首都高速道路。
深夜も近いというのにその場所は灼熱の炎によって昼のように照らされていた。
「万象一切灰燼と為せ」
その一言と同時に、皐月 夜見の周りに、否、橋全体に炎が吹き荒れる。
『夜見、敵はこの橋にしかいない。数は130。大型が5、中型が30、それ以外は全て小型』
「こちらでも確認しました。アレでいきましょう」
「『逃げ道を塞ぐ』」
<<松明>>
一閃。
その一振りによって橋は、炎に飲み込まれた。
「残り、大型5体」
松明。流刃若火の基本技の一つ。辺りを一瞬で炎で包むこの技によって130存在した荒魂は残り5体に数を減らした。
『燃やし分けも完璧』
「次、行きます」
元来、皐月 夜見は剣術が苦手だった。
より正確に言うと、人に刃を向けることが苦手だった。
剣道などの試合を除いて、性格が争いに、切り合いに向いていないのだ。
故に人を切ることを目的とした『この世界の剣術』は皐月 夜見に合っていなかった。
それを聞いた流刃若火は提案した。
『なら、別の世界の剣術は?例えば大型の化け物を切ることを目的としたやつとかなら、夜見に合うんじゃない? 私の今までの持ち主の中には化け物倒すことを仕事にしていた人とかいてさ』
死神でしょ
モンスターハンターでしょ
フレイムヘイズでしょ
鬼殺隊でしょ
海賊でしょ
忍びでしょ
マフィアでしょ
波紋使いでしょ
etc
etc
etc
全部学んでみる?
絶望に支配されていた少女の答えは一つだった。
呼吸を整え、目の前の荒魂に狙いを定める。
頭が驚くほどクリアになっている。
炎を圧縮。
霊圧を高める。
霊子を足に集める。
足元のアスファルトの魂を掌握。
覇気を全身に薄く纏う。
波紋の呼吸によって体の緊張をほぐし、活性化する。
踏み込む瞬間に、空気を全身に流し込む。
炎による爆発+瞬歩+飛廉脚+完現術+流桜+波紋+全集中の呼吸
『御刀』ではない流刃若火。
刀使達が普通に使うことができる能力を夜見は使うことができない。
それを補う、いや、超えるための夜見の、夜見だけの移動技法。
衝撃。
しかし、音が聞こえる頃にはもう夜見の姿はない。
50mはあっただろう距離を一瞬で詰める。
龍だ。
残像のように残された炎が、まるで龍のように見える。
(狙うはそこ)
たしか『極限夢想』とか言っていたか、それによって引き伸ばされた感覚。
まるで自分と流刃若火だけが別の時間を『走っている』ようだ。
赤熱した刃がムカデ型荒魂の中心を捉える。
繰り出す技は
「撫斬」
炎の龍が、空へと昇る。
その姿は、神に仇なす悪しき龍のように見えた。
誰が炎しか出せないと言った?
流刃若火は日々進化している。
同時に夜見ちゃんも常に進化し続けている(嫁として)。