Apexの能力貰ったけどこの世界じゃ通用せんだろ、それよりモザンビークヒアァ   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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『アドレナリン中毒者』の力

「あいつに彼女とはなあ…」

 

日課の夜の駒王町のランニングをしながら俺はそう呟く。結局、あの後、イッセーの彼女になった───『天野 夕麻』さんは、幸せそうな表情を見せ、イッセーと一緒に帰って行った。

…まあ、あの時の俺はちょっとだけ戸惑ってしまったが、冷静に考えてみればイッセーに彼女ができるのは当然だと思う。あいつはいつもはエロいことばっか言ってるけど、多分彼女とか出来たらその人をずっと愛するタイプだ。顔も良いしな。むしろ遅すぎたくらいだったな。

 

[ベタ褒めじゃねーか、ブラザー?]

 

ジブラルタルの兄貴が俺をからかう口ぶりで話しかけてくる。

 

「俺の友達なんだ、当然だよ、兄貴」

 

そう言うと、兄貴はヒュウ、と口笛を吹いた。心なしか、他のレジェンド達からも、暖かい空気が感じられた。

その空気に耐えられなくなった俺は照れた気持ちを隠すために、さらに走る速度を上げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

[良い走りだったぜ、ソウ]

 

町中を走り回り、近くの公園で水分をとる俺を労ってくれるオクタビオ。なかなかキツかったな…、毎日続けているとはいえ、全力疾走というのは流石に疲れる。

なんで走ってるのかというと、それは今教えられている『能力』に関係している。オクタビオの『能力』──。それを使いこなすには、とにかく体力がいるらしい。

 

 

[良いか!?俺の能力があればどんなレースだって一位になれる!だからその時のためにメチャクチャ走れ!]

 

 

──こんな端的な説明で何をすればいいか分かった俺を誰か褒めて下さい。…まあ、こいつらは結構冗談とかは言うけど俺に嘘は絶対に吐かないからな。そこんところは信頼できるんだけど────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───オイ!今すぐそこから離れろ!危ねえぞ!!───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ん?」

[どうした、ソウ?]

「ん?あ、いや、なんか声が聞こえたんだ…『危ない、離れろ』って…」

[…!──ソウ!!今すぐそこから逃げて!!]

 

突然レイスが叫ぶ。いつも冷静な彼女がなぜこんなにも取り乱しているのか。困惑していると、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「──こんなところに『神器』を所有する人間がいるとはな。下等な種族にしては珍しい者も居たものだ」

 

 

 

 

 

 

その男は背中から()()()()()()()()()()()()、俺を見つめてくる。その目は、例えるなら──自分の周りを飛び回る鬱陶しい羽虫に向けるような視線であった。

感じたこともない威圧感に思わず脚が震える。そして、その男は何やら光を放つ槍を手に発現させる。

…アレ?これ、やばいんじゃ───。

 

 

 

 

 

「邪魔をされると困るのでな。俺に運悪く見つかったことを悔やむが良い」

 

 

[ソウッ!走れッ!!]

 

 

 

 

 

頭の中で突然オクタビオの大きな声が響く。反射的に俺の体は公園の出口へと走っていく。それと同時に、男が手に持っていた光の槍をこちらに向け、投擲したのが分かった。

光の槍は地面に着弾する。直撃を受けた地面はクレーターができていた。もし俺が動かなかったらと思うと、背筋が凍る。

 

 

「うあ…っ!なんだよアレ!?冗談じゃねぇぞ…!?」

 

 

俺は必死に走りながら状況を確認しようとする。が、パニックになった頭では上手く考えがまとまらない。そうしていると──、

 

[狼狽えるな、ソウ。今はとにかく逃げろ。死んでは元も子もないぞ]

 

ブロスの冷静な声が、俺の心に落ち着きをくれようとする。しかし──

 

 

 

 

 

 

───光の槍がまた降ってくる!今度は三発!───

 

 

 

 

 

謎の声が俺の落ち着きそうになった心をかき乱す。

 

「なんだこの声…ッ!?」

[ソウ、それは貴方の味方。その声に身を委ねて!]

「はあ!?」

 

レイスが奇妙な事を言い出したその時、後ろから()()()()()()()()()()()()()()

 

「おおおおッ!?」

 

訳も分からず、それをどうにか避けようとするが、着弾した際に飛んできた地面の欠片によって腕に切り傷ができる。

その痛みにより、一瞬足を止めてしまう。それはつまり、あの男に追いつかれるという事で──。

 

 

 

 

「手間をかけさせてくれたな…、これで終わりだ」

 

 

 

 

俺の正面に降り立った男が、俺に槍を投げようとする。しかも五発。その事実に絶望を感じた俺が、必死に策を練ろうとしたその時──。

 

 

 

 

 

 

[しょうがねぇ…おいソウ!ぶっつけ本番でやってみるぞ!]

