正義の敵は王道を拒む   作:那由多 ユラ

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ハナちゃんとレナちゃんが登場する別作を手掛けてまして、幾らかペースダウンすると思われます。


今回は今までと若干雰囲気が異なるかと思われますので、ぜひ批判(物事の可否に検討を加え、評価、判定すること)してくださると幸いです。


余談ですが、批判の意味をマイナスにしか捉えない人って結構いますよね。是非とも批判という言葉が使いやすい世の中になってくれることを願わんばかりです。


第十三話

000

 

 

 

小説家の行いは、神の奇跡と同じことのように、あたしは思う。

 

人を作り、世界を作り、流れを作る。

 

そこにどれだけの差があるのかといえば、次元の差があるというだけのこと。

 

 

 

 

001

 

 

ハジメやユエと別れた裂那達は、新たに紫色なる種、エーデルエリンことエリンと、黄色なる種、化け物ことクリスタベルが一行に加わえ、旅を再会する。

 

ギルドのオバチャンこと、キャサリンから貰った地図には、ウルの町に向かう道中にフゥーレンと言う町に寄り道するルートになっていた。それもそのはず。距離にして、馬車で六日はかかるのだから。

 

「まぁ、無視するんだけどな」

 

そう言って裂那は、キャサリンのルートを無視するように青子に命じた。

 

参考までに、馬車の速度は時速六キロから十二キロ程度であり、対してハジメ作の魔動四輪は日本の乗用車に引けを取らない。計算上、その程度の距離なら一日もかからずにフゥーレンに到着できるのだ。

 

助手席に大柄なクリスタベルを座らせ、後部座席に裂那、リサ、エリンを押し込んで出発した。

 

 

 

 

魔物が蔓延る荒野を、世界観に似合わない四輪車が駆け抜ける。

 

店を運営していたクリスタベルはその利便性に感嘆を隠さず、両窓側に居座るリサとエリンは外の風景を眺めるのに夢中だ。

 

 

 

ウルの街にたどり着くまでには、一日以上かかると思われる。魔物が追いつけないほどの速度で走らせている為、戦闘になることはない。

 

有り余る時間を潰す、いわば暇つぶしも兼ねて、裂那はクリスタベルとエリンに尋ねる。

 

「なぁ、お前らって戦えるのか?」

 

エリンはすれ違う魔物に夢中で、クリスタベルが答えた。

 

「少なくとも、魔人族と人間族を敵に回して死ねる自信はないわぁん♥」

 

「ほぉん? そりゃ良い。……マジならな」

 

「金色、危険信号の言葉は真実。黄色なる種は罪過の象徴にして恐怖の象徴。宇宙創世以降あらゆる危機を司る黄色なる種は、この四次元において最高火力を誇る」

 

「……流石に、神の罪を語った先代ほどではないけどねぇん♥それでも、足手まといになることはないと思うわん♥」

 

「オーケー。おおよそ把握した。存分に使い倒してやるから楽しみにしておけ」

 

「フフッ、それはとっても楽しみだわっ!」

 

「おう。で、エリン。テメェはどうなんだ?」

 

「ホェ?」

 

話を一切聞いていなかったのか、コテンと首を傾げながら振り向いた。

 

「テメェは戦えるのかって聞いたんだ」

 

「あっ、あー、……そうですね、……相手が創世神話の主神でもない限り問題ないと思いますよ? 何ができるかと聞かれたら、説明はしづらいどころの話じゃありませんが」

 

「そもそも、神秘とは隠すべきもの。語り尽くされた時点で、紫色なる種に神話的価値は無くなる。……それは、困る」

 

「青子、テメェには聞いてねぇよ。……神秘を神秘たらしめるのは解き明かさんとする者がいてこそだ。エリン、テメェは存分に神話にでも伝説にでもなれ。命令はしても指示はしないからそのつもりでいろ」

 

「はーい。というかそもそも、私を思い通りに動かせるという発想が間違いです」

 

