貝獣はそれでも震える身体を鼓舞して、仲間達の元へと向かっていったのだ。

 

 ただ体形的に階段が辛そうな彼のため、今はクシューラが抱えて一階まで下りていっている。

 

 その後シエスタと共に部屋に残っていたモンモランシーだが、つと部屋に置かれた身分ある年若き女性が使うにはシンプルなデザインと造りのベッドへ歩み寄っていく。

 

 ただベッドの見かけそのものはそうでも、掛け布団やその他の寝具については上等な生地が使われているようだ。

 

 これはトリステインから来た面々は知らないことだが、多忙極まるルミエラのためにある特別な素材が使われていた。

 

 グランガラムの年老いた職人達が孫のように可愛がるルミエラのために作ったもので、例え短い時間でも怪我や疲労の回復、加えてしっかり休んだという満足感まで得られる優れものである。

 

 閑話休題。

 

 そんな寝心地良さそうな場所へモンモランシーが近付いているのは、そこへ横たえられた少女に友人からの言葉を届けるためだ。

 

 セレスとはそれほど親しいわけではないが、かといって邪険にするような間柄でもない。

 

 入学した頃からは信じられないほどの快復を見せたセレスだが、その頃の名残で今でも『虚弱』と呼ばれることの多い彼女をしかし真に嫌う者は少ない。他人とぶつかりやすい性格のモンモランシーとしても、普通に喋れる数少ない相手の一人である。

 

 人当たりも良く、貴族としては珍しい誰彼と分け隔てなく接する性格のセレスの方も、モンモランシーのことを友人の一人だと思っている。

 

 そのため図書室に通ったりルイズ達と行動を共にする傍ら、『香水』の二つ名を持つ彼女に家族へ送る香水の相談を持ち込むセレスの姿がしばしば見られた。

 

 モンモランシーの方もセレスには自作した香水を試してもらったり、資金が厳しい時には察した彼女が完成品を少し高めに購入してくれたりと、お互い持ちつ持たれつな関係とも言える。

 

 モンモランシーがそっとベッド脇に立った時、仰向け――上を向いた状態で寝かされていた漆黒の少女は既に目覚めていた。

 

 しかし少女は傍らに立ったモンモランシーには目もくれず、ただジッと天井へ視線を向け続ける姿は何かを考えているようにも見える。

 

 ちなみにモンモランシーがローレシアを側でジックリ見るのは、実はこれが初めてだ。

 

 学院での相談(もしくは商談)はもっぱら教室か、モンモランシーの部屋で行われていたためだ。

 

 そしてローラを近くで見れば見るほど、モンモランシーにも彼女の持つ特異性……いや、異質性がこれでもかとばかりに伝わってきた。

 

 タバサと同じか、それ以上に小柄な身体。

 

 日焼けすることを知らない透けてしまいそうなほどに真っ白な肌と、それとは対称的なシエスタや才人と同じ黒髪黒眼。しかし二人のソレとはまるで違う。

 

 才人をその辺に落ちている石、シエスタを川辺にある石とするならば、ローラのは磨きあげて仕立てられた極上の黒い宝石である。

 

 テラテラと独特な煌めきを放っており、この艶を出そうとするなら、モンモランシーの見立てではキュルケと同等以上のケアが必要だ。

 

 眼に至ってはまるでそれ自体が魔法であるかのように、そこに引き込まれてしまいそうな不思議な輝きがあった。

 

 だが同時に、二度とそこから出られない―――まるで底の見えない落とし穴に落ち続けているような、そんな錯覚も抱いてしまう。

 

 ハッとしたモンモランシーが何かを振り払うかのように頭を左右に振っているのを見て、シエスタは不思議そうに首を傾げる。

 

 ミステリアスな雰囲気とそれに伴う神秘性。それでいて、ともすれば彼女が常に周りへ醸し出している倦怠感のせいで、こちらも脱力してしまいそうになる。

 

 不思議で不気味―――それがローラを見たモンモランシーの最初に抱いた感想だ。

 

 学院で幾つか流れていた噂のように、自分達とローラが同じ人間だとは思えない――そんな感慨と共に。

 

「あ、あなたに……セレスからの伝言よ」

 

 そんな少女へ口を開くのを躊躇ったモンモランシーだったが、知人……友人の頼みということもあり、何とか伝えることができた。

 

 二つ返事で引き受けるでしょ―――そう思って踵を返したところにきた答えが、先の一言である。

 

 それも迷ったりするような素振りもなく、即答で、だ。

 

 

     ※ ※ ※

 

 

「な、なんでよ! あなたってスゴい魔法が使えるんでしょ?」

 

 気の強そうな金髪縦ロール少女はまさかの拒否に、ベッドから動こうともしない相手に食って掛かった。

 

 完全に“平民”な才人と違い、この黒衣の少女は優れた力量のメイジらしい。

 

 しかし、セレスの使い魔には違いないはずだ。

 

 主人の命に背く、もしくは聞こうとしないのはルイズアンド才人組にも見られることだが、それはセレス達の方も同じだと言うのだろうか?

