16日目 天気:雨
今日はペンギン急便のボスである、『コーテー』がやって来た。
ペンギン急便の従業員であり、今は定期的にロドスへ来ているテキサス、エクシア、ソラ、クロワッサンの事についでだった。
大きな仕事が来たから、暫くロドスには行けないとの事だったので、私は快く承諾した。コーテーは決して優しい人間でも、悪い人間でもないが、いい奴だ。というのが私の見解だ。
私がコーテーと話している時、レッドはカメラを片手にソワソワしながら、いつも私が座っている執務室のデスクにちょこんと座っていた。
私が話を終えるのを心待ちにしているレッドの様子を見て、思わず笑ってしまうところだったが、何とか堪えた。
そして漸く───時間にして数分だったが───コーテーとの会談を終えると、レッドは笑顔で私の胸へ飛び込んでくる。
まるで愛くるしい小動物のようだと笑いながら、レッドが差し出すカメラを覗き込む。
「おぉ……」
よく見知った人物がレッドとツーショットを撮っていた。
細長い耳に年相応の柔らかい笑顔で、恥ずかしいのか頬を紅潮させながらピースサインを取る、表向きのロドスのトップ、アーミヤだった。
アーミヤはロドスのトップというだけあり、ロドスのオペレーターとは分け隔てなく、仲良くしている印象がある。
レッドと以前から話している姿を何回か見かけているので、それなりに仲がいいのだろう。
思えばレッドがロドス内を駆け回っていると教えてくれたのもアーミヤだった。
私はアーミヤと普段何を話しているのかと、レッドに訊ねたが、レッドは「ひみつ」とだけ言って、私に擦り寄ってきた。
そう言われると気になるが、彼女達だけの秘密ということなら、私が踏み込むべきではないなと思ったので、そのまま大人しく引いた。
追記:アーミヤは普段は年相応に可愛く、優しい人物だが、こと仕事に関して言えば鬼だ。
←ドクター?
17日目 天気:晴れ
今日はとてもよく晴れていたので、いつもの課題はお休みして外の景色を撮るという課題を出した。
レッドは嬉しそうに外へ飛び出すと、一枚写真を撮る事に、私へ見せに来てくれた。
まず一枚目、コンクリートを割って出た赤色の小さな花。
決して皆の目に留まるほど、可憐で綺麗な花ではないが、レッドにとっては価値のあるものだったのだろう。私にもレッドが感じた、様々な感情がこの一枚の写真を通して、私の中へ流れ込んできた。
二枚目、昨夜まで降り注いでいた雨から出来た、サンサンと輝く日差しを反射している、水溜まりだった。
レッドは身近なものに綺麗だと感じ取れる、素晴らしい少女だ。
再度確認させられる彼女の純真に、ふと笑みがこぼれる。
その後は何気ない空の色や、橋の下に描かれた汚い言葉の羅列、光さえ通らない薄暗い路地裏、太陽が地面に衝突しているのかと錯覚してしまう程の、鮮やかな夕焼け。
何気なく撮られた写真の一枚一枚に、魂が、情景が込められていた。
私はこれが好きなのだ。その一枚の写真に様々なストーリーが見えてくる、何とも言えない感情が好きなのだ。
私がカメラを見ている横で無邪気に笑っていたレッドの表情は、私には何処か大人びているように見えた。
それがいい事なのか、悪い事なのか。それは分からない。きっと彼女の将来がそれを判断する事になるだろう。
今まで撮った写真を現像することにした。想像以上に溜まっていた写真の数々は、一個一個に色があり、纏めた額縁を眺めると鮮やかな色彩が浮かび上がってきた。
レッドの瞳はキラキラと達成感と喜びに満ちていた。
追記:ケルシーに、レッドが撮った今までの写真を見せたらすぐに部屋に戻ってしまった。口元が緩んでいたのはきっと気の所為ではないはず。多分。
20日目 天気:雨
今朝はけたたましく鳴り響く轟音に目が覚めた。
外は大荒れで、雷の荒々しさと激しく地面に打ち付ける雫の音で支配されていた。それがどうも私の心を和ませる。何故だろうか?
今日はアンジェリーナが執務室へやって来た。
暫くトランスポーターの仕事でロドスを離れていた彼女が帰ってきたのだ。彼女は雨に濡れた栗色の髪をタオルで拭い、いつも以上に癖のついた毛先を気にしている様子だった。
「変じゃない?」
頻りにそう聞いてくるアンジェリーナに対し、私は何度も「大丈夫」と言っていた。アンジェリーナはロドス内にいるオペレーターの誰よりも乙女なのだと、再認識した。
アンジェリーナは帰還報告だけではなく、レッドの事に対して口を開いた。
最近写真を撮っている。という旨をアーミヤから聞いたのだという。
私は自慢げにレッドが撮ってきた写真をアンジェリーナに紹介し、レッド同様に額縁に纏められた写真を見て目を輝かせていた。
するとアンジェリーナは密かに抱いていたレッドへの印象をポロッと私に零した。
『怖い』『よく分からない』そんなものだった。
私はそれを優しく否定し、こんな綺麗な写真を撮る純真を持っている無邪気な子なんだよ。と教えてあげた。
アンジェリーナは「うん、うん」と納得するように写真に食いついていた。
彼女もトランスポーターとして、様々な景色を見て回った事だろう。それでもレッドの写真に目を輝かせて見ている。その事が私にとってはとても嬉しくて、何だか誇らしく思えてしまった。