「だろうな。遠足前日に眠れないガキは扱いやすいが、遠足前日に徹夜するバカは制御不能っつーか不毛だ」

 

「もしかしなくても裂那さん今私をバカにしましたね!?」

 

「もしかしたらバカと思われていないとでも思ったか? 安心しろ。オレは生きてる時点で全人類バカだと信じてやまないネクロフィリアだ」

 

「それはつまり死ねと!?」

 

「何言ってんだ。ただ生きてる奴より動く死体の方がよっぽど神秘的だろ?」

 

「それはもう猟奇的です! 可愛くないしカッコよくな「ママッ! ママッ! でっかい黒いのが飛んでる!」っちょっとリサちゃぁん!?」

 

 

何かを発見したのか、リサは窓を開け、上空を指差している。

 

 

全員がその方向を見ると、……。

 

「「「ドラゴン!?!?」」」

 

「どら、……何それ?」

 

それは、黒い巨大な竜であった。裂那達を狙っているのか、低空飛行で魔動四輪を追跡している。

 

「あれは、……竜人種」

 

「種族名なんてどうでも良い! クリスタベルやれるか!!」

 

「マッカセテェン!! ドアの開け方ならマスターしたわ♥」

 

そう言いながら、クリスタベルはドアを開け、着陸と同時に後方へと跳躍した。地面に衝撃が走り、小範囲ながら地震が発生。車体が一瞬跳ねた。

 

黒竜は迎え撃つかの如く顎を広げる。

 

「月までとどきやがれぇええ!! 惑星の衝撃(ジャイアントインパクト)!!!」

 

クリスタベルの拳が、竜目前で地面に突き刺さる。

 

大気がひび割れ、魔動四輪の遥か後方にクレーターが生じる。その衝撃は、竜を吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

002

 

 

 

 

クリスタベルを回収し、その場から持ちうる最高速度で移動。

 

予定よりも遥かに早く、月が輝く頃にはウルの町へと到着した。

 

あれから結局追撃はなく、被害らしいものは青子の魔力切れくらいのものだった。

 

 

 

青子は例の別時空に魔動四輪と共に引き籠ることを告げ、裂那達はクリスタベルの案内のもと宿屋へと向かった。

 

「ウルは確か、稲作が盛んな町っつったか?」

 

「ええ、そうよぉ♥前に来たことがあるけど、ニルシッシルっていうご飯がおいしかったわぁん♥」

 

「んじゃぁ、それ食えるとこに連れてけ。リサにはなるべく美味い物を食べさせてやりたい」

 

裂那からしても慣れない長距離、長時間の移動は堪えた移動にリサは疲れ果て、眠ってしまった。今は裂那が抱き抱えているが、裂那の体力も限界に近い。すぐにでも休みたいのだ。

 

「畑……ではありませんねぇ。不思議です。なぜ種が腐らないのでしょう?」

 

「いくぞエリン。今テメェに付き合ってやるほど余裕ねぇんだ」

 

「あ、はーい!」

 

田んぼを眺めていたエリンは立ち上がり、先に進んでしまっている裂那を追いかけた。

 

 

 

 

クリスタベルが案内した宿は《水妖精の宿》という高級宿であった。一階部分がレストランになっており、ウルの町の名物である米料理が数多く揃えられている。

 

カランッカランッ

 

そんな音を立てて、クリスタベルは目一杯宿の扉を開いた。

 

「いらっしゃいませ、おきゃ、……クリスタベル様!?」

 

「ハァイ♥フォスちゃん♥」

 

穏やかな雰囲気の初老の男性が、クリスタベルを見て驚愕した。

 

「まだ部屋は空いているかしらぁん? 無いなら食事だけでもさせてもらえるとありがたいのだけど♥」

 

男性はすぐに姿勢を正して答える。

 

「いっ、いえ、二人部屋を二つでよろしければ空いておりますが、……よろしいでしょうか?」

 

「助かるわぁ♥もうリサちゃんも裂那ちゃんもヘトヘトだったのよぉ♥」

 

クリスタベルが何気なくそう言った瞬間、

 

ダンッ!