 

 だとすれば、親友同士らしい二人はどこまで似れば気がすむのかと、混乱する頭でモンモランシーは考える。

 

 だが、それに対してもローラは何も答えようとしない。

 

 黒い眼差しだけが、静かにモンモランシーに注がれている。

 

「どうしてですか? セレスさんも危ない目に遭われてるかもしれないのに」

 

 モンモランシーだけでなく、シエスタにとってもローラの答えは予想外であった。

 

 なにしろ一年前、危険な状態にあったセレスを助けたのは彼女なのだ。

 

 極度の面倒臭がりで何を考えているのか分からない部分はあるものの、セレスがローラを大事に思っているのと同様に、ローラの方もセレスを大事に思っている。

 

 そうでなければ、彼女が連れ去られそうになったことに激怒して、気球を追うようなことはしなかったはずだ。

 

 まるで昔に読んだ物語の一節のように。『巣に溜め込んでいた宝を持ち去られて激怒するドラゴンというのは、ちょうどあんな感じなのかもしれない』と、後にしてシエスタはそう思う。

 

 毎日のようになにがしか騒動の渦中にいるような二人だが、その間には目には見えずとも確かなナニかがあった。

 

 そしてそんな二人の様子を見てきたシエスタだからこそ、セレスがルミエラと一緒に向かったと聞いた際に、きっとローラもそこへ行くだろうと考えたのだ。

 

 それにローラなら、襲撃者に怯むことなく簡単に蹴散らすという、強い確信もある。

 

(! もしかして……)

 

 そこまで考えた時、シエスタはもう一つの可能性に思い至った。

 

 そもそもとして、どうしてローラはここで寝かせられているのか?

 

 学院でもローラはセレスの部屋から―――もっと言えばベッドの上から―――動かない。

 

 なにしろ自分で立ち上がることすら珍しいのだ。

 

 移動するのもセレスやルイズ達のように抱き抱えるか、もしくは浮遊の魔法(レビテーション)を使われる。

 

 行動も寝てるか本を読んでいるかだけで、部屋を訪れた際に挨拶を送っても大抵は無言。

 

 機嫌が良い(たぶん)時には、「ん」と一言だけ返してくれることはあるが、そんなことは滅多にない。

 

 しかし求められれば、必要な時には喋ってくれる。

 

 普段の億劫さが嘘のように、流麗かつ懇切丁寧な説明を交えて。

 

 先にローラは動かないという話をしたが、例外があることをシエスタは知っている。見てきていた。

 

「ローラさん、どこかお怪我をされているのではありませんか……?」

 

 ピクッと、それまで微動だにせず天井へと向けられていたローレシアの切れ長な目が、ほんの僅か揺れ動いた。

 

 えっ、と驚きの声を上げたモンモランシーがシエスタを見、それからローラへと視線を向ける。

 

 黒衣の少女は物言わぬまま眼を伏せた。

 

 静寂が訪れる。

 

「………………大丈夫」

 

 ややあって、ローラが口を開いた。

 

 このままダンマリを決めこもうかとも考えた彼女だが、自分の身を真面目に案じてくれている相手を無視するほど、性格はネジ曲がっていないらしい。

 

 答えになっていない返事をしているのは、さておくとして。

 

「本当ですか?」

 

「少しなら、治療薬もあるけど」

 

 答えを避けたことに気付いたシエスタが不安そうに言い、モンモランシーも服の内側から水色の液体が入った小瓶を取り出す。

 

「……私が力を貸せないのには、理由がある」

 

 そんな二人の言葉を遮って、ローラは嘆息一つ吐くとベッドから身を起こし始めた。

 

 再び開かれた漆黒の瞳には、僅かだが憂いの光が見える。

 

「理由……ですか?」

 

「少しだけだけど、探ってみた。この世界――シェルドラドには“守 護 竜”(ガーディアン・ドラゴン)達がいる」

 

「ガーディアン?」

 

「ドラ……え?」

 

「ん、細かいことは気にしないで。とりあえずは“ちょっとばかり”規模の大きな国境警備隊とでも思えばいい」

 

 やってることは変わらないしと、疑問符を浮かべている二人にローラは淡々と告げた。

 

