この先、ネタバレ注意となっております(本編サマポケ、not RB)
ですので、やられていないand興味のある方は注意してください。
ブラウザバック推奨やで。
また、こちらのサイトで先月上げた、しろはの誕生日SSと同じ世界線、同じ年という設定です。そちらを見られてない方は、あとで読んでいただければわかりやすいと思います。
それでは、本編をどうぞ。
最後にまぶしいと思った夏がいつだったか、もう思い出せない。
けれど、あの時悩んでたことが、今ではとても些細に思える。
それほどまでに、今が荒れ果てているんだろうか?
アスファルトの照り返しに焼かれ。
謝りたくもない相手に頭を下げて。
それでも生きなければならないのが、なによりも苦痛だ。
一人で生きるなら、まだ簡単に投げ出せるかもしれない。
けれど、俺には残されたものがある。
うみ。
言えばこの子は、亡き妻の忘れ形見だ。
そうやすやすと投げだせるほど、俺は強くはなかった。
かといって、最大限の愛情を与えれるほど、俺は優しくもなかった。
だめな父親だって自覚はあるのに。
認めるのが、怖い。
そうしているうちに、自分がどうしていいのかわからなくなった。
それだけの、人生だ。
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普段家に帰るのは決まって夜遅くだったが、この日は思ったより早めに帰宅の途につけた。
別に、今日みたいな日が全くなかったわけではない。
ただ、決まってそういう日には、家に帰る気が失せていた。
帰っても、何をするんだと。
こんな中途半端な距離で、うみに何ができるんだと。
そんなことを思うと、いつも一人居酒屋に寄っていた。
相席など必要ない。
一人でいい。
そうして、酒におぼれるまで飲む日も、最近は増えてきた。
今日はどうしたものかと考えながら、繁華街の近くを歩く。
幸い、今日はそこまでブルーではない。
うみと面と向かって、何かを話すくらいは出来そうだった。
先日、しろはの誕生日を二人で祝ったのも、少なくとも影響してるのかもしれない。
...まあ、今日くらいなら。
そう思って、俺は遥か高く、夜空を見上げた。
嫌に思える位に、星々が身勝手に光る。
...都会でも、こんなにきれいに星が見れるんだな。
けど。
それは、いつかの星には遥かに届かない輝きだった。
「っ...!」
思い出すだけで、ひどい頭痛がする。
この間は割とためらうことなく近づけたのに。
それでも、今となってはあの場所が、鳥白島という島が、遠く、苦しい場所に変わってしまっていた。
...帰ろう。
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重苦しい玄関のドアを開けると、パタパタと小さな足音が近づいてきた。どうやらまだうみは寝ていなかったみたいだ。
「...おかえり」
いつぶりかのおかえりを聞いた。
こういう時、どういう返事をすればいいのか、もう分からない。
笑うことさえ、少なくなってきた自分には。
「ただいま」
無表情のまま、けれどうみの目をしっかりと見て、俺はそう答えて、そのままリビングへと戻った。
食卓の上には、ラップにかけてあったチャーハンが用意してあった。
最近は、こうしてうみが料理を作って置いているということが増えてきた。
俺が作ってあげれないうちに、うみはこんなこともできるようになっていた。
あくまでチャーハンがメインである、が。
「悪いな、うみ」
「ん」
心の底から悪いと分かっていながらも、こう言うことしかできない自分を恨みつつ、ラップを取り外し、食事を口にする。
味は悪くない。むしろおいしいまである。
作ってからさほど時間もたってないのか、まだぬくもりもある。
泣きたくなるくらいに、申し訳なかった。
そうして俺が食事をしていると、うみはなにやらどこかから持ってきた折り紙を、はさみで半分に切っていた。
「何してるんだ?」
「たんざく」
「短冊って...ああ」
そう言われて思い出す。
今日は7/7。世間一般的に七夕と言われる行事の日だ。
昔、島でも同じようなことをやっていたのを思い出す。
その時、何を書いたか、何を思っていたかなんて、もう忘れたのに。
嫌というほどに、思い出は消えてくれないみたいだ。
「...だめ、だった?」
うみがうるんだ瞳で俺を見つめてきた。
返す言葉もなく、息が詰まりそうになる。
奥底から湧いてくる、心苦しさ。
何をすれば、これは消えてくれる?