 

何かを叩きつけたような音がした。

 

続いてすぐ、一人の少女がレストランから飛び出てきた。

 

「レナッ!!」

 

少女は裂那にしがみつくように抱きつき、裂那の視界が桃色に包まれた。

 

想定外の出来事に、エリンもクリスタベルもフォスも固まった。

 

「レナッ! レナッ! レナッ!」

 

裂那はバランスを崩し、リサを巻き込んで揉みくちゃになる。

 

「……あ〜、……よう、久しぶりのレナさんだぜ。とりあえず離れろハナ」

 

裂那を押し倒したのは、華々花々ことハナであった。

 

遅れてもう一人の少女が花々を呼びながらやってきた。

 

「華々さーん? 急にどうし……キャー!? クッ、クククリスタベルさん!?」

 

「あら、いつかのお嬢ちゃんじゃないのぉ♥久しぶりねぇ♥……感動の再会に免じて悲鳴は聞かなかったことにしてあげるわん♥」

 

「さ、再会、ですか?」

 

「愛ちゃん見てみて! レナだよ!」

 

花々が、地面に胡座をかき、眠そうに目を擦るリサを膝にのせた裂那に背後から抱きつきながら愛子を呼ぶ。

 

「へ? ……か、かんじゃし、さん、ですか?」

 

「おう、どっからどう見ても神刺さんだろ」

 

裂那は嫌な予感を察知し、苦笑いをしながら答えた。

 

「……っ!」

 

愛子は泣きそうになりながら裂那に向かって駆け出した。

 

「神刺さん!!」

 

「お前もか! 案の定お前もか!!」

 

せっかく花々が一度離れて起きたのに、再度愛子が押し倒すように抱きついた。

 

ギュウギュウどころか、もはやグチャグチャと言った方がいいくらいだ。

 

「人ってあんなに絡みあえるんですねっ! クリスタベルさん!」

 

「あら、野暮なことは言いっこなしよん、エリンちゃん♥おねぇさん達は先に席についていましょ♥」

 

フォスも空気を読み、裂那達を放置して二人を客席へと案内して行った。

 

 

 

 

 

003

 

 

 

流石に人の邪魔になり、裂那達はクリスタベルとは別の場所の席へと案内された。

 

「ご注文をどうぞ」

 

「ん〜、愛子、おすすめはなんだ?」

 

「……ニルシッシルです。カレーに似た料理です」

 

「なんだ、カレーなのか。じゃあそれ以外で。こっちにはなんか子供向けのを多めに頼む」

 

裂那の雑な注文を聞き入れ、店員は厨房へと向かって行った。

 

愛子は聞いたくせに無視した裂那に微妙な視線を向ける。

 

 

 

 

遅まきながら大人の威厳を見せようと背筋を正す愛子

 

「すいません、取り乱しました。えっと、そちらは……」

 

愛子と花々は裂那の膝の上で船を漕ぐリサに目を向ける。

 

「こいつはオレの娘のリサ。まだ生後二、三ヶ月くらいだ」

 

「んぅ〜、……ママ?」

 

「娘!? かっ神刺さんのですか!?」

 

「ママ!? レナがママ!? 子持ちなのはさて置いてママ!? クソババアとかじゃ無いの!? 百歩譲ってもお袋とかでしょキャラ的に!!」

 

「愛子はともかくハナ、子持ちよりもそっちなのかよ」

 

意識が覚醒してきたのか、リサが上目に裂那に尋ねる。

 

「ねぇママ、この人たち、誰?」

 

「あぁー、ピンクがハナ、ちっこいのが愛子。オレの……、……、……、お前ら、オレのなんだっけ?」

 

「なんで神刺さんが覚えてないんですか!?」

 

