眩い光が瞼を通して降り注ぐ。
だが、ここはリングでも試合をしていた駐車場でもないようだ。
病院のベッドの上、そうか、僕は負けたのか…。
獅堂甲斐は、3日以上眠り続けていた。
身体のいたるところに、包帯や四肢を固定するギブスが巻き付けられている。
拳願試合の初戦によるものだ。
結果は、怪我が物語っているように、"完敗"そのものだった。
試合前までは、どんな相手が来ようとも、軽くねじ伏せて勝ち名乗りを挙げる。
僕は最強になれる、そう思っていた。
いつものボクシングの試合がそうであったように、
磨き鍛えあげた拳で、信じて培ったボクシングで、約束された勝利に揺るぎはない!
だが、その踏み台と考えていた初戦の相手"関林ジュン"に何も通用しなかった。
無残、無念、そんな感情や悔しさすら通り越して、もはや笑うしかない。
獅堂はベッドの上で笑いながら、そして涙を浮かべた。
あの時もう1発殴っていたら…
関林という男をもっとよく知っていたら…
そうすれば、勝てた。
勝てていたはずだ!
勝てていた?
否、結果がすべてだ。
だから、僕は負けた。
何が足りなかった、何が…。何が!
思えば、何故最強を目指したのか…。
ボクシングの試合で"鈴木宗成"という男に出会ったのがきっかけだ。
彼との話の流れで、思わず最強を目指すと宣言してしまったのだ。
言葉の綾、そう言ってしまえば間違いはない。
だが、その言葉を発した時、僕の中に燃えあがる何かを感じたのも事実だ。
最強になりたい、いや、最強に私はなる!
体中を駆け巡ったその想いは、熱となり蒸気を帯びて、拳願試合という裏格闘技へ僕を誘った。
ルールで縛られたボクシングでは、けして味わうことのできない、何でもありの殺し合い。
生死をかけたデスマッチ、男として生まれたからには命を賭けた試合で最強の座に就きたい!
その決意は、表社会のボクシングと裏の格闘技、二足の草鞋として僕を加速させていく。
目を閉じると初戦の試合が蘇る。
獅堂は、そして笑みを浮かべた。
「僕はまだ負けたわけじゃない。ここからが僕の最強の始まり…。もう負けない!」
勝って証明してみせる。
鈴木さんやジムの仲間達の為にも、そして自分の為に。
ボクシングが最強だということを!
獅堂は、傷が癒えないままベットから起きあがり、
ロッカーに掛けてあるグローブをとって病室を後にした。
「鈴木君、見ていてくれ。僕の最強ロードを!」
ジムに向かう獅堂の足取りは力強く、そして大きく見えた。