正義の敵は王道を拒む   作:那由多 ユラ

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第十四話

000

 

 

好きの反対は無関心。

 

嫌いの先も、無関心。

 

 

 

001

 

早朝。

太陽が冷えた大地を温め始め、草木が青さを競い合う頃。金色、桃色、青色が旅立ちの支度を終え、水妖精の宿のすぐ外にいた。傍らには魔動四輪が止まっている。

 

町が活発さを見せ始める中、裂那達は魔動四輪に乗り込みウルの町の北門に向かう。

 

表通りを北に進み、やがて北門が見えてきた。……と、裂那は北門のそばに集う集団を視界に収め溜息をつく。

 

「みんなおはよー」

 

窓から身を乗り出したハナが目の笑っていない笑顔で挨拶すると、一瞬気圧されるように数人びくっとしたが、裂那達に向き合った。

 

待ち受けていたのは、愛子と生徒達六人だった。

 

「……誰だ、テメェら?」

 

「レナ、クラスメートのみんなだよ。この際覚えたら?」

 

「めんでぇ」

 

「あはは、だよね」

 

苦笑いする花々を尻目に、裂那は後部座席の窓から顔を出して尋ねる。

 

「何してんだテメェら」

 

裂那はあからさまにめんどくさそうだ。

 

「もう、行っちゃうんですか?」

 

愛子が今にも泣き出しそうな顔で言った。

 

生徒達は心配そうに愛子を見守っている。

 

「私たちも行きます。危険なところに、行くんですよね?」

 

見れば、愛子達の背後には人数分の馬が用意されていた。

 

「来んな、めんどくせぇ。ただの準備だ。今日明日には戻ってくる」

 

そもそも、馬じゃ魔動四輪について来れない。別に好き好んでいるわけじゃないが、無闇に死なれてもそれはそれでしんどい。

 

「ちょっと、そんな言い方ないでしょ? 私たちをそんなよく思ってないからって、愛ちゃんにまで当たらないでよ」

 

「はっ! この程度で当たったつもりになるなら当たり屋にでもなれ。なんなら当ててやろうか?」

 

不適に笑う裂那だが、引き下がらない彼らに裂那が折れた。

 

「別によく思ってない訳でも嫌ってる訳でもねぇ。ただこいつが四人乗りってだけだ。……愛子、来るならテメェが来い」

 

「っはい!」

 

裂那が後部座席のドアを開くと、愛子がそそくさと乗り込む。

 

愛子がシートベルトを締めたのを確認すると、安堵している生徒達に裂那は言う。

 

「なんかあったらクリスタベルかエリンを頼れ。どっかの勇者よりは役に立つ。……あと、暇だったらリサの遊び相手を頼む」

 

そう言い残し、魔動四輪は砂煙のなかに消えていった。

 

 

 

 

002

 

 

 

「神刺さん達は、今どこに向かっているんですか?」

 

愛子は窓を流れる風景を眺めながら尋ねた。

 

それには隣に座っている裂那ではなく、今日の予定を立てた花々が答えた。

 

「今向かってるのは宿場町ホルアドだよ」

 

ハナは助手席の上に立ち、背もたれから顔を出している。

 

「ホルアド、って、あのホルアドですか?

 

そこは言うまでもなく、始まりの地と言って差し支えないあの土地だ。

 

「今は少しでもまともな戦力が欲しい。予定よりちと早いが、シロを迎えに行く」

 

「シロ……って、白崎さんですか?」

 

愛子の記憶では、彼女は決して戦場に立てる人間ではなかったはずだ。

 

「布石は打っといた。問題はないはずなんだ」

 

レナの表情に、不安の色は一切ない。

 

「んなことより愛子、いいかげん苗字呼びやめろ鬱陶しい」

 

「それを今言うんですか!?」

 

「や、さっき呼ばれて思った。オレらが名前で呼んでんだから、テメェも名前で呼びやがれ」

 

「し、しかし、私は先生ですし……」

 

「今更にもほどがあるだろ。オレがテメェを一度でも畑山先生と呼んだことがあるか?」

 

「うぅ……。れ、裂那、さん」

 

「さんもいらねぇが、まぁいい」

 

「……花々さん」

 

「あ。あたしもなの? いいけど。なんか距離が縮まった気がするね!」

 

 

 

 

 

 

003

 

 

 

青子の時間操作能力をフル活用し、一時間とかからずに懐かしの地へと到着した。

 

途中で魔動四輪をしまったとはいえ、美少女達が四人集まっているというだけで注目を集めた。

 