「リサちゃん、リサちゃん、あたしはレナのお嫁さんのハナお姉さんだよー。こっちの子はリサちゃんのお姉ちゃん」

 

「ん……、ハナお姉さんに、リサのお姉ちゃん?」

 

「なんで二人とも素直に友達とか言えないんですか!? 変な嘘までついて!」

 

「幸せな家庭を持ちたいなーって思って」

 

「家庭はどうでもいいけど、教師と生徒の関係が友達ってどうよ。実際。恋人とかならともかく」

 

「生徒と先生の恋愛なんて創作だけです! いいじゃないですか友達で!」

 

「じゃあそれでいいや。リサ、こいつらはオレの友達だ」

 

「へ〜」

 

じーっとリサは愛子と花々の顔を交互に見つめる。

 

数分そうしていると、料理が運ばれて来た。

 

「お待たせいたしました。こちら和風ハンバーグ定食、こちらはお子さまランチの大盛りにございます。ごゆっくりお楽しみくださいませ」

 

裂那には鉄板に盛り付けられた、大根おろしを乗せたハンバーグと皿に盛られたライス、味噌汁のようなものが。リサには大きなオムライスとデミグラスハンバーグ、バターで炒められたコーン。他にジュースが四人分運ばれた。

 

裂那もリサもすぐに食べ始めたため、話は一度中断することとなった。

 

 

 

 

 

デザートまでしっかり完食してから、話は再会する。離れた位置に座るクリスタベルとエリンは酒盛りしており、まだしばらく時間はありそうだ。

 

話を切り出したのは愛子。

 

「あの、南雲君は……」

 

愛子は覚悟を決めたような、緊張感のある顔つきで尋ねた。

 

「安心しろ。いろいろあって別行動中だが、ちゃんと生きてる。今はハルツィナ樹海でキチウサの軍隊作ってる」

 

「そ、そうですか……。え、きち、なんですか? それ」

 

「兎人族の軍隊……。もしかして忍者部隊でも作ってるの?」

 

「いや、もっと猟奇的で、なんかバーサーカーっぽいぞ」

 

「兎人族って、確か温厚な種族と聞いた気がしますが……」

 

「人間に極悪非道と聖人君子がいるのと同じだ。必要があればクモみたいな奴でも冷血な狂人になるし、オレみたいな奴でも子供産んだりする。……産んだのは必要とかじゃなくて偶然だけど」

 

「まさか……、リサちゃんは本当に神刺さんが産んだんですか!?」

 

「嘘!? 相手は誰!? 南雲君!? それとも、……まさか獣姦!?」

 

「そんな!! 大丈夫ですか神刺さん!! 今からでも私が!!」

 

「……いや、今更にもほどがある。そしてハナは当てるんじゃねぇ」

 

「当たってんの!?」

 

「いやおい、わかってて言ってんだろ」

 

「そりゃもちろん。私が考えるに、リサちゃんはサソリの魔物、それも多分でっかいのと、レナの、ハーフってよりハイブリッドって感じなのかな?」

 

「わー! すっごい! ハナお姉さんなんでわかるの!?」

 

話そっちのけでジュースに夢中だったリサが、目を輝かせて花々を見つめる。

 

「ハナお姉さんはなんでも知ってるんだよー。それにそれに、レナと南雲君の他にも金髪の女の子も一緒に居たんじゃないのかなー?」

 

「ユエお姉ちゃんのことだ! ママッ! ママッ! なんで!? どうして!?」

 

「あー、ハナは目が良いんだよ。オレかリサの服にでもユエの髪の毛とか付いてたんじゃね?」

 

「へー! そうなの?」

 

「秘密はバラさないからカッコイイんだよ、リサちゃん」

 

「おいハナ、リサに要らんこと教えんな」

 

「あははっ、ごめんごめん」

 

「……あの神刺さんが、ちゃんとママをしている??」

 

「おい愛子、それどういう意味だコラ」

 