一緒に悩んでくれる相手が、もうここにはいない。
俺一人で、考えないと。
...けど。
ただでさえ、何もできてないのに。
うみの言ってることさえ抑え込んだら、もう俺は...。
だから。
「...ったく、短冊だけ作ったって、どこに飾るんだよ」
「あっ...」
「...ちょっと待ってろ。おとうさんが準備してやるから」
そう言って俺は食事の手を止めて立ち上がった。
工具箱の中から、うみが持っている以上の大きなはさみを取り出して、未使用の割りばしを割っては、切って、ボンドでうまく組み合わせる。
それを空いた缶に挿して、テーブルの上に置いた。
「...さすがに竹なんて用意できないからな。これで我慢しろ」
「ありがとう!」
うみは素直に喜んで、短冊に穴をあけてひもを通し、竹のような形にした割りばしにそれを引っかける。
久しぶりに、うみの笑顔を見た気がする。
俺も、少なからず悪い気分ではなかった。
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食事が終わり、食器を片付けるころには、うみは寝間着に着替えて自分の部屋に戻っていた。
リビングに一人残された俺は、改めて竹型に模した割りばしを眺めていた。
一つかかった短冊。そして、もう一枚が、テーブルの上に置いてある。俺のだろうか。
俺は、かかっているうみの短冊を読んでみた。
そこに書いてある内容に、思わず歯ぎしりをした。
『おかーさんに会いたい』
瞬間、しろはのことがフラッシュバックした。
楽しかった思い出。苦しかった思い出。
愛していた。本当に、心から。
「そんなの...俺の方が...会いたいに決まってるだろ...!」
何に対しての怒りだろうか。
行き場のない怒りが、胸をただただ締めつける。
そんなとき、ふと風が一つ吹いた気がした。
見ると、目の前の短冊は裏返っていた。
そこには、もう一つ言葉が記されていた。
『おとーさんと、もっと一緒にいたい』
再び胸が締め付けられる。今度は、さっきより苦しく。
「は、はは...」
絞り出すようになんとか声を出す。
だって、こんなの...。
この胸を締め付ける感情を、俺はまだ知っている。
いつも感じているような使命のようなものだったりとか、そんなものじゃない。
これは、まだ残った愛情だ。
関係が冷めていると分かっていても、俺はまだうみを愛している。
間違いない。
じゃなきゃ、この苦しさは言いようがない。
「...ごめんな、うみ...!」
こんな、ふがいない父親を。
それでもまだ、好きと言ってくれる。
それがあるから、俺は頑張れているのに。
なんで、忘れていたんだ...。
俺は、涙をこらえながら、自分用に用意された短冊に自分の願いを殴り書きした。
書きたい願いなんて、いくらでもある。
過去に戻れるなら、今すぐ戻りたい。
逃げ出した水泳部にも、もう一度ちゃんと向き合いたい。
しろはを、もっと大切にしてやりたい。
けれど、そうすることが無理だと分かっているから。
俺の願いはただ一つだけ。
『みんなで、幸せになる』
その一言だけで、十分だ。
ということで、毎度同じみハッピーが書けないで有名な白羽です。
今回も、前回と同じ世界線で書かせていただきました。
ハッピーを期待されていた方、すいません。
ということで七夕。
七夕過ぎれば、そろそろ夏休み...!といったのが、小さき頃の思い出。
今年に至っては、あれやらこれやらで夏休みが一週間しかありません。
是非もないよね。
ということで、今回はこの辺で。
また、ハーメルンのどこかで会いましょう。