遠くでなんの騒ぎだ! と警備兵まで出張ってきたので、花々先導の元その場を離れた。

 

 

 

たどり着いた先は、オルクス第迷宮入口の広場。裂那達は迷宮に潜るでもなく、そこで待つ。

 

ちらほらと視線が向くが、そもそも騒々しい場所だ。大して影響はない。

 

「ここは変わらないな」

 

「そう、ですね」

 

裂那の言葉に、愛子は憂いの滲んだ表情で同意する。

 

「レナ、多分だけど前来たときのことなんて覚えてないでしょ」

 

「バッカハナ。んなわけあるか。覚えてるに決まってんだろ。あれだろ? クモが冒険者脅迫して愛子が泣きそうになった」

 

「裂那さんは何を見てきたんですか!?」

 

「レナ、全く違うよ」

 

裂那達が雑談に花を咲かせること約一刻。

決して静かではない場所だったが、一段と騒がしくなった。まるで、都会に芸能人やアイドルが現れたかのような、耳に悪い騒音。

 

言うまでもなく、原因は勇者達だった。

 

煌びやかな勇者が先頭を歩き、続いて華やかな女治癒師と女剣士、その他並以上の実力者たちが集う集団にキャーキャーと騒ぎが起こる。

 

「んじゃ、いくぞ愛子。ひと修羅場あるかもだが、まぁ気にすんな。青春ってことで飲み込め」

 

「無茶言わないでください!?」

 

勇者達に近寄る裂那に愛子が引っ付き、その後を花々と青子が追う。

 

 

 

 

勇者達は全員の無事の確認のための点呼を取っており、それさえ終われば解散だ。元々運動が得意でなかったものは地面に腰を落としている。

 

全員無事だったからか満足げな顔をする勇者。

 

「よぉ、テメェら。無事なようで何よりだ」

 

誰も彼も近寄るに寄れない状況に、裂那は躊躇うことなく接近した。

 

「チャオッ! 香織ちゃん、げんきー?」

 

「っ!! 花々ちゃん! それに、裂那ちゃん!?」

 

旧知の仲のごとく声を掛けた花々と裂那にいち早く気が付いたのは、香織だった。つづいて、周囲の同郷者達もいるはずのない人間に驚愕する。

 

どういうわけか体力が有り余っているらしい香織は裂那達に駆け寄り、互いに無事を確認する。

 

「うし、問題ねぇな? じゃあ行くぞ」

 

「うん! またね雫ちゃん!」

 

「え、……えぇ??」

 

その場を去ろうとする裂那達について行こうとする香織。それらしいやりとりの一つもなく、かつてより約束していたのかと思うほどに隙がなく雫は困惑を露わにする。

 

「ま、まってくれ香織! どうしたんだいきなり? それに彼女は一体……」

 

振っていた腕を下ろし、完全に背を向けようとした香織の肩を勇者が掴み止めた。

 

「一体どうしたというんだ。それに、彼女達は一体何者なんだ!?」

 

勇者の表情は、困惑と焦り。

 

 

 

 

 

しかし、香織が勇者に向ける目はかつてないほどに、冷たかった。

 

 

 

 

「もう、ほっといてくれないかな。天之川君」

 

 

 

 

パシリと優しい手つきで払い落とされた手。

 

 

 

 

「…………は?」

 

 

 

 

さっきまでの騒々しさが嘘のように、あたりが静まりかえった。

 

静寂を気にすることなく、勇者は声を荒げる。

 

「待つんだ! 君は、君たちは一体何者なんだ!?」

 

静かな空間に、勇者の声は隅々まで届いた。

 

「相変わらずかよ、その都合のいいことしか聞こえない不良品の耳は」

 

裂那達は振り返る。状況を理解できていない愛子だけがオロオロと狼狽ている。

 

「一体誰なんだ? なぜ畑山先生を連れていて、そして香織をどこに連れて行こうというんだ」

 

「ちょっと光輝、落ち着きなさいよ」

 

「だが雫! 得体の知れない人物に、香織を近寄らせるわけにはいかない!」

 

「だから落ち着きなさいってば! 見てわからないの? どっからどう見ても裂那さん、神刺裂那さんじゃないの」

 

「神刺って、え? 神刺さんが生きていたのか!? ……いや、だが……」

 

勇者、天之川が驚愕の声を漏らす。

しかし他の者に天之川ほどの驚きは見て取れない。

 

「……だが、だとしてもだ。香織を何処に連れて行く気なんだ! 今まで姿を眩ませていた君を、信用するわけにはいかない!」

 