 言わなくてもいい情報をうっかり出してしまった、と黒衣の少女は自省する。

 

 彼女の中で結論が出ていない考えをまとめている最中だったため、それが口を突いて出る形となってしまった。

 

 同時に。

 

 国境といっても国ではなく、その範囲はこの世界そのものだけど―――と、ローレシアは胸の内で呟く。

 

 だから本当は“ちょっとばかり”で済む話ではないのだが、黒衣の少女にとっては些細なことだった。

 

“守 護 竜”(ガーディアン・ドラゴン)

 

 世界の監視者とも言われる彼らの役目―――それはその肩書きが示す通り、迫る様々な厄災から世界を護ることだ。

 

 そう、肩書きである。

 

 ごく一般的に知られている火竜ことレッドドラゴンや、風竜ことウィンドドラゴンといった竜種名とは違う。

 

 そして一口に守護竜とはいっても、その全てが統一されているわけでもない。庇護対象や対処すべき厄災の指定なども、その世界や個体ごとに異なる。

 

 人間を護るべき対象として見るモノがいれば、世界のために排除すべき存在だと断じて、戦いを始めたモノもいるくらいだ。

 

 この世界の守護竜達がそのどちら――あるいは全く別の考えを持っているのかもしれないが――かは、現時点ではローレシアにも分からない。

 

 幸いにも数はそれほど多くないらしく、十にも満たない彼らが狭量的な視野を持っていないことを願うばかりだ。

 

 ローラとしても、彼らと矛を交えるつもりは今のところない。

 

 そんな事態にならぬよう避ける理由が、ローラの方にあった。

 

 ただ、一つだけ断言できることがある。

 

 彼ら全てに共通していえること。それは非正規な手段(、、、、、、)を用いて、異なる世界から来たものを警戒することだ。

 

 しかし、それらを一から十まで説明するのはさすがに(はばか)られた。

 

 いつもであれば、二人が理解するまで説明するのも(やぶさ)かではない彼女だが、今回はこれまでと少々事情が異なっている。

 

 なかなかに込み入った理由もあり、二人の反応によっては未だ誰にも話していないローレシア自身のことにも触れる必要が出てくるからだ。

 

 別に自分のことを話すのは良い。

 

 面倒臭いというのは確かにあるが、もし必要だというなら――知る資格があるなら、彼女達に差し障りがない範囲で話をしてもいいとは考えていた。

 

 だがそれは、今この場ではない。

 

 どのみち、いずれセレスティナには話すことになるのだ。

 

 今は二人が要らぬ不安を抱かぬよう最低限の説明でいいか、とローラは結論付ける。

 

「ひとまず、把握しておくべきことは二つ。彼らは強大な力と、様々な権限(、、)を有していると思った方がいい。そして、それらを外からの異物(、、、、、、)へ向けることに、一切の躊躇はしない」

 

「「えっ」」

 

 一度排除すべしと断じられてしまえば、彼らは情け容赦なく牙を剥いて襲いかかってくるだろう。

 

 思い切り不安感を煽る内容となっていたが、他で頭を悩ましているローラは二人の様子に気が付いていない。

 

 そう、普段と変わらないように見えるが、今の彼女は珍しく焦っていた。

 

 ローレシアの分かりやすく簡潔過ぎた説明に、しかし当然のことながらシエスタ達は不安と困惑の色を深める。

 

「途中にあった不吉な名称は……その、聞かなかったことにしたいのですが」

 

「ん、そうして」

 

「ですが、そんな人達がいるから手伝えないと言われるのなら、ルイズさ……ミス・ヴァリエール達がルミエラ王女様と一緒にいるのも」

 

 横にモンモランシーが居ることを今さらながら思い出し、慌てて取り繕うシエスタ。

 

 金髪の少女も学院付きメイドのそれに気付いたようだが、一瞥しただけで特に何も言わなかった。

 

「ん……言いたいことは分かる……けど、セレスやあなた達と、私では、立場が非常に異なる」

 

「どういうことよ?」

 

 眉を潜めながら言うモンモランシーに、ローラはどう答えたものか考える。

 

 シエスタは知らない仲ではないが、メイジの卵でもないメイド。モンモランシーとはさっき初めて知り合ったばかりだ。

 

 ローラも以前にセレスが授業へ連れ出した際、クラスにいたモンモランシーの顔を見て覚えてはいたのだが、ほぼ毎日のように顔を見せるルイズ達ほどは気にとめていない。

 

 見て、聞いたことを瞬時に記憶してしまう性質の彼女は、セレスが連れ回した範囲の全てを覚えてしまっていた。

 

