Apexの能力貰ったけどこの世界じゃ通用せんだろ、それよりモザンビークヒアァ   作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない

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夜の攻防

「うおおおおお!!」

 

駒王町に一つの叫び声が上がる。その声の主の青年は必死に走り続けていた。その表情は絶望の色で埋め尽くされている。まるで、肉食動物から逃げる草食動物の様な──、…まあ俺なんですけどね!

どこかおかしいテンションのまま俺は路地裏は駆け込んだ。奴らは空から俺を追いかけてくる。路地裏などの薄暗く、上から見えづらい場所では流石に──、

 

 

「なーに逃げてんすか、一緒に遊びましょーよ。ニンゲン」

 

 

その言葉が路地裏に響き渡ると同時に、無数の光の槍が俺に向かって飛んでくる。…やっぱり分かってたのか…!

しかし、それを読んでいた俺は手に現れた注射器を胸に突き刺す。

 

[Fast!Fast!!Fast!!!最ッ高に楽しいなあ!ソウ?]

「うるせえなあ!こちとら殺されそうになってんだぞ!?楽しいわけねぇだろ!」

 

『アドレナリン興奮剤』を注入すると、全身が熱くなり、不思議な高揚感が脳を刺激する。

 

「──行くぜ!!」

 

驚異的なスピードを得た俺は迫ってくる槍を避けながら路地裏を抜ける。そのまま、人気のない場所まで走っていく。

 

「ざまみろバーカ!!逃げ出してやったぜこの野郎!ウハハハハッ!」

 

───お前、どこかから狙われてるぞ───

 

「うせやろ」

 

その『声』が聞こえると同時に、俺は探索能力──『全能の目』を発動。

 

(範囲は『俺から数十メートル』…対象は──『人外』だ)

 

すると俺を中心にオレンジ色のレーダーが広がっていく。そしてそれが最大まで広がったその時──、

 

「見つけた、斜め後ろだ!」

「ッ!?」

 

その方向を向くと光の槍を投げつける男が見えた。それを横っ飛びで回避。まさか自分の場所を知られるとは思っていなかったのか、その驚愕した顔に向かって──

 

「おりゃあああ!!」

 

『アドレナリン興奮剤』で強化した速度を上乗せした、強烈な飛び蹴りを繰り出す。しかし──、

 

 

「──ッ!甘い!」

 

 

一瞬目を向いた男だったが、すぐに冷静になったのか、首を傾け俺のキックを避けた。なんだよそれ。どんだけ動体視力良いんだコイツ…!

転がりながら距離を取る。それと同時に、『アドレナリン興奮剤』と『全能の目』を使った副作用が身体に現れた。

 

「…ッ!」

 

…痛ええええええ!!超痛え!何だこれ!?体の節々が痛いわ、目からは涙出て痛いわ、転がって擦り傷できて痛いとかもうこれわけわかんねえな!

…しかし、勝負に出た甲斐はあったぜ。奴はやはり俺に警戒心を抱き始めている。今まで逃げるだけで攻撃をしてこない『獲物』に反撃されたんだからな…多少の驚きはあるだろ。

 

 

[へぇー…そんな事考えてたんだなあ!流石──はっ!…ま、まあ?俺もその策は考えてたし?なんなら一番最初に考えてた感じだから?言うまでも無かったというかそれが当たり前だったというか──]

[無様だな、おっさん]

[ハア?おいクリプトそりゃどういうことだ?今、俺の耳が確かだったら『無様』とか聞こえたんだが──]

[無様だな、おっさん]

[てめこのやろ]

 

 

シャアァァァルルァアッップッッッッ!!ちょっと!黙って!大人しく!しとけ!!

 

「…貴様、何者だ?」

「あ?」

「最初はただの下等な人間かと思っていたが…貴様、『神器』をその身に三つ所持しているな?」

 

男は地面に降り立ち、その鋭い視線を俺に向ける。

 

「未来予知の神器、それと超高速移動──そして今見たレーダーのような物。──ああ、地味だが自然治癒も持っているか。これで四つ目だ」

「…よく見てらっしゃる」

 

呻く俺に鼻を鳴らし、嘲るような笑みを浮かべる男。少しずつ後退りしながら俺は男に問いかけた。

 

「…お前ら、何者なんだ?翼はついてるわ、光の槍飛ばしてくるわ、殺そうとしてくるわ…良い加減やめてくれよマジで」

「そういえば自己紹介がまだだったな。私はドーナシーク。貴様ら人間の上に立つ、『堕天使』だ」

「堕天使…?」

 

何言ってんだコイツ?頭沸いてんのか…って普段の俺ならそう思う所だが──、こんな事になってるって事はそういう人外が本当にいるって事なんだよな…クソ、なんで俺がこんな目に…!

