ウルトラマンヴェルク   作:桂ヒナギク

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4.ヴェルクのいない日

 その朝、目を覚ます徹。

 洗面所へ行くと、奏が歯磨きをしていた。

「おはよう、潤さん」

「おはよう」

「今日休みだから、一緒にハローワーク行こう? お金稼がないと家探せないでしょ?」

「はろおわあく?」

「うん。お仕事の求人票があるところ」

「いいけど……」

「じゃあ決まりね。顔洗って支度してね」

 歯磨きを終え、リビングへと移動する奏。

 徹は顔を洗い、奏が買った歯ブラシで歯を磨き、彼女のいるリビングに移動する。

 リビングでは、奏がニュースを見ていた。

「嘘……嘘よそんなの!」

「どうしたの?」

 徹もテレビに目を向ける。

 ニュースではウルトラマンヴェルクが街を破壊する映像が流れており、自衛隊がそれに応戦している。

(バカな! やつは一体!?)

 だが、よく見ると目が吊り上っており、足の爪先が尖っている。

「潤さん、どう思う?」

「え!?」

 不意に訊かれて驚く徹。

「どう思うって何が?」

「ニュースに映ってるウルトラマンよ。私、違和感を覚えるんだけど」

「ああ、そうだね……」

 やつは偽物だ、そう言ってもよかったが、理由を訊かれると思い、答えるのをやめた徹。

 奏がテレビの電源を落とした。

「行くよ」

 徹は奏と共に近所のハローワークに向かう。

「ん?」

 奏が何かに気づく。

「どうしたの?」

「後ろを見ずに走って」

「え?」

「いいから」

 走り出す奏。

「待ってよ!」

 追いかける徹。

 すると、背後にいた偽ウルトラマンヴェルクが走り出す。

「こっち!」

 奏は路地裏に入り込んだ。

 徹も路地裏に駆け込む。

「隠れて!」

 物陰に隠れる奏と徹。

 路地裏に飛び込んでくる偽ヴェルク。

(あ! やつは……!)

「どこ行った?」

 周囲を見渡す偽ヴェルクだが、二人の姿を見つけられなかった。

「ならばこうするか」

 偽ヴェルクが巨大化して暴れはじめた。

 逃げ惑う地上の人々と次々に破壊される建物。

 そこへ自衛隊が駆けつけ、偽ヴェルクに応戦する。

 だが、自衛隊の戦闘機は呆気なく撃墜されていった。

(くそ……! 俺を(かた)って、赦せない!)

 徹は奏を見る。

(俺一人ならいいが、今は吉崎さんがいる……)

 そう、徹は変身して戦いたいが、できないのだ。

 偽ヴェルクの様子を窺っていると、向こうがこちらに気づいた。

「そんなところにいたか」

 偽ヴェルクが光球を投げ飛ばした。

(やば!)

 攻撃に巻き込まれ、吹っ飛ばされる徹と奏。

 徹は奏を空中で抱き抱え、体勢を整えて着地する。

「逃げるよ!」

 徹と奏は逃げ出す。

「待て待て待て待て!」

 偽ヴェルクが追ってくる。

「お願い! 来て、ウルトラマン!」

 叫ぶ奏。

 だが、本物のヴェルクは未だに現れない。

 そこに、偽ヴェルクの光球が飛来する。

 地面に被弾し、爆風で吹っ飛ばされる二人。

 その時、奏以外の周囲の時間が止まった。

「え?」

 奏は墜落寸前で光に包まれる。

 光の中で奏は、女性のウルトラ戦士に会う。

「あなたは?」

「私はテラン。あなた自身よ」

「私自身?」

「そう。私はあなたの中に眠る力。さあ、解き放つのよ!」

 光の中で奏とテランが重なり、巨大化すると同時に、時間が動き出した。

「うん?」

 動きを止める偽ヴェルク。

 振り返るウルトラウーマンテラン。

「うお!」

 墜落する徹。

「あれは?」

 徹はテランを見上げた。

(吉崎さんがウルトラウーマン……)

「お!」

 テランに踏み潰されそうになった徹が巨大な脚を避ける。

(ここにいるとやばいな)

 徹はその場を離れ、テランの戦いを見物する。

 テランが素早い動きで偽ヴェルクに攻撃を浴びせる。

 偽ヴェルクは攻撃をいなし反撃する。

「きゃあ!」

 バランスを崩して倒れるテラン。

 偽ヴェルクがテランにのし掛かり、顔面を殴打しようとする。

 テランは顔面への攻撃を首振りでかわす。

「はあ!」

 テランは偽ヴェルクを蹴り上げてどかすと立ち上がる。

「あなたがウルトラマンじゃないのはわかってるわ。正体を現しなさい!」

「今日のところは引き下がろう」

 偽ヴェルクは煙に包まれて消え去った。

 テランのカラータイマーが点滅をしている。

「シュワッチ」

 テランは飛び立ち、空の彼方へ消えた。

「潤さん!」

 徹を捜しにやってくる奏。

「吉崎さん!」

 徹の返答に気づいた奏が駆け寄ってくる。

「爆風で(はぐ)れたみたい」

「君が無事ならいいよ」

「なんか、とんでもないことになっちゃったね。これじゃハローワークに行っても意味ないね」

「帰る?」

「うん」

 二人は帰路に就く。

 

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