Apexの能力貰ったけどこの世界じゃ通用せんだろ、それよりモザンビークヒアァ 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
「な、なあ…操…!頼む、答えてくれよ…!俺の彼女──夕麻ちゃんの事覚えてるよな!?」
目の前で必死の形相をして掴みかかってくるイッセーに俺は動揺する。…何言ってんだコイツ?彼女がいない俺への当て付け──いや、違うな。冗談の類だったら、コイツがこんなにも何かに縋るような表情が出来るわけない。
「…何があった?」
とりあえず、状況を整理するために俺はイッセーの話を聞くのであった。
「みんなが夕麻さんを覚えてない?」
イッセーから伝えられた事情。それは、先日イッセーの彼女になった夕麻さんの事を、誰も覚えてないという現象であった。
今朝松田と元浜に夕麻さんの事を話したところ、二人は夕麻さんの存在すら分からなかったという。
「…でも、操は夕麻ちゃんの事を覚えてるんだよな?」
「ああ。ばっちり覚えてるぞ。あの時のお前に対する殺意は過去最大だったからな」
「殺意!?俺殺意向けられてたの!?」
騒ぐイッセーを見て俺は少し息を吐く。いつも変態的な発言をしてるとは言え、今のイッセーは精神的に不安定だ。ま、今みたいに笑えるならまだ大丈夫か…。
「とりあえず、今日は大人しくしとけ。俺も一応人に聞いてみるから」
「あ、ああ…ありがとな、操」
そんなこんなで放課後。俺は家へと帰り、日課のランニングをする。あの男が怖いが、やっぱり日々の鍛錬が大事だからな。それに、試したい事もある。
俺はいつものランニングルートではなく、住宅街を見下ろせる高台へと向かって行く。そこで息を整え、大きく深呼吸をする。そして──。
「──『全能の目』」
静かに、俺は能力を解き放った。
「『全能の目』?なんだよそれ」
──時は、俺がブロスに『能力』を与えられた後まで遡る。…そんな急に自然に敬意を払えやら、主神やら…なんか胡散臭いぞ、ブロス。
[一言で言えば、"捜索能力"だ]
「捜索…?」
[ああ。お前が探したいと設定したもの全てを見通す事が出来る]
設定したもの全てを見れるって…そう言われても、何が何やら分からない。急に捜索とか言われてもイメージが沸かない。
[…そこに休める場所はあるか?]
「あ?ああ…ベンチがあるけど…」
[そこへ行け。私が使い方を教えてやる]
その指示通りに、近くの公園のベンチに座った。公園では、小学生くらいの子たちがボールで遊んでいる。俺と同学年の高校生は一人もおらず、すこし羞恥心が生まれた。
「おい、座ったぞ…こっからどーすんだよ」
[よし、では始めるぞ。まずは、どのくらいの『範囲』で、『何』を探すのかをしっかりイメージしろ。今回は…そうだな、『この公園の範囲内の人数』をイメージするんだ]
またイメージかよ…、えっと、範囲を公園…人の数をイメージ…?どーするんだ…?
[公園の中にいる人数と強く思えばいい。さあ、私に続けて言葉を発しろ…。『主神が眼力を与えたもう』]
「は…?あ、主神が眼力を与えたもう」
[もっと心を込めろッ!!ふざけているのかソウッ!!]
「うえええ!?急にどうしたんだお前!?」
急にキレ始めたブロスに辟易としていると、俺の視界に変化が訪れた。ベンチに座っていた俺を中心に、オレンジ色のレーダーがドーム状に広がって行く。
「お…!?おおおお!?何だ!?」
そして、そのオレンジ色のレーダーに公園内にいた人物に、ピンのようなものが付けられる。しかし、その変化に誰も気づいていない。これは能力を使った俺にしか見えないものなのだろう。さらに、建物などの障害物で見えなかった人物も、その建物越しに見えるようになった。
その視界の急な変化に思わず声を上げてしまう。
[フーッ、フーッ…!──これが私の能力……!分かったか?他の物を探したい時もそれを強く思えば探せることが可能だ…!]
鼻息が荒いブロスの発言に、思わず笑いが出る。なんだよそれ、チートじゃねえか。つまり何でも探せられる万能能力って事だろ?これは日常で一番役立つんじゃ──、
「ねーねー、さっきのおれんじいろのひかりなんだったんだろーね?」
「…え?」
遊んでいた子供が放ったその言葉に唖然としてしまう。アレ?ピンとか見えないんじゃなかったっけ?するとブロスから補足が入った。
[目標を特定したマークは視認はできない…が、オレンジ色のレーダーは発見される。使い所を間違えると大変なことになるぞ]
なるほど…レーダーを使うところはしっかり見られるわけか。これは普段の生活じゃあ使えないなぁ。
そう落胆していると、ふと、視界がぼやけていくのを感じた。
「お?」
じんわりとした痛みとともに、両目からは涙がポロポロと流れ出る。突如襲ってきた目への異常に困惑していると、冷静を取り戻したブロスの声が頭に響いた。
[副作用だな。一時的に視力が落ちる。範囲によっては視力が回復する時間がより必要となる──注意しろ]
「範囲は──『駒王町』。対象は、『天野夕麻』」
そう呟いた途端、俺を中心にオレンジ色のレーダーが広がり、駒王町を囲んで行く。…レーダーは他人に見えるって言うけど、一瞬だけだから勘弁してくれ駒王町のみんな。
しばらくそのレーダーが広がった後、まるで空気に消えるかのように霧散して行く。…これって…。
「居ないのか…?この町に…」
おかしい。急に居なくなる事なんてあるか?引越したにしても、せめて彼氏のイッセーには伝える筈だろ…。
何故知らせなかったのか。それを考えているうちに、視界が霞んで行く。副作用だ。しかし、以前に使った時より範囲を広くした為か、その代償はさらに大きくなっていた。
「──あ"、っ痛!!」
針で刺された様な鋭い痛みが眼球を襲う。公園の時とは比べものにならないほどの激痛で目も開けられない。思わずその場に蹲ってしまう。
[ソウ!大丈夫か!?]
「あ、ああ…いや、痛え…!」
[全く…!何故急にこんな無茶をした!?町一つ分の範囲なんて──]
…しょうがないだろ、あのバカのイッセーが必死になって自分の彼女探してんだ。アイツの初めての大事な彼女さんなんだ。俺も本気で探さねえと、友達失格になっちまうからな…。
[………]
つーか、本当に夕麻さんはどこに消えちまったんだ…?引っかかる所なんか一つも──、
《こんなところに『神器』を所有する人間がいるとはな》
………いや、まさかな。
頭に一瞬よぎった嫌な結論を、俺は首を振って追い出すのだった。
次の日。学校へと到着した俺は、いつも通り自分の席へと着く。…あの後、目の痛みが激しすぎて帰るのに一時間くらいかかってしまった。母さんが鬼の様に怒ってたな。…もう『全能の目』使うのやめとくか。
…ん?なんか周りが騒がしいんだけど。全員窓から体乗り出してる…オイオイ元浜と松田!?口から魂みたいなもんが出てんぞ!?おい戻ってこい!一体何見たらこうなるんだよ!?
焦りながらこの混沌を作り出したその原因を睨む。そこにいたのは──、
我が校のアイドル、『リアス・グレモリー』と仲睦まじげに登校する、我が校の変態、兵藤一誠がそこに居たのだった。