のんびり夢島   作:イーブイ

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プロローグ

 

 

 

 

 「オオォ…ォォォァアア"ア"ーー」

 

 今日も今日とて、私は吼える。

 海原の向こう、瞬く星々まで届くように。

 遥か彼方、何処かにいる筈の専用を夢想して。

 

 猫よ来い来い猫よ来い。

 

 

 

 今日この日を以って、私がこの地もといこの島に誕生して実に一年の月日が流れた…どころではない。しかし、数えているわけでもないため、正確な年月は定かではない。つまり、どうでもよいことだ。

 私は、私自身が何者であるのか知らない。それもそうだ。神様だって知らないのだから。

 しかしながら、私は私自身の外見の正体を知っていた。

 自分自身の正体について知る機会があったのだ。

 そして私はヒトもどきである。

 

 

 

 

 

 

 

 トトトトトトトトトトトトトトトトトトトト

 

 

 

 

 眠い。

 薄く目を開ければ、視界の端から端まで葉が揺らいでいた。一枚一枚、光を透かしたように、淡く光っている。

 陽光か。しかし眩しくはない。心地の良い光が浸透していくのが分かる。

 風が、鼻をくすぐる。湿った土の香り、木の香り、雨が降った後なのか僅かに雨の匂いもする。それとこれは、潮の香りか。

 

 眠い。

 なんと気持ちが良いのだろう。

 グゥ。

 …。

 …。

 …。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜だ。

 辺りは少し暗くなっていた。

 「ごぁ…ゴァ…オォアアア"ア"ーー」

 眠い。

 「アアーーア"!?」

 大あくびの最中の口に、何かが入った。

 それはおそらく、丸くて小さな物だった。その小さな物は、スルスルと喉へと落ちていった。

 「…」

 少しばかり驚かされたが、気にする程ではない。

 それより、眠い。

 …。

 …。

 …。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 眩しい。

 眠気を吹き飛ばされ、たまらず木陰へと這いずり寄った。

 …?葉群はこれほど上に在っただろうか。

 そしてこの木は、何故こんなにも大きいのだろうか。

 幹の太さだけで、体の…体?この様なものであっただろうか。視界の端に、見慣れないフワフワとした灰色の長毛が流れている。

 「あ…あ、あ…あ?」

 この様な声だっただろうか。

 「あ、うお…??」

 刺す様な痛みが右の手の甲に走った。反射的に、胸の前に引き寄せその様子を確かめる。

 肌色の中の一部分だけが、赤くなっていた。

 

 怖々と、手が在った場所を見ると、光が差し込んでいた。それは、葉群の隙間から漏れ出た陽光だった。

 

 もう一度、手を見る。すると肌色は消えて無くなっていた。あの痛々しい赤もだ。

 その代わりにフサフサとしたねずみ色の体毛があった。真っ黒な五指も、意思に沿ってゆるやかに蠢く。これだ。そう、これだった。

 漏れ出た陽光に手を翳す。今度は何も起こらなかった。

 「…」

 もう一度、先刻の姿になってみたいと念じる。勿論、葉群の濃い場所に身を寄せて。

 「ォォアァあはっ!」

 変われた。

 そして、何度も繰り返す。

 「ォォア!」

 「ははは!」

 「ゴォゥウ"!」

 「あははは!」

 「…!!」

 「…!!」

 

 

 

 

 

 

 巨樹が消えた。

 それどころか、何も無くなってしまった。

 「ォア」

 手はある。フサフサのねずみ色の腕も、口も鼻も目も先がツンと尖った耳もある。

 

 ーーはぁ、まさか混じってしまうとはーー

 

 「??」

 

 ーーいえ、此方の都合ですので。関係はありません。ただ、そうですね。説明しましょうかーー

 

 姿はない。声は、直接頭の中に響いている。

 

 ーーお前は、本来ならば存在しません。異なる二位の魂が偶然にも混ざり合いーー当然ですが拒絶が起き、二位の魂は崩壊しました。そして、それらを基に再構築された存在がお前です。

 一方の魂が望んだのは、そのものになること。

 もう一方が望んだのは、半夢魔の力で「オォあ…?」…そう、その姿です。髪色以外はそのままの容姿ですね。もう一方の姿では性差はありませんが、その姿の時には雄と雌、何方にも転換可能ですよ。本来、夢魔とはそういったモノですのでーー

 

 「??」

 

 ーーそうですね。今のお前に話しても意味のないことでした。

 本題に移ります…では、まずは一緒に"◆◆◆◆◆◆◆"を観ましょうかーー

 

 

 

 

 

 トトトトトトトトトトトトトトトトトトトト

 

 

 

 あの時…そうして私は、何時の間にか隣に現れていた女神様と共に観賞したのだ。

 観終えた後、私は女神様に「自分に似たあの二つの生き物はいないのか」と尋ねた。

 いないと返答があった。

 では、と次に私は女神様に「あの猫はいないのか」と尋ねた。

 すると、猫は、ある場所に送ったためその内出会うこともあるだろうと曖昧な返答があった。

 

 以来、私は猫に出会うべく映像を真似て四日に一度は遠吠えをする。

 猫よ来い来い猫よ来いと。

 

 そして遠吠えを終え、一頻りの寂寥感に包まれた後。

 また別の習慣に移るべく、私は意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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