「信用も信頼もいらねぇよ。そしてシロもオレを信用なんざしてねぇ」

 

「え? そんなこと……」

 

「れ、裂那さん? 天之川君?」

 

愛子の心配を他所に、天之川は剣を抜いた。

 

「神刺裂那!! 俺と決闘しろ! 武器を捨てて、一対一での勝負だ! 俺が勝ったら、二度と香織には近寄らないでもらう! そして、華々さんも畑山さんも、全員解放してもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいハチ、テメェの仕事だろ?」

 

「ごめん無理!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天之川は、もう止まらないと言わんばかりに聖剣を地面に突き立てると、裂那に指差した。

 

裂那は冗談めかし、シニカルに笑った。

 

「乙女のか弱さを武器に戦ってやろうじゃねえか。きゃーあまのがわくんさいてー」

 

 

 

004

 

 

 

 

 

「何をヘラヘラと笑っている! 怖気付いたか!」

 

天之川は完全に自分の正義を信じ込んでおり、裂那に不幸にされると確信している女の子達や幼馴染を救ってみせると息巻き、周囲の空気に気がついていない。元々の思い込みの強さと猪突猛進さ、加えて気がつかないふりをしていた嫉妬が合わさり、完全に暴走しているようだ。

 

裂那の返事も聞かず、猛然と駆け出す天之川。裂那は、溜息を吐きながら二歩、三歩と後退りした。それを見て、味方のいない(と、天之川は思い込んでいる)戦いに怖気づいたと考えた天之川は、より一層、力強く踏み込んだ。

 

パァン!!

 

振るわれた天之川の拳は、裂那の掌に収まった。

 

圧倒的強者であるはずの勇者の拳に、裂那は一切動じず尚笑う。

 

 

「おい青子、金色なる種の後にゃぁこう綴れ」

 

「??」

 

青子はこてんと首を傾げた。

 

黄金の国(ハートフルピースフル)、神刺裂那。正義の敵、だ!!」

 

ゴッチン!

 

「ゴアッ!?」

 

人知を凌駕するほどに硬く堅く固い裂那の頭突きが、勇者の美顔を砕く。

 

音ほどに、否、音ゆえに天之川に対したダメージはないが、より怒りを強めた。

 

「何をするんだ!!」

 

「あぁ? 決闘っつったのはテメェだろうが。テメェが殴られるのは想定外ではあるまいなぁ?」

 

「うるさい!!」

 

王宮仕立ての勇者の拳。鍛え上げられた勇者のステータスに対応できるはずもなく、突き刺さった。

煌びやかな籠手が骨を砕き、背を破った。

 

「ウッグッ、ガアァァアア!!」

 

裂那の口、鼻から金が溢れる。

 

 

 

 

口元を金色の血で汚しながら、裂那は笑う。

 

「な、なんで……」

 

「知ってるか天之川ぁ。殺人未遂は、罪なんだぜ?」

 

 

裂那はあたり一面を金色の海に染め上げながら尚、言葉を発する。

 

 

「この状況を見て、テメェを殺人犯だと思わねぇ奴がどれだけ居るんだろうなぁ?

 

「テメェの正義はここで歪む。

 

「殺しを悪とするテメェの正義はここで歪む。

 

「人間を善とし殺しを悪とし、悪を人でなしとするテメェの正義はここで歪む。

 

「歪んだテメェの正義は平和な世界にゃただの邪魔だ。

 

「死ねたぁ言わねぇが、死なせたくねぇならせめて、…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「黙ってろ。テメェの言葉は殺人鬼よりも人を殺す」

 

 

 

 

 

005

 

 

 

 

 

心が折れ歪んだ天之川は、金色の血に染まった腕を引き抜く。

 

背に腹も穴を開けた裂那は尚もシニカルに笑いながら、立ち続ける。

 

「……………………なん、で……」

 

「はっ! ははっ! 生憎と、オレはこの程度で負けてやるほど弱くはねぇ。第二ラウンドと行こうじゃねぇか。まだまだ言いたいことが腐る程あるんだ」

 

「い、やだ……。俺は、もう……」

 

「『オレはもう戦いたくない』ってかぁ? ……俺らを戦争に導いたのはテメェだろうが!」

 

「いやだ……いやだ……いやだ……」

 

天之川は焦点の合わない目で金色に濡れた両手を見ながら狼狽ている。

 

「平和と正義は相入れねぇ。テメェが選ぶのは平穏か? それとも戦乱か?」

 

「……戦争なんて、……ダメだ。……そんなこと、……。」

 

