「立て、エルド・アイゼンターク。この程度では話にならんぞ。」
目の前の銀髪の女性は此方に訓練用の剣を向けそう言い放つ。対して俺は地面に膝をつき、ただ、剣を向ける相手を睨みつけることしかできない。
「くそっ…」
悪態を吐きながら、半ばから折れた剣を持ち立ち上がる。相手をしっかりと見据えながら、剣を構え深呼吸をする。最初の目的など、最早どうでもいい、今は只、目の前の格上の剣士に一矢報いたいという気持ちしかない。
その思いとともに、俺はまた吹き飛ばされた。
あの後、今日は自由行動日だから好きにしていいよと教官から言われ、折角だからとⅦ組で街を散策することにした。
校舎を一通り回ったり、近くの喫茶店でパンケーキを食べたりして時間を過ごした後、休んでいると、あの日の話、ひいては俺自身の話になった。
「そういえばあれって何だったんだろう?」
そう言いだしたのはユウナだった。
彼女の言葉にそれぞれがうなずく。
「まぁ…調べていくしかありませんよね。」
そう言いながら立ち上がり伸びをする。
皆の視線が此方に向く。
「寮の方に訓練室があるって話でしたよね。今からそこで色々確かめてみようかと思います。話を聞く限り、俺に何かしかの異能があるのは間違いなさそうですし。」
「あっ、じゃあ私も手伝うよ、人手が多い方がいいと思うし。」
「それなら僕も行こう。それにエルドの実力も見てみたいしね。」
「私も参加させていただきます。情報局の人間として知っておかなければなりませんし。」
そういう三人に軽く礼を言うとクルトがこれだけの人数なら校舎の方の訓練室の方が広くて、設備が充実しているのでそちらの方がいいというのでそちらに向かうことに。
訓練室で準備体操をした後、まずなぜ発動したのかを考えることに。
少しの間考えたが、誰も思いつかなかったので、取り敢えず憶えてる所までの状況を再現をしてみることに。
「気を失う前は何を思っていましたか?」
アルティナが俺に尋ねる。俺はあの日の事を思い出しながら答える。
「そういえばあの時は剣が欲しいと思ったような気がします。」
「剣…ですか。」
「ほら、あの時って真面な武器を持っていませんでしたから。」
そういうとそのまま「フム…。」と顎に手を当て考え始めた。
少しして何か思いついたように顔をあげる。
「もしかしたら、ですけど、エルドさんが剣が欲しいと望んだからではないかと。」
「というと?」
「つまり、異能の発動の条件はエルドさんが望んだものを作り出す。ということになるのではないかと。」
「なるほど……。……剣よ……。」
アルティナの推理に納得し、あの日のように右手を前にかざし、小さく呟く、が、そこには何も変わらない訓練室があるだけ。
「なにも……起きませんね。」
「うーん。何が原因なんだろ。アルティナの推理もいい線言ってると思うのよねぇ~。」
俺がそう呟くとユウナは頭を抱え悩み始めた。
「もしかしたら、明確な“敵”が必要なんじゃないか?」
そういうクルトの一言にそれぞれが確かに…。と思っているとクルトが壁にかかっている剣を取り出し此方に構える。
「ということで、僕が敵役をやろう。」
そういって微笑むクルト。イケメンだから様になってるけど、それ自分が戦いたいだけでは……?
そう思っていると、訓練室の入り口が開き誰かが入ってくる。
「いや、その必要はない。その役目は私が引き受けよう。」
「「分校長!!」」
ユウナとクルトの声が重なる。アルティナも僅かではあるが驚いているようだ。
呆けていると分校長が此方を見て言葉を続ける。
「いやなに、一汗かこうと訓練室まで来たら面白い話が聞こえたのでな。それでかまわないな?アイゼンターク。」
「も、問題ないですけど……。」
呆気にとられながらそう答えた。
その時のクルトの表情は目に入っていなかった。
「ほう、まだ立てるか。出血をしていないとはいえ、大した根性だ。」
「まだ、成果を……得られて…ませんの…で。」
分校長の言葉に息も絶え絶えに答える。
少なくとも、この折れた剣では一矢を報いることなんて不可能だろう。
少なくとも、異能が使えれば……。
考えろ……どうすれば……。
「ほう。考え事か?関心せんな。」
「…っ!…。」
思考していて反応が遅れる。
気づいた時には相手の剣が目の前まで迫っており、慌てて剣を合わせるが踏ん張ることができず吹き飛ばされる。
痛みに耐えながら再び思考を始める。今度は相手から目をそらさない。
思い出せ……。発動の条件はあの日あの場所では全て揃っていたはずだ。
今回と前回で違うところは……、そうか……。
「また考え事か?余程斬られたいみたいだな!」
分校長が踏み込み剣を上段から振り下ろす。
これは賭けだ、もし違ったら自分は大けがを負うだろう。でもこれは自分を知るための大事な一歩だから諦めたくない。
「剣よ!!!」
そう叫び右腕を力任せに横に振る。
「得られたか……。」
分校長の手には根元から折られた剣、俺の手には赤黒い剣が握られていた。
俺に足りなかったもの、それは――
もっとかっこよくかきたかった。