次の日も安全な道を通って進んでいく。
追手らしい気配も減ってきたのもあって、危険が訪れる心配もなさそうだ。
歩いていって、しばらくすると、人の気配を感じ取った。
武装した人間ではない。村人のような気配だ。
比較的安全そうな地域に到達した。
「村のようなものがあるそうです」
案内をしようとツリーズに聞いてみる。
「行ってみようか」
食料などの確保が大切と、ツリーズは言葉を繋ぎ指針が決まった。
警戒を怠らないように油断せず、村へと進んでいった。
村に入る前に、身元が探られないように服装に若干の細工を行う。
いくつかの装飾は植物でごまかすことができるので、問題はなかった。
村に進んでみると、なにさら笹に札を付けている家がいくつか見つかった。
「……そっか、今日は七夕の日だったんだ」
ツリーズはそう納得していた。
行事を気にする余裕がなかったのもあって、私はその文化に慣れ親しむ時間はなかった。日常生活として、行事を楽しんでいる様子を見るのは初めてだ。
「これは……」
小さな子の字だろうか。札の中には『せかいがへいわになりますように』と書かれているものがあった。家内安全などを願う札もある。
「願い事を込める日なんですか?」
「そうだね。短冊に綴った願いが叶うかもしれないっていうおまじない」
「……叶うのでしょうか」
「わからない。けど、こういう願いって、願ったほうが幸せになれそうじゃない?」
「そういうものなのでしょうか……」
意味がどれほどあるかわからないものに、祈りを込めてもどうなるかなんてわからない。
正直なところ、文化としてまだよくわかっていない。
騒ぎを起こさないように、村の中を歩いていく。
すると、村の中心付近で悩んでいる老人の姿が目に入った。
「困ったの……」
「どうしたんですか?」
「旅のお方か。聞いてほしいことがあってな……」
ツリーズが老人の言葉をひとつひとつメモをしながら聞いていく。あの老人はどうやら村長らしい。
行事用の竹が育っておらず、目立つ場所の飾り付けが未完のままらしい。魔術によって、成長をさせようとしてもなかなか成功できず、このままでは夜を迎えてしまうそうだ。
「飾り付けなら手伝えますが、残念ながら魔術の方は自信がないですね……」
「そうなると、やはりもう諦めるしかかもしれぬな……」
竹の方を見つめながら、村長がそう口にする。
竹そのものは言葉を発することはない。
それは当たり前だ。植物が語りかけてくることなんてない。
けれども、目立つ場所にあって、必要以上のやることを求められているということに、どこか共感を覚えた。
無理に努力を求められている。
「……少し、調べてみてもいいでしょうか」
せめて少しの助けにならたらと思い、提案する。
「あぁ、構わないよ」
許諾を得たので、近づいて竹を確認する。
「……なにかできそう?」
ツリーズが小さな声で問いかけてくる。
直接竹を触れることによって状態を丁寧に確認していく。
「無理に成長の魔法を重ねているので、どう伸びればいいのかわからないといった印象を感じます」
植物全体に伝わる魔力の流れが歪になってしまっている。
本来の成長が出来ていない状態だ。
「つまり……」
「……焦ってしまったことによる、代償ですね。大量に注がれた魔力が歪に竹の中で絡まっている状態です」
このままでは成長どころか朽ちてしまう可能性すらありえる。
「どうにかならないかな……」
「手段はないこともないですが、大変な作業になりますよ?」
「……手段があるなら、やってみる」
「わかりました、では準備をしていきましょう」
あの竹を正しく成長させてあげる為の作業が始まった。