「だっ、だってだってあの神刺さんがですよ!? 暴虐無人と平和主義が共存してるような神刺さんが! 子供なんて朝飯前に食べちゃいそうなあの神刺さんが!」

 

「いや、食わねぇよ。オレは少食だ」

 

「つまり少年少女だけを食べるんですね!?」

 

「そりゃテメェだろ愛子。教師なんてガキを食いもんにする職の代表例だろうが」

 

「しっ、失礼な! 私が神刺さんみたいなのを食べるとでも思ってるんですか!?」

 

「比喩って言葉を知らねぇのかテメェは! それでも教師か!」

 

「これでも教師ですよ残念でしたね!!」

 

「本当に残念だよテメェは!」

 

「ニュアー!! ニャーニャーニャー!!」

 

「猫かテメェは!猫なら猫らしく静かにしろ!」

 

「猫も鳴くし吠えるのです!!」

 

「論点そこじゃねぇよ!!」

 

 

 

 

 

 

「ねぇハナお姉さん、ママ、どうしちゃったの?」

 

「あ〜、あれはねぇ、発作、病気みたいなものかな。リサちゃんはああなっちゃダメだよー」

 

「はーい!」

 

 

 

 

004

 

 

 

 

夕食の後、夜遅いこともあり客の消えたレストランから、愛子の泊まっている部屋に場所を移し、おふざけ無しの協定を結んで語らいを再会した。

 

既に限界近かったリサは裂那の部屋に寝かせ、久方ぶりの三人での語らい。

 

エリンとクリスタベルはどこからか酒を買ってきて、部屋で飲み明かすそうだ。

 

「あぁ、そうだレナ。刹那さんと遭った?」

 

「あっ、そうです刹那さんです! 私、初めて会いました!」

 

「姉貴ぃ? え、マジか? いんの? てか遭ったの?」

 

いてもおかしく無いとは思っていたが、まさか本当にいるとは……。

 

「一ヶ月くらい前かな、ちょうどここでバイトしてたんだよ」

 

「……まぁ、メイドなわけだし十二分に働けるわな」

 

「そういえば結局、一度会っただけであれっきり姿を見ていないのですよね」

 

「帰ったんだろ。知り合いのいる空間に十二時間以上は居られないとかなんとか、よく宣ってやがったし」

 

「だろーねー」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください! 帰ったってどういうことですか!?」

 

「何って、そのままの意味だ。姉貴は神よりも神出鬼没なメイド喫茶のメイド長。有給切れたら帰るってのは唯一の約束なんだ」

 

「別に遭ったからって何か幸運があるわけでもないし、愛ちゃんは忘れちゃっていいよ」

 

「え……、いえ、わかりました。……納得だけしておきます」

 

「それでいい。愛子はそうだから付き合いやすい」

 

「……都合の良い恋人みたいな言い方は納得しかねます」

 

「はっ、諦めろ。テメェにできる恋人なんざそうでなきゃロリコンの変態だけだ」

 

「なっ、……、私だって立派なレディです! 大人なんです!」

 

「ねぇ愛ちゃん、合法ロリって言葉があってだね」

 

「やめてください! その言葉は私に効きます!」

 

「……精神だけでもと言ってやろうと思ったが、オレらとこうして話しても根本が変わらない時点で救いようは無いな」

 

「心までお子さまだと言いたいんですか!?」

 

「真に大人な奴は子供らしさを兼ね備えたハイブリットな人間だ」

 

「……、……、神刺さん達と話してると、偏差値が上がるような気分になるから複雑です」

 

「そういえば王宮での訓練の時に計画だけはあったよね。《☆軍神裂那様の偏差値アップ講座☆ 〜今日からあなたも学歴社会の肉奴隷編〜》」

 

「あー、あったあったそういえば。愛子が提案したけど一度も読まれることもなく闇に葬られた奴な」

 

「私に変な過去を押し付けないでください! それ言ったの神刺さんじゃ無いですか! メルドさんが苦笑いすらもしなかった奴!!」

 

