昨日は夢のことを考えているだけで終わってしまった。
夢に関してはもう考えても仕方ない、ということで納得しておいた。
気を取り直して、空に続く方の痕跡を辿ることにした。
これまでの痕跡より、ずっと薄い。
まるで、消え去ろうとしているかのようだった。
それでも、私はその痕跡を辿り始めた。
その痕跡を辿っていると、見覚えのあるような風景が見えてきた。
こちらに来たことはないはず、そう思いながら痕跡を辿った。
すると、1つの岩山に辿り着いた。
ここで痕跡は止まっている。
なぜか、懐かしい感覚がした。
この場所に見覚えはない。しかし、なぜか懐かしいと感じた。
感覚を鋭くさせて周囲を探ると、2つの反応があった。
動くものではない。ただ2つの、霊力の残滓。
今いるこの場所に、2つの霊力の残り香があった。
さらに感覚を鋭くさせると、もう3つの霊力の残滓を見つけた。
その霊力の質を調べた。
調べたところ、3つが私の霊力。もう2つが、美恵の霊力だった。
何故ここに私と美恵の霊力が残っているのか。しばらく考えて、ようやく分かった。
ここは、美恵と一緒に逃げてきた洞窟があった場所だ。
洞窟が崩れ、岩山だけになっているが、間違いない。霊力の残滓を詳しく調べたところ、一番強い私の霊力の残滓が“風”を扱ったことを示していた。
この風は恐らく人影たちを吹き飛ばしたときに使用したものだ。
そして一番強い美恵の霊力の残滓。これは洞窟の奥に入った後、美恵がしていた作業によるものだ。あの時はわからなかったが、“結界”を扱ったらしい。
他の小さな残滓は1つずつが“索敵”によるもの。残ったもう1つは、私の使っていた風の防壁だ。
そこまで分かったところで、私は美恵の痕跡がこの場所の外に続いていることに気が付いた。
今まで見ていた痕跡よりも、ずっと薄い。
感覚をかなり鋭くしていなければ、見つけられないほどに。
鋭くしている影響か、頭痛を感じ始めた。
私は、今日の捜索を断念して、その場で眠りについた。
翌朝、感覚を鋭くさせたまま岩山を出発した。
鋭くさせていると、体に変化を感じた。
重い。
体が、とてつもなく重かった。
普段、私は霊力を使わずに空を飛んでいるのだが、体が重すぎてそういうわけにはいかなかった。
だから、霊力で小さな風を起こした。
しかし、霊力の安定がうまくいかず、何度か落ちかけた。
どうやら、霊力の方にも異常が出ているらしい。
だが、行動しないわけにはいかないと思い、無理やり動いた。
結局、その日はいつもの半分も行動できなかった。
…それから、5週間が経った。
この世界の1年は53週間、12ヵ月。371日であると美恵から聞いていた。
私が美恵と出会ってから、1年と189日が経っていた。
今、私は砂漠にいる。
感覚を鋭くしたままにしておくのも慣れ、いつものような進度で動くことができるようになっていた。
それでも、美恵は見つからなかった。
ここまでに痕跡が強い場所はいくつも見つけた。
でも、美恵はいなかった。
私にも変化は起こっている。
まず、私は“四大元素”と呼ばれる火風水土の4つの属性を操れるようになった。
今まで、私は風と土しか上手に操れず、美恵の補助があって火と水が少し操れた程度だった。
だが、美恵が応用として扱う“天候操作”のような術はいまだに扱えなかった。
次に、私の中で渦巻いていた力の1つ…魔力が扱えるようになった。
霊力とは別の力ではあったが、扱い自体は霊力と同じようだった。
そういえば、4つの力は性質がそれぞれ違うのかもしれない。
霊力は正の力を持ち、傷つけるような術を不得意とし、逆に癒すような術を得意としていた。
しかし魔力は負の力を持ち、扱う術に得意不得意が無いようだ。
妖力と神力はまだわからない。
最後に、応用術として“催眠術”、“華舞術”、“結界術”が使えるようになった。
結界術はあの岩山を訪れた後、時間をかけて習得した。
華舞術は風の術の応用に近い。花を生み出し、それを周囲に舞わせる。その気になれば催眠をかけることも可能だ。
催眠術に関してはいつの間にか使えるようになっていた。
痕跡が続く先に辿り着いた。
…ここにも、美恵はいない。
ちなみに暦の流れがこちらと違うのは仕様です