うたちゃんが居る話。

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あの子が消えた。あの子はまだ居る。

となりのクラスの、不思議な雰囲気の女の子が亡くなったという話を、風の噂で聞いた。

 

学校の、やけに強い風の吹く屋上で、イケメンな男の子と一緒にうたをうたっていた、あの女の子だ。

 

放課後に屋上へ行くと、美男美女がライブを開いている、という噂が、学校内に、一時期大いに出回った。

そして、それは噂だけでなく、実際にあることだったのだ。

 

噂の真偽を確かめるために、毎日の放課後、屋上へと続く階段にはだれかしらがいて、金属製の扉を少し開けては、外の様子を伺っていたものだ。

私もそのうちの一人で、ある日屋上へと、噂を確かめに向かったんだ。

 

それで、扉を少し開けると、すぐさま、男の子と女の子の、とっても綺麗なハモリが聞こえてきたんだ。

扉の隙間から、うたっている人たちの顔を確認しようと、目を覗かせると、どうも見覚えのある顔が2つ並んでいた。

 

と、いうのも、そのうたをうたっていた二人は、隣のクラスの有名なカップル(というと、男の子の方は真っ赤になって必死に隠そうとするけれど、校内であれだけいちゃついて、しかもどっちも顔が良いとなると、噂にならないほうが難しいだろう)で、男の子のほうが「つよし」くんで、女の子の方が「うた」ちゃんだ。

 

そのどちらもが不思議ちゃんで知られており、別にその二人が屋上で歌っていようが、別にたいして驚くべきことでもない、と、その噂はすぐにどうでもいいものとして忘れ去られていたのだけれど、その片側が亡くなった、ということだけあってか、不謹慎ながらも、似たような噂が流れ始めている。

 

その、似たような噂というのは、「うたちゃんが一人でうたっている」というもの。

 

亡くなったのはうたちゃんなのだから、普通逆で、信憑性のかけらもない、根も葉もないただ不謹慎な噂話、というだけだが、それでもやはり噂は気になってしまうのが人というものらしく、私は再び、放課後に屋上へと向かった。

 

前のように人がたくさん居る、ということはなく、噂の真偽を確かめに来たのは私だけのようだ。

私だけが騙されたような感じで、少し気分が悪いが、屋上からなにやら声がが聴こえてきたことで、その思考は中断された。

 

扉の隙間から覗き見ると、なぜか女生徒の制服…それも、おそらくうたちゃんのものを着たつよしくんが、モップをマイク代わりに、うたをうたいだした。

 

そこで、私は、噂の真偽を知ることになる。

 

うたちゃんは、確かにいたのだ。

 

いや、それは確かにつよしくんであるはずなのに、声も、動きも、その全てがうたちゃんと一緒なのだ。

つよしくんであるはずの「それ」は、こちらに気がつくと、いつもの、人懐っこそうなつよしくんにもどると、私に話しかけてくる。

 

「うたは死んでないよ。だって、俺がうたになるんだもの。」

 

 


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