「っかしーよな、あいつら。学生の本分は奴隷教育だぜ?」

 

「いや、だぜって……。まさか賛同が得られるとでも思ったんですか!?」

 

「アッハハ! まったくまったく、愛ちゃんだってその教育をする人間の一人なんだよ? だからこそ愛ちゃんを守るとかなんとか言って何人かついて来たわけだし」

 

「ほう? ちなみに誰よ?」

 

「レナの知らない人たち」

 

「ならいいや」

 

「ちょっと待ってください! ならいいやって!?」

 

「やー、だって、面倒だし」

 

「奈落の底に大事なもの置いてきちゃったんじゃないですか!?」

 

 

 

 

 

005

 

 

 

 

「青子以外誰にもわからん。つーか、もしかしたら青子にもどうなるのかわからんのかも知んないけど、金色なる種であるオレと、桃色なる種であるハナは創世神話の登場人物になるらしい。だからって居座る気は全くないが、それでも帰る前にひと騒乱あるかもしれん」

 

「レナを金色に認識出来てるのはあたしみたいな色の人と、そして南雲君とユエって子、だけなんだね?」

 

「あぁ。なあ、愛子から見たオレらは何色なんだ?」

 

「……何色って、普通ですよ。黒髪黒目で、服の色も普通です」

 

「ほぉん。……どういうことなんだろな?」

 

「そうだねえ、……この現象に関して科学的に説明出来ないこともないんだけど、該当する言葉が英語、日本語にないからちょっと説明が面倒だし、多分それも見当違いの理論だろうし……」

 

「その、疑っているわけではないのですが、本当なんですか? 神刺さんが金髪だったりというのは……」

 

「ま、ぶっちゃけ似合わないよね〜。レナってこけしっぽいのに金髪は、ね」

 

「こけしを意識してこの髪型なわけじゃねえよ」

 

「でも好きでしょ? 一目惚れしたとか言って部屋の一角をこけしだらけにしてたじゃん」

 

「……したけども! オレが好きなのはキミドール(オーストラリアのデザイナーによるのこけし人形。観光地の土産屋でよく見かける)であってこけしじゃねぇ!」

 

「そういえばキミドールの中には金髪のこけしもいたっけ」

 

「いや、華々さん、そこはどうでもいいんですけど」

 

「あぁ、そうだったね。ん〜、いっそ見えちゃう方が手っ取り早いよね?」

 

「……へ?」

 

 

突然花々が愛子に抱きついたかと思ったら、顔を目と鼻の距離まで近づけた。

 

 

「あ、あの、華々さん?」

 

「勘違いしないでよねっ! あたしはレナ一筋なんだから!」

 

 

そう言いながら、花々ジットリと口づけした。愛子は突然のことに目を見開き離れようとするも、花々の身体能力から逃れることは出来ず、口が封じられているせいで鼻息が荒くなる。

 

 

「んー!! んんー!?」

 

花々と裂那の立場が逆なら花々は浮気、不倫と騒ぎそうなものだが、裂那はつまらなそうな目で二人を見つめる。

 

 

 

 

そうして一分も経たぬうちに花々は愛子を開放した。

 

 

「はーっ、はーっ、……いきなりなにするんですか!!」

 

「あははっ! 愛ちゃんのファーストキスは頂いたぁ!」

 

「んーっ!!」

 

愛子は枕に顔を押し付け、足をバタバタさせて悶えている。

 

「ファーストがどうのはどうでもいいが、今のでなんか変わんのか?」

 

「んー、あたしの仮説が正しければ、ね」

 

「ほぉん。……おい、ちょっとこっち見てみろ」

 

裂那はベッドの上の愛子に馬乗りになり、体を強引に寝返す。

 

「ワオ、レナったらだいたーん」

 

「茶化すな。で、変わってんのか、どうなんだ?」

 

 

「へ、……あ、ああ、あああ!! 大変です! 神刺さんが不良になっちゃいました!!」

 

 