天之川は完全に戦意を喪失していて、腰を地面に降ろしてしまっている。

 

「立てよ勇者! 名乗りをあげろ! 過去の己を捨てるな! 人類救うってなぁ嘘か! テメェそれでもオレの敵か!!」

 

「……うるさい!!」

 

天之川は怒鳴りながら立ち上がり、詰め寄る裂那を突き飛ばした。

 

「……俺は神の使徒、勇者天之川光輝だ!」

 

地面に突き刺した剣を引き抜き、剣先を裂那に向けて名乗りをあげる。

 

櫛名田比売(クシナダヒメ)の写し鏡にして合わせ鏡、神刺裂那」

 

裂那は目の色変えて名乗る。天之川の手を濡らしていた金色は、真っ赤に戻る。傷口も輝きが失せ、赤黒い。血に濡れ死にかけ、その有り様は動く死体。

 

「俺は間違えてなんかいない! 間違えたことなんてない! 正義は決して、間違えない!」

 

輝かしい顔を取り戻した光輝に、裂那は冷めた表情だ。

 

「……なんとまぁ、当然のことをさも英雄のように言えるものよな。……おい花々よ、いつから、日の本の民はここまで堕ちた」

 

裂那の様子が、誰の目にもおかしく映る。

 

「そりゃまぁ、平和ボケ、つまりはボケボケの愚かな世界こそレナが望む平和な世界だからね」

 

「クックック。そうか、そうか。なら、仕方がないか」

 

くつくつと笑う裂那は取り出していた櫛を袖の内にしまうと、愛子に微笑みかけた。

 

「……なるほどの。なかなか悪くない。良い世の中になったと言うべきか、寂しくなったと言うべきか」

 

「えっ、へ?」

 

自身とさほど背丈の愛子を、まるで祖母のように優しく撫でた。

 

「さて、決闘、つまりは果し合いだったか。妾は別に、戦や武に関する神ではないのだが、さてどうしたものか」

 

顔についた血を拭いながら裂那は空に目を向けながらぼやく。

 

「何をふざけている!」

 

「んんん? 否。妾に戦の心得なんて欠片もない。うぬとて知っておろう? 妾は単なる片田舎のしがない巫女でしかないのだ」

 

「……何を、言っているんだ?」

 

「何、何、何。そう何度も尋ねてくれるな。妾はあまり知らぬのだ。せめて、裂那の記憶が十全に継がれれば幾らかマシなのだが、……否。妾とて裂那に変わりはないか。せいぜい代わりが良いところ。なら、妾であっても障りはないか。……花々、よいな?」

 

「さーね。レナがしたいようにしたらいいよ。あたしがいくらでも助けてあげるからさ。だから、クシナダちゃんも協力してよね」

 

「そのような可愛らしい呼び名が似合うほど、妾は綺麗な存在ではないのだが……。まぁ良かろう」

 

裂那は天之川のほうへ向き、どこかゆるんだ空気を締め直した。

 

「改めて、神刺裂那の写し鏡にして合わせ鏡。櫛名田比売(クシナダヒメ)。戦うしかないと言うのなら、仕方あるまい。仕方ないから相手をしてやろう」

 

「あまり言いたくはないが、俺はずっと君のことが嫌いだった。俺は絶対に、君を認めない!!」

 

構えるでもなく、逃げるでもなく、ただ立っている裂那に天之川は斬りかかる。

 

「愚かな日の本の民よ。今一度、己の先を考えるとよい。邪であり魔である妾だが、意味もなく邪魔をするつもりは決してないのだ」

 

キンッ

 

硬い金属同士がぶつかるような軽い音が鳴り響き、天之川の動きが静止した。

 

「裂那の思いを呪いとして植え付けた。どうせ二、三日で枯れるから安心しろ」

 

そう言い残し、裂那は血や目の色を金色に染め直した。

 

 

 

 

 

 

「あれは、金色ではない。別種の神? それとも……」

 

青子の言葉を聞いていたものは、その場にはいなかった。

 

 

 

 

 

006

 

 

 

「イッテテテ……」

 

「もう、どうしてこんな無茶をしたんですか?」

 

腹から背にかけて穴が開いた裂那は、宿屋で香織の治療を受けていた。そばには愛子もいて、花々と青子は食糧の調達に出ている。

 

「あいつ出すにゃ、それなりに代償がいんだよ。それに無茶じゃねぇ。リサ産んだ時よかましだ」

 

「クシナダヒメさんって、確か昨日の話に出た方ですよね? 日本の神様の……」

 

