Apexの能力貰ったけどこの世界じゃ通用せんだろ、それよりモザンビークヒアァ 作:ナメクジとカタツムリは絶対認めない
「よう、操!」
机にうつ伏せている俺にうんざりするほど元気な声がかかる。のそり、と起き上がると、その声の主はぎょっとした顔でこちらを見ていた。
「お…おい、大丈夫かよ、お前?なんか死にそうな顔してるぞ…?」
整った顔を心配そうに歪めるイッセー。…確かに今の俺の顔は酷いものになっているのであろう。昨夜の攻防の末、俺を待ち受けていたのは家族による質問攻めであった。
何があった、どこで何をしていた、その傷はなんだ、etc…。こっちは早く体を休めたかったのに次から次へと質問されるから、ようやく寝れたのは深夜過ぎ。もう死ぬかと思いましたね。
[まあ、親御さんの気持ちも分かるけどね…]
姉貴の呟きにみんなも頷いているようだ。
「お、おい!本当に大丈夫かお前!?どんどん顔から色が抜け落ちてるんだけど!?」
「…イッセー。今日はそっとしといてくれ。疲れてんだ」
「お、おう…何かあったら言ってくれよ」
そう言うと、イッセーはチラチラとこちらを見ながらも、松田達の方へと去って行った。
…こんな事が何回も続くと体持たないぞ…、──これからどうするかなあ…夕麻さんを探そうとすればあいつらが邪魔してくるし、こっちは命の危険もあるからそう気軽に手を出せない。なんかしようとしても何にもできねえ。
[…なあソウ、これはちょっとした提案なんだが…──もうこの件から手を引くのはどうだ?]
…どういう意味だ、ウィット。
[ああいや、別に完全に手を引けって訳じゃないんだ。そりゃお前は納得しないだろうからな。…だけど今は危険が多い。まだ焦る時じゃない。能力を増やしていけば問題は無しだ。だろ?それにお前に何かあったら、お前のかあさんや家族が悲しむぞ]
ウィットはいつものようなふざけた態度ではなく、真剣な雰囲気を醸し出しながら俺に語りかける。…初めて見たぞ、そんな姿。
[母親には楽しく生きてもらわなきゃいけねえ。──だろ?]
それは普段とは違う、おちゃらけたウィットではなく、一人の息子として自分に言い聞かせている様な声だった。
「──ああ、分かったよ」
そんな声で言われたら聞かない訳にはいかないよな…。──それに、あいつ今グレモリー先輩といちゃついてるしッ!なんか俺が馬鹿みたいだしッ!本気で困ったらアイツから来るだろうからね!問題ないね!!
…というかなんでアイツがグレモリー先輩と仲良くなってんの?接点なかったよな?っはあ〜(クソデカため息)結局は顔ですかい!そうですかい!良いよなイケメンはホイホイ美人と知り合えて!
[おい、アレどうすりゃ良いんだ?放置しときゃ良いのか?それとも止めれば?]
[oh…確かに周りの視線がエグいな…ま、俺はどっちでもいい]
[お前が焚きつけたのだろう…自分で起こした火は、自分で始末するべきだ…]
[いやいやいやいや!俺だけ!?ちょっと博士、そりゃ薄情なんじゃないか!?]
…よし、こんな時は気分転換だ。最近新しくできたスイーツ店が美味しいらしい。甘いもん食って栄養補給しよう!
…あ、そういえば。塔城とこの前一緒に行こうって約束した気が…。ま、いっか。一人で──、
[あら、ソウ?約束を破るなんていつからそんな悪い子になったのかしら?]
…ローバ、違えよ。これはちゃんと相手のことも考えてるんだ。俺と一緒だと『あ、塔城さんだ!…ん?隣に居るのは顔面クソ雑魚偏差値の阿久須じゃん!塔城さん趣味悪〜!』ってなるだろ?…はあ、なるんだよなあ…。
[なんで勝手にダメージを受けてるのかしら…。──とりあえず、誘うくらいしなさい。約束を守れないとイイ男にはなれないわよ?]
…まあ誘うくらいなら…。結果は分かりきってるけどな!