「案の定か! 案の定その反応か! 相変わらず意外性の欠片もねぇ!!」

 

「なんで今私怒られてるんですか!? キスされただけなのに! 普通怒るの私では!?」

 

 

 

 

006

 

 

 

花々は語る。

 

 

 

「神話や英雄譚ではキスっていうのは大事なワンシーンであることが多いんだよ。場合によってはセックスなんかよりもよっぽどね。

 

「言わば一種のイベントみたいなものかな。

 

「一切特徴のない、出番もなければ名前もないはずの少女が、神話の重要人物と少なからず関係を持ち、名前と出番が与えられた。

 

「日本神話の櫛名田比売(クシナダヒメ)みたいなものかな? あれはあれで結局出番はほとんど無かったわけだけど」

 

「櫛名田比売は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)という怪物が怪物であり、それを退治する須佐男(スサノオ)という英雄が英雄であったからこそ、

 

「英雄と関係を持ったが故に櫛名田比売というキャラクターが誕生した。

 

「ちなみにちなみに、これは余談なのだけれど、櫛名田比売は神話以降あれこれあったあと櫛になって今も現存していて、今はレナのお母さんの神社に保管されてるよ。

 

「さらに余談として、櫛名田比売は倭撫子(やまとなでしこ)の語源とされていて、おまけに容姿は童女だったらしいね。

 

「レナのお母さんが意味不明なレベルで大和撫子なのも、レナがちっちゃいのも、もしかしたらそれが関係してるかも。

 

「……そう考えてみると、なかなかどうして櫛名田比売と愛ちゃんの共通点も無視出来ないよね。

 

「ちっちゃくていい子で、そして何より転職が作農師。櫛名田比売は童女で大和撫子で稲田の女神だからね。

 

「新たな現人神となって君臨する日もそう遠くないかもしれない。

 

「それなら遅かれ早かれ、愛ちゃんは神話に名を連ねる登場人物となっていたのかもしれない。

 

「素質は十分にあると思うよ。生徒達にはすでに慕われてるわけだし、幸か不幸かここは稲作が盛んな町。

 

「信仰を集めるにはもってこいな土地だよね。

 

「神なんてなろうと思ってなるもんでもないけど、なにがあったのかレナのお母さんっていう前例があたし達の身近に存在しちゃってるからね。

 

「愛ちゃんを神に仕立て上げるくらいは容易いよ。

 

「あははっ! なんだか夢みたいな話が現実味を帯びてきちゃったね!

 

「あとは愛ちゃんの命を狙うロリコンでも現れれば完璧なんだけど、都合よくこの世界にはエヒトルジュエなんていうラスボスがいるわけだし、ご本人かその手下あたりが愛ちゃんを殺しにきちゃうかもね。

 

「さてさて、ようやっとレナの言うところの創世神話の一端が見えてきたわけだけど、しかしてどうなんだろうね?

 

「あたしみたいなメッタメタな奴が神話の重要人物の一人って、あたしとしては作者の正気を疑うね。

 

「なんせ、セルフネタバレしてるようなものだもん。

 

「安楽椅子探偵が現場に立ち会って事件を解決するようなものだよ。

 

「職場を間違えている。居場所を間違えている。ジャンルを間違えていると、本人として言わざるを得ないね。

 

「あたしみたいなやつは、超能力すらおまけの学園日常ものがお似合いだよ。

 

 

 

花々が語った。

 

 

「は、華々さんが魔人ブウみたいになってます!!」

 

「……ねぇ愛ちゃん。そういう空気読まないとこ、あたし大好きだけどさ、少しは空気読も? あとあたしそんなに真っピンク?」

 

 

 

第十三話、END.

 

 




いかがだったでしょうか、那由多ユラの御家芸、『会話九割雑談小説もどき』

好評でしたら今後もやりたいので、感想にて教えてくれると嬉しいです!


「面白い」とか「うるさい」とか「ごちそうさま」とか、なんでもいいので感想よろしくお願いします!
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