 彼女の目的を果たすために身に付けたことだったのだが、ここにきて一気に情報を増やされると自らの行いながら少々恨めしくも思ってしまう。

 

 ややあって。

 

「私と彼らは同業の職に当たる」

 

「「え」」

 

「詳細はまだ調べていないけど、トリステインとゲルマニアの関係にあるかもしれない」

 

「それって……」

 

「非常にマズイでしょ」

 

 マズイどころではない。下手をすれば戦争だ。

 

 トリステインとゲルマニアは非常に仲が悪く、現在でも微妙な関係にあると言える。

 

 これまでにも幾度か戦が発生しており、両国で真っ先にぶつかり合うのが領土を隣とするトリステインはヴァリエール家(ルイズの家)と、ゲルマニアがツェルプストー家(キュルケの家)だった。

 

「だから、私は力を貸せない。それがこの地の、人同士の争いなら、なおさら介入するわけにはいかない」

 

 それがローレシアに、ローレシア()に課せられた決まりだ。

 

 だからこそ、そっと眼を伏せながらローレシアはそう改めて宣言する。

 

 説明したところでおそらく理解は得られない。漆黒の少女を取り巻く環境は、それだけかなり複雑なのである。

 

 その時……何かが爆発したかのような大きな音と振動が城を襲い、建物全体を揺るがした。

 

「きゃああああ!?」

 

 三人のいる部屋に置かれた家具がガタガタと激しく震え、机上に置かれたままのカップが床で派手な音を立てる。

 

 本棚からも何冊か本がこぼれ落ちる中、シエスタとモンモランシーは抱き合って床にしゃがみこみ悲鳴を上げていた。

 

 ただ一人、ベッドに腰かけたままの黒衣の少女だけが平然と、窓の外へと視線を向ける。

 

 その眼には変わらず、憂いの光が宿っていた。

 

「…………セレス」

 

 今の音は、セレス達が向かったという方から聞こえてきた。

 

 彼女には念のために保険をかけているものの、少女は僅かにもどかしさを感じる。

 

 そこまで気を許していたつもりはないのに、とローレシアは自身の内で起きていた変化に戸惑いも覚えていた。

 

「ろ、ローラさん! なんとか――皆さんを助けてあげて下さい!」

 

 大きな震えはやがて微動へと変わり、それがようやく収まりかけ始めた頃にシエスタがローラに向かって叫んだ。

 

 黒衣の少女は窓へ向けていた頭をそちらに戻すと、しかしゆっくりした動きで左右に振る。

 

「…………さっきも言った通り、私は――」

 

「それでも! お願いします……。今、セレスさん達を助けられるのは、ローラさんしかいないんです」

 

 友人のメイドが行方知れずとなり、今また心優しい貴族達が危ない目にあっている。

 

 それなのに自分は何も出来ない。

 

 無力感に苛まれる黒髪の少女は、肩を震わせながらローレシアに頭を下げる。

 

「あの時こうしてればって後悔しても、遅すぎることが多いのよ。願っても、手を差し伸べてくれるわけじゃないし」

 

 横にいるシエスタのそんな姿を見て、ツイと視線を反らしたモンモランシーの小さな呟きが、静まり返った部屋へ浸透するかのように響く。

 

「もし何か出来るなら、やっておいた方がいいんじゃない?」

 

――これだから人間は。

 

(わざわざトリステインとゲルマニアの例を出したというのに、それでも一時の感情で物を言う。人間は感情の生き物とはよく言ったもの。それが彼らの背負う業の多くを成す、一番の因)

 

――だというのに。

 

 黒衣の少女は、すぐ上の姉がよくそうしていたように深く嘆息する。

 

「それで力を貸そうとする私も、まだまだ馬鹿な子供……か。知らなかった……けど、認めたくはないな。折衷なんて一番面倒臭いのに、どうして私は」

 

 ローレシアの黒髪がザワザワと波打ち始めた。

 

 どこからともなく現れた巨大な本が、ローレシアの前で自ら開いて勢いよく頁を捲り始める。

 

 なにやら複雑そうな顔でブツブツ何事かを呟きながら、それでもローラは手を貸してくれる気になったようだ。

 

 それが分かると、シエスタは黙って胸の前で両手を組んで祈りを捧げ始める。

 

 やがて本は頁を捲る動きを止め、ローレシアは開いた場所に手をかざす。

 

 そんな二人の様子を離れて確かめながら、そういえばとモンモランシーは部屋の入口の方へと視線を向けた。

 

 扉は先に出ていった二人が閉じた時のまま、開く気配を見せない。

 

「クシューラ先輩。あれから戻ってこないけど、どうしたんだろ?」

 

 

   ――続く――

 

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