「行きます。絶対に行きます。今日の放課後ですね?分かりました、それではホームルームが終わり次第そちらに向かいますのでよろしくお願いします」
一緒に行くことになりました。いやビックリしたよ。まず最初に、塔城のクラスの扉開けたらそこに塔城が居たんだもん。
たまたまなのか…?それにしては一番最初に俺の目をガン見してたし。
それで一緒にスイーツ食べに行かない?って聞いたら今の返答が返ってきた。そんなにスイーツ食べたかったのか…。あとちょっとは瞬きしよう?ほらどんどん猫みたいに瞳孔が開いて来た…え、すげえ。どうやってやんのそれ。
あと周りの視線が痛い。僕が何したっていうんですか。何にもしてないですよ。ああ、やめて!そのゴミを見る目やめて!
こうして俺は、下級生の視線に耐えきれず、すごすごと自分のクラスへと戻っていった。
「──また来たぞ、『塔城さんの彼氏』…!クソッ!リア充くたばれや!」
「塔城さん今めちゃくちゃ笑顔だもんなあ…彼氏にはツンツンしてるタイプか」
「か、かわいい!塔城さん、ほんとかわいいわ!」
「いただきまーす!…!甘!美味!」
「……!!」
目の前にあるパンケーキを食べる。ふんわりしていて、甘い。俺の貧困なボキャブラリーではそんなことしか言えないが、美味いというのは確かだ。
目の前では、『ジャンボビッグ巨大パフェ』なる、頭痛が痛いみたいな名前のパフェを目を輝かせながら食べている塔城が見え…ない。パフェがデカ過ぎて小柄な塔城の体が完璧に隠れていた。まあ、幸せそうな雰囲気ではあるのだが。
[このお嬢ちゃん相変わらずやばいな…こんなもん体のどこに入ってんだ?]
[有り得ない…質量的に彼女の胃袋に入るわけがない…!]
頭の中で戦慄しているレジェンドたちに苦笑していると、何やら目前にパフェの乗ったスプーンが差し出されている。
「──あ、あーん…!」
──時が、止まった。…オーケー、まずは状況判断だ。店内には少しの客。そして俺の皿にはパンケーキ。そして俺の目の前には顔を真っ赤にした塔城が差し出しているパフェ。かわいい。
──こ、これって…!『あーん』か!?古から伝わっている、リア充御用達のイベント、『あーん』なのか!?──いや落ち着け阿久須操。ここで固まっていては塔城に失礼だ。ビシッ!と食べてスッ!と『美味しい、ありがとう!(爽やかスマイル)』こう言えばいいだけだ!よし行くぞ見とけよお前俺は勝つぞお前!
「………」
「…ど、どうですか…?」
「オ、オイシッス…(小声)」
[ハア、これだから童貞は]
どっ!どどど、どどどどどどどどど(地響き)違うんだよぉ!やっぱり緊張しちゃうんだよぉ!見ろホラ!塔城顔がめちゃくちゃ赤いぞ!そんな嫌だったんなら最初からやるなよ嘘今の嘘凄い嬉しかったですありがとうございました!!
こうして、妙に気まずい空気のまま俺たちはスイーツを食べ進んで行った…。
食後の運動も兼ねて、気ままに駒王町を散歩する。横で歩いている塔城を見ると、学校では元浜いわく『無表情のお姫様』って言われてるそうだが…。
「ふん、ふん〜」
…別に、そんな感じには見えないけどな…。むしろ満面の笑みを浮かべている。頭をゆらゆら揺らしながら鼻歌を歌う塔城を見ると心があったかくなる。
[…お?]
…なんだよオクタビオ。
[いっやあ〜?何でもねえよ!]
…?訳分からんやつだな。まぁ良いか。
謎にニヤニヤしているオクタビオはほっといて、俺たちは近くの公園へと入っていく。すると、子供たちが遊んでいる中で、俺は見覚えのある人影を発見する。
「…あれ?イッセーじゃねえか」
「お?…お、おう!操か!──ええ!?小猫ちゃん!?なんで!?」
「…ども」
悪友、イッセーがベンチに座っていた。奇遇だな──しかしなんでこんなところで──、
「────!」
俺の思考はその可憐な声で中断させられた。声のした方向を向くとそこには、金髪のシスター服を着た可憐な美少女がこちらに駆け寄っている姿が見えた。
…いや、どういうこと?