愛子が首を傾げながら言うと、裂那は答える。

 

「正確にはそのパチモンだ。合わせ鏡っつったろ? 写って移って映った虚像。最果ての暗黒。神殺しの呪い。それがあいつだ」

 

怪我がおおよそ治ったのか上半身を起こし、止血のために巻かれた包帯を解きながら裂那は言う。

 

「俺は櫛名田比売の写し鏡。つっても外見だけで、なんも関わりなんてないはずだったんだが、偶然が重なって、呪いの女神の一面がオレと一体化した。いや、偶然があってこそ、外見がよったとも言えないでもないんだが……」

 

「えっと、よくわかんないんだけど……」

 

日本神話に明るくないのか香織が困惑する。

 

「あー、じゃあ、fateのオルタみてぇなもんだ。クシナダヒメ・オルタ。もしくは神刺裂那・オルタ」

 

「すっごいよくわかった!」

 

「わかりやすいですけど、裂那さんそれでいいんですか!?」

 

「神なんてテキトーな奴らなんだ。例えもテキトーくらいが適当だろ。……ッダー! 、ったく、あんのバカのせいで余計な時間くった。昼までにはウルに戻るつもりだったってのに。やっぱあいつ殺すべきだったか?」

 

「どうどう、裂那ちゃん。傷が開くよ」

 

「んなこと言ってる場合でもねぇんだ。時間は無限だが期限は間近。神話が始まっちまう」

 

「死んじゃったら元も子もないよ」

 

「死なねぇっつの。……シロ、ハナが帰ってくるまでに完全に治せ。愛子は覚悟を決めろ」

 

「っはい!」

 

「わかりました。ってなんのですか!?」

 

「生徒を叱る覚悟だ。テメェだけはぜってぇテメェを疑っちゃいけねぇんだ」

 

「叱る……ですか?」

 

「ハナの判断だ。絶対に避けられないと思え」

 

「…………はい」

 

 

 

 

007

 

 

 

 

裂那達は宿で食事を済ませ、昼過ぎ頃にウルに到着した。

 

「ママー! ゆーかおねーちゃんがね、すごいの! ナイフをね、ポーン、グルグルーって!」

 

リサと生徒達六名が門で出迎えた。魔動四輪を降りた裂那にリサが飛びつく。

 

「おー、そうか。楽しかったか?」

 

「うん! ……でもママがいなくて、リサ寂しかった」

 

「はっ、そりゃ悪かったな」

 

裂那がリサを抱き抱えると、生徒達六人に視線を向けた。

 

「……で、なんかあったんだろ? 誰が消えた」

 

暗に行方不明車が出たと断言した裂那に六人が目を見開くも、リサが一番懐いた園部優花がすぐに表情を戻し答えた。

 

「清水が、居なくなった。……何日か前からこの町にも居ないみたい」

 

「そうか。……愛子、清水って誰だ」

 

「え? えっと、大人しい子です。そんな問題を起こすような……」

 

「んなこたぁ聞いてねぇよバカ」

 

「ええ!?」

 

「ハナ、清水ってのは何ができる」

 

「闇属性の魔法が得意。魔物の洗脳ができる。規模は五万から十万程度。消えた要因としては、魔人族に唆されたってのが一番可能性が高いね。愛ちゃんの言った通り自発的に行動を起こせる人間じゃない。イジめられるのが怖くてオタクなのを隠すタイプだね」

 

花々の最後の一言に、全員が黙ってしまった。

 

「魔物の群、というか軍を用意できるまでの期間は、魔人族の協力もあると想定して大体二週間」

 

花々が唇に手を当てて考えだすと、香織が挙手して尋ねる。

 

「あの、南雲君は?」

 

しかし花々に疑問は届かない。香織の疑問には裂那が答えた。

 

「クモは今樹海で兎人族と一緒のはずだ。そのうちここに来る」

 

「間に、あうの……?」

 

園部優花が不安を口にするが、裂那は笑って返す。

 

「問題ねぇ。戦力だけならクリスタベルかエリンが片方でもいれば十分なんだ。万が一にも万が一はねぇが、あいつら通常攻撃が範囲攻撃か全体攻撃なんだ。清水ってのを生け捕りにすんならクモが必要ってわけだ」

 

「いったい、いつからそこまで……」

 

誰かが、そう言った。

 

「オレは選択肢を選ぶ。ハナは選択肢を作る。オレらがやってることなんざ、そんだけだ」

 

 

 

 

第十四話、END.

 

 

 

 

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