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4/23 演習2日目
演習最終日だというのに生徒たちの士気は落ち切っていた。
原因は昨晩の襲撃によって損傷した物品だ、昨日必死こいて設置したものが一晩でめちゃくちゃにされたのだ無理もない。
しかしながら、何時までも落ち込んでいるわけにもいかず、生徒たちは教官の指示のもとそれらの修復を行っていた。
「ごめんねエルド君、手伝ってもらっちゃって。」
そうエルドに謝りながらテキパキと機甲兵の整備を行うのは《Ⅸ組・主計科》のティータ・ラッセルだ。
彼女は機甲兵に大きな損傷がないことを確認すると安心したようにコックピットから降りてくる。
「構いませんよ。怪我も派手に動かなければ問題ないって教官のお墨付きが出ましたし。」
「あはは…。」
ティータはエルドのその言葉を聞いて今朝の事を思い出す。
彼の担任教官リィン・シュバルツァーはエルドの状態から、今日の活動は禁止と言っていたのに対し、エルドは反抗した。
その言い争いはほか生徒の目覚ましになるほど激しく、結局リィンが折れて、過度に動かなければという条件付きで許可したのである。
「それにしても教官達遅いですね。ティータは何話しているか聞きました?」
「ううん、聞いてないよ。あっちょうどお話が終わったみたい。」
見るとデアフリンガーのドアが開かれ、ティータの担任であるトワ・ハーシェルが下りてきた。
どうやら誰かを捜しているようで、あたりをきょろきょろしている。
そしてしばらくして、探し人は見つかったのか此方に向かってくる。
「エルド君。話があるからちょっと来てくれるかな?」
「俺にですか?」
エルドはティータに目配せし、心の中で謝ると向こうも大丈夫という様に笑みを返してきた。
しかし、呼び出される理由がエルドには分からなかった、朝リィンと口論はしたもののそれ以外は特に怒られるようなこともしてないしトワに呼び出されるようなこともしてない。
そう不思議に思いつつ、トワについていき、デアフリンガーのドアを開くとそこにはいつもの教官達に加え、先日あった旧Ⅶ組の三人、それと情報局のレクター・アランドール少佐がいた。
「えっと、これは…。」
「おっようやく来たな?」
困惑しながら中に入るとレクタ―はへらへらと笑いながら応える。
しかし他の面々は真剣な表情だったのでそれがさらにエルドを困惑させた。
「……っ。」
「リィン教官?」
リィンが拳を強く握りしめるのが見えた、しかしなぜそのような顔をするのかは分からないが、これから説明されるだろうと待っているとレクタ―が懐からとある用紙を取り出しリィン、エルドに突き出すようにそこに書かれていることを読み上げる。
「≪灰色の騎士≫リィン・シュバルツァー殿、並びにトールズ士官学校第二分校≪Ⅶ組・特務課≫エルド・アイゼンターク殿。帝国政府の
そうレクタ―が仰々しく言うとリィンは突き出された用紙を手に取り、恭しく答える。
「その
そんな状況の中、エルドは状況が理解できずに手を上げる。
「あの、要請自体の意味は何となく分かるんですがどうして俺もなんでしょうか?」
「ああ、お前に関しては監視の意味合いが強い。」
「監視…ですか?」
「つまり、俺たちはお前が≪結社≫と何らかの関りがあるんじゃないかと睨んでるんだよ。」
そう言うレクタ―だがエルドにとっては身に覚えのない話である。
確かに≪結社≫は此方の事を知っているようだったが自分は知らない。そう答えると
「アンリ・アイゼンタークだったか?」
「っ!」
昨晩の事を思い出し、思わず顔が強張る。
それと同時に情報局の目的が何となくわかった。
「あぁ…つまり俺を餌として使いたい。そう言う事ですね?」
「まぁ、そういう事だな。」
「いいですよ。」
「エルド!」
「大丈夫です、リィン教官。自分もあいつ…いや、アンリから聞きたいことがありますし。」
そうしてエルドは手を自身の心臓に充てるように構え恭しく礼を行う。