目の前の男──ドーナシークを睨みつけ、次の一手を考える。コイツに対抗できると言えば──。

その考えに集中していたからだろうか。いつもなら危険を知らせる『声』が聞こえなかったのは。

どっ、と体に衝撃が走る。

 

 

「あ?」

 

 

 

眩い光の槍が俺の横腹を貫いていた。

 

 

「がああああッ!!」

 

 

熱した鉄をかけられたような痛みが俺を襲う。頭の思考が無理やり停止させられ、『痛い』という感情で埋め尽くされた。横腹に手を添え、噴き出す血を押さえながら後ろを向くと、そこには得意げな、ムカつく顔をした金髪の女がいた。

 

「ドーナシークに気を取られすぎたみたいっすね〜?──アタシもいる事忘れんなよニンゲン」

 

 

…完全に忘れてた…!バカか俺は…!自分の作戦が上手くいって油断した結果がコレとか笑えねえぞ…ッ!

 

[大丈夫かソウ!?]

[大丈夫、傷は浅いわ、しっかり気を持って]

[浅いわけないだろ見ろコレ!ちょっとなんか出て──]

 

具体的に言うなァァァァッ!!止めろマジで!頼むから!力抜けちゃう!!

俺が脳内で必死の懇願をしていることも知らず、ドーナシークは邪悪な笑みのままその手に槍を生み出す。

 

 

 

「その傷では自然治癒も間に合うまい。今楽にしてやろう」

「あっ、ドーナシーク!それウチの手柄っすからね!」

 

 

 

…何が手柄だ。人のこと散々追い回しといて、挙げ句の果てには──殺して手柄にするだと?命をなんだと思ってやがる。軽く扱っていいモンじゃねえんだぞ…!

俺は震える左手を握り、目の前の野郎を睨みつける。それに気づいた男は俺が何をするのか、興味深そうに観察している。…苛々するぜ、何見下してんだこの野郎が。

そのふつふつと湧き出た怒りの感情を抑えることなく、俺は拳をドーナシークに突き出した。

 

 

「おおりゃああああ!!」

 

 

 

その突き出した手の甲から、『グラップル』が勢い良く飛び出た。完全に虚を突かれたドーナシークは目を見開く。…よし…!コレなら…。

──しかし、完璧な奇襲の筈だったグラップルは、ドーナシークの、首を傾けるという簡単な作業で避けられ、後ろの電柱へと突き刺さった。

 

「…く、くくくっ!くはははははッ!残念だったな人間!お前のその奥の手!俺に当てようと必死になっていたようだが、結果は残念!コレで本当に打つ手無しと言った所か!ははははッ!!」

 

 

 

「──()()()()()()()()

 

 

 

瞬間、『グラップル』がワイヤーを巻き取っていく。その引き寄せられる力に身を任せ、俺は再び拳を構える。

ドーナシークは未だに笑っている。

初めはゆっくりと動いていた俺の体は、『グラップル』が刺さった場所に凄まじい速度で向かっていた。

ドーナシークがようやく俺に気づいた。

焦りの表情を見せているが、もう遅い。弾丸のように向かっていく俺を前に、発現が遅い光の槍は通用しない──!

 

 

[ぶちかませ、ソウ!!]

 

「おおおおおおおッ!!」

 

 

 

みんなの鼓舞を受け、俺はドーナシークの顔面に速度と重力を乗せた拳を叩き込んだ。

 

 

 

「ぶげあああああッ!!」

 

 

 

間抜けな声を上げて吹っ飛ぶドーナシーク。しかし、俺にも悠長にしている暇は無かった。

 

「──ッ!ドーナシークッ!?」

 

背後から悲痛な叫び声が聞こえる。金髪の女だ。俺の体は限界に近い、こいつに捕まれば今度こそ本当に終わる!

 

「──やるしかないッ!」

 

俺は再び、興奮剤を胸に突き刺す。今はこの場から──全力で逃げるしかない。痛みを感じなくなり、自分の鼓動が大きくなっていく。

夜の静かな住宅街を、俺は再び駆け抜けて行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…追ってきてねえな…?」

 

逃げ切った俺は、念を押して迂回しながら帰路に着いていた。まだ横腹はズキズキと痛むが我慢でき無いほどではない。これくらいなら家に帰るまでには治ってるだろ…。

 

[よく生き延びた、ソウ。今日はゆっくり休め]

 

…でもなあ…家族のみんながこの惨状見てなんて言うか…。血もいっぱい付いてるしよ…。──なんか隠せる能力とかないの?

 

[バカ言えお前、今のその身体で能力使ったらぶっ倒れるぞ]

 

そのオクタビオの意見に肩を落とす。…しょうがねえ、俺の本来のステルス能力、見せてやるか…!

そうして家に着いた俺は、姿を完全に消し、自室へと戻った────

 

 

 

 

 

「あれ?お兄、いつ帰ってきて──キャアアアアアッ!?お、お兄!!血…血が!お母さーん!お父さーん!お兄が死んじゃう!!」

 

 

 

 

 

なんて事はなく、玄関で妹に秒でバレました。…腕を上げたな、我が妹よ。

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