「はあ!?何を!?」

[『能力』だよ!大丈夫、心配するな!走る事なら──俺の独壇場だぜ]

 

 

 

 

 

 

 

そのオクタビオの言葉と同時に、突然俺の頭にイメージが湧く。

 

[それは俺の『能力』のトリガーだ!そいつを強く念じろ!そうすりゃ手元に来るさ!]

 

言われるがまま、そのイメージを強く意識する。すると、いつの間にか右掌に、緑色の液体が入った注射器が現れていた。

 

「──なんだそれは?それが貴様の神器か。ハッ!どんなものかと思えば──、弱そうな物だな」

「おいオクタビオ!こ、これ刺すの!?大丈夫?これヤバい薬じゃねえの!?」

 

なんとなく緑の液体を注射するのに抵抗がある。しかし、レジェンド達は俺に嘘は絶対に吐かない。腹を括り、俺はイメージにあったように、左胸に注射器を──打ち込んだ。

 

 

 

ドクン。

 

 

 

 

液体が体の中に流れ込むのが分かる。そして、それが全身に染み渡る感覚の後、そこにあったのは奇妙な昂揚感であった。

 

「な…なんだコレ…なんか急に、テンション上がってきた…!」

 

命の危機が迫っているというのに、俺の感情には『恐怖』の二文字は無かった。すると、オクタビオの声がまた聞こえる。

 

 

[何してんだ!走れ走れ!思いっきりな!!]

 

 

俺はその言葉に頷き、そしてまた地面を蹴り上げ、男から逃げる。なんとなく──なんとなくだけど、今の俺なら『イケる』。そんな感情と共に、俺は走り出した。

 

 

 

 

 

「──なんだと」

 

 

 

 

 

走り出してすぐに、男の声が小さく聞こえた。俺はそれに違和感を感じ、後ろを向く。そして驚愕する。何故なら──今まで、十メートル程距離を取っていた男との距離が、今の一瞬で三十メートル以上離れていたのだったから。

 

 

「は…速…!俺速ァッ!?」

 

 

再びオクタビオの声が頭に響く。

 

 

 

 

 

 

 

[俺の『能力』の一つ、『アドレナリン興奮剤』──。それを打ったならソウ、お前は誰よりも速くなる!]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町を駆ける。走り出してどれほど経ったのだろうか。後ろを見ても男の姿は見えない。どうやら振り切った様だった。それを確認したと同時に、立ち止まって深呼吸をする。

そして、容器の中身が全て無くなった後──突如体にズキン、と痛みが走った。

 

「い"…ッ!?」

 

それに堪らず蹲ってしまう。そのまま痛みに耐えていると、またオクタビオから声がかかった。

 

[ソウ、安心しろよ。じきに痛みは無くなる。俺の能力の二つ目はな、自動で自分の体を回復できるんだよ!スゲーだろ!]

「ああ…そーなの」

 

なるほど、確かに痛みが徐々に引いていくのが分かる。それに、腕にできた切り傷もいつの間にか無くなっていた。…便利だな、これ。──そして、完全に痛みが無くなったのを確認して、俺は立ち上がった。

 

 

「みんな、ありがとな。みんなが居なかったらヤバかった」

 

[おーう!ソウのためなら当然さ!]

[アンタは全く働いてなかっただろ、おっさん]

[ハイハイ!喧嘩はやめな、鬱陶しい。──ソウ、良く頑張ったわね。ナイスだわ!]

[奴らの目的はなんだ…?まず、奴らは何者なんだ…?]

[私たちに喧嘩を売ったことを、後悔させてやるぞ…!]

[ねえ、オクタン、私のジャンプドライブの方が良かったんじゃないかしら?]

[う…!い、嫌、アレは俺のじゃないと駄目だった!…気が、する]

[ガッハッハ!まあいいじゃねーかブラザー。ソウが無事だったんだ、それで良いだろ?]

[ね…ねえ、大丈夫、ソウ?本当に痛いところは無いのね?もしあったら、私の電気を使うと良いわ!そもそも、電気というのは昔から医療に──]

[お疲れ様、ソウ。確か冷蔵庫にケーキがあったよ!後で食べるといい]

[主神に感謝しなさい、ソウ]

[私も能力を伝えてなかったのが悪かったわ。──ごめんなさい、ソウ]

[まだまだ訓練が足りてないわ、これからも精進しなさい]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー…ははっ、──やっぱりうるせぇぇぇぇッ!!」

 

夜の町に、俺の悲痛な声が響くのであった。

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