「エルド・アイゼンターク、その
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リィンはつくづく自分の不甲斐なさを噛み締めていた。
「くそっ!」
ガンッ!!と自室の壁を思い切り殴りつける。
リィンが抱いている物は情報局に対してでもエルド自身に対してでもない自分自身だ。
先程の
その表情は何処か諦めているかのようなもので、生徒にそんな表情をさせてしまっている自分が情けなかったのだ。
「リィン、大丈夫?」
外から此方を心配する旧Ⅶ組の声がする。
その声でリィンは取り敢えずは目の前の事に集中しなければ、と意識を切り替え返事を返す。
「あ、あぁ、大丈夫だ。今行くよ。」
扉を開けるとそこには予想した通り旧Ⅶ組の面々がいて、その後ろにエルドが立っていた。
「エルド、準備はもういいのか?」
「はい。といっても俺は色々必要なわけではないので取り敢えずこれとこれを持ってきました。」
そう言うとエルドはポケットから、二つの≪ARCUSⅡ≫を散りだす。
片方はシュミット博士から
もう一つは一番最初に学院が用意した≪ARCUSⅡ≫。
「そっちも持っていくのか?動かないんだろう?」
「まぁ、一応ですね。」
リィンは皆を見て大体の準備が出来ていることを確認し外に出ると、ユウナたちが駆け寄ってくる。
「い、いまトワ教官から聞いたんですけど本当ですか!?帝国政府からの要請で教官とエルド君は別行動になるって!」
「本当だ、特務活動は昨日で終了とする。本日はⅧ組・Ⅸ組と合同でカリキュラムにあたってくれ。」
問いかけるユウナにリィンは突き放すかのように答える、三人ともその言葉に反応するが、動揺したのはユウナ、クルトだけでアルティナはすぐに自身も同行する旨を伝えたがリィンは彼女の言葉をすぐに否定した。
「…経緯はどうあれ、今の君は第Ⅱに所属する生徒だ。一生徒を、
そう言って教え子をその場に残したまま後を去ろうとするとクルトが呼び止める。
「…一つだけ、聞かせてください。」
「…なんだ?」
「ヴァンダール流は――僕の剣は不足ですか?」
それは無意識に口から出た言葉だろう。
本人にも自覚はないし、Ⅶ組の生徒はそれが彼の未熟さから来る言葉だとは思っていないだろう。
しかし、リィン含む旧Ⅶ組の面々はそれに気づいていた。
「ああ――不足だな。」
故にこその拒絶の言葉。
クルトが付いてくると彼はまざまざとエルドとの違いを思い知らされ、根付いてしまったその種の成長を助長してしまうだろう。
だからこそ、彼を残していく事で少しでも遅らせようとした。
尤もらしい理由を付けて。
「いくら才に恵まれていようが、その歳で中伝に至っていようが…半端な人間を“死地”に連れていくわけにはいかない。」
「なにが、っ!――失礼します!」
そうして走り去っていくクルト。
恐らく自身が抱えていたものを理解したのだろう、しかしその感情を無視することもできなかったのだろう。
その顔には逃げ場のない感情がありありと現れていた。
「教官、聞きたいことがあります。」
「ああ。」
ユウナが口を開き、リィンは次にくる言葉を理解していた。
「さっき教官は一生徒に
「っ……。」
「生徒を“死地”に連れていく事が教官の用事なんですか!?只でさえエルド君は昨日大怪我をしたばかりなんです!、それが本当に―「ユウナ。」
リィンを責め立てるユウナに待ったの声が入る。
それはこのやり取りの中口を開かなかったエルドによるものだった。
「ユウナ、俺の事を心配してくれるのはうれしいです。でも大丈夫ですから。」
「でも!」
「教官や皆がいますきっと大丈夫ですよ。」
「エルド君は…エルド君は本当にそれでいいの!?」
「
「っ!…もういい!!」
そう言ってアルティナを引き連れながら走り去っていくユウナの目には悲しみが浮かんでいた。
それは確実にエルドにも読み取ることができただろう。
「ごめん…。」
エルドは微笑みを湛えながら、その背中を見送った。
クルト君はこの時点で少し嫉妬心を持っている設定